機動戦士ガンダムSEED ~Out of order~   作:天羽々矢

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随分掛かってしまいました・・・


Episode11 戦士との邂逅

そこは何も知らぬ者が見ても惨状とも呼べる光景だ。

周囲に散らばっているのは破壊されたコロニーの成れの果て。

MSのコックピットに座るカイトは宇宙に散らばる残骸に目を向けた。

 

「どうして・・・こんな事に・・・」

 

いままであそこで暮らしていた人々は平和に過ごしてきたはずだ。

それが突然こんな惨状になるとは誰も思わなかっただろう。

だが今、その平和は壊された。

 

あそこの人々にとって思い出の詰まった拠り所が

 

壊されたのだ。

 

《イ・・・ト・・・》

 

いくらカイトでもこの光景には心が痛む。まだカイトは子供なのだ。

 

《カイ・・・!》

 

「?」

 

通信機から男性の声が聞こえてくる。

 

《カイト!》

 

これは親友のタツヤの声だ。

タツヤがここまで大声を出すのは珍しい。

 

《カイト!無事か!!》

 

「ああ、俺は大丈夫。みんなは?」

 

《大丈夫だ、全員こちらで回収した。無事だ》

 

「よかった・・・」

 

タツヤからの報告にカイトは深く安堵のため息をつく。

 

「これから帰投する・・・?」

 

《ん?どうした?》

 

通信機越しにタツヤが疑問を投げるが、カイトの視線の先にはあの白い機体が漂っていた。

 

「タツヤ、さっきまで俺と一緒だった機体が動けないみたいだ。救援に行きたいけどいい?」

 

《構わない。お前に任せるさ》

 

「了解、じゃ、機体を回収してから帰投する」

 

《了解した。俺たちは格納の準備をしている》

 

タツヤはそう言い残し通信を切る。

通信を終えたカイトはフレズべルグのスラスターを吹かせ、例の白い機体に接近する。

そばに着き、カイトは緊急回線周波数に替える。

これなら回線封鎖をおこなっていない限り全回線で聞こえるはずだ。

 

「こちらフレズべルグ、そこの機体のパイロット、聞こえるか?」

 

《・・・はい、一応・・・。誰ですか?》

 

パイロットの声からすると、カイトを相当警戒している事はすぐ分かる。

 

「ごめん、驚かせる気はないんだ。ただ君を見つけてね」

 

「・・・そうなんですか・・・?」

 

(未だに半信半疑か・・・)

 

カイトは自分の人望の無さに少しばかり落胆する。

 

「ま、まあそれは置いといて、君ひょっとして・・・母艦の場所が分からないとか?」

 

「えっ!?」

 

パイロットはなぜ分かったのだと不思議そうな顔をしているが、宇宙を漂っているMSは、無人かパイロットが宇宙慣れしていない証拠。

それが漂流しているともなればそれを推測するのは今のカイトには容易な事だ。

 

「図星か。俺たちの拠点まで送るよ」

 

白い機体のパイロットはまだ少し警戒した様子だが、迷子の身である以上どうしようもできない。

おとなしくカイトの指示に従い、カイトは機体を背負ってユグドラシルに帰投する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレズべルグと白い機体はカタパルトデッキから格納庫内に入った。

そこにはすでにエクスシア、シュヴァリエ、ヘリオスが格納されている。

 

「おかえりカイト」

 

先客としてタツヤが待っていた。

 

「ただいま。俺はお客さんの相手をするからここの指揮を頼むよ」

 

「分かった」

 

カイトは白い機体の方に近付く。

すると程なくしてコックピットハッチが開きパイロットが出てくる。

 

(若いな。俺たちと同じくらいじゃないか・・・)

 

カイトは降りてきたパイロットを見て内心驚いている。

 

「初めまして。カイト・ワタセです」

 

「キラ・ヤマトです。助けていただいてありがとうございます」

 

栗色の髪にまだ幼さの残る中性的な顔立ちの少年は、礼儀正しく頭を下げる。

 

「ここで立ち話もあれでしょう。こちらへ」

 

「・・・分かりました」

 

キラと名乗った少年は一瞬カイトを警戒したが、すぐにおとなしく付いていく。

カイト達が向かったのは格納庫近くのパイロット待機用の休憩室。

お互いどのような経緯でここにいるかを話したとき、カイトはキラの話した事に驚いていた。

偶然あの白い機体「ストライク」に乗りコーディネイターとしての才能を発揮。ヘリオポリスに被害を出しながらもザフトのMSと対等に戦った。

工学系に強いコーディネイターとはいえ、短時間で人型機動兵器のOSを書き換え、操縦までしてしまう。

最終的にはカイトがそのMSを破壊したが・・・。

 

「ワタセさんは、コーディネイターを危険視しないんですか?」

 

話の途中でキラがカイトに質問を投げる。

確かにカイトにとっては若干16歳で最新鋭機動兵器を操縦し、熟練パイロット相手でも全く引けは取らなかった事は驚愕に値する。

 

「俺自身もコーディネイターだし、殺人鬼や狂信者の方がもっと怖いな。能力がどうこうより、中身で考える方だから」

 

同じコーディネイターである事も理由の1つだが、カイトは特になナチュラルやコーディネイターに憎悪や恐怖と言った負の感情は持っていない。

カイト達はもとはただの民間人であって、身体能力の差異があるからといってそれを差別する活動家でなければ、思想団体や宗教にも入っていない。

 

「それにここにいるのはナチュラルが大半だけど、みんな同じ事言うと思うよ」

 

キラはそんな反応が珍しいのか驚いた顔をしている。

キラの友人もナチュラルだが、それは長い時間をかけて分かりあって出来たものだ。

一般的なナチュラルは大抵コーディネイターを妬み、恨む事が多い。

そんなナチュラルがここにはいるのかという事がキラにとっては新鮮なのかもしれない。

 

「カイトさんって、変わってますね」

 

親近感が湧いたのか、名字でなく名前で呼ぶ。

カイトは名前で呼んでくれた事には素直に嬉しいと思えるが、「変わっている」という単語がグサリと胸に刺さる。

友人はいるがさほど女性に興味を示さず、よく父親の職場の横須賀に1人で遊びに言ってはドヤされる。

 

「・・・よく言われる」

 

ここまで頻繁に言われればカイトとしても認めるしかない。

 

「カイトさんは、どうして危険を冒してまで戦闘に参加しようとしたんですか?」

 

「元々は俺たちもキラと同じ民間人だったんだ。けど1週間前に俺たちの学校にザフトが襲ってきて、それから連合の変な奴に目を付けられて逃げ出してきたんだ。それに、戦争はスポーツと違って明確な終わりが無い。ならそんな世界に風穴を開けてやる・・・こんなところかな」

 

コーディネイターとナチュラルの確執はとてもではないが妥協点を見出せそうにない。

これは相手の考えを一切認めず、殲滅する事と同じだ。

ただ両者に落とし所などある訳もなく、根本的に身体能力差で畏怖している。そんなものは話し合いでどうにかなるレベルではない。

 

「カイトさんって、若いのにすごいですね」

 

目を輝かせながらカイトを見つめるカイト。

 

「・・・お世辞でも嬉しいよ」

 

否定で無く校庭で返したキラにカイトはお礼を言う。

 

「カイトさんって。いくつなんですか?」

 

ふとキラがそんな事を聞く。

大型艦のクルーをしているともなれば歳が気にならないはずが無い。

 

「18。今年の7月が来れば19になる」

 

自分が想像していたよりずっと年下だった事にキラは驚きを隠せない。

 

 

 

――ピピピッ

 

 

 

その後もカイトはキラと談話を続け、短い時間で2人は仲良くなった。

が、そんな時に休憩室の艦内電話が鳴り響く。

 

「どうした?」

 

《艦長、例ノ連合艦ヲ確認シマシタ》

 

「分かった。通信準備。すぐに行く」

 

《了解シマシタ》

 

電話の相手はラーダ、連合の艦、アークエンジェル発見の報告だった。

カイトは通信の準備をするよう伝え通話を切る。

 

「キラ、君の母艦が見つかった。これから連絡を付ける」

 

「ありがとうございます」

 

キラを休憩室に残し、カイトはアークエンジェルと連絡を取るべくブリッジに向かう。




ついに原作主人公の登場です!
ここからどうしますかね・・・。

まあ、気長に続けて行くつもりです。

では!

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