今宵、紅月の夜のお話ひとつ致しましょう。   作:漣@クロメちゃん狂信者

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今回区切りがつかなかったせいで短いです。すみません。


燃ゆる火種

ラザールSide

 

ロマリー街道。帝都から東へ進んで行くとある大きな町ロマリーから伸びる大きな街道だ。

カンザシがいなくなって数ヶ月。数日前より増え始めたナイトレイドの目撃証言を受けて、僕を含めたイェーガーズは帝都を出た。馬による長距離の移動は痛いし疲れるし大変だけど、そんなことも言っていられない。まったく、僕は軍人じゃないっていうのに。文句を言いながらも辿り着いたこのロマリーにて、イェーガーズはこれからの作戦を練っていた。

 

「東か、南か…」

 

「東にはキョロク、南には反乱軍の息のかかった都市…いずれにしてもきな臭いですね。」

 

「地方まで手配書が回っていないとは言え、このタイミングで姿を現し、この街で二手に分かれたのを目撃されている。都合が良すぎるな?」

 

「ハイ、高確率で罠、でしょうね。」

 

「わざと人目について、僕たちを帝都から誘き出した…大いにあり得る話だねぇ?」

 

「ナジェンダはそういう奴だ。燃える心でクールに戦う。」

 

何かを懐かしむように呟いたエスデス隊長殿は、ある意味ナジェンダという人間を信頼しているのだろう。あのナジェンダが何も企んでいないわけがない、決して甘く見ていい奴ではない、ってね。

 

「私はセリュー、ラン、ラザールと共に東へ。ナジェンダを追う。クロメ、ボルス、ウェイブ、スピアはアカメが向かったと思しき南へ進め。常に周囲への警戒を怠るな。不利な状況にあるならば退却して構わない。

帝都に仇なす最後の鼠だ、着実に追い詰め仕留めてみせろ!!」

 

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

「30分後に出立する!各自準備をしておけ!」

 

その指示のもと、各自が町に散らばった。ランさんは情報収集に。ボルスさんやセリューちゃんは武器のチェック。ならば、僕も準備はしておかなきゃ。情報収集に向かうように見せかけて、路地裏に入った僕はオロチを陰から呼び出し、肩に止まっていたマグルに伝令を頼む。

 

「マグルはチェルシーのところへ。もう潜入は良い、クロメちゃんたちに何かあったらサポートだけして退却するように伝えろ。その後はスピアに付いてて上げて。何かあったら連絡するように。」

「オロチは待機中のキノの元へ。ヴィン…あの害虫にちょっとちょっかい出してきてって伝えて。嗚呼、勿論キノが不利な状況に追い込まれたら退却ね。殺せそうなら殺してもいいけど、あの害虫は僕が殺して(救って)やりたいからさぁ…」

 

行け。

そう命じた瞬間、力強く羽ばたいて空へ消えたマグルと尾を地に叩きつけて影の中へと潜り消えたオロチ。

 

大丈夫、大丈夫。僕はもう弱くない。もう一人じゃない。僕の平穏は崩させない。邪魔者は殺す、殺せる。

大臣はね、勘違いしている。僕の平穏はこの現状じゃないってこと。僕は一度だって今が平穏な生活だなんて言ったことはないんだよ?いいよ、まだ貴男は殺さないから。だって貴男には利用価値がまだ残ってる。だからね、

 

「さ、一つずつ、消していこうか!」

 

僕はお前らとは違う。僕は人間じゃない。他ならぬ、人間が僕をバケモノと呼んだのだから。

 

 

「マスター、お時間です。」

 

「…スピア」

 

「はい、マスター。」

 

「よく視てきてね。」

 

「…はい、お任せください。」

 

「うん、じゃあ行こうか。集合時刻はちゃんと守らないとね。」

 

「そうですね。セリューに怒られるのは御免です。」

 

僕は裏路地に背を向け、歩き出すスピアもその後ろをついてきた。…いつも通り。合流地点には既にほとんどが揃っていた。…いつも通り。

 

「…時間だ。全員揃っているな?それでは出立する!南は任せたぞ。」

 

「はい。そちらも健闘を祈ります!」

 

「マスター、それでは行ってまいります。」

 

「うん、気をつけてね。」

 

「マスターこそ、どちらが囮でも何かしらの妨害はあるでしょう。どうかお気をつけて!」

 

…この時。

あの男との再会が近づいてきていると、僕も少しピリピリしていたからこそ、らしくもなく聞き損なった。ここで僕が気づけていたなら、彼女は狂わずにいてくれたのだろうか。

 

「…害虫は駆除しなくてはいけない。マスターの心を曇らせる害虫は抹殺しなくてはいけない。そうでしょう?マスターには私、笑っていてほしいです。例えマスターに恨まれたとしても…私は。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…否、彼女がもうとっくの昔に狂っていたことに気づけたのだろうか?

 

「父を見殺しにしたマスターには笑っていてもらわなくては困るのです。だって、苦しんでいる人になんて、たとえ相手がマスターでも、復讐できませんから。」

 

「大好きで、大嫌いなマスター。愛してます、信じてます、好きです、大好きです。だから…憎くて憎くてしょうがない貴方を、私が殺します(愛します)。」

 

貴方はどうして、父を救ってはくれなかったのですか?ねぇ、私のカミサマ(マスター)

 

 


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