【完結】Fate/stay nightで生き残る   作:冬月之雪猫

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第二十五話「絶望の果て・上」

 戦いが始まった。鮮血に濡れた舞台の上で赤と黒の殺意がぶつかり合う。

 戦局はアルトリアの優勢。当然だろう。本来、アーチャーはその名の通り弓兵だ。遠距離からの狙撃こそ、彼の本領であるにも関わらず、剣で剣の英霊たる彼女と斬り結ぶ事自体がおかしい。

 以前の戦いでは足場が石段だったが故にアーチャーの技巧が冴え渡り、拮抗させる事が出来た。この平らな大地の上ではアルトリアの王道的剣技が真価を発揮する。純粋なるスピードとパワーがテクニックを圧倒する。

 

「アーチャー!!」

 

 セイバーは考える。この場で最善の選択を必死に考える。

 このままではアーチャーが死ぬ。これは必定に近い。

 アーチャーの宝具は接近戦に持ち込まれた今の状態では発動不能。能力に関しても、接近戦ではあまり役に立たない。故に彼は純粋な剣技だけで戦わなければならない。

 だが、それではジリ貧だ。守りに特化した剣技故に決定打を受けてはいないが、ダメージは蓄積し続けている。何か手を打たなければ、いずれ破綻し、アルトリアの剣がアーチャーの体に致命傷を刻む。

 

「――――クソ」

 

 だけど、己に何が出来る?

 キャスターに操られていた時は宝具を使えたらしいけれど、今は使い方が分からない。

 士郎に令呪を使ってもらうという手もあるが、それでは一手遅れる。手を出さないからこそ、セイバーと士郎は見逃されているのが現状。攻撃態勢に入った事を相手に知られたら、恐らく、ライダーも戦闘に加わるだろう。

 令呪を使い、宝具を発動させるのは愚策でしかない。確実に回避され、その隙に殺されるのがオチだ。その果てにあるのはアーチャーと士郎の死。

 ならば――――、

 

「……いや、駄目だ」

 

 令呪でアーサー王の能力を発揮出来るようにしたとしても所詮は偽物。結局、アルトリアには敵わない。

 ライダーならば倒せるかもしれないが、機動力に優れた彼女と戦闘になると、確実に士郎から離れる事になる。そうなると、無防備な士郎が危険に晒される。

 万事休す。そこまで考えての“この布陣”だとすれば、間桐慎二という人間を侮っていたと認めるしかない。まさか、再び戦場に舞い戻って来るとは思わなかった。

 あの時、キチンと殺しておけばこの状態には至らなかったかもしれない。

 

「……ちくしょう」

 

 セイバーが迷っている間も戦闘は続いている。

 只管守りを固めるアーチャーに対し、アルトリアは不満を口にする。

 

「守ってばかりではつまらんぞ、アーチャー!」

 

 怒涛の攻撃を繰り出しておきながら、無茶を言う女だ。

 けれど、確かに守ってばかりでは勝てない。アーチャーは如何なる戦場においても勝利への布石を並べ、活路を見出す戦法を取る。

 ならば、今の守勢も勝利への布石なのかもしれない。

 

「どうするつもりだ……、アーチャー」

 

 士郎はアーチャーの背中を見つめながら呟く。

 その言葉が合図であったかのように、戦局が動いた。

 

「――――なっ」

 

 ただし、それはアーチャーの更なる劣勢を意味した。

 アーチャーの双剣がアルトリアの一刀の下に大きく弾かれたのだ。天高く舞い上がる干将・莫耶。あんな重い物がどうやったらあんな高度にまで舞い上がるのか不思議に思う。

 双剣は落ちる事無く、戦場を挟むビルの壁面に突き刺さった。

 武器を失い、徒手空拳となるアーチャー。アルトリアは勝利を確信し、溜息を零した。

 

「――――なんだ、こんなものか」

 

 それは好敵手と思っていた相手の不甲斐なさを嘆くものだった。

 その不満が止めの一撃を僅かに遅らせた。

 そして――――、

 

「――――ッハ」

 

 アーチャーは嗤った。

 アルトリアは未だ、アーチャーというサーヴァントの本質を理解していない。

 彼の行動には一つ一つ意味がある。全ては勝利への布石であり、己を劣勢に追い込む事もまた、布石の一つに過ぎない。

 彼の行動の意図……それ即ち――――、

 

「――――鶴翼、欠落ヲ不ラズ」

 

 彼が干将・莫耶を愛用する意味。

 彼が双剣に秘めた真意がここに顕となる。

 新たに現れた双剣がアルトリアの剣を弾き、同時にアーチャーは後退する。

 

「――――同じ武器?」

 

 僅かに目を見開くアルトリア。その隙にアーチャーは抜き去った双剣を投げた。

 最大魔力と共に投げられた陰陽剣がアルトリアの首を狙い襲い掛かる。

 

「愚かな――――」

 

 鉄をも砕く宝具の一刀。弧を描きながら襲い来る双剣をアルトリアは事も無げに打ち払う。

 要したのはたったの一撃。左右同時に襲い来る二つの刃をただの一撃で片付けた。

 軌道を歪められ、本来なら手元に戻って来る筈の刃が彼女の背後に飛んで行く。

 再び無刀となったアーチャーにアルトリアは侮蔑の表情を浮かべ、そして――――、

 

「――――また、同じ武器?」

 

 三度現れる双剣にアルトリアの表情が変わる。剣士として最高峰に位置する彼女だからこそ、三度同じ武器を取り出すアーチャーに違和感を覚えた。

 その宝具では届かぬと分かっている筈にも関わらず、愚直に同じ得物を使い続ける彼の真意をアルトリアは探ろうとする。

 

「――――心技、泰山ニ至リ」

 

 されど、答えを見つけるより先にアーチャーが答えを放つ。

 有り得ない方角からの攻撃がアルトリアを襲い――――、

 

「そういう事かっ……」

 

 未来予知染みた直感の下、背後から飛翔した干将を躱すアルトリア。

 後方の地面に突き刺さる干将を尻目にアーチャーは握る莫耶を彼女へ叩きつける。

 

「舐めるなっ!」

 

 アルトリアは強引に干将を躱した態勢のままで莫耶を砕く。

 見ている事しか出来ないセイバーと士郎はその化け物染みた所業に言葉を無くす。

 そして、武器破壊という極技を見せたアルトリアは――――、凍り付いた。

 

「これはっ……」

 

 今まで、さんざん打ち合った剣。たかが一撃で砕ける筈が無い。

 アーチャーというサーヴァントの本質に漸く気が付き始めたアルトリアは警戒レベルを最大まで引き上げる。

 だが、前ばかりを見ても居られない。

 

「――――心技 黄河ヲ渡ル」

 

 干将が来たのなら、当然、莫耶も来る。夫婦は常に寄り添うもの。

 干将が莫耶に引き寄せられたように、莫耶も干将に引き寄せられ、アルトリアを背後から襲う。

 磁石のような性質を持つ干将・莫耶の性質。それに気付き、アルトリアは神業めいた反応速度で回避を行う。干将と同様に地面に突き刺さる莫耶。

 そこへ更なる干将の追撃。

 

「――――くっ」

 

 アーチャーの握る干将が再び砕け散る。

 二対の干将・莫耶による前後からの同時攻撃を防ぎ切ったアルトリアはもはや限界を迎えている。

 これ以上無い無防備な態勢。

 対して、アーチャーには次がある。三度取り出したならば、当然、四度目がある。だが、それは予想とは違った。

 アーチャーの手に顕現したのは細身の長剣。

 

「――――ッチ」

 

 限界を迎えた筈のアルトリアの動きがブレる。

 彼女には肉体の限界の先を往く手段がある。

 それが魔力放出というスキル。

 膨大な魔力で無理矢理体を動かすアルトリア。

 だが、読み違えたアーチャーの得物によって、腕を貫かれる。

 

「――――クァ」

 

 そして、苦悶に歪む彼女の目に映ったのはアーチャーが浮かべた必勝の笑み。同時に耳に届く破滅の音。

 そう、アーチャーの行動に意味の無いものなど無い。

 最初に弾かれ、ビルの壁に突き刺さった干将・莫耶が地面に突き刺さる干将・莫耶に牽かれ、急降下して来る。

 既に限界を超え、腕を貫かれている状態。回避も防御も不可能。

 

「勝った!!」

 

 勝利を確信し、叫ぶアーチャー。

 だが、侮るなかれ――――、敵はあまねく騎士の王。最強の名を冠する剣の英霊。

 アルトリアは直感に従い、魔力放出により僅かに体を揺らす。そして――――、

 

「……なっ」

 

 セイバーはその光景に瞠目した。

 切り裂かれ、宙を舞うアルトリアの片腕。それはアーチャーが貫いていた方の腕だった。

 アルトリアは魔力放出によって体を揺らす事で聖剣を振り上げ、僅かに襲い来る干将・莫耶の軌道を変えたのだ。

 干将が横腹を裂き、莫耶が腕を両断した。けれど、アルトリアは未だに健在。

 

「今のは驚かされたぞ、アーチャー」

 

 残った腕で聖剣を握り締め、アルトリアは微笑む。

 

「やはり、気になるな」

 

 彼女は僅かに眉を潜める。

 

「お前は何者だ? 今の四連の剣技は……、“私”を殺す事に特化し過ぎている。私の生前の縁者か?」

「……貴様に教える道理は無い。片腕を奪った。次は命を貰うぞ、アーサー王」

 

 衰えぬアーチャーの殺気にアルトリアは恍惚の笑みを浮かべる。

 

「なるほど、愚問だったな。語るは剣で、という事か! ならば、存分に語ろう」

 

 戦局はアーチャーに有利な方向へ傾き出した。当然だろう。如何に最強の剣士と言えど、片腕を失った状態で万全な動きなど出来る筈が無い。

 なのに、どうしてだろう? 心に不安がこびり付いて離れない。アーチャーが圧倒的に優勢な筈なのに……。

 全てはあの夢のせいかもしれない。やっぱり、あの夢は彼の……、本当に起きた出来事だったのかもしれない――――。

 

 

 男の生涯は後悔に塗れていた――――。

 カツンカツンと硬い音が鳴り響く。後ろ手に手錠をかけられ、目隠しをされ、処刑場へ向って歩き続ける。

 遺書は遺さなかった。遺すべき相手など居なかった。

 辿り着いた首吊り台。階段を一段登る度に脳裏を過ぎるのは出発点であった遠い日の思い出。

 一筋の涙が零れる。看守は自らの行いを悔い、己の死を嘆いているのだろうと無言を貫く。けれど、それは違う。

 彼は喜んでいた。漸く、終わりを迎える事が出来た事に歓喜していた。

 

“君は立派な人間になるんだよ”

 

 嘗て、魔術師同士の争いがあった。聖杯戦争と呼ばれる、たった一つの聖杯を巡り、サーヴァントと呼ばれる使い魔を召喚し殺し合う大儀式。

 彼はその戦いにマスターの一人として選ばれた。召喚したサーヴァントのクラスはセイバー。最優と名高きクラスで召喚されたのはアーサー王。まさに剣士として最強の英霊が招かれた。

 けれど、セイバーには異常があった。外見や性能は紛れもなくアーサー王のモノであるにも拘らず、中身が異なった。

 彼女――――……、彼は自らを『日野 悟』と称した。

 

 

 悟はどこにでも居る普通の大学生だったらしい。

 死んだ原因も『女の子に振られて、自棄酒をした挙句の事故死』だ。見事なまでの自業自得。同情の余地は一切無かった。

 そんな彼との共同生活は波乱万丈だった。

 

 最初の戦いの相手はイリヤスフィールと名乗るドイツ人の少女が率いるバーサーカー。

 悟は彼に“令呪”と呼ばれるサーヴァントに対する“絶対命令権”を行使させた。

 アーサー王の力を発揮し、悟はバーサーカーを相手に善戦し、見事に人気の無い空き地へと誘い込む事に成功する。

 空き地には障害物が多く、地形の有利を利用して、悟はバーサーカーの体勢を崩す。

 

『――――入った!!』

 

 協同戦線を張っていた遠坂凛というアーチャーのマスターが歓声を上げる。

 勝利を確信し、笑みを浮かべる遠坂。悟も勝利を確信し、笑みを浮かべている。けれど、突然、俺は背筋に寒気を感じた。

 空き地から遠く離れた高台にある建物の上。そこに赤い衣を纏う騎士が弓を構えていた。迸る殺意の矛先がバーサーカー以外の存在にも向けられている事を瞬時に察し、考えるより先に悟に駆け寄った。

 

『なっ……、士郎君!?』

 

 悟の手を取り、地面に組み伏せると同時に光と音が爆発した。その衝撃で俺は意識を刈り取られた。

 

 

 悟は自らの力の無さを自覚していた。それ故に遠坂に助力を求めたけれど、結局、手を結ぶ事は出来なかった。

 彼女のサーヴァントであるアーチャーが同盟を結ぶ事に強く反対したらしい。

 二人っきりで聖杯戦争を生き抜かなければならない。それが如何に絶望的であるか、バーサーカーと一戦を交えた事でよく分かった。けれど、唯一助力を求められそうだった遠坂に断られた以上は仕方が無い。二人で意見を交わし合い、必死に生き残る為の計画を建てた。

 

 

『……そうだ。俺の事は士郎でいいよ』

 

 話が一段落した後、思い切って悟にそう告げてみた。

 君付けで呼ばれると、妙にくすぐったく感じて慣れない。

 

『そうかい? なら、そう呼ばせてもらうよ』

 

 悟も別に拘りがあったわけでは無いらしく、アッサリと応じた。

 

 当面の方針は“強くなる事”だった。兎にも角にも、俺達は二人共弱過ぎた。

 朝は剣道場で只管竹刀を振るい、夜は魔術の鍛錬に当てた。悟は“アーサー王の知識”や“聖杯の知識”とやらを活かして助言をくれた。

 そうしている内に穏やかな時間が二日、三日と続いた。剣の稽古や魔術の鍛錬の合間に息抜きとして一緒にゲームをしたり、意外にもお酒好きなセイバーが食事をせがみに来る藤ねえと飲み比べをする事もあった。

 

 けれど、平和な時間は長続きせず、ある時、友人である間桐慎二から電話が掛って来た。

 

『――――話がある』

 

 悟は反対したが、何とか説得して慎二の指定したオシャレなカフェに赴いた。

 そこで語られたのは彼がマスターである事。そして、同盟の提案。

 

『悪くない話だろう? 巻き込まれただけのお前が一人で生き残れるわけ無いんだし』

 

 ありがたい申し出だったが、悟が猛反対した。

 普段、温厚な悟がこれだけは譲らなかった。やむなく、頭を下げて答えを先延ばしにすると、慎二は呆れたように肩を竦め、去り際に呟いた。

 

『何かあったら教会に逃げ込め。それと、柳洞寺に居る魔女には注意しろ』

 

 その助言に感謝の言葉を告げ、悟と共に喫茶店を離れた。

 

 翌日、再び慎二から連絡が入った。

 

『考えは変わったかい?』

『……いや、セイバーが反対しててさ。すまないが、もう少しだけ待って――――』

『衛宮……。僕は愚鈍な人間が嫌いなんだ。知ってるだろ? チャンスを何度も棒に振る奴の事なんて、僕は知ったこっちゃない。後は自分達でどうにかするんだね』

 

 電話越しに怒りを滲ませる慎二。慌てて謝ると、彼は鼻を鳴らした。

 

『……お前は覚悟が足りないんだよ。なあ、久しぶりに学校に来いよ。お前に聖杯戦争がどんなものかを教えてやる』

 

 その言葉に首を傾げながら、学校に向った。やはり悟は反対したが、善意の申し出を二度も断ってしまった手前、行かないわけにもいかなかった。

 そして、学校に到着した途端、二人揃って愕然となった。学校中が赤い光に包まれていて、教室に入ると生徒達が倒れ伏していた。肌はまるで蝋を溶かしたかのようになっていて、二人は青褪めた。

 

『まったく、本当に愚鈍な奴だな、衛宮』

『……慎二。まさか、これは――――』

『ああ、僕がやらせたのさ』

 

 それが二度目の戦いの幕開けだった。

 

 

 思えば、彼は一貫して“救う”為に行動していた。もはや過ぎ去った過去ではあるが、あの時、彼の手を取っていれば、別の未来もあったかもしれない。

 階段を更に一段上がりながら、男は苦笑する。

 悔やむばかりの人生。もしもの話を何度も脳裏に浮べ、その度に絶望する。そんな愚かな己に嘲笑の笑みを浮べ、男は再び意識を過去に戻す。

 

 

『慎二!! アンタ、学校でこんなふざけたモノを発動させるなんて、良い度胸してるじゃない……』

 

 戦いが始まるや否や、怒り心頭の遠坂が現れ、アーチャーに指示を出した。二対一となり、慎二は舌を打つ。

 

『セイバーを殺して脱落させるつもりだったんだけど……、余計な邪魔をしてくれたな、遠坂』

『何を企んでの行動かは知らないけど、覚悟なさい』

 

 宝石を指の合間に挟み、遠坂が呪文を詠唱する。

 

『これは――――』

 

 アーチャーと切り結んでいたライダーの口から驚嘆の声が漏れる。

 

『――――ッチ』

 

 舌を打つと同時にライダーはアーチャーから離れ、主を抱えて窓の外に飛び出す。即座にアーチャーは弓を構え、外を走るライダーを狙う。

 

『消えろ――――』

 

 矢のように細く捩れた剣を弦に番え、引き絞る。

 

『――――偽・螺旋剣Ⅱ』

 

 膨大な魔力を篭められ、大気を捻じ切りながら矢がライダーに迫る。けれど、トップクラスの敏捷性を誇るライダーは間一髪でこれを回避する。対して、アーチャーの顔には勝利の笑み。

 次の瞬間に起きた事はバーサーカー戦の焼き直しだった。光と音が破裂した。宝具が内に秘める幻想を解き放ったのだ。“壊れた幻想”と呼ばれるサーヴァントの切り札。

 極めて凶悪な破壊力を誇る絶技を受け、ライダーは無惨な姿に変わり果てていた。どうやら、咄嗟に彼女は慎二を庇ったらしく、彼には火傷と裂傷程度の傷しかない。

 対して、現界しているのもギリギリな状態のライダー。

 もはや勝敗は決した。誰もがそう思った瞬間、彼女は自らの眼帯を解き放った。

 

『――――自己封印・暗黒神殿』

 

 途端、全身が痺れたように動かなくなった。俺だけじゃ無い。遠坂とアーチャーも身動きが取れない様子。唯一、セイバーだけは強力な対魔力のおかげで体が少し重くなる程度で済んだ。

 ライダーの眼は石化の魔眼。彼女の眼帯はその力を封じる為の宝具。名はブレーカー・ゴルゴーン。

 ギリシャ神話に登場する蛇髪の怪物、メデューサ。それが彼女の真名だった。

 そして、突如姿を現すペガサスに跨り、彼女は言う。

 

『油断ですね、アーチャー。この程度の傷を付けた程度で過信するとは……』

 

 天高く舞い上がり、狙いを済まして宝具である手綱を手に取るライダー。

 

『騎英の手綱!!』

 

 宝具を発動し、天高く舞い上がる。膨大な魔力を纏い、迫り来るライダー。

 絶体絶命の窮地に陥り、悟が叫ぶ。

 

『令呪を使え、士郎!! 宝具を使う!!』

『あ、ああ……!! 宝具を使え!!』

 

 身動きが取れない状態のまま必死に魔力を令呪に注ぎ込み、叫び声を上げた。

 直後、悟は風王結界を強引に解き、聖剣を顕とする。

 

『約束された勝利の剣!!』

 

 光を呑み込むより大きな光の斬撃。

 エクスカリバーの一撃がベルレフォーンを発動したライダーを消し飛ばし、勝敗が決した。

 しかし、同時にいつの間にか慎二が姿を消していた。

 

『ど、どうしたんだ……?』

 

 天を裂く聖剣の発動を目にして呆気に取られていると、突然、悟が倒れ伏した。

 

 騒ぎになる前に悟を抱えて衛宮邸へと戻った。

 そこで遠坂は恐るべき事を口にした。

 

『このままだと、セイバーは消滅する』


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