畜生先生ポチま!   作:お話下手
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茶々丸とポチ

 

 【1987年】

 

 「闇の精霊1001頭、集い来たりて敵を切り裂け。魔法の射手・連弾・闇の1001矢!」

 

 星の死を体現した矢が、おぞましい雨となって襲いかかる。 視界が真っ暗に染まる瞬間、銀色の閃光は音速のスピードで僅かに残された場所へ縫うように走り回った。

 ホーミング性能高いな、情け容赦ない攻撃に思わず舌打ちが出る。 徐々に此方を追い詰めるかのように誘導され、最終的に行きつくのは…。

 

 「ケケケ」

 

 血飛沫ぶしゃー大好きなマリオネットの人形。 自分よりも大きな、2mはあろうかという巨大な鉈を降り下ろしていた。

 矢のスピードを考える限り後方、横、上、共に同時に魔法の矢が迫っているため回避は出来ない。 ならば迎え撃つ。

 火花と共にバイザーが上がり、瑠璃色のツインアイが現れる。 チャチャゼロの攻撃予備動作を確認、人形の間接では分かりにくいが目線と芯の形から計算、算出、初撃がフェイントだと見切った。

 ワンセコンドの一瞬、チャチャゼロの降り下ろしキャンセル、次撃は袈裟懸け、これもフェイント。 またフェイント、フェイントフェイント、そして本命きた。

 距離感が掴み難い突きの攻撃、嫌らしい。 鋼の左手甲で受け流し、チャチャゼロの体勢が崩れる。

 

 「オ?」

 

 「フンッ!」

 

 鼻息荒く、鉈を手刀で砕く。 得物を失えば然程脅威ではない、はず。

 未だ此方へ向かってくる1001本の矢を回避するため、更に距離を取り直撃ギリギリまで待機、タイミングを見計らい跳躍した。 勢いを殺せなかった矢は全て地に激突し、足下では先程まで大地であったものが消滅したかのように消し去られている。

 

 「空中では回避は出来まい! 貰ったぞ!」

 

 「エヴァンジェリンちゃん、それ負けフラグ」

 

 闇の吹雪×4が真っ正面に向かってくるが、逆に対処はしやすい。 胸部の装甲を開き、心臓の位置に収められた黒い玉に紫雷が走る。

 超々極少恒星形成。 フェミニ縮退増圧。 重力崩壊開始。 排出。

 黒い玉から拳代の、先程とは違う、鮮やかさを全く持たない黒い球体が飛び出た。 すぐさま掴み取り、闇の吹雪に向け投げ付ける。

 周りの時空を僅かに歪めながら漂うそれは、エヴァンジェリンの魔法をその小ささで全て吸い込み、音もなく黒い球体自身と共に消滅させた。 

 

 「くっ、相変わらず出鱈目な…! 大人しく受けろ!」

 

 「いやいや! エヴァンジェリンちゃんマジで殺す気だったでしよ!? あんなん喰らったら死んじゃうわ!」

 

 モーション込みでもなんとか間に合った。 あれだけの魔法を4発同時とか器用すぎるぞ、この娘! スタミナも高いし、割りとヤバい虎の子使っちまった!

 

 「ふん、それが嫌ならさっさと私のモノになれ」

 

 「だーかーらー! 俺はナギのモノだから駄目なの!」

 

 「安心しろ、本人には許可を貰ってる」

 

 「ナギイイイイイ!!」

 

 お前マジか!? 長年連れ添った相棒をおいそれあげてんじゃないよ!

 あの感動的な出逢いはなんだったんだ! アリカちゃんがいるからって蔑ろにしすぎ、やっぱり女なの!

 女なのね! ムキイイイイイ!

 

 「エヴァンジェリン、今のなかなか良かったぜ」

 

 「だがやはり、あの能力は卑怯だ。 どうにかしないと…」

 

 「今回は隠していたが、アイツは一応、虚空瞬動無しでも空中回避が出来る。 やっぱり動きを封じた方がいいな、馬鹿力を発揮するのも予備動作が必要みたいだからよ。 それが出来りゃ、楽勝だ」

 

 「ちっ、まだ奥の手があったのか…」

 

 後ろから薄情な相棒が、何故かアドバイスを送る。 クソ、お前ら仲良いな、それちょっとだけ俺によこせ! てかアドバイス適格すぎる、マジのヤツじゃねぇか!

 サイドスラスターの存在も教えてんじゃないよ!

 

 「よし、凍てつく氷柩!」

 

 ぐおお!? なんだこれ、全身丸々氷付けされて動けねぇ!

 

 「今だー! ぶっ殺せえー!」

 

 おいいいいい!?

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 【2003年】

 

 「家政婦のミタです」

 

 「ほらみろ、また変なのを覚えてきたぞ」

 

 「……」

 

 ちょっとエヴァンジェリン! そんな冷めるようなこと言わないでよ!

 茶々丸ちゃん、メッチャ困ってるじゃん。 困らせてるのは俺だけど。

 

 「いやぁ、最近奉仕精神に目が覚めましてね。 是非とも御奉仕させて頂きたいと」

 

 「その金髪カツラやメイド服はどうしたんですか?」

 

 訊ねてくるのは、別荘内で修行中の刹那ちゃん。 最近刺客の進入が激しくなってきたから、エヴァンジェリンに頼んで貸してあげてる。

 剣の使い手に邪道のチャチャゼロちゃんがいるから、かなりのスピードで上達していくな。 刀子ちゃんでは学べない対応力が付くし、正解だった。

 

 「何故か千雨ちゃんがくれました。 なんで持ってるか知らんけど」

 

 「このうえなく気持ち悪いコスプレだが、まぁ殊勝な心掛けは悪くない。 漸く飼い主に対する誠意が産まれたのなら、それに応じよう」

 

 凄く愉しそうですな。 ふんぞり反ってまぁ、偉そう。

 止めてください、あまりないというか……殆どない胸を強調されても此方が泣きたくなるだけです。 ああ、知らぬとはなんと幸福なことか、その姿が眩しすぎる。

 

 「では身体を舐めろ」

 

 「え、エヴァンジェリンさん!?」

 

 刹那ちゃんが驚いているが、安心してくれい! そんなの余裕よ!

 

 「畏まりました。 では茶々丸さん、服を脱いでください」

 

 「……え」

 

 あ、今一瞬嫌そうな顔した。 それでも平常を保とうとする茶々丸ちゃん、メイドの鏡。

 

 「待てぇい! 何故茶々丸なのだ!?」

 

 「元ロボとしてガイノイドの生態に興味が」

 

 「本音は?」

 

 「ペロペロしたい! 関節の隙間とかペロペロしたいです! ぶっちゃけると御奉仕するのエヴァンジェリンではなく、日頃お世話になっている茶々丸ちゃんに対してです! ペロペロペロペロハァハァしたい!」

 

 「ひっ…」

 

 ガチのドン引き。 茶々丸ちゃん、君絶対ロボじゃないでしょ。

 怯える表情がリアルすぎる、おかげで精神のダメージががが。

 次の瞬間、こめかみ辺りにドシュリと、続けてズドンとした衝撃。 ぶっ倒れながら手で確認したら夕凪と包丁が刺さっていた。

 夕凪もそうだが、包丁の切れ味凄い、骨ごといったぞ。 この白ゲージな切れ味は台所で使われる物ではない、チャチャゼロちゃんお手製のだ。

 

 「俺ノ妹ヲ怖ガラセテンジャネェヨ」

 

 「最低ですね」

 

 「ごめん。 でも手より口が先にきて欲しかったな」

 

 「躾ニハ痛ミガ一番ダッテ知ッテルカ?」

 

 ヤバい、チャチャゼロちゃんがシスコンに目覚めかけてる。 マジ御姉さんの鏡。

 おっと、そうだ。 血が吹き出ないよう慎重にゆっくり抜かないと、メイド服が汚れちゃう。

 ゆっくりゆっくり、治れ治れ────治った。 綺麗に抜けた。

 

 「まぁ、お遊びはここまでにして。 割りと本気で御奉仕させてください」

 

 ワンコの分際でランクが高い茶々丸ちゃんを使うなんて、したっぱプライドが許さないのよ。

 

 「しかし…」

 

 「な、なら私だ! 私に奉仕しろ! ベッドだ、ベッドに行くぞ!」

 

 「あーた、ポチに何させる気よ。 エロゲーの汚いおっさんか」

 

 俺にツッコミさせるあたり、色々溜まってんだろうなぁ。 吸血鬼ってサキュバスの要素を僅かに持っているって、破損したメモリに残ってるし、600年分の性欲とか尋常じゃないと思う。

 最近目力凄いのよ、もうピチピチのJK見たおっさん並のギンギン。 食欲満たせば性欲も静まるから色々頑張ったけど、そろそろ吸血や俺のハラミ、ロースじゃ抑えが効かない。

 

 「茶々丸ちゃん夕飯の買い物行こうぜ! ここは危険すぎて居られない!」

 

 「わかりました…」

 

 彼女にとっては主人の意に反する行為だが、流石にあれはヤバいと感じてくれたのだろう。 いや、ホント優秀な娘だわぁ。

 因みにエヴァンジェリンは刹那ちゃんとチャチャゼロちゃんが抑えてくれてる。 鳥族の力を開放して全力で剣を振るっているが、やはり強いな。

 チャチャゼロちゃんも意外と面倒見が良いよね。 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「にゃー!!!」

 

 「わんわん!!!」

 

 「あの、喧嘩は止めてください」

 

 茶々丸ちゃん、止めないでくれ。 今日こそはこのぬこを倒すって決めたんだ! てめぇ、いつもいつも茶々丸ちゃんから無償の愛を受け取ってんじゃねぇよ、マタタビ持ってくるぞ! にゃーにゃー鳴いて転がるだけで撫でられやがって、ポチなんて五月蝿いと言われて蹴られる始末よ!

 

 「にゃにゃ!(お前だ、いつもいつも脇から見ているだけで! 可愛がらない!)」

 

 「勝てると思うな、小僧ー!」

 

 「にゃにゃあ!(何を!)」

 

 くっ、コイツ…なんだ!? 急にニューなタイプの力を感じる!

 心無しかぬこの体毛に光が…。

 

 「まだ私の知らないぬくもりが内蔵されているというのか…!」

 

 「にゃにゃあにゃあ!(俺の身体をみんなに貸すぞ!)」

 

 『にゃあああああ!』

 

 むおお!? モフモフが、仔猫の大群が…!

 ポチ動け…! ポチ、何故動かんッ! 

 このぬくぬくから逃げられない!(ビクンビクン

 

 「にゃあにゃああああー!(ここから居なくなれぇ!)」

 

 「アオーン!?」

 

 昇天しました。 ぬこの肉布団最高です。

 だが、貴様の魂も持っていく、カミーユ・ぬこん。 がくっ。

 

 「にゃ?(なんだ、コイツ抱きついて…。 ぬくぬくが、広がっていく…)」

 

 「仲直り出来て良かったです」

 

 これが種族を越えたモフモフ愛の力です。 茶々丸ちゃん、理解出来ましたか?

 犬猿の仲とかあるけど、ポチと明日菜ちゃんは仲が良いしね。 例外は鬼くらいだよ、それも暴虐無人な変態金髪ロリ吸血鬼な奴。

 

 「あ、茶々丸さんだ!」

 

 呼ばれた方角には、寮に帰るところだったのか、ネギ君と明日菜ちゃんがいた。 君らも仲良いね、一緒に住んでるって聞いた時はまるで主人公みたいで羨ましくて羨ましくて…くそう、ちくしょう。

 とりあえず、木乃香ちゃんは刹那ちゃんの嫁だと釘を刺したから修羅場にはならないと信じる。

 

 「お二人とも帰りですか」

 

 茶々丸ちゃんが御辞儀をしたので、メイドモードのポチも真似ます。 ペコリー。

 

 「「あ、どうも…」」

 

 あれ? ツッコミなし?

 この姿に対して何の反応もないのは寂しんボーイ…。

 

 「えっと、貴女は…」

 

 はいはい、わかるよネギ君。 この姿に疑問なんでしょ。

 ただのごっこ遊びだから気にしないで。

 

 「エヴァンジェリンのメイドです。式子と呼んでください」

 

 今のポチは“とあ”でもない! ネタキャラ式子ちゃんよ!

 …なんか轢き子さんみたいな感じだけど、口から適当の出任せなのだから気にしないでおこう。 どうやらポチはネーミングセンスのないロボだったらしい。

 

 「式子さんですね。 いつも茶々丸さんやエヴァンジェリンさんにはお世話になってます」

 

 ヤwバwいw。 意外とネギ君がノリの良い子だ。

 わざわざポチのメイドごっこに付き合ってくれてる、じゃなきゃいつもみたいなタメ口になってるよ。 ならばポチも全力でお相手するぜ!

 えー、あーあー、カーッ、ぺッ! よし、喉の調子バッチリ。

 

 「あら、これは御丁寧に。 流石は英国の紳士ですね」

 

 「い、いえ! これぐらいそんな…」

 

 「エヴァンジェリンもネギ君の授業はとてもわかりやすいと褒めていました。 これからも頑張ってくださいね」

 

 頑張ってね、ネギ君。 おかげでポチは働かないで済みますから!

 手も握ってあげる。 草加スマイルもあげる。

 

 「あ、あああありがとうございます…」

 

 …てっきり、貴方も働いてくださいよ!って言われるのかと思ったが、そんなことなかったぜ。

 

 「ちょっとネギ! アンタなに顔赤くしてるの! いつまでも手を握っていない、失礼でしょ!」

 

 「す、すいません!」

 

 「此方こそ御免なさい。 過度なスキンシップでしたね」

 

 まさか明日菜ちゃんもノリノリとは…。 これじゃあ、止め時がわからない。 ツッコミ不在の恐怖。

 

 「では式子さん、僕らはこのへんで…」

 

 「はい。 また明日ですね」

 

 互いにズルズルとそのまま終了。 バイバイと手を振りながら去っていく二人を見て、なんか消化不良な感じ。

 何故だろう、嫌な予感がするが…まっ、いっか!

 

 「エヴァンジェリンも待ってるし、茶々丸ちゃん、帰ろう」

 

 「はい。 ですが申し訳ありません」

 

 え、何が? なんで謝るの?

 

 「私は心を持たないガイノイドであるため、このような場合どうすれば良かったのか、わかりませんでした…」

 

 「よくわからないけど、それは茶々丸ちゃんが知らないだけであって、ガイノイドは関係ないんじゃないかな」

 

 「そうなんでしょうか…」

 

 「今の茶々丸ちゃん見ると、普通の大人しい女の子にしか見えないんだけど」

 

 決まったあああ! ポチ決まったあああ!

 会心の台詞だったぜ、これで茶々丸ルート突入だ!

 

 「ありがとうございます。 …ですがなんでしょう、この残念な空気。 正直────はぁ、姉さんやマスターの苦労を感じます」

 

 なにそれ、なんか胸に刺さるんですけど。 心当たりありすぎて精神の回復追い付かない。

 茶々丸ちゃん? 白目剥いてますけど、本当に大丈夫?

 多分これ、あれだな。 茶々丸ルート開いてないわ。

 

 




Q・エヴァンジェリンの攻撃防いだ黒い玉は何?

A・ブラックホールです。非常に強力ですが、とあは放出系の攻撃が非常に苦手で消費が激しく、攻撃に使用する場合チャージに時間がかかり使えない、無駄に殺傷能力が高いなど欠点ばかり。
ぶっちゃけ殴ったほうが速い。







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