畜生先生ポチま!   作:お話下手
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エヴァンジェリン過去編終了です。まだ納得していない部分もあるので、後々肉付きが入るかもしれません。


誰しもが望んだこと

 最初に言っておこう。ナギは俺が出逢った者達のなかで、最も俺を扱わない男だった。幾度の戦場において、装備されたのはたったの一回。コイツ、実は俺のことを嫌いなんじゃないかと思ったこともある。

 

 昔、こんなことがあった。ナギが俺の所有者となって数刻した何時の日か。アイツは戦いの道具であるはずの俺を使おうとせずに、自分だけの力で敵を倒していた。毎回使え使えと言うのだが。

 強いくせに無駄に突っ走るものだから勝負に負けることがなくとも、その幼い身体にはいつも酷い怪我が絶えず、そばで見守っていた此方はヒヤヒヤしていた。ラカンと戦った時も、俺を装備しろと言っては無視をされ、勝敗を引き分けで持ち越した時は何れ程安堵したか。仕方あるまい、これが惚れた弱みというものだろう。

 

 折角、自ら望んで止まなかった素質を持つ者に出逢えたため、焦りもあったのか冷静を欠き詰め寄ったことがあった。苛立つ俺に対してナギが放った言葉はそっけなく。

 

 「俺はお前を使いたくねぇ」

 

 この糞餓鬼ぶん殴ってやろうかと思ったが、その後に続いた言葉に俺は現金なこと、すぐに怒りの火が静まった。

 

 「仲間の力ってのは使うもんじゃねぇだろ。貸したり合わせたりするもんだ」

 

 そして今。俺の中にはナギの力で溢れている。アマテルが生み出した仮契約のもと、俺達は繋がっている。たった十秒だが、質も量も規格外の魔力の奔流が限界を越えた俺の身体を奮い立たせる。

 ナギは今、自分を犠牲にして身動きが取れない、眠ることのない、呼吸することも出来ない地獄の中へ自ら投じ込んでいった。俺のせいで。

 アイツはそんな地獄の苦しみを味わい続けているというのに、俺は静かな日常のもと、みんなが与えてくれた光の中を生きている。恨まれてもおかしくない。ましてや力など、貸してくれるはずもないだろうに、ナギは俺に力を与えてくれた。自らを削る程の。

 だからこその十秒間、無駄には出来ない。これだけの魔力があれば、俺は鬼になれる。

 

 眼前に立つのは俺と同じ道を間違えてしまった男。ならばこの者、気持ちわかる。最早言葉だけでは止まらぬことも、引き返すことも理解した。

 男が望むのは自らの命を使い赦されること。だが、それは駄目だ。その行いこそがエヴァの重みになると気づいていない。自らの荷を彼女に載せるだけ。

 罪人に赦しはない。罪人は背負い続けなければならないのだ。故に、その重みは俺が持っていく。

 

 【ジェネレーターの出力を確認。システムアンロック】

 

 再び纏った鎧兜が白銀に輝いた。

 

 「出力フルドライブ!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「何故だ…」

 

 爺やは呻く。目の前の青年から溢れているのは仮契約による、主から供給される魔力。これほどまでに膨大な物はあの人物しか考えられない。英雄、千の呪文の男。この男が選んだ主だった。

 とあが何かを呟くと再び纏う白い鎧。しかし、それで終わりではなかった。眩い光と共にその姿を徐々に変化させていたのだ。

 無骨な西洋甲冑が装甲の形状を変化させ、中身を露出。配線のコードを僅かに覗かせ基盤らしき物さえも。本来防御として扱われる物を退かし、超々高速戦闘に邪魔となる物は全て収められた。

 そこに現れたのは銀に輝く鋼鉄の鬼。二本角が立ち、細身で洋から和へと変貌したその姿はまさに真逆だった。

 

 「何故そんなにも…!」

 

 揺るぎない闘志が吹き荒ぶ。先ほど爺やが彼に与えた痛みは渾身の物だった。自身、迫害によって受けたその痛みに耐えきれず折れ、恐怖した痛み。それすらも越える激痛を受け、何故この青年は立てる?

 痛みを知らぬはずの偽善者が何故だ。そして爺やはその答えを知りたかった。

 葛葉刀子の時と同じように、相手の血からその記憶、思考を読み取った。

 

 「なんだ、これは…」

 

 そこには答えがない。あるのは真っ赤に染まる風景、嘲笑のヒトビト、魔族が人を喰らう、陵辱そして。

 絶望してしまう程に巨大な、それこそ勝てないと思わせる惑星規模のおぞましい怪物が迫り来る様子。一つではない。何千、何万回目という“人生”、それぞれ違う場面がフラッシュバックのように脳を駆け巡る。時代も、星が産まれてから終わりまで様々な過去と未来。気の遠くなるような“メモリ”が刻まれていた。

 

 けして一言では語れぬ、果てしなき道。

 

 彼は普通の人間だった。何処にでもいる普通の学生。しかし、ある日を境が終わりの始まりだった。罪を被せられ、戦いに身を投じ、助けたはずのニンゲンから迫害され、酷使した肉体は限界を迎え、戦いが終わる度に肉は鋼に付け替える。肉体から人としての暖かみが無くなるごとに精神は廃れ、無機質になり、人間としての激情と機械としての冷徹が混ざりあい、外道に堕ちた。

 

 愛した者達を何一つ守れず、魔を憎み、魔に染まり、己が憎くて仕方ない化け物に変わってしまったことに恐怖する。

 

 畜生と成り果て、欲望の赴くままに喰らい、奪い、殺し、なぶり、犯し、絶叫と艶声がループするように繰り返された。

 

 「貴方は、一体…」

 

 爺やはわからなかった。目の前の青年は英雄ではなくただの悪党だったのだから。自分と同じ、人間を憎み魔を憎み絶望した男。

 

 「何故だ」

 

 故にわからない。自分と同じ、いや…自分以上の地獄と後悔を生きていたというのに何故光の中で生きられるのか。何故、まだ生きていたいと願うのか。

 

 「どうしてお前はそんなにも強いのだあああああ!!」

 

 「────────ッ!!」

 

 二匹の鬼が咆哮。式の兜に隠されたスイット状の獣の瞳が現れる。次の瞬間、その姿が消えた。

 そこにいる者達が目にしたのは、上空から拳の壁。本来、点として放たれる拳の攻撃は上から神速で打ち出され、覆い被さらんとする面としての攻撃だった。

 衝撃は周りを凪ぎ払い、まさに暴風。一陣の嵐が迫り来る勢い。

 

 最初に異変を気づいたのはエヴァ。

 

 「な、なんだ。空間が歪んでいく!?」

 

 次元を捻る破壊力。その拳から金色の粒子が溢れ、学園に張られている結界が音を発てて軋んでいた。真祖の吸血鬼を弱体化させる程の結界、それがただの殴打で壊されようとしている。

 

 「──────ッ!!」

 

 止まらぬ咆哮。金属の鬼は白銀の閃光となり猛攻を続ける。学園を覆う結界にヒビが入り、大地は爆散。吸血鬼の肉体は再生スピードが落ち始める。彼が破壊するのは肉体ではない、吸血鬼の持つ不死の因子その物。魔を滅する式神の力、かの本領が発揮される。

 

 「コイツでトドメだあああ!!」

 

 ラスト。踵落としが支柱を破壊。衝撃が粉塵の柱を作り出し、結界は音を発て砕かれた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「とあ! しっかりしろ!」

 

 「エ、ヴァ…」

 

 私が駆けつけた時、とあは真っ黒に焼け焦げ、荒廃した瓦礫の風景に倒れていた。兜は右目を覗かせるよう砕けており、両手足は消し飛んで達磨姿。生きているのが不思議なくらいボロボロだった。

 

 「怪我は…大丈夫なの、か? ごめ、ん。目が…見えない、んだ。身体も動、かない」

 

 「動かなくて当たり前だ! 私の心配より自分を心配しろ!」

 

 私の身体は吸血鬼の再生力で元の姿に戻っていた。恐らく、とあが結界ごと破壊したおかげで自身の力が蘇ったのだろう。

 

 「俺は、大丈夫だ。もう…死なないから。でも、ごめん…限界が近い」

 

 確かにとあの身体は僅かであるが、その肉体が治り初めているのがわかる。これはどういうことなんだ。

 

 「エヴァ、爺さんは…?」

 

 「奴は倒した。安心しろ」

 

 私の言葉にそうかと、力無く呟いたとあ。何故かその様子は悲しげだった。静かに身体を寝かせ、少しだけ彼から離れる。勿論、目的はクレーターの中心に横たわる敵、私の右手が断罪の剣で輝いた。

 

 「私を、殺しますか」

 

 そこには五体満足であるものの、刻まれた傷痕が再生する様子を見せない吸血鬼。憔悴しきっている表情だ。

 

 「ならば早い内が良いでしょう。もうすぐ私は終わります」

 

 死期を悟っているのか、奴の気配はかなり希薄になり、指先は灰色に染まり始めているのがわかる。

 

 「その前に答えろ。何故貴様は…いや、貴様達は私を吸血鬼にしたのだ」

 

 「言ったはずです。貴女を王に───「この期に及んでまだほざくか? 私に殺されるのが望みなのだろう。その意味を理解しているのならば言葉を選べ」───これ以上語ることはございません」

 

 何故だ、どうして私の周りの者達は秘密ばかり抱える。

 

 「それで良いのか」

 

 此所で真実を語れば貴様の罪を少しは軽くなるのかもしれない。だというのに。

 

 「きっと、それが一番私に相応しい罰なのです。貴女に討たれること自体甘えなのではないかと。罪人は背負い続け、逝くのみ」

 

 爺やの下半身が灰になり、崩れる。空は少しずつ明るくなり、雲の隙間から陽の光が射し込む。

 

 「トドメを刺す機会を失いましたね」

 

 「ならば、せめて最後だけ聞かせろ。貴様はこの600年間、何を思って生きていた?」

 

 「無論、お嬢様のことだけを。ただ、それだけを支えに生きました…」

 

 目を閉じて噛み締めるように語る。私を支えにか。貴様には生きていくだけの何かがやはりあったのだろう。

 

 「爺や。私は、とあ達に出逢うまでずっと、望まれた存在ではないと思っていたが、そうではなかった。少なくとも、一人の男には望まれていたのだな、600年も長い時を」

 

 とても長い時間だ。それを持ち続けたのは、並大抵の強さではないとわかる。爺やは安心したような、深い、それは深いため息をつき最後の言葉を口にした。

 

 「暖かい。太陽の光とは、こんなにも暖かい物だったのですね…」

 

 当たり前のように存在した陽の光は、600年もの間触れることなく避けてきた業火の光。降り注ぐそれを浴びれば爺やの肉体など瞬時に焼き付けてしまうが、何故かその身が燃え上がることはない。

 キラキラと儚く輝き、崩れていく。

 

 「馬鹿者がっ…」

 

 もう、そこに爺やの姿はない。山と積まれた灰だけが残された。

 

 別段、悲しくはない。だが、同時に憎しみもまた、消え去っていることに気づいたのはそれからすぐだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 【2003年】

 

 「次の日、怪我を完全に治して目を覚ましたとあは、記憶を失っていた。アイツが言っていた限界とは、恐らくこの意味だったのだろう。後に詠春から昔話をしてもらい色々記憶取り戻す方法を探ったが、どれも上手くいかなかった。私から言えることはこれで全てだろう」

 

 「結局、真相はわからないのですね。話しを聞く限り、ポチ先生と爺やさんの間に何か思惑があったのは間違いないようですが…」

 

 「もう過ぎた話しだ。その内、気が向いたらお前からも何か話してくれ」

 

 あの日以来、ポチがとあに戻ったのは一度だけ。幼い桜咲刹那とジジイの孫がピンチの時に救ったのは、やはりアイツだった。もしかしたら何か理由が隠されているのかもしれない。

 

 「エヴァンジェリンさんも複雑ですね。待っていた人がすぐそばにいるというのに…」

 

 「ああ。ポチ自身、思い出す気がまるでないおかげで、常日頃イライラしている」

 

 「もしかして、ポチ先生が度々喰われていると言っていたのは…」

 

 桜咲刹那が引きつった表情を向ける。ポチめ、大方同情を誘いたかったのだろう、バラしたな。

 

 「昨晩はモモ肉を喰った。おい待て何故逃げようとする、私はポチしか喰わんぞ」

 

 しかし、実際のところ吸血鬼は血だけが食事ではない。人間を家畜としか思わない吸血鬼は人肉を口にする。人間でさえ、血は飲まないものの豚や牛を喰らう。血を食せる吸血鬼ならば、なおのこと肉は美味に感じられるのだ。だからこそ人々から恐れられ迫害を受けるのも、ある意味では当然であった。

 

 「実際、アイツは美味い。脂身が少ないくせに筋肉質ではないから柔らかいんだよ」

 

 「うぷっ」

 

 吐きそうな顔を止めろ、いやだからなんで逃げようとする怖がるな。

 

 「だが最近では“疼き”が収まらない。ポチの使用済みストローや歯ブラシ、パンツを集め…止めろ、その携帯を仕舞え、110番に指を伸ばすな」

 

 「冗談ですよ、ね?」

 

 そうであってほしいと懇願するような涙目を向ける。何故だ、私はアイツの飼い主だぞ? 飼い主ならば犬の全権利を持っているも当然、アイツの物は私の物で私の物は私の物だ。

 しかし、桜咲刹那の指は未だに110番へ添えられている。くそっ! だんだんコイツからの扱いがポチと同レベルに感じるのは何故だ!

 年上に対する礼儀がなっていないが、ここで騒ぎを起こしてクラス中に笑い者扱いされたくない!

 

 「あー、なんだ、その。魔というのは欲望が密接している物だからな、これも私の中に眠る吸血鬼としての衝動を抑えるために必要な処置の一つであり、サキュバスとしての要素もある以上エロスを満足させるにはこういうこともしなければならないのだ、スマン自分でも何を言っているのかわからなくなってきた」

 

 「でしょうね。どうにかして言い逃れようとしていたのがわかります」

 

 なん、だと…!

 

 「あらあら、桜咲さん。あまりエヴァンジェリンさんを虐めては駄目よ?」

 

 ふと、柔らかい声がかけられた。椅子座ったまま後ろを振り向けば、にこやかに笑うしずなが其所に。

 

 「あ、しずな先生。実はエヴァンジェリンさんが、もがが…!」

 

 おいいいいい!? 貴様今何を言おうとしたあああああ!

 大体予想はつくが、あの話しを聞いた後にしずなへチクろうとするなど、卑怯だぞ!

 

 「と、ところでどうした!?」

 

 「実は学園長がポチ先生を探していてね。どこ行ったか知らないかしら」

 

 「ジジイがポチを?」

 

 また良からぬことを企んでいないだろうな。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 学園外れの辺境。世界樹のすぐそばでそれはあった。

 人の頭ほどの大きさを持つ卵形の岩。名前すら刻まれていない墓。一輪挿しの花が揺れる。鮮やかな赤が。

 

 「ここにいたのか」

 

 「ん? エヴァンジェリンどした?」

 

 ぽけーっとした青年が、墓の前で立ち尽くしているのをエヴァンジェリンは見つける。

 

 「そこのサルビア。お前が?」

 

 「うーん、見た時はもうあったよ」

 

 「そうか」

 

 エヴァンジェリンの声は、ちょっと嬉しそうな返事だった。彼女は知っている、彼が昔どんな男だったのか。ならば、この花に意味もあるのだろう。

 彼女が望む未来、もしかすると、すぐそばまで近づいているのかもしれない。

 

 「ジジイが探していたらしいぞ、また何かやらかしたんじゃないんだろうな…」

 

 「ちょっとぉ!? 何でもかんでもポチのせいにしないでよ!」

 

 口汚い喧嘩をしながらその場を後にする二人。サルビアの花弁は可笑しそうに揺れ続ける。それはきっと、誰しもが望んだ光景だったのだ。

 

 









ありがとうございました。
本来ならば爺やの独白が入り、もう少し長くなるはずだったのですが、ちょっと…表現がアウトではないかと思い、バッサリカット。エロ的な意味で。

一応此方に隠しながら途中まで載せます。まだ未完成の部分もあり、もしかすると表現変えて投稿するかもしれませんし、別に移るかもしれません。







おーけい?







 私は若い頃、奴隷だった。まだその昔、奴隷制度が出来ておらず人間に人間とは違う扱いを受けた。気まぐれに出された食事も大抵は傷んだ物か、水は泥だ。手足は骨のように痩せ、腹だけは無様に膨らんだ餓鬼。いつ死んでもおかしくない、そんな時出逢ったのが旦那様だった。
 あの方は貴族、それも王族の血を継ぐ公爵家であり、本来ならば私のような底辺の者に関わることなど一切ないはずだというのに、旦那様は私に手を差し伸べてくれた。命を拾ってくれたのだ。
 それから私はあの方に忠義を誓った。如何なる時もこの身を盾とし守り抜く覚悟を胸に刻んだ。

 屋敷は誰しもが暖かい者で満ちており、私の心を癒した。故にただ一生懸命に働き皆の力になりたいと生き続けた結果、気づいた時、私は世話係達の長となり、旦那様方の執事となっていた。

 奥様が第一子を出産なされた時は自分のように喜び、産まれになった赤子は顔立ちは奥様に、髪の色は旦那様似て、とても可愛らしい女の子だ。名はエヴァンジェリン。

 これからもこんな幸せが続くのだと思っていた矢先、奥様は亡くなられた。原因は不明の不治の病だ。悲しみはこれだけに止まらず、お嬢様さえ、奥様と同じ病の症状が見られた。守るべき者を守れず旦那様に恩返しも出来ないと打ちしがれた私の前に現れたのは、一人の幼女らしき人物。丁度、エヴァンジェリンお嬢様と同い年ぐらい。

 こじんまりとしたその肉体は正しく幼子だったが、何故か私は彼女を老婆のように見えてしまった。フードを深く被り、僅かに覗いた顔立ちがどこかお嬢様と酷く似ている。そんな彼女が当たり前のように屋敷に現れ、ニタリと笑いながら私に耳打ちしたのだ。

 「御主、エヴァンジェリンを救いたくわないか。無論、旦那様とやらには内密になぁ…」

 それは悪魔の囁きだったのかもしれない。冷静な判断が出来なくなっていた私は彼女に言われるがままに付いていき、たどり着いた場所は無人の見知らぬ屋敷。

 「これから会う者はな、御主の大切なお嬢様の病の正体を知り、更に克服する術も持っている男だ」

 医者か魔法使いか、或いは祈祷師だろうか。

 「だが、私はその男に会うことが出来なくてな。別件で会いたいのだが、そこで御主に手伝ってほしい」

 「説得でもしろと?」

 「いや。ただ門を開けるだけで良い」

 そんな簡単なことで良いのかと疑問に思ったが、ここまで来て引き返すつもりも私には到底なかった。彼女と共に屋敷へ入る私。言われていた門だけではなく、必ず扉さえも私が開けることになり、彼女はただ私の後を付ける。扉自体に何か仕掛けがあるわけでもなく、屋敷の中は無人の割に綺麗に清掃されていた。

 「此方だな。奴がいる」

 彼女が指差したのは地下への道。蝋燭が灯されるだけの真っ暗闇な螺旋階段を降りていき、ほの暗い底から何とも言えない悲しみと恐怖が押し寄せていた。足を進める度に、私はとんでもない間違いを犯しているのではないかと不安になり、すぐにそれは的中してしまうのだ。

 「思った通り、やはりマギめ。中だけでなく、外からも封印をかけるとは…」

 彼女の指定していた門へたどり着いた。巨大な複雑怪奇な術式が刻まれた、明らかに開けてはいけない門であると理解してしまう。

 「ほ、本当に大丈夫なのですか…!」

 「安心するがいい。御主に被害はない。それよりも、開けぬとお嬢様は助からんぞ?」

 それは卑怯な言葉だった。渋々開いた門、見た目とは裏腹に軽く出来ており、特に何か結界が張られているのでもなかった。いや、きっと…彼女に対してだけの結界が張られたに違いないのだ。私がそれを開けてしまっただけで。

 「なんだ、あれは…」

 其処には人間などいなかった。中央の魔方陣の中に鎖に縛られた、一匹の半獣。黒い体毛が生えかけた、人間の形をした人間ではない獣がそこにはいた。青年の顔立ちをしているが、犬歯が伸び、瞳は血走りながらスイット状に立ち、爪が鋭い青年が全裸で唸る。
 歯茎の隙間から涎を垂らし、睨み付けていた。

 「あはははははは。 漸く逢えたなぁ!? この時を待ちわびたぞ─────。お前にどれだけ逢いたかったかわかるかっ」

 彼女は豹変した。頬を赤く染め、だらしなく口元が緩み、しかしながら目だけはギラギラと強め、それまでの老婆の雰囲気は霧散していたのだ。
 絶句した私を前に何を考えているのか、彼女は全身を覆っていたローブを脱ぎ捨て、その下には何も履いておらず全裸になってしまった。

 「な、何を…!」

 「あ? あぁ、済まない。ちょっと待ってくれ、事が終わったらな」

 一瞬、身を切るような殺意を向けられたが、すぐに返事を返す。しかし、それはどこか適当にあしらわれた感じであった。
 お嬢様と同じくらいの幼女と獣が重なり合う。もう、その先は…恐ろしさのあまり目を背け、耳を塞いでしまう光景だ。

 「ん、じゅる…。こんなに────が溢れてるぞ、相変わらず大きさは並みのくせに量だけは凄いな」

 幼女は獣の股に頭を埋め、壊れてしまうのではないかと思うくらい───────。美しく可憐な彼女の顔は──に歪め、発情した雌のように鼻息荒く───を───た。

 獣は───────────。────────、────────────。

 「ごぼぉ! んぼお!」

 【中略】

 私は嘔吐した。彼女の姿はお嬢様と何故か重なってしまい、自らの大切な者が汚されたような気持ちに駈られたから。

 「ああ…。 そうだ、良い…! もっと、もっと滅茶苦茶にしてくれ!」

 馬桑っている。

 【中略】

 「これが、これがずっと欲しかった! 冷徹なお前に、野獣のように求められたかった! んあ、愛されたかった!」

 私はその場から逃げるよう離れる。

 【ちゅーりゃーくー】







 はい、アウトですね。あれがこうなって、あれがそうなって、あれがなってしまったので。

 爺やの心情を混ぜながら、ちょいちょいポチの過去を仄めかす内容だったのですがやりすぎました。
 アマテルさんは、エヴァンジェリンと異母姉妹なのでこの爛れた関係は昼ドラ並み。アマテルさんは修学旅行あたりで本格的に登場します。…その前にネギ対エヴァンジェリンですね、コメディです、はい。








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