畜生先生ポチま!   作:お話下手
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仏教の六道についての話しですが、私なりのアレンジが入り、実際とは異なる部分がございます。俗に言う、だいたい合ってる。



【第三章】紅き翼編
エヴァンジェリンとまほらっしー


 

 桜通り、深夜。

 

 「おや、お嬢さん。こんな夜更けに出歩くとは、危ないな」

 

 「ふぇ? だ、誰?」

 

 ふむ、佐々木まき絵か。同じクラスメイトに対し、少々罪悪感があるが仕方あるまい。ほんの少し血は分けて貰うだけだ、せいぜい貧血程度ですむ。

 それに、旨そうだしな。一度吸ってみたいと思っていた。

 

 「そんな悪い子は、襲われても知らないからなぁ…!」

 

 「きゃあああ!?」

 

 あはは! 愉快、愉快。私の中にあるサディズムが満たされていく!

 

 「待てぇいいいいい!!」

 

 突然、茂みから叫び声が聞こえ、丸くて、ずんぐりむっくりな着ぐるみが現れた。

 

 「淫獣ゆるキャラ、まほらっしー参上らっしー!」

 

 「あ! まほらっしーだ!」

 

 「さぁ、此処はまほらっしーに任せて早く逃げるらっしー」

 

 「ありがとう!」

 

 ちっ、逃げられたうえに面倒なバカが現れたな。佐々木まき絵が離れたことを確認してからずんぐりむっくりに近寄る。

 

 「おい」

 

 「らっしー!!」

 

 「何をしている」

 

 「らっしー!!」

 

 「いい加減その気持ち悪い着ぐるみを脱げ」

 

 「ら、らっしー!!」

 

 「氷爆」

 

 「ちょっ、やめ───血飛沫ぶしゃああああ!?」

 

 着ぐるみごと爆散し、桜通りは血溜まりと臓物が転がる地獄絵図とかす。くそっ、思わず所持していた魔法薬が残り僅かしかない、かなり消費してしまった。

 

 「エヴァンジェリン! マスコットを殺害するなんて、どういうつもりよん!」

 

 文句を言いながら再生し、全身素っ裸で現れたのは、やはりポチ。

 

 「それはこっちの台詞だ! 何故邪魔する!」

 

 これはボウヤを襲撃するために、必要なことだとバカにでもわかるはずだ。ましてやお前が邪魔するなど。

 

 「ふふん。実はポチ、学園長から頼まれたんだよ。最近桜通りの吸血鬼(笑)がいるみたいだから調査、或いは妨害してほしいって」

 

 「その(笑)はお前が付けたのか? それともジジイか?」

 

 「い、言えるわけないじゃん!? 二人ともって言えるわけな──「氷爆」──血飛沫ぶしゃあああああ!!」

 

 その様子だと、どうやらジジイも気づいているみたいだな。なるほど、この前探していたのはそれを頼む為だったのか。

 

 「全く。何故お前はそれを了承したんだ、私が呪いから解放されたいのは知っているだろう」

 

 千の呪文の男がコイツとの仮契約で生きているとわかっているが、もう何年経とうが戻ってくる様子を見せない。約束を果たされていないのに、こんなに待ったのだ、いい加減痺れを切らす。それでも妨害するのは…。

 

 「…まさか、何か理由があるのか?」

 

 「勿論、エヴァンジェリンが出れるのにポチだけ出れないなんて不公平だか──「氷爆」──またかあああ! またこの展開かあああ!!」

 

 深読みした私がバカだったよ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「…というわけで、エヴァンジェリンがネギ君狙ってるからね」

 

 「完全に僕、とばっちりじゃないか!?」

 

 父さんと貴方の尻拭いに死ぬまで血を吸われるなんて、あんまりだ! 前々から色んな人に聞いていたけど、本当にこの二人は周りに迷惑をかけていたのがわかる。ぼ、僕の父さんのイメージが、だんだん壊れて…。

 

 「って、何をしているの…」

 

 「んー? いや、ちょっとね…誰に頼むか迷って…」

 

 難しそうな顔でA組みんなの顔を、ジッと見つめている。

 

 「ネギ君、学級日誌出来たよ」

 

 和泉亜子さんが日誌を持ってきた。今日の日直であったため、簡易な報告が書かれている。

 

 「ありがとうございます、亜子さん」

 

 ハニカミながら軽くお辞儀をして、アキラさん達の下へ向かう。こうして少しずつ皆さんとの距離が縮まっていると、安心した矢先にこの問題だ。どうにかしないと。

 

 「ポチさん、亜子さんってギター引けるみたいだよ。今時の日本人らしいお洒落な女の子って感じがするね」

 

 「おい…。あ? 亜子ちゃんが今時の女の子だと? ネギ君の目は節穴か? あの子からは素晴らしい素朴オーラが滲み出てるのがわからねぇのか? あ?」

 

 なんで怒ってるんだ。時折意味不明な拘りを見せるから、どこで地雷を踏んだか全然わからないよ。

 

 「それより、この後の授業任せて良いかな? 僕、明日の小テストの準備したいから」

 

 「えー、面倒だなー。ポチがテスト作ろっか?」

 

 その結果、保険体育だけの問題を作って周りからリンチにあったのを、もう忘れたのかな? この人、基本的に働かないから全ての作業を僕にやらせているし、また痛い目にあったほうが良いかもしれない。

 

 「…すんません」

 

 「英語じゃなくて総合だからポチさんでも大丈夫だから。ちゃんとやってよ?」

 

 「了解だぜ、ポチの得意分野で攻めるから!」

 

 サムズアップに不安を覚える。…やっぱり失敗だったかなぁ。最近胃が痛い。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「今日は皆さんに、六道についての授業をしたいと思います!」

 

 『……』

 

 え、何…その、またか。みたいな顔は。

 

 「この前は平行世界の話しだったわね。ま、私は楽だから良いけど」

 

 明日菜ちゃんはテストと全ッッッく関係ない話しだから、呆れながらもちょっと嬉しそう。まぁ、これはポチが厨二知識を広めたいだけの物なんでぶっちゃけ人生には役に立たない。

 千雨ちゃんとか本読み始めてガン無視。平行世界の授業はあんなにぶつかりあったじゃないか!

 

 「もっと熱くなれよッ!」

 

 「喧しい!」

 

 ちうたま、怖い。

 

 しかも千雨ちゃんだけじゃないな、他の人はゲームしたり漫画読んだりしてる。学級崩壊の危機も近いな。因みに前者はエヴァンジェリンだったりする。

 いいもーん、wikiってきたこの浅知識でみんなを驚かしちゃる。

 

 「六道は所謂人生状態で三種の善、三種の悪に別れている、個人の道筋を大まかに示しているものみたいなんだ」

 

 感情がある存在ってのは大体悪か善に分かれる。エヴァンジェリンは悪人(笑)なので、立ち位置はかなり微妙だが、まぁ善としておこう。

 

 「おい、後で覚えておけ」

 

 「前言撤回! ポチ限定の悪だ!」

 

 話しを戻そう。道筋といってもかなりテキトーだから悪の道だからといって悪業を犯すわけじゃない。ただ、その分試練や苦しみがあるってこと。

 悪の道で苦しみを受けようと、それに屈せず善の人生を歩み、カルマ、つまりは罪は洗い流され次に生まれ変わった時、善の道に昇華する。

 

 「善の道は楽な人生を歩めて幸せも受けられるらしい。しかし、だからといって堕落し罪を犯してしまえばカルマを背負い、次に生まれ変わった時には苦しみが待ち受ける悪の道を歩むことになる」

 

 「なんか、難しそうな割には子供に言い聞かせるような内容ね…。悪いことをすればバチが当たるって言ってるような物じゃない」

 

 明日菜ちゃんの言うとおり。もしかしたら六道は昔のお母ちゃん達が、子供の躾用に作り上げたデタラメって、線もある。

 確固たる証拠がないし、宗教作りたかったどっかの人間が便乗して広めた物かもしれない。

 

 「そうだとしたら、中々間抜けな話しですわ」

 

 あやかちゃん、マジかよ。珍しく明日菜ちゃんと意見が合ってやがるぜ。

 

 「じゃあ、次は…三種の善と三種の悪について」

 

 善には更に分けて天、人間、修羅の三つ。天、つまりは天道は上位種が歩む道。苦しみがもっとも少なく楽ばかりの生だが、煩悩はけして無くならないので罪を犯しやすい。

 

 「結果、天道は長続きしにくい、ぶっちゃけると一番バカっぽい人生だ!」

 

 「ポチにぴったりね」

 

 明日菜ちゃん酷い。だが、そこが良い!

 

 「えー、次は修羅道。これは戦いばかりの人生だね」

 

 善の道の中で肉体的にもっとも苦しみを味わう。けれども楽しいことや幸せもあるから主人公らしい人生と言える。ネギ君はこれの素質があるわ。学園生活という戦いに身を置いている。

 

 「ぶっちゃけると一番格好いい人生。ガンダムの主人公とか大体こんな感じ」

 

 カミーユ? 聞こえんなぁ。

 

 「またそういうことを…」

 

 エヴァンジェリン、ゲームしないの?

 

 「善の道、最後は人間道」

 

 まぁ、ほとんどはこれだね。病、生、死、老、これらに常々苦しまれる人生。悩み、迷う道。一番精神的にキツイ、社畜やママカーストとかこれだわ。マジ死ねる。

 

 「でも良いこともちゃんとある。結婚とか───奥さんに逃げられる可能性があるけど」

 

 「…それは良いことなのか?」

 

 エヴァンジェリンには一生関係なさそう。

 

 「友達とか…」

 

 「ぼっちはどうなんですか…」

 

 ちうたま、自分で自分をディスるのはお止めください。周りがドン引きしてます。もはやぼっちではないレベルで心配されてる。

 あれ、目の前が霞んで…。

 

 「じゃあ次、三種の悪」

 

 まずはそうだな、餓鬼道かな。生前において強欲で嫉妬深く、物惜しく、常に貪りの心や行為をした人が死んで生まれ変わる世界とされ、結果、次の人生では飢えに苦しむ。手に入れようとしても満たされず、手に入れてもすぐに失ってしまう。

 

 「餓鬼と呼ばれる妖怪の姿が腹だけ膨れ上がり、手足が痩せているのはクワシオルコルの病気からイメージされたらしいよ」

 

 「なるほど、そういうことでしたか」

 

 刹那ちゃんとか、退魔関係で見かけたことがあるかも。リリス新作品、対魔剣士セツナ。ヌルヌルヌチャヌチャ…おっと、これ以上は止めておこう。夕凪の気配がしやがる。

 

 「次は悪の中でもっとも恐ろしい道。地獄道について」

 

 「明らかにヤバい名前ね。地獄なんて大雑把な名前だから逆に想像つかないわ…」

 

 実際、地獄と言っても数種類あるからね。焦熱地獄、極寒地獄、賽の河原、阿鼻地獄、叫喚地獄、どっかで聞いたことのある単語がチラホラ。

 地獄道は他の道とは違い、人生というか、死んだ後の罪を償うための世界だからね。即ち、罪を償わないと転生も出来ない、罪と密接している道でありながら罪を行えない道と言える。意味深だ。

 

 「みんなの思い描く天国地獄そのもの」

 

 「そして最後は、畜生道か…」

 

 今回初めて喋ったタッツー。…何故にポチを見るの。そりゃ、犬畜生ですがね、こんなのただのニックネームよ?

 

 「畜生道はね、ちょっと説明が難しいかな…」

 

 簡単に言えば愚痴ばかりで感謝もしない愚か者は死後に畜生に生るとされる。ただひたすら食事、睡眠、淫行を求める本能だけで生き、使役される存在になってしまう。ペットとか使い魔とか。…平賀才人、おめぇにピッタリだぜ。ルイズはポチの嫁。

 

 「なんかそう聞くと、あんまり地獄道や餓鬼道と変わらないじゃない」

 

 いやん。明日菜ちゃんがルイズに嫉妬するかと思ったのに、そんなこと全く無かった。

 

 「違うな、神楽坂明日菜。畜生道には他の二つとは決定的に違う罪がある、それがあるかないかでハッキリ分かれるのだ」

 

 あれ、エヴァンジェリンも六道について知ってたの? 600年も生きるババアだから当然か、闇の魔法に関係する太陰道についても知ってるし。

 あ、でも…流石にそれは言わせないほうが良いな、

 

 「畜生の最大の罪、それは───「えーと、このようにカルマによって人生が変わるんだけど、逆にカルマを持たないと輪廻転生の環から外れるんだ」───っ」

 

 「感情がある限り、カルマがないということはないと思いますが」

 

 うむ、せっちゃんの言うとおりやでぇ。

 

 「そうだね。無我の境地なんて普通では辿り着けないよ」

 

 普通だったらだ。一応感情がない存在はいる。例えば機械とか事象とかね。

 

 「輪廻の環から外れるとどうなるんですか?」

 

 「それについては私が説明しよう」

 

 エヴァンジェリン、ノリノリだ。いつの間にかみんなも食い入るように聞いてるし、今回の授業は成功だぜ。

 

 「輪廻から外れるということは、生命体としての存在から外れることも意味してる。或いは不滅、或いは不死。世界の理から外れる者は場合によって、こう呼ばれることもある、神と」

 

 神ねぇ。さっきも言ったけど、無我の存在である機械が神になるとしたら、あながちデウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)も存在してそうで怖いな。

 お、良いタイミングでチャイムが。

 

 「みんな、この授業は絶対にテストで出ないので、完全な無駄です! お疲れ様でしたあああ!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「おい、何故畜生道の説明に割って入った」

 

 「いやいや、流石に中学生相手にまずいでしょ。つーか、エヴァンジェリンが六道に詳しかったのが驚きなんだけど」

 

 「昔な、教えられた…」

 

 ふーん、表情が優れないあたり、あまり良い話しじゃなさそうだねぇ。

 

 「しかし、別に教えても構わないと思うがな。中学生とはいえ、アイツら賢い。意味を知ってる者や逆にそういうことを気にしない」

 

 「えー、そうかなぁ」

 

 「寧ろお前ならば率先して語ると考えていたがな。お兄ちゃん大ぁ好きー!とかで」

 

 「ぶほほほほほ!?」

 

 何今の! 妹キャラ似合わないにも程がある!

 

 「ふむ。妹キャラか、その発想は無かった」

 

 どうしても親子の考えが浮かんじゃうのは何故だ。

 

 

 

 

 

 ───畜生道の最大の罪、それは近親相姦だった。

 




本当なら人間道以外は人外の存在らしい。そして、人間道は一度しかなれないようです。様々な説があるので、興味がある方は調べてみましょう。

短くも今年最後にうp出来て良かったです。それではこの辺で。







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