畜生先生ポチま!   作:お話下手
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主人公
名前・とあ?
通称・ポチ
特徴・不老不死、学園から出られない、紅き翼の知り合いっぽい、記憶喪失


ポチの日常

 【1983年】

 

 「ねーねー、ラカン」

 

 紅き翼の隠れ家前。 朝日が昇り始めた時、千の呪文の男ナギ・スプリングフィールドが王女アリカに騎士としての誓いを建てる。

 荒れ果てた大地に美男美女が神聖な儀式を行うその姿は、闇に差し込む一筋の光のように美しい。 だがその最中、間延びした間抜けな声が響く。

 

 「おう、どした」

 

 紅き翼のリーダーナギと同等の実力を持つ、褐色肌の筋肉巨漢ジャック・ラカン。 ナギ達に向けていた目を呼んだ相手、即ち間抜けな声の主に向き直った。

 その人物は声質から二十歳前後の青年を思わせる、姿は頭から爪先にかけ隙間なく全身を鋼鉄の鎧兜に包まれており表情は一切は見えなかったが、間抜けな声と裏腹に空気が張り積めるような雰囲気を放っていた。 周りのメンバー達も何事かと視線を浴びせるが…。

 

 「俺、前々からアリカちゃんはブレザーでテオドラちゃんはセーラー服だと思っていたんだよね…」

 

 絞り出した声。 まるでそれは推理物語終盤で真犯人が動機を説明するかのような口調で、周りのメンバー、特にラカンとアルビレオ、ナギは衝撃的な真実を知ってしまったような顔をした。

 どうして僕達はそんなことに気づかなかったのだろう。 アルは顔を青ざめ額に手を当て、ラカンは拳を荒野に叩きつける。

 

 「おい」

 

 アリカ姫がなんか言っているがそんな場合じゃねぇ。 ナギはこの重大な真実を重く受け止め、気持ちを落ち着かせながら真っ正面に鎧男へ称賛の言葉を差し出した。

 

 「───今までで一番良いこと言ったな」

 

 「お前には言われたくないよ!」

 

 「どうでしょうね、この前はロリに興味ないとかふざけたことを仰っていましたし」

 

 「ロリコンのアルまで…! だいたいね、あんなつるぺたのどこが良いんだよ! 原種のエロスが母性であるようにこの世はオッパイが至高なんだ、OPPAI! OPPAI!」

 

 腕を振り回す鎧兜。 アリカ姫のいかりのボルテージがあがった!

 

 「でもよ、それならセーラーのテオドラはどうなるんだ。 コイツペッタンこだぞ」

 

 ナギの言う通り、テオドラはまだ幼い。 ピチピチどころかプニプニのロリである、しかし、それは輝かしい未来が約束されていれば話しは別。

 

 「ペッタンこ言うな! あとセーラーのテオドラとか二つ名みたいだからやめろ!」

 

 とりあえずテオドラはスルー。 大事なのはロリであり続けるかの話しなのだ。

 

 「テオドラちゃんは期待出来るから良いんだよ。 アル君が好きなのはロリババアでしょ、無いわー。 そんな奴絶対いないし、妄想と現実を混ぜないでください」

 

 「いえいえ、私と貴方のような存在もいるのです。 きっとロリババアはいます、なんなら賭けますか?」

 

 「上等! じゃあ30年くらいで良いか、それまでに見つからなければ何でも言うこと聞いてね!」

 

 「では私は…。 貴方にはナギではなく私の犬になってもらいましょう」

 

 「おいいい! いつから俺はアイツのペットになったの!」

 

 「おや、巷では鋼の名犬ポッチーと呼ばれているのをご存知ないと?」

 

 「嘘つき! 絶対今考えただろ、古本! 女か男かわからない顔しやがって!」

 

 「貴方は鉄仮面みたいな顔してますね。 マザコン……おっと、鉄仮面は余計でしたか」

 

 「鉄仮面みたいな顔じゃなくて鉄仮面だよ! マザコンも余計だわ!」

 

 ガトウがナギの肩に手をかける。 あれどうにかしろ。

 この中で一番鎧の青年と付き合いが長いナギだが、冷静なアルビレオならまだしも無駄に堅い、無駄に早い、無駄に強い相棒を止めるのには骨が折れる。 ぶっちゃけめんどくさいので、自分に似た性質、好きなだけ暴れさせて疲れさせるのが一番楽な対応だと知っていた。

 ので、無視無視! ほっとこうぜ!

 

 「いつか貴方とはぶつかる時があると思っていましたが…。 仕方がないですね、ここで決着を付けましょう」

 

 口喧嘩もヒートアップしていよいよ肉体的解決に移りだした。 前から二人は巨乳か貧乳、熟女か幼女、オッパイかお尻、ショートヘアーかロングヘアー、褐色か色白、その他挙げてはキリがない属性で度々対立しあっている。

 

 「あれれ? やる気? 良いの? エロスだったら最強だよ俺? 重力使いなんて瞬殺だよ?」

 

 コイツボコッちゃう?…と言わんばかりに舐めた様子でファイティングポーズを構えた。 対するアルビレオは自然体だが、その口元はひくついている。

 

 「グーパンしか能がない鉄屑にやれますか?」

 

 「あ、てめ! それ禁句だろぉ!? 次いでに言うと“劣化ラカン”とか傷付くからな!?」

 

 「フッ…」

 

 アルビレオの嘲笑が合図だった。 瞬時にその場から姿を消した両者は荒野に無数のクレーターを次々と作りながら衝突し合う。

 

 「全く、どちらも本気じゃないか…!」

 

 青山詠春の嘆きは二人に届かない。 ガトウとタカミチのおかげストーパー役は間に合っているが、いなかった次期は本当に地獄であった。

 ナギとラカンは何でもかんでもぶっ壊し、アルビレオととあは色んな意味でアレだ。 おかげで体重激落ち、頬はこけ、京都の彼女に会いたいとマクラを濡らす毎晩。 

 ストレスで胃がキリキリ痛むが、そろそろ二人を止めなければならない。 だってアリカ姫から殺気が立ち上っているから。

 あれはヤバい、マジでヤバい。 好意を抱いているナギとの神聖な儀式を下らないことで邪魔されたのだ、心無しか細い両刃剣がラカンの斬艦剣並に巨大化しているような…。

 

 「むん!」

 

 アリカ姫が構えを取った瞬間、余波で暴風が吹き荒れる。 幻じゃねえええ!?

 本物の大剣だ! 姫様何してんの! てかどうやったの!?

 

 「アリカ・バスター」

 

 無情の必殺技が前方の変態に放たれ、剣の腹でハエのように叩き潰された二人は大地に埋まった状態でそのまま動かなくなった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 【2001年】

 

 「バスタアアアアア!」

 

 「うぉ! いきなりどうした!?」

 

 明朝、突然意味不明な叫び声をあげたポチはベッドから飛び起きる。 同じく隣りに眠っていたエヴァンジェリンも驚きで一気に覚醒し、そのまま転げ落ちた飼い犬に言葉を投げ掛けた。

 

 「クッ、今…俺の封じられし記憶が蘇りそうになったが…!」

 

 「何! それは本当か!」

 

 記憶が蘇る、その言葉にエヴァンジェリンは顔色をパァと光らせ、ポチに詰め寄るが何故か本人は彼女の顔を間近で見た瞬間絶叫する。

 

 「ぎゃあああああ! 出たあああああ!」

 

 「人をお化けみたいな風に言うな!」

 

 「げふぅ!?」

 

 捻りの入った拳が顔面に突き刺さり、一撃KO。 気絶したポチにエヴァンジェリンは足でゲシゲシと踏みつけながら無理矢理起こした。

 

 「おい。 駄目犬、起きろ」

 

 「うぅ…。 今の衝撃で全部忘れてしまった…」

 

 「何ー!?」

 

 「その代わり、今日刀子ちゃんと合コンの約束していたのを思い出したよ」

 

 「どうでも良いわ! ──いや、ちょっと待て、どうでも良くない!? そっちはそっちで大問題だ!」

 

 「ふぃー、危ない危ない。 危うく約束をすっぽかしてしまうとこだった」

 

 「貴様、私との“向かえに来る約束”を忘れておりながら…!」

 

 「ひぃ! ごごごごめんなさい! でも俺だって行く気がなかったんだ! 人数合わせにどうしてもって言われて!」

 

 「ちっ…。 しかし、前から思っていたが奴はお前に気があるんじゃないのか?」

 

 「まっさかぁ! だって普段はお前と俺みたいなことしかしてないんだよ?」

 

 斬られたり殴られたり、この前はくぱぁしてくれた。 縦に。

 

 「……」

 

 「あ、刀子ちゃんからメールだ……え、ナニコレ」

 

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 From:刀子ちゃんのパンスト欲しい

 Title:教員連絡と合コンについて

 

 おはようございます、今日も良い天気ですねポチ先生。 私は今朝剣術の稽古も兼ねて5時頃に起床し、軽く汗を流した後シャワーを浴びて、日が昇ると共に寝る前洗濯していた洋服を干しました。 柔軟剤はとても触り心地が良いので好きなのですが、やはりタオル類には使用しないほうが良いですよね。 肌には優しいでしょうが、私としてはカラカラに乾いたタオルでしっかりと水気を取らないの気持ちが悪いので後者を好みます。 しかし、昨晩浸入者の撃退になかなかどうしてか苦戦したせいか、帰宅後は何もしたくない気分てしたのできちんと確認しないままタオルや洋服をまとめて柔軟剤を使用してしまったのです。 おかげでタオルはフワフワですが────。

 

 「…刀子ちゃんが旦那に逃げられた原因はこれか。 怖いね」

 

 「…ああ、怖いな」

 

 一万字越えちゃってんだけど…。 なんか文章は優しいのに暗黒面が見えるというか、むしろ優しいからこそなのか。

 どちらにしても想いが重い。 恐らくほとんどの内容は本題と関係ないと思うので、最後まで跳ばす。

 

 ──実は今日の合コンなんですが、残念ながら私以外の男女からドタキャンを受けてしまい。 私達だけとなってしまいました。 もしよろしければどこかで食事でもどうでしょう? あ、別に デ ー ト なんかではありませんよ? 丁度良いお店も見つけたので急なお誘いを受けてくれたお詫びとしてです。

 

 追伸・最近、学園内で露出狂が現れたそうです。生徒達に注意を呼び掛けてください。

 

 

 

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

 

 

 

 「おいいいいい!?」

 

 「いやああああ!?」

 

 「間違いない! これは罠だ! 刀子の小娘、奴は最早なりふり構っていないぞ!」

 

 恐怖である。 生物が持つ本能的な警報を鳴らす寒気、そして痙攣。

 エヴァンジェリンの言う通り、今までの流れは全てこの瞬間の付箋だったのだ。 丁度良いと書き込んでおきながら、これはどうみてもあらかじめ用意していたのは丸わかりであり、わざわざデートの単語を残しているところが此方を意識させようという魂胆に違いない。 更に今回は事前に予定を入れられているため、実は用事が……の作戦も使えない。 完全に退路を防がれちゃってる!

 震える指先でメール削除を選択する。 これは見なかったことにしよう、見ようとしたけど間違えて消しちゃったテヘペロで本人に言えばきっと許してくれる。

 次にあった時はいつも通りに、キツいこと言いながらも相手をしてくれる綺麗な刀子ちゃんになっているはずだ。 だがその幻想は、手元にあるケータイに着信が入ることで打ち砕かれた。

 

 「いやあああああ!? 刀子ちゃんだあああああ!」

 

 ガチ泣き絶叫。 どうする、ここは素直に出るべきなのか? それとも気づかないフリをするべきなのか?

 どうしよう、このままじゃポチ、身を固めることになっちゃううう!

 

 「…恐らく、電話に出ずとも向こうからやって来るだろう」

 

 「だよねー。 じゃあ、意を決して…」

 

 指先を動かそうとしたが、エヴァンジェリンの小さい手が添えられ止められる。 手と手がふれあったー、そのしゅんかんー、はじめてきづいたー、このきもちー。

 

 「待て。 ここはデートを受けるのではなく敢えて合コンに誘え」

 

 「え? 合コンは無くなったんじゃ…」

 

 「要は合コンする奴らが集まれば良い。 今度は此方から用意するんだ、とっておきの生け贄をな」

 

 うわぁ、悪い顔だなー。 良い提案だけど、合コンに来てくれる人達か…。

 俺の人望でわざわざ集まってくれる人なんていないんだけど。 だいたいは何か企んでいないかと勘繰られる。

 ん、いや…ちょっと待てよ? あの子達なら頼めるかもしれん…。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「御待たせしました、御主人様! 此方オムライスになります! メッセージは何がよろしいですか?」

 

 「私はポチのペットです! これが良いです!」

 

 「とあさん、生徒達の前でそれは止めたほうが…」

 

 さぁさぁ始まりました合コン。 主催は勿論、A組のマスコットポチこと、私とあ。

 男性側は俺とタカミチと、“男性に変装”した長瀬楓ちゃんと龍宮真名ちゃん。 いやー二人とも見事だねー、かっこいいねー。

 タッツーはお金で受けてくれて楓ちゃんは今度手合わせしてくれた良いとのこと。 …どっちにしろ痛いな。

 無論、生け贄はタカミチです。 誘ったら喜んで参加してくれました、良いのか? ホイホイついて来ちまって。

 言っておくが、ここには逃して離さない肉食系BB(ry─女子、刀子ちゃんがいるんだぜ。 まぁ安心しろ、しずなちゃんは俺が貰うから(ゲス顔)

 駄菓子菓子、問題は女性側なんだよなー。 

 

 「さ、桜咲刹那です。 宜しくお願いします…」

 

 「近衛木乃香やで。 よろしゅうなぁ」

 

 「神楽坂明日菜です! 高畑先生がくると聞いたので参加しました!」

 

 「葛葉刀子です」

 

 …おかしい。 9割がA組関係者とか絶対おかしい。

 男性側を用意したのは俺だが、女性側はエヴァンジェリンが用意した。 一体何考えてるの…。

 そして刀子ちゃんの落ち着いている姿が逆に怖い。

 

 (任せろって言うから安心したのに、どうしてこうなった)

 

 (わ、私はタカミチの奴がくるから神楽坂明日菜を用意したんだ。 奴は友人も多いためすぐに集まると考えたのだが…)

 

 少し離れた席にいるエヴァンジェリンの念話から、焦った様子が伝わってくる。 確かにすぐ集まったけどさ、最初のチョイスがおかしい。

 相手はあのタカミチだ、確実に邪魔してくるだろうし、友達が明日菜ちゃんしかいないと思ってしまう。 これじゃあ、すぐにタッツー達の正体に気付く。

 

 「それじゃ、次は男性側の挨拶から」

 

 俺の合図と共に立ち上がるタッツー。 堂々とした姿は正直タカミチより男らしい、素敵! 抱いて!

 

 「龍宮ゴルゴだ。 宜しく」

 

 (ぶふぉ!)

 

 あ、今吹いたね。 念話で吹くことが出来るなんて器用だな。

 流石は闇の福音(笑)と呼ばれる存在、妙なところでその実力を見せつけてくれる。 うん、念話でリアクションとれる奴なんてそうそういないよ。

 俺らなんて無理だし、楓ちゃんは口角筋がピクピクしている。 よく我慢した。

 

 「あ、私のクラスメイトと同じ名字だ。 宜しくね、ゴルゴさん」

 

 愛想良く返事を返してくれる明日菜ちゃん、何故気付かない!?

 

 「長瀬楓乃助でござる。 このような場は初めてでござるが、精一杯楽しませていただく」

 

 「また、同じだ。 今度は名前まで…」

 

 「ほんまやなぁ、せっちゃん」

 

 「そうですね、少し驚きました」

 

 楓ちゃんはゴルゴちゃんを見習ってもうちょっと偽名に捻りを入れてよ! そして何故気付かない!?

 ポチ、三人の将来が心配よ! 

 

 「えっと、これは僕も言わないといけないのかな?」

 

 苦笑した表情でタカミチが呟く。 …うん、全員知り合いだがら意味なんてないんだけどね。

 ここは刀子ちゃんのために、もとい俺のために相手をメロメロにするような自己紹介お願いします!

 

 「本当は僕はこのような場にいちゃいけないんだけど。 大切な、とあさんのお願いで出席させてもらうね、宜しく」

 

 『……』

 

 全員無言。 今、なんか…嫌なアッー!ことを連想させる単語が出たような…。

 タッツー、楓ちゃん、刹那ちゃんは石化してる。 明日菜ちゃんとか白目剥いてるし…大丈夫だって! 俺とタカミチはそんな関係じゃないから!

 明日菜ちゃんが信じないで誰が信じるの!

 

 「…よし! 今度はポチの番だ! 皆さま、本日はポチのためにお集まりいただき誠にありがとうございます! 今日のポチは、せっちゃんとこのちゃんをお持ち帰るつもりなので宜しくお願いします!」

 

 「何言ってんのよー!?」

 

 (何言ってんだ、貴様ー!?)

 

 「ごふぅ!?」

 

 前と後ろからガラスコップが飛んできた。 不意討ちは止めて。

 

 

 




過去・ナギのペット
現在・エヴァのペット
未来・アルビレオのペット







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