畜生先生ポチま!   作:お話下手
<< 前の話 次の話 >>

4 / 29
ナギとの出逢い

 「でも、なんで開催場所がメイド喫茶なわけ?」

 

 「それはポチ先生のチョイスでござる」

 

 「納得…」

 

 おおっと、早くも明日菜ちゃんと楓乃助が仲良さそうにしている! 事態は俺の想像以上に進んでいるかもしれない!

 

 (馬鹿なこと考えてないでさっさと仕切れ。 全員どうして良いのか困っているぞ)

 

 はーい。 マジでみんな、やべぇ…こっから何すんだ!?って顔してる。

 こういうのはねノリと適当なテンションで過ごせば良いのよ!

 

 「じゃーん! 王様ゲームしまーす!」

 

 「え、王様ゲームって何?」

 

 「せっちゃん知ってる?」

 

 「いえ…。 ゴルゴさんは?」

 

 「ふむ、私も知らないな。 楓乃助はどうだ?」

 

 「拙者も初耳でござる」

 

 ヤバイ! 子供達がピュアすぎて、天使すぎてヤバイ!

 ぐああああ! ポチの心が穢れ…大人の心が穢れていると実感させられてツライ!

 

 「すいません。 王様ゲームは止めます…死にます」

 

 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。 本気の謝罪じゃない、別に教えてくれれば良いんだし、やるわ」

 

 明日菜ちゃん、普段ツンツンしてるけど意外と気配り出来る良い子やでぇ。 タカミチもなんか嬉しそうだし、ホンマ天使やでぇ。

 

 「ポチ、エヴァンジェリンのペットじゃなくて明日菜ちゃんのペットになりたかったお…」

 

 「それは遠慮するわ」

 

 「(´・ω・`)お…」

 

 取り敢えず、子供達に王様ゲームのルールを教えて割りばし用意。 意外とルールが簡単で、また初挑戦だからか、結構ワクワクしている様子が見てとれる。

 まぁ、お色気無しでも面白そうだからね。 …それにしても刀子ちゃんが息してない、どうした。 黙っているとなお怖い。

 

 「王様だーれだっ!」

 

 「あ、私やなぁ」

 

 木乃香ちゃんに当たったか。 なんか逆に怖い気がするが…ばっちこい!

 

 「ほんなら、2番は最近のマイブームを教えてー」

 

 こ、これは…王様ゲーム初心者でありながらこの質問だと!?

 序盤、当たり触りのない内容で牽制しつつ、相手の情報を得られる神のようなスタートを切るとは…やはりこの子、天才か…! これならばこの合コン、平穏に終わりそうだぞ!

 

 「はい、私です」

 

 おいいいいい!? 刀子ちゃんかよおおお!

 よりによって一番危険性の高い地雷に当たるとは…! いや、いくらなんでもそれはないか、最近のマイブームだし刀子ちゃんなら大人っぽいお洒落な趣味しているはず。

 

 「そうですね、最近のマイブームは海洋生物のドキュメントDVDを観ることでしょうか」

 

 『ん?』

 

 目が点になる一堂。

 

 「弱肉強食の世界や生命の誕生、下等生物の営みを観るのはなかなかどうして面白いです」

 

 『…………』

 

 何故だ、普通なら中々知的でお洒落な趣味で盛り上がるはずなのに、みんなの表情が固い。 彼女の含みある言い方と単語に引いているのか、それとも刀子ちゃん自身の存在がそうさせているのか。

 天真爛漫な明日菜ちゃん空気読んじゃってるし、木乃香ちゃんはショボーンだし。 あれ? 合コンってこんなにツラかったけ?

 

 「次だ! 王様だーれだ!!」

 

 「おろ、拙者でござるな」

 

 楓ちゃんか…。 冷静沈着なタイプで良かったぜ…!

 

 「うむむ…! では、4番は最近の悩みを教えてほしい」

 

 結局同じ!?

 

 「あ、私ですね」

 

 せっちゃん!? なんか滅茶苦茶真剣な顔つきしているが、悩みってあれか? あの翼のことを暴露するのか!? ポチ、心の準備が出来てないよ!

 

 「最近の悩み…。 実は同姓で気になる方がいまして、どうしたら良いでしょう?」

 

 『ぶううううう!?』

 

 そっち!? 百合の方!? 暴露しちゃって良いの!?

 タカミチボーゼンとしちゃってるよ、刀子ちゃんなんてブツブツ呟きだしたし。 日本ではまだ同姓の結婚は許されてないからね? ほら、目の前に最良物件があるよ、さっさと買いなさい。

 

 「せっちゃん、女の子が好きなん?」

 

 「いいいいえ! 女の子というわけではなく、その方が女性で……同じくらい男性で気になる方もいるので女性だけが好きではないようです…」

 

 男は知らんが、これ…明らかに女性は木乃香ちゃんだよね。 明日菜ちゃんが渇いた笑いをあげている姿から、恐らく気づいている。

 むしろ気づいていないのは、木乃香ちゃんぐらい。

 

 「んー、まぁ本人達が幸せなら良いんじゃない?」

 

 明日菜ちゃんナイス! ポチもそれ考えてました!

 

 「そ、そうですね。 よーし!」

 

 本人が納得したとこで…。

 

 「よっしゃ! 次いくぜ、王様だーれだ!!!」

 

 「おや、僕だね。 それじゃ、1番は最近嬉しかったことを教えてくれるかな?」 

 

 タカミチ、お前もか!?

 

 「ふむ、私だな」

 

 今度はハードボイルドのタッツーか! くそ、くじ運悪すぎだろ!

 誰の運勢が悪いか知らんけど!

 

 「この前、自販機の下に10円玉を落としてしまってね。 最初は諦めたんだが、後日どうしても気になって持参した定規を使ったらなんと、10円玉だけではなく、100円玉まで出てきた時は大喜びしたよ」

 

 『…………』

 

 何言ってんのこの子おおお!?

 

 「次だあああああ!」

 

 「あ、今度は私ね!」

 

 明日菜ちゃんか、まぁ…安心出来るな。 彼女自身、ヤバいと感じ始めているみたいだし。

 

 「むむ…!」

 

 ほら、空気読んでこの不毛な状況から抜け出すために、一生懸命頭を捻っている、王様ゲーム初体験なのに精一杯考えてる! 流石ポチが目をつけたMy friendだぜ!

 

 「じ、じゃあ、3番は最近失敗したことを」

 

 「なんでーーー!?」

 

 精一杯考えていたんじゃないの? 一生懸命頭捻っていたんじゃないの!?

 

 「だって、みんなと同じにしたほうが良いと思って」

 

 マジで空気読んじゃってるよこの子! ギャグは繰り返すものだってちゃんと理解している! 天使すぎるッ!

 

 「拙者が失敗したことでござるか。 あれは1週間前の話しであった──」

 

 楓乃助、お前が3番かよ! しかも俺を無視して進めるとか、ノリノリじゃねぇか…。

 

 「深夜に風魔手裏剣で修行していた時、誤った投げ方をしてしまい、在らぬ方向へ飛んで暫く探していたのでござったが、見つけた時には刃に血糊がベットリと付着していたでござる…。 周りには人影が居なかったため、最悪の状況にはどうやらなっていなかったが…怪我をさせた人には謝罪したい。 ニンニン」

 

 それ俺だあああああ! 散歩中にいきなり首チョンパされたからよく覚えているわッ!

 転がった首が目にしたのが、馬鹿デカイ手裏剣だったから2回ビックリした、俺じゃなかったら確実に死んでる! あっぶねぇえええ! ていうか木乃香ちゃんと明日菜ちゃんの前でそんなこと言わないで! 別の意味で危ない!

 

 「次は誰が王様だあああ!」

 

 「私、ですか…」

 

 せっちゃんか、もう誰が引いても何がくるか予想出来ちゃうよ。

 

 「7番は最近酷い目にあったことを教えてください」

 

 「あら、私ね」

 

 刀子ちゃーーーん!? せっちゃんは予想通りだけど、ここでダークホース引いちゃったよ!

 旦那に逃げられたことか、彼氏に逃げられたことか…!?

 

 「この前、同僚と勝負ごとをしたのですが……」

 

 ん?

 

 「残念ながら私が負けてしまい、その人から脱ぎたてパンスト寄越すか……口にするのは憚れるような卑猥なことをしろと脅されました」

 

 それも俺だああああああああああ!!

 

 最近ってか、今話題沸騰中の話しじゃねぇか! 刀子ちゃん、このタイミングで言うのは卑怯でしょ、俺何か悪いことしたかな!?

 

 『……』

 

 「あの、皆さん。 なんでポチを見るの? あれ、もしかしてポチだと思っています? そそそそんなわけないじゃん、ポチはあれよ、あれ。 紳士に見せた変態だからやるわけないって──」

 

 クソオオオ! もう合コンじゃなくて暴露大会になってやがる、SAN値がだだ下がりじゃねぇか! 主に俺の!

 

 「──止め止め! 最近〇〇だったことは禁止! もっと現実、今起こることにして!」

 

 「そ、そうだね。 何かしてほしいとかが、面白そうだよ」

 

 タカミチの言う通り! 精神的痛みは此処等で終わり、割りばし回収!

 

 「いくぜえええ! 王様だれだあああああ!?」

 

 俺は4番! 王様じゃない!

 

 「よし、私だな」

 

 龍宮ゴルゴか! 来い、お前のスナイピングを見せてやれ!

 ポチならどんな肉体的苦痛にも堪えきってみせるぞ!

 

 「4番は、そうだな……」

 

 来た来た来たああああああ!

 

 「王様に有り金全部寄越せ」

 

 「痛いいいいいい!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「お嬢様、メッセージはこれで良かったですか?」

 

 「ああ、もういいぞ」

 

 メイドがいなくなると、ケチャップで“俺は貴女のペットです。byとあ”と書かれたオムライスを見て1人にやつくエヴァンジェリン。 名残惜しそうにスプーンで掬おうとした瞬間、それは起こった。

 

 「くそおおお! また俺かよ、もってけドロボー!」

 

 「…何をやっているんだ彼奴は」

 

 合コンを観るのに飽きてきたが、どうやら先程と状況が違うらしい。 ポチこと、とあは自らの上着を脱ぎ上半身裸になるとそれをタカミチに渡している。

 

 「もっかい! 王様誰だあああああ!?」

 

 「今度はうちなやぁ。 じゃあ5番は王様になんか頂戴」

 

 「チキショー! またか! もうパンツしか残ってねぇよ!」

 

 近衛このかの言う通り、今度はズボンを脱いでパンツ一丁の姿なるとそのズボンを彼女に渡した。 見れば参加者全員彼の洋服を手に入れており、追い剥ぎゲームでもしているのではないかと思う。

 

 (おい!? 何をやっているんだ!)

 

 (ちょっと黙ってて、この王様ゲームに勝利して刹那ちゃんのパンティ手に入れるんだから!)

 

 (もうパンツしか残ってない奴が何言ってる!?)

 

 くじ運悪すぎる。 しかも王様ゲームであるため番号を指定しなければならず、仮に王様になったとしてタカミチに当たった場合どうするのか。

 おっさんの脱ぎたてパンツを貰うのか? 何れにしても、全員の状況を見る限り、誰も負けていないのがマズイ。

 このままゲームを続ければ間違いなく“とあ”は…。

 

 「あ、また俺だ」

 

 「じ、じゃあ私にパンツをください…」

 

 なんでよりにもよって桜咲刹那に当たる!? タカミチか神楽坂明日菜でも良い、誰か止めろ!

 

 (あーあー、聞こえるかいエヴァンジェリン。 此方龍宮だ、高畑先生は急な用事で帰ったよ)

 

 またか! 肝心な時にいないな、彼奴は!

 

 「待ちなさい! アンタ達本気でやるつもりじゃないでしょうね!」

 

 よし、よく言ったぞ、神楽坂明日菜!

 

 「明日菜ちゃん、止めないでくれ。 ポチは負けたんだ、その代償はちゃんと払うさ」

 

 子犬の柄が入ったトランクスに指をかける駄目犬。 ゆっくりと下ろそうとするその姿を神楽坂明日菜と桜咲刹那は顔を真っ赤にして見つめ、残りのメンバーは興味津々、ギラギラと瞳を輝かせて仰視していた。

 全員ノリノリだな。

 

 「ちょっとーーー!?」

 

 神楽坂明日菜の叫びと共に、産まれたままの姿へと変貌する犬。 妙にやりきった表情でパンツを桜咲刹那に渡すと北斗・天波の構えを取った。

 

 「あー、君。 ちょっと交番まで来てくれないかい?」

 

 「え…?」

 

 肩をポンポンと叩かれ振り返ればそこには、目が笑っていないお巡りさん2人。

 

 「いや、これはですね…けして私は露出狂などではなく、この子達の教師で…」

 

 「先生がこんなことしちゃマズイでしょ」

 

 「あ、はい…そうですね」

 

 「名前は?」

 

 「ポチです」

 

 「なめてんのか?」

 

 「いえッ! なめてるわけではなく、犬だから舐めるといえば舐めるんですけど、止めて! 暴力はんたい!…じゃあ名前は“とあ”で」

 

 「なんて書くの?」

 

 「ひ、ひらがなで…」

 

 「…コイツなめてる。 連れていくぞ」

 

 「ああ…! そんなやめて!? エヴァンジェリン、エヴァンジェリン助けて! ポチ臭い飯食わされちゃううう!」

 

 まぁ、彼奴はこの学園から出られないから大丈夫だろう。 それに麻帆良は比較的男女共に脱げ率が高いから、今回は厳重注意ですむ……はず?

 斯くして、ポチは大切な物を大量に失ったものの、葛葉刀子からの魔の手に逃れたのであった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 【1976年、冬】

 

 日本、京都にて。

 

 もう、どれだけの時が流れたのだろう。 肉の無い身体にひんやりとした空気が撫でる。

 真っ暗闇の空間の中、唯一外を感じられるすきま風。 そして、不意に外から誰かの叫び声が聞こえた。

 また誰かか来たのかと思うと同時に、また誰かか死んだのかと理解してしまう。 この力を欲して幾多の者が此処にやってくるが、その全てはたどり着くことなく力尽きる。

 もう、誰も来ないで欲しい。 静かに眠らせてくれ、断末魔程意識を揺さぶられる物はない。

 もう、誰にも…死んで欲しくない。

 

 叶わぬ願いを胸に、再び眠りにつこうとした瞬間、大きな衝撃が襲う。

 

 「…ったく、やっと見つけたぜ。 こんちきしょうめ」

 

 …なんだ? 暗闇に光が差し込んでいる。

 何かが破砕する音が響くと、続けて生意気そうな声が聞こえた。

 

 「へー、コイツが詠春が言っていた伝説の“式神”か。 どんなもんかと思えば、ただの首輪じゃねぇか」

 

 年若い、少年の声か。 かすかに指先で触れられるが、何故かとても温かい感触が伝わる。

 まさか此処にたどり着く奴がいるなんてな。 しかもそれがこんな若い…。

 

 「…俺の力が欲しいのか、少年」

 

 「あん? んなもんなくても、俺は強ぇよ」

 

 「…では何故」

 

 「決まってるだろ、お前の声が聞こえたからだ」

 

 日の光が強くなる。 少年の赤毛が眼下に映り、それこそ太陽のような屈託のない笑みが現れた。

 額から血を流し、服装は至るところに切り傷や刺し傷、火傷の跡が見受けられる。 首輪に触れる指先の腕には、大量の流血が今も少年の綺麗な白い肌を赤く染めた。

 このままでは命の灯火が消えるのも時間の問題だろう。

 

 「俺の、声…?」

 

 「おう、お前の助けてって声が聞こえたぜ。 だから俺は此処に来た」

 

 此処は地上から遥下、離れた地中に存在する。 幾度のブロックや罠が仕掛けられているというのに、そんな物が聞こえるわけがない。

 だが、この少年の言葉にはそれが嘘偽りと思わせない、何か力強さを感じさせた。 返答に困った首輪はただ静かに、そうか…としか呟けない。

 

 「おいおい、随分ドライだな。 礼も無しかよ」

 

 にこやかだった少年の顔が歪む。

 

 「お前、名前は?」

 

 「ああん? 人の話しを聞かないうえに、礼儀も知らねぇみたいだな。 人に名前を聞く時は、まずは自分から名乗れって親に教えられなかったか?」

 

 「そうか、それは失礼した。 …では、とあって呼んでくれ」

 

 「とわ? あー、日本語で“永遠”だったような…」

 

 「違う。 とあだ」

 

 それに、とわは永久だ。

 

 「おっと悪い、とあだな。 俺の名は、ナギ・スプリングフィールド、よろしくな」

 

 ナギ・スプリングフィールド。 悪くない名前だ、微妙にアホっぽいのも気に入った。

 

 「よろしくナギ。 今日からお前は俺の主だ」

 

 

 




とあ+式(しき)=とあしき=としあき=お前ら







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。