とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記 作:色々残念
今回は文だけです
ロス・イルミナドス教団が行った遺伝子改良で産み出された支配種のプラーガは寄生された宿主の意識が完全に残り、自身の意思で寄生体の力を使うことが可能であり。
そして従属種のプラーガをその身に宿した者が居れば、支配種側が自在にコントロールする事が出来るらしい。
ルイス君から聞いた話だがな。
寄生感染者達はどう見ても従属種、支配種を宿した者がこの街の何処かで彼等を操って居る筈だ。
まあ、とりあえず酒場に居た怪しい男に話を聞いてみようじゃあないか。
それには、この寄生感染者と感染者の混成した集団を突破する必要が有るがね。
対プラーガ撃退用義手の性能実験も終わった事だし、この程度の連中に弾薬と充填したエネルギーを浪費するのは無駄使いでしかないだろう。近接戦闘用の腕だけで充分戦える。後々厄介な敵が出てくるかもしれないんだ、その時の為に温存しておかなくてはな。
群がる寄生感染者と感染者達の首や寄生体を近接戦闘用義手の指先に取り付けられた大型の爪で狩り落とす。
バックパックから取り出したスタンロッドを右腕で振るい、電撃と打撃でダメージを与え。よろけた奴は蹴り飛ばし、倒れた奴は頭を狙って踏み潰した。そいつが寄生感染者の場合は、無くなった頭の代わりに寄生体が飛び出してくるのでもう一回踏んで確りと潰しておく。
両手両足を休まずに使って再び辿り着いた酒場には、あの男が撃ち殺した死体だけしか居なかった。死体の血痕以外は無いようだから、此所で誰かが襲われた訳じゃあなさそうだ。髭面の居た場所に大量の吐瀉物が落ちていたのは予想通りだったが。それは別にどうでもいい。
火炎瓶が置いてあった場所に何かが書かれている紙切れが残されていた。
内容は「冷めた眼をしたお客さんが「安全な場所がある」と言って皆に着いてくるように促していた。店が開店した時からの付き合いがある常連さん達は乗り気だけど、あのお客さんは本当に信用出来るのか?」という物だ。店主が書いたメモか。
メモを裏返してみると裏面には「フォーク、さす方向」とだけ書かれていた。此方は急いで書いたようだな、字がだいぶ荒れているぞ。
酒場の床には一本のフォークが落ちていて、その先端は酒場の出入口を指していた。
指す方向に従って酒場を出ると地面にはまたフォークが。
成る程、これが道標代わりか。フォークの先端が指す方向へ進み続け、15本目でようやく目的地らしき場所に到着。
此所は確か廃業したホテルだった筈だが、人の手が加えられているな。壊れて開けっ放しの状態だった玄関が、綺麗に直っているじゃあないか。
新装してホテルが開業した、なんて話は聞いていない。
中の住人に、詳しい話を聞いてみるとしようかね。
鍵のかかったホテルの玄関を近接戦闘用の左腕で強引に開けた。玄関が盛大に壊れてしまったが、弁償は後回しだ。
ホテルのロビーに向かって足を進めると、天井から赤い何かがぶら下がってきて邪魔をしてくる。
それはリッカーと呼ばれる感染者の変異体によく似ていたが。両目が退化しておらず髪も生やしており、どうやら人の姿を若干ながら残したまま変異しているようだった。リッカーの亜種といった所だろう。
頭髪を激しく振り乱しながら、何処に収まっているんだと言いたくなるほど長い舌を此方へ伸ばす亜種。瞬く間に首へと巻き付いた舌が私を宙に吊り上げようとしたが、左腕義手の鋭利な爪で舌自体を切り落として阻止。痛みに悶える亜種へバックパックから取り出した強い酸の入った薬瓶を投げつけると天井から亜種が落ちてきた。
床でのたうち回る亜種の背中から成体となった寄生体が姿を見せる。お返しとばかりに強酸性の液を吐いてくる寄生体、上体を反らしてそれを避けると一気に亜種から生えた寄生体へ近付く。
左腕義手の五本の爪を勢いよく寄生体へ突き刺し、腕を回しながら指を激しく動かして寄生体の中身を掻き回す。
大人しくなった寄生体から爪を引き抜き、寄生体と繋がっている亜種へスタンロッドを押し付ける。
電撃を流し続けていると亜種の背中にいた寄生体が弾けて死んだ、それと同時に亜種の息の根が止まったようだ。
切り落とした後も首に巻き付いたままだった亜種の舌を外して放り捨てる。
さて、邪魔者は消えた。奥に進むとしよう。
暫く通路を歩いていると何人かの男性の叫び声が聞こえた。悲鳴と怒声が入り交じった複数の声だ。店主と髭面らしき声も聞こえたが、生きていたのか。
声が聞こえる方向に向かって走ると、広い中庭に到達する。
其所では無惨に切り刻まれた六人の死体が転がり、五人の男が数匹のハンター達に取り押さえられて無理矢理地面に這いつくばらされていた。口は塞がれていないようで、それぞれ個性溢れる罵声や命乞いをしている。ああ、店主と髭面も居るな。
プラーガの卵が入った注射器を片手に持って騒がしい五人に近付く一人の男、そいつは酒場に居たあの男だった。
予想通りで面白味が無い奴だ、子供を飴で騙して連れ去る誘拐犯と大して変わらない。
私は近接戦闘用の腕を外し、代わりに対BOW用の腕へと付け替えた。
「これから君達はオレの手で、素晴らしい存在に生まれ変わる」などと狂気の笑みを浮かべながら口上を垂れている男は此方には気付いていないようだ。熱中している最中は他の事が全く気にならなくなるタイプだな彼は。
バックパックからサングラスと特製閃光手榴弾を取り出し、閃光対策のサングラスを掛ける。閃光手榴弾のピンを口で引き抜き、愉しそうな男の足下へと投げ転がす。
彼が「やっと感染者以外に、このオレが改良して成長速度を促進させたプラーガを」と言った所で閃光と爆音が彼の足下で炸裂する。良かったな、今のきみはとてもとても輝いているぞ。
左腕からまるで機関銃の様に放たれる改良抗ウィルス剤を、強制投与されたハンター達が鳴きながら倒れていく。
開放されて自由になった男達は閃光で眼が眩んだようで眼を押さえて呻いていたが、命に別状は無さそうだ。
私は此方を睨み付けている彼の相手をしてあげようじゃあないか。どうやらプラーガ入りの注射器を持った手に力が入り過ぎて折角の改良プラーガを握り潰してしまったみたいだな、思い切り邪魔した私が言うことじゃないが一言だけ言っておこうか。
「少々落ち着きたまえ、怒りで研究成果を無駄にするな」
「邪魔者はお前か、オレを無視した生意気なクソガキ」
外見はそうかもしれんが、私は今年で52だぞ。
間違いなく、きみより歳上なんだがね。
知っている者は少ないがな。
「オレの偉業を理解出来もしないガキが」
「要するにプラーガを改良して体内注入された後の孵化と成長にかかる時間を早めたという事だろう。これによって中枢神経に取り付き、宿主の精神を支配するまでの時間が短縮された。命令に忠実な兵士を作り出せるプラーガが兵器としてより使い易くなる。こんな改良が出来たオレ凄い。と言ったところじゃあないか?きみの偉業とやらはな」
その内もっと改良されたプラーガが出回りそうな気がするが、確かに進歩させた事は間違いない。偉業とまではいかないがね。
「お前は何者だ」
「きみに教える必要はないな」
警戒を深めた男の質問には応えない。
対BOW用の腕を外し、対プラーガ用の腕を装着する。口で駄目なら次は手が出てくるだろう。
「ならばお前に用はない、邪魔者には消えてもらう」
男が寄生体を開放する。両腕が硬質なブレード状に変化して、背中から先端に鋭い爪の生えた二本の触手が伸びてきた。
「見るがいい。これがオレの力だ」
誇らしげに変化した身体を見せ付ける彼に。
「それはきみの力じゃなくてプラーガの力だと思うんだがな」
水を差しながら左腕用に改造した対プラーガ撃退用兵器の銃口を彼に向ける。温存しておいて良かった、まだまだエネルギーは残っているな。
プラーガが剥き出しになっているならエネルギーの充電をしてから発射する必要はない、軽く放射するだけで終りだ。
態々つまらない相手に長々と付き合ってやる必要などないのでね。
「そんな玩具が俺に通用す」
残念ながらそれが、彼が発した最期の言葉になった。最期の最期まで面白味が無い奴だったな。
プラーガは特殊な放射線で死滅させる事が出来る事を知らなかったのか。
生き残った五人はハンターの爪で少し怪我をしているようだな。抗体が無ければ彼等もTウィルスに感染しているだろう。発症しないようにワクチンでも注射しておくとしよう。この前襲ってきたタナトスから採取した血に手やら品を加えて作った物が有る。元手はタダだから気にはしなくて結構だよ諸君。
「因みにこのワクチンには黒ビキニマッチョマンの血が使われて」と言った所で五人が走って逃げ出した。元気な怪我人達だな。
アンプルシューターにワクチンを装填し、彼等を追いかける。発症する前に撃ち込んで投与しなければならないのでね。
言わない方が良いことは世の中には沢山あるが、ちょっと言ってみたかったんだから仕方がないだろう。
ネタバレ注意
リッカーの亜種 サスペンデッド
アウトブレイクに登場するボスの内の一体
露出の激しい女モンスター
鞭みたいに舌で叩いてくる
舌で首を絞めて吊り上げてくる
腹から何か臓器らしき物が出てる
ボスの中で一番体力が低い