とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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色々とありました。待っていた方が居たなら、更新が遅れて申し訳ありません。

進化編開始




女子大生の前で胸が苦しいとか初恋染みた事を言い出しちゃう警察署長は胸が張り裂けて死にます

合法非合法を問わず多種多様な物品を扱う商人の根城へ向かう道中。人間の表面を溶かして無理矢理固めたかのようで、非常に生々しい物体を幾つも発見した。

 

その正体に心当たりが有る者として、手持ちの装備が乏しい現状では全てを相手にしたくはない。対抗が出来ない訳じゃあないが、弾は有限だ。既に十数個以上も発見している此れ等が想像通りの代物ではなく、趣味の悪い誰かが無断で設置した只の置物であれば特に問題は無かったんだがね。

 

そう上手くは行かないようで、生々しい物体の背が割れて今まさに何かが誕生しようとしている瞬間に遭遇してしまった。

 

逃げる間も止める間も無く、まるでサナギから羽化する昆虫の様に割れた背から飛び出す異形。産声を上げるかの如く咆哮し、腹部から針を発射してくる人間大のエリマキトカゲ擬き。

 

射出された散弾のような針を横に転がり避けながら、アフリカで回収した戦利品の1つである大型自動拳銃を懐から抜く。

 

「他人に針を放出しておいて逃げるんじゃあないぞ、トカゲ擬きが」

 

少々改造を施し銃身を延長させ威力を高めたL・ホークを、不規則に走り逃げ回るエリマキトカゲ擬きに発砲。

 

放たれた弾丸が着弾すると同時に吹き飛び、倒れ伏したまま弱々しく呻くエリマキトカゲ擬きが起き上がる事は無く。死体も残さず消えていった。

 

Cウイルスを投与された人間は知性を残したまま理性のタガが外れ、顔面に大小複数の眼が不規則に並んだ異形へと変貌し、投与前に下された命令に愚直に従うだけの存在となるが。それらは多大な損傷を受けると全身を炎上させ表皮を溶かしてから、硬い外皮に覆われたサナギ状態に変異する事が有るそうだ。

 

そしてサナギの内部では体組織の溶解と再構築が絶えず行われ、完全なる変異を遂げた新たな生物が堅い外皮に覆われたサナギを破り誕生する。

 

Cウイルスと生物の遺伝子を掛け合わせる事で、その生物の特性を反映した「変異種」を産み出す事も可能であり。先程のトカゲ擬きは爬虫類の遺伝子を組み込まれたCウイルスの産物だろう。

 

しかし端からサナギだった訳じゃあないなら、Cウイルスを投与された者達は何らかの命令を受けていた筈だが。

 

それが何か解れば、この状況も少しは納得出来るかもしれないな。

 

思考を止めずに駆け足で目的地へと近付く先に、再び現れた「変異種」達。

 

全身が硬い殻に覆われたゴリラ擬きの群れに組み込まれている遺伝子は、間違いなく哺乳類だろう。

 

基本的にゴリラは穏やかな生き物だと聞くが、所詮は殻に覆われたゴリラ擬きでしかないようで残念だ。

 

身体から蒸気を噴出させながら戦意に溢れた殻ゴリラの群れが襲い来る。絶対に直撃はしたくない殻ゴリラの達の突進を、彼等の硬い殻が割れる程に高威力なL・ホークの連射で無理矢理中止させてやり、露出した柔らかな筋肉部分を狙い撃つ。

 

怯んだ隙に撃ち尽くした弾倉を交換し、息絶えるまで容赦無く撃ち続け。弱所である背の中枢神経を狙うまでも無く、1体残らず消え去る殻ゴリラ。

 

「景気良く弾を撃ち過ぎたかもしれんな」

 

今日は義手の素材だけ買うつもりだったんだが、帰りに備えて銃弾も買っておいた方が良さそうだ。

 

幾度の障害を取り除きながら、ようやく到着した目的地で財布から取り出した1枚のカード。

 

客だけにしか渡されない出入口の鍵であるそれを寂れた路地裏の奥底で、行き止まりの壁に刻まれた一筋の溝へ宛がい手早く下に滑らせた。鳴り響く電子音。偽装の壁が横にスライドし、商店へと続く道が開く。

 

空調が効いた快適で僅かな道筋を、手持ちの装備の手入れを行いながら緩やかに進み。残弾の確認が終わると同時に辿り着いた、財布に優しくは無いが品揃えは悪くない商店の扉から聞こえる怒号と悲鳴。

 

どうにも先客が居るようだが店主の商人と揉めているらしい。怒号は聞き覚えの無い声で悲鳴は商人の声、つまり商人が劣勢で客が優勢。

 

鳴り響く様々な音は店内で何かが壊されたという事であり、商人の悲痛な声から察するに高額な商品も幾つか被害を受けているだろう。目当ての品が無事であればいいが、確認する為には実際に入店しなければならないな。

 

厄介事から逃避したとしても結局は別の厄介事が幾つも私を待ち構えているとは、儘ならないものだが。長く生きていればこんな日も有るか。

 

仕方がないと覚悟を決め扉を開けた私が見たものは、血が滲み至る所が豹の如く斑に変色した黒いスーツを身に纏う金髪の若い男。そしてその男に胸ぐらを掴まれ持ち上げられながら苦悶の表情で必死に弁解する商人の姿だった。

 

「お前の手下は残らず始末した。連中の身体が燃え上がり溶け始めた時は流石に驚いたが、それだけだ。残念だったな」

 

「手下なんて元から居ねぇよ!間違いなく俺関係ないだろそれ!」

 

「あれほどの人数で狙わせておいて惚けるか。まあいい、聞きたい事は1つだけだ。お前がGを研究所の連中に売ったんだろう?調べはついてる」

 

「だからそれは俺じゃない、人違いだ!その調べが間違ってんだよ!」

 

「オレは家族を永遠に失ったんだ。Gを投与された肉親が化物に変わる様を見た!そしてオレ自身もGを」

 

「気の毒だとは思うがな、Gを扱ってない俺にそんな事言われても困るんだよ!」

 

「気の毒だと?ふざけるな外道が!」

 

「何でそこだけ聞いてんだよ!Gは扱ってないって言っただろうが!」

 

会話が微妙に噛み合っていない店内の2人は意識が互いだけに集中しているようで、入り込んだ私の存在に気付きもしない。気取られずに動くには実に好都合だ。

 

正直もう少し彼等の噛み合わない会話を聞いていたい気持ちも有るんだが、当初の目的を忘れてはいけない。私は買物に来たのだから、その為には邪魔な者を排除する必要が有る。

 

金髪の彼には暫くの間動けなくなってもらおうか。

 

懐から取り出した得物を片手に音を立てず静かに接近。持ち上げた商人を今度は店内の壁に押し付けながら感情的に捲し立てる金髪の背後へと忍び寄り。強化改造を施し過ぎて護身用とは言えなくなったスタンガンを素早く金髪の首に押し当て放電。拡張した容量の限界まで充電された電流を全て残らず流し込むと、折り重なるように床へ倒れ微かに痙攣する2人の男。

 

個人差は有るだろうが恐らく数時間は身体の自由を奪えた筈だ。どうやら商人も巻き添えで感電してしまったようで本当にすまないとは思っているが、必要な措置であったと納得してくれると私は信じている。

まあ、死ぬよりかは良いだろう。

 

さてと、金髪男が感電から回復し行動可能になる前に無力化しておこう。

 

何か使える物が有るだろうかと店内を軽く物色し発見した代物は一見細身で惰弱であるが、実際は強度の高い複数の繊維が複雑に編み込まれている非常に頑丈な縄。それを無断では有るが幾つか拝借させてもらい念入りに、余すとこ無く縛り上げて金髪の男を行動不能へと変えた後。

 

見苦しい程に荒れ果てた店内の床に転がる元商品達を片付けている最中。背に鋭い視線を感じた私が振り向いて確認すると、既に意識を取り戻していた金髪の男が此方を恨めしげに睨んでいた。

 

僅か数分で意識を取り戻すとは何とも驚異的な耐久力だ。彼は只の人間ではないのかもしれんな。詳しく話を聞きたいところだが、先ずは誤解を解いておくとしようか。

 

視野が狭まっている彼にとっては正当な復讐をしているつもりだったのかもしれんが、見当が違えば憂さ晴らしの八つ当たり同然であると気付いていないようだからな。

 

事前に情報の正誤の確認を怠る傍迷惑で未熟な復讐者に絡まれるとは、今日は商人にとって厄日だろうな間違いなく。

 

何故なら商人には絶対にGを扱えない理由が有ると私は良く知っている。

というか私がその原因だ。

 

以前Gウイルスに興味を持った商人から手に入れたとして商品に為るのだろうかと相談された時。

 

君には無理だと口頭で説明するよりも実際に体験した方がGウイルスの危険性も解りやすいんじゃあないかと思い付いた私は手頃な違法研究施設を潰す際に彼を同行させ、私が手を下すまでも無く粗悪な設備で粗末な実験に失敗し壊滅間近な施設内で派手に暴れるG生物と柵越しではあるが対面させてみた事があった。

 

頑丈な特殊合金で造られた柵が徐々に軋みを上げ歪み、壊れていく様は中々に迫力が有り。

 

元同僚の研究成果が人間へと巻き起こした進化を観察する私の隣で腰を抜かした商人が今にも死にそうな顔をしていた事を良く覚えている。

 

そんな彼の股間がかなりの湿り気を帯びていた事にも気付いたが、それは見なかった事にしておいた。若干距離を措いた事に他意はない。その後は柵が完全破壊される前にG生物を処理、研究施設内へ大量に仕掛けた時限爆弾の起爆装置を作動させ脱出。

 

跡形も無く吹き飛んだ研究施設跡地に滅菌消毒等の後始末を欠かさず行い全てを終わらせ、互いに負傷も無く無事に見学を終えた帰り道。

 

先程御覧になったあの様にGウイルスは制御が非常に難しく今の君に扱える商品じゃあないと話しかけたんだが「あんなとこに俺連れてく必要ねぇだろ!無理なら無理って普通に説明してくれよ!」と半泣きな商人に殴りかかられた事も良く覚えている。

 

そのような私の親切心による行動が彼の心にGに対する心的な外傷を刻んでいたらしく、GウイルスやG細胞等のGに関する代物を見ただけで壮絶な悲鳴を上げ小刻みに全身を微振動させる程に怯える彼が商品としてGを扱える訳が無い。

 

以上の出来事を長々と詳細に語り何とか商人の誤解を解くことは出来たんだが、今度は私が非常に危険な人物だと思われてしまったようで物凄く警戒されている。

 

何故だ、と言えない程度には自覚が有るので甘んじて受け入れよう。

 

ああ、そういえば。

 

「君が暴れたせいで結構高価な代物も幾つか駄目に為っていたんだが、弁償出来る程度の金は持っているのかね?」

 

私の問いかけに途端に身を強張らせ、まるで滝の様な大量の汗を流す金髪の男。

 

持って無いな間違いなく。

 

 月 日

 

度重なる厄介事による逃避行動で思わず出向いた商店にて、シェリー・バーキンという前例を元に行われた実験の成功例と偶然接触。お陰で私が商店へ向かう道中に大量の「サナギ」と遭遇した理由が判明した。

 

どうやら彼を捕獲する為に、何者かが大量の「ジュアヴォ」を送り込んでいたようだ。

 

それを商店に向かう彼が返り討ちにした所、かなりの数の「ジュアヴォ」がサナギ化したらしい。

 

まあ、新種であるCウイルスの特性を知らなくても仕方が無いので私は文句を言わなかったが。

 

商店へと続く唯一の通り道に、景観を損なうだけじゃあ済まない物体が幾つも鎮座していると知った商人が黙っている訳がなく。

 

3人で手荒な撤去作業を行う事に為った。

 

弾と銃器は商人提供で誕生した「変異種」達と「サナギ」を残さず掃討。

 

危険な作業を手伝った見返りとして義手の素材と銃弾が格安で手に入った事は商人に感謝しておこうか。

 

因みにもう1人は「お前は格安じゃ済まないけどな」と目が血走った商人に肩を掴まれていた。

 

偽の情報を掴まされていたとは言え、店内で少々暴れ過ぎていたから仕方がない。

 

Gを宿しているならば、そう簡単に死にはしないだろう。

 

負債の返済が終わるまで、頑張ってくれたまえ。

 

 月 日

 

抗体を持つ者は例外として除くが、Gウイルスを投与された者は大概が自我を失い凶暴化してしまう。そして自身と遺伝子情報の近しい相手にウイルスの「胚」を植え付けて子孫を残す為に行動する。

 

しかし遺伝子の近似性が少ない場合は拒絶反応が確実に起こり、その場合「胚」を植え付けられた宿主は体を内部からG細胞に破壊され死に至るだろう。

 

遺伝子情報の近い宿主に植え付けられた「胚」は拒絶反応を受ける事なく肉体との融合を行い。そうして長い時間をかけて人間とGの細胞組織の入れ替えが完了した時に新たなG生物が誕生するが、細胞が完全に融合を終えてG生物へと変貌するまでの猶予こそが唯一Gウイルスへの対抗が可能な時間だ。

 

シェリー・バーキンの場合は、血の繋がった実の父親であるウィリアム・バーキンがG生物と化した為に植え付けられた「胚」が拒絶反応を起こす事は無く。抗体を受け付ける余裕のある細胞融合過程においてクレア・レッドフィールドが対Gウイルス用抗原体「DEVIL」をシェリーに投与し、ウイルスの進行を食い止める事には成功した。

 

それでもGを完全に消し去る事は出来ず、体内に微量のGウイルスを残したシェリーは様々な実験を受ける事になったが。ウイルスの力を完全に制御出来るまでに成長し、肉体の再生能力やウイルス耐性のみを身体に反映させる事に成功した彼女はGウイルスとの共存を実現させた人間だ。

 

そんな彼女の再現実験として選ばれた何組かの家族の内、人間の形で生き残ったのは彼1人だけだったらしい。

 

「DEVIL」は微かな衝撃や温度変化で変質してしまう非常に繊細なワクチンであり、取り扱いに細心の注意を払わなければ使い物にはならない代物。粗末に扱えば、効力を発揮する事はない。

 

そうして粗悪な環境で粗末な実験を杜撰な管理で行う連中が当然の如く失敗を繰り返し、奇跡的な唯一の成功例に反逆されて残らず死に絶えた。

 

それだけの話だ。

 

まあ、今は商人にタダ働きでコキ使われていて非常に大変そうだが。少し楽しそうではあったな。

 

初対面の印象が悪くても、生きていれば払拭は出来るさ。

 

幾ら仲が良くなっても、負債の減額は無いだろうがね。

 

 




ネタバレ注意

胸が張り裂けて死ぬ警察署長

ブライアン・アイアンズ
バイオハザード2の登場人物

剥製マニア。

危機的な状況下で趣味に走り、市長の令嬢を剥製にしようとする変態。

アンブレラの悪事を見逃すどころか謝礼を受け取り揉み消したりして、積極的に悪事に協力する警察署長。

生き残ったSTARSに謝れ。

ラクーンシティにウイルスが蔓延し、自分が助からないと思った瞬間。こうなったら街の人間は1人残らずブッ殺してやるという発想に至り生存者達の妨害を積極的に行う警察署長。

頑張ってたマービンに謝れ。

最終的に、Gに爪で切り殺されるか。Gに「胚」を植え付けられて拒絶反応を起こし、クレアの前で身体を内側からG細胞に突き破られて死ぬ。飛び出したG細胞はG成体というクリーチャーとして襲いかかってきます。

生きてても死んでても録な事にならない人。

こんなのが警察署長だったら、そりゃあ被害も大きくなりますよ。


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