とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

21 / 85
短くて申し訳ない


銃社会って怖いわいや本当に

 月 日

 

遠出をして食料品を買い込んだ帰りの道端、互いを罵り合う男女を発見。男性は20代前半、女性の年齢は10代後半といった所で、どうやら別れ話が縺れて口論になってしまったようだった。

単なる口喧嘩だけで済んでいれば通り過ぎるだけで済ませていたんだが、別れたい女と別れたくない男の話が噛み合う事は無く遂には怒り狂った男性がズボンのポケットから折りたたみナイフを取り出して女性へと襲いかかろうとしたので、とりあえず缶詰を男性の顔に投擲し怯ませてから少々痛め付けてナイフを没収した所までは良かったのだがね。その後に現れたもう1人の女性(襲われそうになっていた彼女の姉)にナイフを持っていた私が運悪く暴漢だと勘違いされてしまい。

「わたしの妹から!デボラから離れなさい!」と叫びながら襲いかかってきた女性の動きは素人の力任せでは無く、明らかに正規の訓練を受けている鍛えられた人間の動きを最前列の特等席で見る破目になってしまった。まあ確かに事前の状況を知らなければ没収したナイフを片手に持っていた私がカップルを襲う暴漢に見えても可笑しくはないし、かけがえのない妹が大事で大事で他に目が行かなくなってしまったのだろう。しかし其れを加味したとしても彼女には少々落ち着きが足りないと見受けられた。人間として高い身体能力を持ち、優れた技量も有るが感情に流され易い為、性格に難有りと言った所だろうか。惜しくは有るが彼女は私の部下じゃあないので、欠点の矯正を行う義理も義務も必要も無く。私と彼女の双方が怪我をしない程度に軽く相手をしていると、変わり行く状況に取り残されて半ば呆然としていたデボラが気を取り直し、必死に姉を取り成して何とか誤解は解けたんだが解けたら解けたで問題が発生。現況に至るまでの詳細な情報を聞き怒りが再燃したらしく、私が痛め付けてからずっと倒れたままの男へと容赦無く追い討ちのエルボードロップを叩き込もうとする彼女を何故かデボラと二人で宥めるはめになったが、猛り狂う彼女を落ち着かせる事には成功。そうして漸くデボラの姉である彼女の名前を知る事が出来た。彼女の名はヘレナというらしい。落ち着き頭が冷えた姉ヘレナと疲れきった妹デボラの二人分の謝罪と感謝を受け取り缶詰を回収してから私はその場を後にした。

 

 月 日

 

数多に存在する組織へと潜入中の部下達から今日も送られてきた定期報告に眼を通していると、最近の出来事と関連していそうな情報を幾つか発見したので日記にも記しておくとしよう。

先ず最初に「ファミリー」の長であるシモンズが念願の「お人形遊び」に耽溺している最中の隙を突き、隠蔽されていた内部情報を抜き取る事に成功した部下の報告では。

どうやら「ファミリー」が日夜実験を行い日々研究を進めている「Cウイルス」を外部に漏らしていた研究員が1名居たらしい。あの寄生生物「ネメシス」を開発したアンブレラヨーロッパ支部第6研究所の元研究員であった彼は古巣に違わず優秀だが、人一倍に上昇志向が強く現在の自身の立場へ大いに不満を持っていた。だからこそ彼は「Cウイルス」と「ファミリー」の情報を手土産に無謀にも他の組織への寝返りを目論んだようだが。残念ながら願い叶わず、不穏な動きを察知した「ファミリー」による粛正が彼を待っていた。しかし持ち出されたCと回収したCの数量が合わず、既に「Cウイルス」が他の組織の元へ渡っていると判断した「ファミリー」上層部は漏洩を隠蔽した上で対抗手段として早急な「アンチC」開発を求めているそうだ。

そしてその「Cウイルス」を手にした他の組織へ潜入中の部下から報告された情報によると。

入手したCが実用的であるかを確認する為、組織は様々な手段で集めた人々へCを投与し命令を下した。それは、体内へ極小の発信器とデータ収集用マイクロチップを埋め込んだ状態で、稚魚を放流するかの如く偶発的な事故を装い一時的に解放していた「再現実験体」達の回収である。

能力の高い実験体達に対し「Cウイルス」を投与した人々を送り込み、戦闘力、命令遂行力、生命力、知性保持の度合い、そして変異の形態等々、多様なCウイルスのデータ収集は、大多数の実験体回収と共に概ね思惑通りに成功を収めたようだが。

ある1体の実験体だけには想定外の出来事が多発し、問題の実験体の回収が困難となったらしい。私の元へ転送された再現実験体達の顔写真の中で、未回収と書かれた1名は最近見かけた、というか強化改造を施したスタンガンで昏倒までさせた金髪の彼が別人の様に暗い表情で写されていた。

やはり実験体だったのか彼は。

 

 月 日

Gを宿した金髪の猪突猛進過ぎる彼に偽りの情報を吹き込み。出入口のカードキーまで掴ませて商人の元へと送り込んだ下手人を特定し接触を試みたが、既に手遅れだったようだ。

 

「いらっしゃいませお客さま」と出迎えの言葉を壊れたレコードの如く繰り返し発する彼の頭部だけが人間の形を残し、それ以外はもう正常な人間の形をしていなかったのだから。

 

吸盤状で鮫の歯に似た乱杭歯を生やす彼のもうひとつの新しい頭から放たれた歯が、床へ張り付くとまるでトラバサミの様な形状に変わり。

水膨れした白い肥満体型を揺らしながら生体チェーンソーと化した右腕を振るい「美味しそうなお客さま」と喚いて此方へと襲いかかってきた下手人を安らかに眠らせてやり、手がかりを探す事にした。

同月同日

 

暗号を解読し発見した手記から危険な取り引きを行う際は毎回必ず保険として相手の顔をバレない様にこっそり撮影して映像を残しておいてあるそうだ。

 

発見した壁面の微細な穴から見つけた隠しカメラの配線を辿り、繋がる先の隠し部屋の扉を抉じ開け確認した映像に写っていた人物は、過去にアンブレラ幹部直属の内偵組織「監視員」に所属していた男。つまり、自身の利益の為ならば如何なる犠牲が出ようとも構いはしない非情で冷酷なニコライと似通った人間であるという事だ。

まあ「監視員」として働いていた連中は全員録な人間じゃあないが、金で動かせる連中も多い。現金を目の前で山の様に積んでやれば喜んで情報を吐く奴も居る。

直接出向いて試してみるのも悪くはないか。

 




ネタバレ注意

ヘレナ・ハーパー
バイオハザード6の主人公の1人
妹が何よりも大事な人
妹の彼氏が別れ話のもつれで妹を傷つけたら銃を発砲して重傷を負わせる姉である

ちょっとやり過ぎじゃないですかね

デボラ・ハーパー
バイオハザード6の登場人物
シモンズに誘拐されCウイルスの実験体にされてしまう人
背中から触手生やして全裸で襲いかかってくるクリーチャー
ジャンプ攻撃の後レオンに跨がりながら攻撃してきたりもする


スキャグデッド
バイオハザードリベレーションズで登場するクリーチャー
t-Abyssに対して一定の耐性を持つ人間からの突然変異種
二つの頭部を持ち、片方はモンハンのフルフルみたいな感じの吸盤状の口をしている
右腕は巨大なチェーンソーのように変異していて即死攻撃をかましてくる

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。