とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記 作:色々残念
月 日
知人のアルフレッド君から重要な話があると呼ばれて南米の孤島、ロックフォート島に向かう。アンブレラの研究員だった私は既に死んだ事になっているので、生きていることがバレてしまうとまずい。髪の色と髪型に眼の色まで変えて変装をしておくことにする。それほど特徴の無い顔だ、この程度で充分だろう。アルフレッド君はアンブレラの幹部であるが、アンブレラに忠誠を誓ってはいないから大丈夫だ。彼は妹に忠誠を誓っている。そんなアルフレッド君の妹のアレクシアは十歳で有名な大学を首席卒業した天才で、実の父親を自ら開発したウィルスの実験台にするような娘だ。
次いでに私を実験台にしようとしていた娘でもある、それは失敗したがね。私に耐性が無ければ大変な事になっていた、全くもって恐ろしい。アフリカを除いたアンブレラの全研究所に出向いた経験がある私の中で、最も身の危険を感じたのが彼女が主任を務めていた十五年前の南極研究所だ。
そんな彼女が開発したウィルスの名は「tーVeronica」
アレクシアは十五年前そのウィルスを自身に投与してコールドスリープに入った。彼女は今も南極の研究所で眠り続けているのだろう。そのまま一生眠っていてくれると非常に助かるが、今年位に起きる予定だとか十五年前に連絡があったような。
忙しくて見なかった事にしておこうか。
それとも連絡が届いていなくて知らなかった事にしておくか。
もういっそのこと、研究員の私は死んでいるんだから全部無かった事にしてしまおう。色々と逃げ口上を書いている内にロックフォート島に到着した。とりあえずアルフレッド君の所へ行くとしよう。
同月同日
アルフレッド君はとても丁寧に快く私を迎え入れてくれた。
何故かドレスを着てロングのカツラを被り化粧をして声まで女性に変えていたがね。
ナルシストが女装癖のナルシストに進化しているとは思いもよらなかったが、年長者の矜持として動揺は顔に出さなかった。
アルフレッド君は自分の事をアレクシアだと思い込んでいるようで「お兄様の友人である貴方と一度お話しをしてみたくて、お兄様にお願いしたんです」と言って話しかけてきた。いやアルフレッド君と友人になった覚えはないんだが、それとアレクシアはそんなに殊勝じゃないぞ。と言いたかったがそれは飲み込んで「そうですか、それでは沢山話しましょう」と無難に返事をする。その後は島を散歩しながら会話を続け、途中で転びそうになったアルフレッド君を支えてしまうというアクシデントがあったが特に問題は無かった。「逞しいのですね」と微笑みながら言われたりもしなかった。無かった無かった。そういうことは女性に言われたかった。若干精神攻撃を受けながら散歩が終わると、次は食事に誘われる。
食事は何の問題も無く平和に終わった。既に帰りたいという気持ちになっていたが、折角来たんだからと我慢する。
食後は話の続きがしたいと部屋に呼ばれて、会話をする事になったが。異様にアルフレッド君が近かった。何なんだと思いながらカツラがズレて残念な状態になっていた頭を直してあげると、手を握って頬を染めるアルフレッド君。
それはきみを撫でた訳ではなく、ヅラを直しただけだ。
もの凄く痛々しい状態になっていたから直しただけだ。
数秒後アルフレッド君が私へ向かって顔を近付けようとしたので、絞め落として気絶させる。これは正当な防衛だ。床に倒れたアルフレッド君は放置したまま、部屋を飛び出して逃げ出す。
この身一つで泳いででも脱出してやるという気持ちに満ち溢れる私を止めたのは、何処かで見たことのあるグラサンが率いる特殊部隊の姿だった。
どうやら元同僚のグラサンは生きていたようだ、別に死んでいてくれて良かったんだがね。襲撃の目的は「tーVeronica」の奪取といったところか。
また、厄介な事になりそうだ。
同月同日
グラサンのせいでロックフォート島全体にTウィルスが流出。お蔭でまた感染者達の相手をするはめになった。
ラクーンシティで慣れているから、苦ではないが腹は立つ。
バンダースナッチとやらにひたすら蹴りを入れて憂さを晴らした。腕が伸びるのは面白いがそれだけだ、片腕だけでは攻撃パターンも限られるし下半身も貧弱過ぎる。
売れる商品にするには改良が必要だな。
同月同日
ポニーテールのお嬢さんと二丁軽機関銃の青年が元気に走り回っていた、二人とも生存者のようだったが。脱出手段でも探していたのだろうか。
同月同日
妹を探す体格の良い男性と遭遇。彼の名前はクリス、妹の名前はクレアというらしい。妹はこんな顔だと見せられた写真を見ると、見覚えのあるポニーテールのお嬢さんが写っていた。妹を知らないかと聞かれたので軽機関銃持った青年と走り回っていたのを見かけたと伝える。
男性は「そうか、ありがとう」と礼を言った後に「この島は危険だ、きみも俺と一緒に来ないか?」と誘ってきた。丁重に断りを入れたが、どうにも納得してくれない。「きみはまだ若い、こんなところで死んではいけない」とまで言われた。間違いなく私の方が歳上なんだがね。仕方がないので適当な感染者やBOWを数体倒してみせて、一人でも問題ないと説得した。それでも渋っていたが、先ずは妹を見つけた方が良いと促して同行は諦めてもらう。知人がアレな奴等ばかりだからだろうか、たまに善人に会うと人の優しさに戸惑ってしまうな。頑張ってくれ、クリス君。
同月同日
知人に連絡して迎えにきてもらおうかと思っていたら、島に戦闘機が着陸。誰が乗っているのだろうかと近付けば、まともな服を着たアルフレッド君と金髪美女が降りてきた。美人を連れてきたな、アルフレッド君の彼女だろうか。そう思っていたらアルフレッド君が燃え出した、文字通り。消火器を探す暇も無く、真っ黒な炭へと変えられたアルフレッド君。地に転がったそれを、楽しそうに踏んで砕く金髪美女。まるで踊るように回りながら、踏み続けて。笑い声を上げながら満遍なく粉々にしていった。十五年経って外見は変わったが、相変わらず中身は最悪だな。実の兄を焼き殺して死体を散々踏みにじっておきながら「あら、お久しぶり。お元気そうね、ジョン」などと話しかけてくるのだからな。どういう神経をしているんだ、貴様は。
あまり相手をしたくないので適当な返事を返し、そそくさと戦闘機へと乗り込んだ。さっさと島を出てしまおう。燃料の確認をしていると、いつの間にか後ろの座席にアレクシアが乗っていた。
着いてくる気かこの女。仕方がないな、正直嫌だが島を出るまでは我慢しなくては。気分次第で戦闘機が壊されそうだからな。孤島でこいつと助けが来るまで二人きりで過ごす事に比べれば我慢出来るはずだ。無心で操縦しよう、そして安全な場所に着陸したら私は全力で逃げる。
そろそろ書くのを止めて操縦に移るか。
会いに行かなかったら、会いに来るとは。
無駄に行動力のある奴だ。
そのまま寝ていてほしかったな、本当に。
まあ、本人だと気付かない程美人にはなっていたが。外見だけではあの性格は帳消しにならんよ。
ネタバレ注意
アルフレッド・アシュフォード
スナイパーライフルで撃ってくる人
女装しちゃうようになったのは、まあ色々あったんでしょうね
妹が好きだけど妹にはそれほど好かれていなかった
アレクシア・アシュフォード
天才だけど性格悪い
落ち着きのない27歳
ラスボス
焼き討ち
第三形態まで変形する
クリス クリス・レッドフィールド
元空軍
洋館事件で生き残った五人の一人
ロックフォート島には妹を助けにきた
グラサンに恨まれている
グラサンに殴られる
ポニーテール クレア・レッドフィールド
ポニーテール
アンブレラの施設を爆発させていたら捕獲され、ロックフォート島で捕まっていた
二丁軽機関銃 スティーブ・バーンサイド
アンブレラ研究員の息子
ファーザァァァァと叫びながら機関銃を乱射する場面がある、真面目なシーンなんだろうけど正直笑ってしまった