とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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tーVeronicaはアレクシアが開発したウィルス

 月 日

招待された大豪邸に異形の身を隠す丈の長いレインコートを着用したレディと共に向かうことにした。一応は正装をしてから十分な装備を整えて向かった先で、私とレディは大歓迎で迎え入れられる。豪邸の内部に存在する中央広間の中心に黄金で形作られた柱へと絡み付き、自らの尾を噛む漆黒の大蛇へ大粒のルビーの眼球が嵌め込まれていた。中央広間にきっちりと左右2列に並んだ大勢の使用人達が「いらっしゃいませ」と挨拶をしてくる。私達を案内する役目を仰せつかったらしい使用人の1人が「お客様、まずはお酒でもどうでしょうか」と案内されたバーで好みの酒を注文してレディと乾杯しながら飲んでいると不意に嫌な予感がした。その予感はどうやら的中したらしい。何故なら「彼が飲んでいるそれ、わたしにも貰えるかしら、あとこの子にはジュースを用意してほしいのだけれど」紫色のドレスを着用したアレクシアと黒い子供用のドレスを着たエヴリンの姿がそこにはあった。よりにもよって私達の隣の席に座ってくるアレクシアとエヴリン。余りの怒りに思わず酒の入ったグラスを握り潰すレディを何とか宥める。

 

とりあえず「何故君達が此処に居るんだ」と聞いてみると「貴方が呼ばれて来ていそうだから、わたしも来てみたのだけれど正解だったわね。新世界には興味はないけれど、わたしとエヴリンも招待はされて来ているのだから何も問題はないわ」と頼んだ酒を片手に微笑みながら答えてくる。ため息を吐きながら私は「この場で殺り合うのは、無しでいいな」と言うと「此処はお酒を楽しむ場所でしょう。そんな野蛮なことは此処じゃあしないわ」と笑うアレクシアにやる気は無さそうだ。殺意の込められた視線でアレクシアとエヴリンを黙って睨み付けているレディが不安だが、即座に行動に移していないので大丈夫だと信じたい。エヴリンはエヴリンで「このジュース美味しいよママ」とジュースに夢中で平和だが特異菌を自在に操る生物兵器であることを忘れてはいけない。その気になれば一瞬で特異菌を拡散させることが出来るエヴリンは脅威の存在だ。

 

レディの現在の様子を見るとアレクシア達とは距離をおく必要がありそうだ。私はレディを連れてバーを後にすることにした。出ていく時に「また会いましょう、ジョン」と此方に手を振るアレクシアと「またね、パパ」と元気一杯に手を振るエヴリンの姿を見て放電しかけたレディの背を軽く叩いて落ち着かせて退室する。待っていたらしい使用人が「お楽しみいただけたでしょうか」と話しかけてきたので「それなりには楽しめた」と答えて案内を任せるとパーティー会場らしき場所に案内された。使用人が「他のお客様も楽しまれております、どうぞ楽しんで下さい」と言って立ち去っていく。演奏が奏でられる立食パーティーといったところで他の客の姿も幾人か見えるが仮装をしているものが何人か居る。レディの姿に使用人達の反応が無かったのは仮装だと思われていたからか、それとも事前に知らされていたからなのか。どちらであろうと彼等が私達を、もてなそうとしているのは確かだ。

 

用意された軽くつまめる料理を食べてみると素晴らしい味で丁寧な仕事がなされていることが良く解った。レディも満足する味だったようで苛立っていた気分がだいぶ落ち着いてきたようだ。料理を用意してくれた料理人に感謝しておこう。並んで食事をしていると「楽しんでいるかね」と話しかけてくる初老の男性が居たので「ええ、素晴らしい料理ですね」と答える。初老の男性はにこやかに「うむ、確かにこの料理は素晴らしい」と頷いていた。そして初老の男性は「お嬢さんの仮装は気合いが違うのう」と笑ってレディの姿を見ていたので、本当のことは言わずに「ええ、良くできているでしょう」と誤魔化しておく。この初老の男性は何も知らないようだった。無関係な人々まで集められていることに嫌な予感がする。

 

アレクシアとエヴリンもパーティー会場に案内されたらしい。初老の男性は「金髪の美女にもご挨拶をしておかなければのう」と足早にアレクシアの元に向かっていった。何も知らない初老の男性からすれば只の美女なのかもしれないが、年齢は39歳で綺麗な薔薇には棘があるなんてものじゃあなくて棘に致死性の猛毒が付着しているのだがね。まあ、騒ぎを起こすつもりは今はないようだから、初老の男性は今のところは無事だろう。余りにしつこければどうなるかは知らない。引き際を弁えているようだから大丈夫だとは思うが。初老の男性に話しかけられていたアレクシアは私のことを指差して微笑んでいる。アレクシアが何を言ったのか想像がついてしまったが、気付かなかったことにしておこう。初老の男性が此方に戻ってきて「仮装した美女を侍らせておきながら、美人の妻と娘を放っておくとはけしからんの」と言ってきたので「彼女と私は他人です」と本当のことを言ったんだが「そういうことにしておいてやるわい」と笑って去って行った初老の男性。確実に誤解をされている。

 

誤解を解きたいところでパーティーの主催者らしい人物が現れた。それはサングラスを掛けた金髪の男。目測で身長は190cm体重は90kgといったところだろうか。サングラスの男は「まずは、お集まりいただけた皆様に感謝を。この度はわたくしの主催するパーティーに参加していただき誠にありがとうございます。感謝の気持ちで胸が張り裂けそうでありますが、選ばれし皆様の前でそのような無作法な真似は出来ません。盛り上がってきているところに大変申し訳ありませんが、選別を行わせていただきます。勿論選ばれし皆様ならば生き残れることは間違いありません。それ以外の現生人類には相応しい姿になってもらうとしましょう」と言って指を鳴らすとアンプルシューターを構えた使用人達が現れ、パーティー会場に居る全員に向けた。私は懐のホルスターからL・ホークを瞬時に抜くと装弾数の限界数である8連射をして8丁のアンプルシューターを弾き飛ばしてから人間離れした速度で駆けて、初老の男性に飛んできたアンプルを受け止めて投げ捨てる。他の客には位置が遠くて間に合わなかった。アンプルを撃ち込まれた客達はCウィルスでジュアヴォと化す者もいればtウィルスで発症した感染者と化す者も居てどうやら2種類のウィルスを撃ち込まれたようだ。無事で済んだのは私とレディにアレクシアとエヴリンに初老の男性と8人の仮装した客達だけだった。

 

L・ホークに新たな弾装を装填すると、逃げ惑う8人の客に襲いかかろうとするtウィルスの感染者と化した者達の額を撃ち抜いていく。アレクシアもゴールドルガーで感染者の頭部を狙って射撃していた。レディはジュアヴォ達を右腕の爪で切り裂いている。全ての感染者を始末した後にジュアヴォ達の頭部を弾丸で穿っていると頭部を変異させたジュアヴォ達が襲いかかってきた。巨大な口から粘着弾を放ってくるジュアヴォの後ろに回り込むと後頭部に弾を撃ち込み息の根を止める。巨大な昆虫の顎の様な頭部で挟み込もうとしてくるジュアヴォの頭部のコアに銃弾を撃ち込んでトドメを刺す。3匹の昆虫が生えている頭部を持つジュアヴォの頭部を順番に50口径の弾丸を叩き込んでやり処理する。巨大な蜂の胴体を頭から生やして赤みがかった煙を周囲に噴出させて距離をおこうとするジュアヴォの蜂部分の腹部を狙い撃ち、全てのジュアヴォを排除した。突然の出来事に呆気にとられていた初老の男性が「一体何が起こっておるのか全く理解できん」と困惑している。とりあえず「レディはご老人達の護衛をしていてくれ。私は嬉しそうなサングラスの相手をしてこよう」そうレディに命じて私はとても嬉しそうなサングラスの男へと一歩踏み出した。

 

サングラスの男は満面の笑みを浮かべながら「素晴らしいお手並みでした。流石は選ばれし適合者です。選ばれなかった現生人類達とは比べ物になりませんね。使用人達は皆シェリー・バーキンの再現実験により後天的ではありますがGウィルスの適合者となっております。彼等の両親は尊い犠牲となることで彼等に新世界を生きる資格を与えてくれました。実に素晴らしいとは思いませんか」と問いかけてきたので「思いませんね」と答えてL・ホークを発砲するが人間離れした速度で回避される。サングラスの男は笑みを崩さずに「わたくしもまた、ウィルスの適合者でございます。適合したウィルスの名はウロボロス。わたくしも選ばれた存在なのですよ。しかしながらわたくし1人ではこの世界を変えるには力不足だと理解しております。だからこそウィルス適合者の仲間が欲しかったのですよ。貴方達のようなね」と語る男に私は「貴様と一緒にされたくはないな。アレクシアはどうだか知らんが、私は新世界になど興味はない」と宣言する。アレクシアは「わたしも興味はないわね。今の世界でも楽しいものは沢山あるもの。貴方の新世界はとてもつまらなそうね」と嘲笑った。

 

笑みを崩したサングラスの男は「残念ながら、交渉は決裂という結果になってしまいましたが。致し方ありません。貴方がたとわたくしは相容れぬ存在だったようですね。せめてこの手で始末をして差し上げましょう。それでは行きますよ」と言葉を発した瞬間、動き出したサングラスの男は私に向かってきた。顔面を狙い高速で繰り出された拳を躱して、脇腹を狙った蹴りを回避する。腹部に狙いを定めた手刀突きを避けて反撃の中段廻し蹴りを叩き込むが腕でガードされたのでガードごと蹴り飛ばす。吹き飛んだサングラスの男が空中で体勢を立て直し着地したところに急速に接近し、追撃の右フックを繰り出したが左腕で防御されたので防御ごと殴り飛ばした。宙に浮かぶサングラスの男を更に追撃する。上段蹴りを腹部に喰らわせてやり更に吹き飛ばす。適合者としてはスピードは互角だが、パワーは私が勝っているようだ。このままなら私が勝つことは間違いない。腹部を押さえて着地したサングラスの男は使用人達に向かって「アレを持ってきなさい」と言い放った。

 

アレが何なのかはまだ解らないが、この状況を変えることが出来る何かだということは間違いない。アレとやらが来る前に勝負を終わらせる事が出来るだろうか。それは解らないが、とりあえず攻めまくらせてもらおう。腹部を押さえているサングラスの男に迅速に接近し、有り余る力を凝縮した拳を胸部を狙って叩き込むが、両腕を交差して防いでくるので更に拳に力を込めて押し込むように突き進み壁面まで連れていき壁にサングラスの男をめり込ませた。息を吐いて力を緩ませたサングラスの男の両腕を掴み左右に拡げて剥き出しとなった顔面に頭突きを叩き込んでやる。1回2回3回4回5回6回7回8回9回10回にも及ぶ頭突きを喰らいひしゃげたサングラスがずり落ちて露となる蛇の様に縦に瞳孔が裂けた赤い瞳にへし折れた鼻と歯。先程までの面影が欠片もない顔面に変えてやったが両腕を掴んだままで容赦なく膝を無防備な顔面に叩き込んでやる。顔面が陥没するまで膝を顔面にめり込ませ続けて、意識が完全に飛んでいる元サングラスの男の両腕から手を離して手刀突きを男の心臓が存在する場所に狙いを定めて繰り出した。元サングラスの男の胸部の肋骨を砕きながら突き進んだ手刀が心臓にまで到達し、生きの良い心臓を鷲掴み勢い良く引き摺り出す。抉り出した心臓を握り潰して元サングラスの男を完全に絶命させた。

 

結局アレとやらが来る前に終わらせることが出来てしまったが、アレとは一体なんだったのだろうか。残るは使用人達のみだが凄惨な結末に眉ひとつ動かさないあたり荒れごとには慣れているらしいが、主人が死んだにしては反応が無さすぎる。元サングラスの男は完全に死んでいるのでここからの復活はあり得ないだろう。大勢の使用人達をどうしようかと考えていると腕のみをtーVeronicaで変異させたアレクシアが「良いものを見せてもらったお礼に後はわたしが片付けてあげる」と言いながら使用人達を大火力で焼き殺し始めた。会場に現れた使用人が「持ってきました」とアレらしきものが収められた何かを持ってきていたが中身を確認することは出来なかった。アレクシアに「ご苦労様」と笑顔でアレもろとも焼き尽くされてしまったからだ。せめてアレが何だったのか確認したいところだったんだが、それも叶わなかった。まあ、仕方がないことだと諦めよう。さて、ウロボロス・ウィルスに適合した適合者の肉体には死体だとしてもかなりの価値があるが、どうするかな。とりあえず死体の取り扱いは後にして、今は初老の男性達を安全な場所に避難させるとしよう。死体の確保をレディに任せて初老の男性と8人の客を連れ出した。

 

初老の男性が震えながら「お主達は一体何者なのかのう」と聞いてきたが「それは貴方がたは知らなくても良いことです」と答えて豪邸の出口までエスコートする。初老の男性と8人の仮装した客達に「ここまでくれば大丈夫でしょう」と言って送り出した。何度か此方を振り返り歩いていく初老の男性に軽く手を振ってから踵を返し、中央広間に存在する尾を噛む蛇の像の目から拳大で大粒のルビーを取り外してパーティー会場に向かうと、使用人達は全員アレクシアの手で始末されているようだ。そんな惨状の中でエヴリンが背伸びをして立食パーティーの料理を取って食べていた。レディと合流して大粒のルビーをひとつ渡しておくと「これは素晴らしい」と光に透かして眺めるレディはこの土産に満足しているらしい。喜んでくれたようでなによりだ。

 

使用人達を残らず全て焼き尽くしたアレクシアは「また、会いましょうジョン。行くわよエヴリン」と言ってエヴリンに手を差し出す。エヴリンも「また会おうねパパ」と元気に手を振りながらアレクシアに手を引かれて去っていった。ウロボロス・ウィルスに適合した元サングラスの男の死体を担ぐと、私とレディは豪邸を後にする。手に入れた戦利品には満足しているが、次はこのようなことが無ければ良いがな。今回のようにウィルス適合者を集めて新世界を望むものが二度と現れ無ければ良いんだが、あり得ないとは言えないのが何とも言えんな。

 




ネタバレ注意
バイオハザードコードベロニカに登場する武器
ゴールドルガー
金色の2丁拳銃
本編ではキーアイテムの1つとしてある扉を開ける為のアイテムで武器として使うことは出来ないが
バトルゲームではスティーブが武器として使用できる
もう1つの装備のサブマシンガンよりも攻撃力が高い反面、構えや発射の隙は大きめであるが最大の長所はゾンビの頭部を破壊できること
コードベロニカに登場する他の2丁拳銃と違い、銃を構える高さが異なり右側の方が少し高い為、着弾する高さにも差が出る

バイオハザード6に登場するクリーチャー
グラヴァ・スルウズ
ジュアヴォから頭部が変異したクリーチャーで、名前の由来は東欧の言葉で頭と粘液を表わす
巨大な口から常に滴り落ちる分泌液は、強力な粘着性を持っており、これを人間に吹きかけて自由を奪ってから襲い掛かる習性を持っている
弱点は後頭部

グラヴァ・スメッチ
巨大な昆虫の顎に似た頭部を持つ、ジュアヴォの変異バリエーションのひとつ
スメッチは粉砕を意味しており、その名のとおり凄まじい力で獲物を挟み込み粉砕する姿が確認されている
不幸にも挟み込まれてしまうと、いずれの場合も瀕死の重傷を負うことになる
弱点は頭部のコア

グラヴァ・ベグウナツ
ジュアヴォの変異パターンのひとつで、ベグウナツは暴走を意味する
3匹の昆虫が寄生したかのような頭部を持っており、敵に対してみずからを顧みないほどの激しい突撃を行なう光景が目撃されるなど、変異まえと比べて凶暴性が増している
弱点は頭部

グラヴァ・ドゥイム
巨大な蜂の胴体を頭から生やし、煙を意味するドゥイムの名称で呼ばれるジュアヴォの変異体
自身は積極的に攻撃せず、ほかのクリーチャーの戦闘補助のため、視界を奪う煙を周囲に撒き散らすところが確認されている
弱点は蜂部分の腹部

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