とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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レポティッツァのガス攻撃の範囲内に一定時間とどまるとゾンビ化してしまう

 月 日

ウロボロス・ウィルスの適合者の死体という大変貴重なサンプルを手に入れることが出来た。始祖ウィルスをベースに開発されたものの中でも、感染者にもっとも激しい作用をもたらし適合する確率が遥かに低いウロボロス・ウィルスに適合した成人男性の死体は、細胞組織の根本から人間のものとは呼べない代物だ。生前は人間離れした身体能力の持ち主であった適合者はまさしく賢者の石とも呼ばれるウロボロス・ウィルスによって進化をもたらされた存在だった。しかし自身と同等以上の存在との戦闘には慣れていなかったようで戦いでは一方的に攻めることが可能であり、何もさせずに始末することが出来たのは幸運と言えよう。人類創世以来、20万年続いている現生人類の終焉を望み、ウィルス適合者の新生人類のみが生きる新世界を創造することを願っていたようだが、そんな願いを叶えさせるわけがない。

 

非常に迷惑なことを考えていた適合者の男もこうして物言わぬ死体となってようやく私にとって有益な存在となった。この適合者の死体を調べれば、ウロボロスの選別に耐えうる遺伝子を解明することが出来る筈だ。適合者となりえる者が誰であるのか判別することが可能となる。そう多い存在ではないだろうが、現に適合者となった男が死体ではあるが目の前に居るのだから、この男1人だけが適合者となる存在だったとは考えにくい。世の中には他にも適合者がいるかもしれないのだ。それはウロボロス・ウィルスだけではなく、他のウィルスの可能性もあるが、今はウロボロス・ウィルスの適合者の存在を解明するのが先決だ。適合者に限りなく近いだけでは肉体が肥大化して異形の姿となって殺意に突き動かされてしまう為、ウロボロス・ウィルスに完璧に適合する遺伝子を持つ者を識別することが出来るようにならなくてはならない。敵となりえる存在が適合する遺伝子を持っていなければいいんだがね。

 

 月 日

ウロボロス・ウィルスに適合する遺伝子の解析は順調に進んでいる。選別を突破した適合者の死体があるのだから、この進み具合も当然のことだろう。始祖ウィルスに適合した私の遺伝子も一応調べてみたが、ウロボロス・ウィルスの適合者となりえる遺伝子だったようだ。ウロボロスは始祖ウィルスがベースのウィルスであったから、この結果は当然のことだった。私のことはともかく現在判明している遺伝子を持つものが居ればウロボロス・ウィルスの適合者となる存在だ。とりあえず私の部下達や小飼の諜報員達にはウロボロスの適合者となりえる存在はいない。適合者に限りなく近い遺伝子を持つ者は居るが、部下達や小飼の諜報員達を使いものにならない存在に変えてどうするんだという話になる。そんなことをするつもりはないし、させるつもりもない。適合者となりえる人間を見つけたとしても私が強制的にウロボロス・ウィルスを投与する訳ではないし、力付くで無理矢理確保する訳でもなく。監視は付けるかもしれないが、ウロボロス・ウィルスとは関係することなく何事もない日々を過ごしてもらいたいところだ。

 

 月 日

超人的な力を手に入れた人間が悪意を持ってその力を振るえば人間など容易く殺害することが出来てしまう。もしもそうなるようであれば止めなければいけない。ウロボロス・ウィルスに選別されることなく一生を終える人間の方が多いだろうが、もしも悪人が適合者となってしまうようなことがあれば録なことにはならない筈だ。そのようなことが起こらない為にも、現在ウロボロス・ウィルスを持つ組織の動向には注意しておかなければいけない。適合者となりえる遺伝子は大体判別が出来ている。この情報は誰にも明かさないようにしよう。貴重なサンプルではあるがウロボロス・ウィルス適合者の死体も用が済んだら遺伝子の欠片も残さず徹底的に処分することにする。秘匿するべき情報を握ってしまったが、私が漏らさない限りは大丈夫だ。

 

 月 日

遠出して出向いた先で何者かが投与したCウィルスによって変異したレポティッツァによる生物災害が引き起こされた。遠く離れた位置に居るレポティッツァから放たれた人間をゾンビ化する青いガスが辺りに充満して人々が瞬く間にゾンビと化していく。私はL・ホークを懐のホルスターから引き抜くと、ゾンビ化した人々を撃ち抜いていった。全ての人々を安らかに眠らせてからレポティッツァに照準を合わせて連続で引き金を弾く。打ち倒したレポティッツァを調べたところ、どうやらレポティッツァに変異するようにCウィルスを調整していたらしい。偶然ではなく人為的に引き起こされたバイオテロだったようだ。下手人の情報を知る為にゾンビ化せずに生き残っている人々を探し出して話を聞いてみようと考えた私は、辺り一帯を捜索してみた。すると薄汚れた少年の様な少女を発見したので話しかけてみると「何か用かよ、おっさん」と言われる。

 

正確にはおじいさんだが訂正しても妙に思われると思ったのでそれは気にせずに「妙な人間を見なかったかな」と聞いてみると「目の前に居る」と此方を指差してきた。まあ彼女からすればいきなり話しかけてきた妙な人間が私だったのかもしれないなと思いながらも「私以外で頼むよ」と頼んでみると「タダじゃあ教えられねぇな」と手を差し出してきたので私は好きじゃあないが念のために用意していたチョコレートを彼女の手に乗せる。目を輝かせて包みを開き笑顔でチョコレートを頬張る少女だったが食べ終えてから何かに気付いたかのような顔で「違うよ、金だよ。金寄越せよ」と言ってきた。最初からそう言ってくれれば助かったんだがと思いながらも高額紙幣の札束を取り出して手渡す。かなり驚いた顔で「うわっ、普通一枚か二枚だろ。何だよこの量」と困惑しながらも懐にしまいこみ「後で返せって言われても絶対返さねぇからな」と言ってから情報を語り始める。

 

「あんたと同じ余所者の顔は良く覚えてんだ。最近この街にやってきた奴がいてさ、妙な実験をしてるらしいって噂があるんだ。そいつがねぐらにしてる場所も知ってるから案内してやるよ。着いてきな」そう言いながら歩き出した少女に着いていって暫く歩いた先には廃虚と化した教会の姿があった。廃教会を指差して「此所がそいつのねぐらさ」と教えてくれた少女に礼を言い、危ないからもう帰るように促すが「沢山金貰っちまったし、あんたは余所者の顔知らないだろ。着いてくよ」と一緒に来る気満々の少女に確かに余所者の顔は彼女にしか解らないなと考えた私は仕方なく少女を連れていくことに決める。先行は私がすると決めて少女が後ろから着いてくる流れになった。寂れた廃教会の内部はだいぶ荒れ果てた様子だったが、確かに人の生活感が存在している。

 

祭壇の奥には隠し通路があり強引に力付くで道を開けて先に進むと地下へと続く階段があった。辿り着いた地下研究室で現れたゾンビの変異体シュリーカーが雄叫びを上げると、他のゾンビの動きが活性化して素早く走りながら此方へ向かってきたのでL・ホークで全てのゾンビの頭部を撃ち抜いた後に、シュリーカーの膨らんだ喉に弾丸を叩き込んでやる。少年の様な少女は「な、何だこいつら。もう人間じゃねぇのかよ」と言って怯えたように此方にしがみついてきた。しかし思わずしがみついてしまっていることに気付くと素早く離れて「べ、別に怖くなんかねぇし。全然平気だし」と意地を張っている少女の肩に軽く手を乗せて「必ず守るから安心してくれ」と言っておく。更に先に進み存在した幾つかの古びた端末を操作して道を開き、入手したクランクを使い隠し扉を発見する。この研究施設は最近作られたものではなくだいぶ昔に作られたものを現在再利用しているみたいだった。

 

不意に現れたブラッドショットの飛びかかりを迎撃し剥き出しとなった心臓をL・ホークで狙い撃つ。突然現れたブラッドショットに驚いた少女が私の背後に隠れて「うわっ、何だこいつ皮膚ないのかよ気持ち悪い」と悪態を吐く元気はあるようだった。そうして到着した奥底には大量の培養ポッドの中で浮かぶCウィルスを投与された者が変異するサナギが存在している。そして白衣を着た1人の男が端末を操作しながら「今頃はレポティッツァが醜悪な人間達を可愛いゾンビに変えている頃だろうか。待ち遠しいなあフフッ」と弾んだ声で楽しそうに言っていた。この男が下手人で間違いなさそうだ。少女も「あの男が余所者の実験をしてるって噂の奴だけど、噂は本当だったみたいだな」と男のことを睨み付けている。

 

少女の声で振り向いて私達に気付いた白衣の男は「何で醜い人間が僕の研究室に入り込んできてるんだよ。ふざけるなよ本当に本当に本当に」と怒鳴り散らしたかと思えば「さっさと死体になれよ」と言いながら拳銃を此方に向けて発砲してきたので放たれた弾丸を全て左腕義手で掴み取り、開いた義手の手から零れて落ちる弾丸を見た白衣の男と少女が目を見開いて驚いていた。白衣の男は「化け物が」と怯えていて、少女は「おっさん凄いじゃねぇか」と目を輝かせている。拳銃で此方を殺すことを諦めて端末を操作しようとした男の手の甲をL・ホークで撃ち抜き、動きを止めさせて「妙な動きをすれば次は額に孔が開くことになるぞ」と脅しておく。完全に怯えた白衣の男は両手を上げて「降伏するから命だけは助けて」と言ってきた。少女の目の前で降伏してきた奴を撃ち殺すのは教育に悪いかと思ったので降伏を受け入れて男の身柄を拘束することにする。

 

研究資料を回収し、縛り上げた男に潰れない程度の重石を乗せて動けないようにしてから重石の上に読み終えた研究資料をおいておく。後はBSAAを呼び出して男を捕まえてもらうだけだ。少年の様な少女は「銃弾を素手で受け止めるおっさんはもしかしてヒーローだったりすんのか」と目を輝かせて聞いてきたが「とりあえずヒーローではないかな」と答えておくと少女は疑う様な目で「えー嘘だ。絶対ヒーローだろおっさん。悪党倒してるし」と信じてはくれないようだった。頑なな少女に「私はヒーローとは程遠い存在だよ」と言い聞かせても「いやいや正体隠したいのかもしれないけど明らかに普通じゃないし、ヒーローだろおっさん」と笑顔で言う少女。完全に私をヒーローだと勘違いしている少女の説得を幾度も試みるが駄目だった。

 

結局誤解は解けず少女と別れる時に手持ちのチョコレートを全て彼女に渡しておいたら「ヒーローからもらったチョコレートだし大切に食べるよ。じゃあなヒーローの兄ちゃん」と言って少女は去っていく。呼び方が最後に兄ちゃんになっていたのは何故だったのだろうかと思いながらも誤解が解けなかったことを残念に思う。BSAAが到着し、白衣の男が連行されていくのを遠目で見届けたら踵を返して帰路につくことにした。

 




ネタバレ注意
バイオハザード6に登場するクリーチャー
レポティッツァ
Cウィルス感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿
レポティッツァとは、東欧の言葉で「美女」を意味する
その体に空いた穴から噴き出すガスは、吸った人間のほとんどをゾンビに変えるという、恐るべき性質を持つ
ガスの拡散性は、一匹で半径3マイル四方
これまでのバイオテロに使用されるウィルスは、経口感染や血液感染などで拡散するものが主だったが、レポティッツァのガスは空気感染のため、回避することが非常に難しい
弱点は開いた状態の頭部

ゾンビ
人間をゾンビ化するガスによって生ける屍となって人々を襲う亡者
症状はかつてのtウィルスに酷似しているが、生きている人間さながらに走り出す姿や、手に持っている銃や鈍器を使用するなど、行動パターンの数多くに進化のあとが確認できる
弱点は頭部

シュリーカー
シュリーカーはゾンビの一種で、喉をふくらませて大きな音を発し、ゾンビを呼び寄せる特殊能力を備える
また、この音は周囲のゾンビの聴覚や神経を直接刺激し、凶暴化させる効果も持ち合わせている
弱点はふくらんだ状態の喉

ブラッドショット
人間をゾンビ化させるガスでゾンビ化したゾンビの中には、頭部への致命傷が引き金となり、さらなる変異を遂げる個体が存在する
これらは、俊敏な動きで獲物を引き裂く高い運動能力を持っており、全身の筋繊維があらわになった姿から、ブラッドショットと称されている
弱点は露出時の心臓

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