とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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トライセルって本編ではどうなったんでしょうね

 月 日

行く宛がないと言っていた再現実験体の女性に行く宛を見つけ出した。部下の元へ再現実験体の女性を送り届けて拠点に帰ってきたところだ。新しい職場で働くことになった彼女が無事に過ごせるように祈っておく。荒事が多い職場ではあるが素性を聞かれることはないし、十分に鍛え上げているので通用するだろう。再現実験体の女性に餞別として渡したアタッシュケースに詰まっていた大量の金の延べ棒を見た部下は「換金は任せて下さい、良い場所を知っています」と言っていたのでしばらくは金に困ることはない筈だ。働く意思はあるようなので金の延べ棒は生活に必要な物を集める為に使うと思うが、余計な物を買ったりしないで無駄使いはしないように気をつけて使ってくれるといいんだがね。

 

 月 日

同居人も居なくなり1人の生活に戻った。手間のかかる料理は1人でいると作ろうとは思えないので大概は外食で済ませることになる。昼食を何処で食べようか考えていると久しぶりに仕事の依頼が舞い込んできた。多数の組織から連名の依頼で内容は、1人の男の始末だ。マヌエラ・ヒダルゴと同様に繰り返された臓器の移植によりtーVeronicaとの適合を遂げた男が裏社会で暴れまわっているらしく。裏社会の人間を拐いその臓器を自分に移植しているようだ。強引な手法ではあるがウィルスと適合した存在に対抗するには戦力が足りていない為に、多数の組織が連名して私に依頼をしてきたということになる。要するに裏社会で思うがままに跳ね回っている無法者を粛正しろと言いたい訳だ。少々手間のかかる依頼ではあるが、引き受けるとしよう。

 

 月 日

豪火を噴出させるウィルス適合者の頑丈な腕を特殊合金製の槍で力づくに切り飛ばし、溢れ出して発火する大量の血液を躱し、今度は両足を切り落とす。バランスを崩して地面に倒れ込んだウィルス適合者の男の心臓を一突きにして抉り上げてから、首を槍の穂先で切断する。殺害が完了したことを知らせる為に顔がよく写るように撮影した写真を多数の組織へと送り届けて依頼の達成を報告。依頼達成の成功報酬が振り込まれたことを確認してからサンプルを採取して男の死体は焼却処分とする。随分と燃え難い死体だったが何とか処分することができた。これで私の仕事は終りだ。ウィルス適合者の男も無秩序に暴れまわらなければもう少し長生きができただろうに、tーVeronicaの力を手にして振るわずにはいられなかったのか。ウィルスの力に魅せられて欲望を抑えられなくなってしまったのかもしれない。

 

 月 日

依頼を受けた翌日に仕事を終わらせたことを評価したのか、更なる仕事を依頼されることになった。今回は1つの組織からで警護を依頼される。狙われている長の身辺警護をお願いしたいとのことだ。提示された成功報酬も悪くない。特に急ぎの用事はないし警護の期間も長くはないので引き受けることにする。必要になりそうな防弾防刃服を着ていくことにしよう。警護の期間が短いことが気になり調べてみると高齢の長の代替わりが近いらしい。組織の面子を保つ為に代替わりの前に現在の長が殺害されるということは避けたいみたいだ。外部の人間である私にも警護を頼むあたり人手が足りていない様子。新たな長の方に人員を回しているようだ。

 

 月 日

狙撃はライフル弾を直接掴み取り阻止。けしかけてきたプラーガで制御されたマジニを素手で打ち倒すと頭部からプラーガを生やしたケファロや上半身がプラーガと化したデュバリアなどに変化して襲いくるが「P.R.L.412」でまとめて始末する。飛来するキペペオ、地を這うブイキチワ、襲いくるプラーガを「P.R.L.412」で迎え撃つ。そんなことを繰り返している内に長の代替わりが終わりとなり、私の警護期間も終了だ。高齢の長は私の仕事に満足してくれたようで成功報酬は割り増ししておくとのこと。問題なく仕事を終わらせることができた。成功報酬が振り込まれたことを確認してから立ち去ろうとしたが最後に狙撃を行なっていた人物を捕らえることにする。ちょっとしたアフターサービスだ。捕らえた狙撃手は生かしたまま組織に引き渡しておく。長を狙っている相手の情報が少しは引き出せるといいがな。

 

 月 日

セルゲイが開発した猛毒の爪を持つハンターの改良型に強化薬物P30を継続的に投与する赤い宝石の様な体外装置を装着し、強化薬物P30の影響により精神を支配した完全な制御と更に向上した身体能力を持つBOWとしての完成度を高めたハンターが生物兵器市場で売り出され始めている。放たれた銃弾を容易に躱す研ぎ澄まされた反射神経を持つこのハンターは1体1体に体外装置を装着する手間があり値段は通常のハンターの倍以上はする値段だが、それを補って余りある成果を発揮する商品であると紹介されていた。強化薬物P30を開発したのは確かトライセルだった筈だが今は無きトライセルの研究員だった人物が、このハンターを売り出したのだろうか。ハンターは高い運動性能と生命力、そして最低限の命令を理解する知能を残すことができた生物兵器の中でも成功例であり、アンブレラが壊滅したあとも多くの組織に研究が受け継がれ、改良を経て実戦投入が続けられているBOWである。このハンターはその最新型と言えるだろう。

 

 月 日

猛毒の爪を持つハンターの改良型を更に強化したものが生物兵器市場で売り出されてから、猛毒の血清を求める者達が数多く存在したので試しに量産して売りに出してみると飛ぶような勢いで売れた。念の為の備えをしておきたい人間が、多数存在していたらしい。ブルーハーブやグリーンハーブを元に作製された解毒剤では解毒できないほどハンターの爪に含まれている猛毒は強力で、専用の血清でなければ効果がないのだ。元となる血清を持っていた私は容易に量産できたが、私が血清を提供したBSAAとは違い、裏社会の面々はそうはいかなかったようで、対応が非常に遅れていた。一度肝心の血清を手に入れればそこから量産していく技術くらいは持っている筈なので血清が売れるのは今の内だけだ。売れる内に売り切ってしまえばいい。売れなくなったとしても部下達に配布しておけば無駄にはならないだろう。猛毒の爪を持つハンターの改良型を強化薬物P30で能力を高めた生物兵器は世界中に売り出されている。対抗する為に必要となる血清はいくらあってもいい。

 

 月 日

グラスプの周囲の光を回析させて景色に擬態化させる能力を科学的に再現した光学迷彩を作製した。これで透明人間になれる訳だが音や匂いまで消える訳ではないので勘が鋭い人間にはすぐに看破されてしまう可能性がある。それでも有用なものであることには変わりない。最大でおよそ1時間は充電が持つ、世界中に潜ませている諜報員達に届けておくとしよう。彼等ならば有効に活用してくれる筈だ。この技術は極秘にしておこう。万が一流出してしまったら必ず悪用するものが出てくることは間違いない。巡り廻って私に向けられるかもしれない技術だ。諜報員達にも取り扱いには厳重に注意するように呼びかけておくとするか。彼等ならば問題はないとは思うが、物事に絶対はないと肝に命じておこう。進化した私の感覚ならば光学迷彩を見抜くことも容易いが、部下達の全てが看破できる訳ではない。もしも流出が確認されたら警戒を強めるように通達するしかないか。

 

 月 日

青い傘をシンボルマークとして掲げる民間軍事会社のアンブレラはアンブレラの退職者達が設立した会社となる。彼等の目的は「アンブレラの罪の清算」であり、つまり生物兵器根絶を目的とした組織だ。あえて悪名高いアンブレラの名を名乗ることで贖罪の意思を表しているらしい。セルゲイに狙われておりながらも会社が存続しているあたり、かなりの遣り手が在籍しているようだ。恋人がいた方のジョンが生きていればきっと、この会社に務めていたことだろう。彼はあまりにも人間としてまとも過ぎた。アークレイ研究所の非人道的な研究を受け入れることが出来なかったのだから。私とはだいぶ違う人間ではあったが話は合って随分と長話をした時もあったな。恋人がいた方のジョンは私にとっては数少ない友人の1人であった。彼はアークレイ研究所で亡くなったのだ。今ではもう彼を知るものはエイダと私ぐらいしかいない。エイダはどうかは知らないが少なくとも私は彼のことを覚えている。きっと忘れることはない。私が生きている内は必ず。

 

 月 日

トライセルとは、「海運」「資源開発」「製薬」の3部門を主軸とする複合企業体であった。今は無きトライセルの歴史は、大航海時代と呼ばれている時代まで遡る。欧州の豪商であったトーマス・トラヴィス、彼が経営する「トラヴィス商会」こそがトライセルの前身。トラヴィス商会はアジア方面との貿易で莫大な利益を上げ、トライセル海運部門の基礎を築いた。トラヴィス商会は海運貿易会社として順調に発展し、19世紀を迎える。19世紀、トラヴィス家の7人兄弟の末子であった「ヘンリー・トラヴィス」は、私財をなげうってアフリカ探検へと出発した。当時は、デヴィッド・リヴィングストン等のアフリカ探検に関する記事が新聞紙面を賑わしていた時代である。それに触発された形のアフリカ探検であったが、それがその後のトラヴィス商会の運命を決めることになる。

 

ヘンリーのアフリカ探検は大陸全域を対象とし、五度にわたり実地された。彼の探検はトラヴィス家の豊富な資金力に支えられていたため、幾度かの中断の際も本国に帰ることはなく、アフリカ沿岸の街に居を構えて次の探検の準備をするスタイルをとっていたようだ。そのため、彼が帰国したのは五度目の探検が終了した後、実に本国を出発してから34年もの歳月が経過していたと言われていた。そして彼の探検の記録は「博物総覧」と言う全72巻に及ぶ大探検史として世に出されたのである。この本は、アフリカの動物、植物、昆虫、鉱物、地質などの博物学的な内容だけではなく、アフリカに住む人々の生活、文化、習慣、歴史などにも言及した民俗学的な要素も併せ持っており、さながら当時のアフリカ百科事典とも言える内容であった。

 

だが、この博物総覧は全巻が出版されたものの、その緻密過ぎる内容から世間からはヘンリーの創作として受け止められたため、一部の好事家が愛読するだけの珍奇本の類として少部数が出版されるにとどまったらしい。この事態に絶望したヘンリーは、帰国後2年目の夏、失意の内に他界。現在では、これは当時のトラヴィス商会の当主であるヘンリーの長兄が、末弟の本をフィクションだという噂を故意に流したためと言われている。なぜそのようなことをしたのかといえば、トラヴィス商会が、この情報を他者に利用されることを恐れたためであるようだ。現にオズウェル・E・スペンサーが博物総覧を読み、民俗学的な側面からンディパヤ族の儀式に関する記述へと興味を深めて実際に現地へ行き始祖ウィルスを宿す始祖花を発見するに至っている。トラヴィス商会の懸念は正しかったのだろう。

 

トラヴィス商会が特に重要視したのは、地質学的な要素をまとめた第17巻から第24巻の8冊である。この情報を基に、トラヴィス商会は19世紀末、アフリカの鉱物資源開発に乗り出す。これによりトラヴィス商会は、アフリカ各地にいくつものレアメタル採掘鉱山、油田、天然ガス田等を発見、開発し、莫大な利益を上げていった。これがトライセルの資源開発部門の起源である。また、アフリカに確固たる足場を築いたトラヴィス商会は、20世紀中ごろより動植物、昆虫などを積極的に採取し始めた。この採取の際も、博物総覧が積極的に活用されたことは言うまでもない。採取された素材を基に薬品開発を行い、それを事業化したものが製薬部門の設立となった。トラヴィス商会の基礎を築いた「海運部門」ヘンリーが記した博物総覧に基づき開発が進められた「資源開発部門」そして、アフリカの動植物から採取された素材を基に独自の開発を行う「製薬部門」主要3部門が揃った1960年代、トラヴィス商会は企業名を3部門の複合企業体であることを示す「トライセル」に改称し、トライセルが誕生した。

2009年にトライセルアフリカ支社長エクセラ・ギオネがアルバート・ウェスカーに協力しウロボロス計画を企てたことや同社内で生物兵器が開発されていたことが全世界に知れ渡り株価は暴落し、トライセルは倒産となる。まあトライセルにとって不都合な情報を流した私が言うのもなんだが、崩れ去る時はあっという間だったな。

 




ネタバレ注意
バイオハザード5に登場するクリーチャー
ケファロ
頭部を破壊されるなど、重大なダメージを受けたマジニの体内でプラーガが突然変異を起こし、形態を変化させて宿主の頭部から露出した姿
本来プラーガは光に弱く、マジニの頭部を失えばそのまま死滅するが、ケファロは自然光にいくばくかの耐性を有し、失った人間の脳機能をおぎなって宿主の肉体を制御できる
人体からプラーガが長く伸びた姿が、アフリカ原産の塊根性植物ケファロペンタンドラを想起させることから、この呼称がつけられた

デュバリア
ケファロと同様に、宿主の生命活動が停止するのを感知したプラーガが、自己防衛のために急激な変異を遂げたもの
寄生体の本体を強固に守るべく外皮を甲殻のように厚く肥大させており、その体積増大によってマジニの上半身は弾け飛び、ほとんど失われた状態となっている
デュバリアの名は多肉植物の属名から取られたものだが、異称となるキャリオンフラワー、つまり腐肉花という名にもふさわしい異形の姿であると言えるだろう

キペペオ
飛行能力を獲得したプラーガの変異種
宿主であるマジニの肉体の損傷が激しくなると、その身体を捨てて空中に舞い上がっていく
スワヒリ語で蝶を表す呼び名のとおり、細い骨組みに薄い皮膜を張った翼をはためかせてゆらゆらと飛翔する姿は頼りない風情だが、接近を許せば尾のように垂れ下がった部位を獲物の首に巻きつけ、絞首刑よろしく絞め上げてくる
また、ヘリに対して攻撃を仕掛けるなど、その印象に反して空での運動性は高い

ブイキチワ
人間の体内で成長した改良型プラーガが、マジニとして定着せずに宿主を捨て、独立して行動できるように変異した生物
かつて南欧で起きたバイオテロ事件でも、短時間であればこのように活動するプラーガの例が存在するが、こちらはエネルギー効率が改善されたのか寄生せずとも長期間の生存が可能で、野生化して地中に潜み、栄養源となる獲物の訪れを待ちかまえている
スワヒリ語でブイは大グモ、キチワは頭を意味する

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