とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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RE:2ではなくバイオハザード2を元にしています


レオン視点

1998年9月末、20時過ぎ。21歳で新人警官だった俺は、大いに焦りながらラクーンシティへ向かうハイウェイを疾走していた。今日はラクーン市警察に配属された俺の初出勤日だったが、前日の深酒が原因で寝過ごしてこんな時間の到着になってしまったのだ。それまでの居住地から遠く離れたラクーンシティでの勤務のため、恋人と別れることになった俺は明日から勤務だというのにヤケ酒をしてしまった。完全に遅刻だ。だが、この訓告レベルの失態が俺の命を救い、悪夢へと誘うことになる。大遅刻した俺を出迎えたラクーンシティはかつての平和な街ではなかった。ゾンビ達が溢れ出し、武器で迎え撃つ生存者達の抵抗もむなしく、街は戦場のような有様となっていたのだ。呆然とする間もなく、ゾンビに襲われる人影を見つけた俺は、救出することに成功する。それが、連絡の途絶えた兄を捜しにきた女子大生、クレア・レッドフィールドとの出会いとなった。ルームミラーに突如飛び込んできた、車をはね飛ばしながら突き進むタンクローリーの姿。俺とクレアは咄嗟に車外へ飛び出す。タンクローリーが俺達の乗っていたパトカーに突っ込み大爆発を起こして炎上する。炎が俺達を隔てた。警察署に急げとクレアに叫び、俺は俺で警察署に向かう。

 

辿り着いた警察署でクレアと再会した俺は通信機を手渡し、それを頼りに連携を取り合い、滅びつつあるラクーンシティをさ迷う。俺の前に突如現れた謎の女が銃を突き付けてくる。そして俺が生きていると知ると制服姿だからゾンビだと思ったと言って銃を下ろした。女の名はエイダ・ウォン、フリーの記者であるベン・ベルトリッチを捜していたようだ。ベンがいる留置所へ向かう扉が車両によって隠されている。エイダと協力して車両を退かしベンの元へ行く。情報を引き出そうとするエイダにベンは何も話さない。恐ろしいのはゾンビだけじゃないと留置所で危機をやり過ごそうとするベンに残ってどうすると問いかける。ベンはこの奥の犬舎にマンホールがあり、そこが下水道に通じていれば脱出できるかもしれないと語った。下水道へ向かった俺とエイダ。入り口は閉ざされていたが通気口を発見しエイダが進んだ。するとエイダは別の脱出路を探すと言い残して姿をくらました。この時にクレアはシェリーという少女と出会っていたようだ。

 

ベンの悲鳴が署内に響き渡る。駆けつけるとベンが倒れていた。留置所の鉄格子は無惨に破られ、ベンは胸に巨大な爪で引き裂かれたような致命傷を負っている。ベンは署長宛てのメールの写しを俺に託してこと切れた。そのファイルには警察署長ブライアンがアンブレラと癒着していた事実が記されている。俺の元に戻ってきたエイダは事件の真相を探ると言い残して、再び俺の前から姿を消す。全く女って奴はと思わず悪態を吐いてしまう。苛立ちながらもエイダを捜すために歩を進めた。そんな俺に重い足音が近づいてくる。現れたのはゾンビではなかった。左右非対称のその身体は、半身は人間の名残を残すものの右上腕から覗く巨大な眼球が、ただならぬ生物であることを思わせる。鉄パイプを握った手の長く鋭い爪が貪欲に光った。ベンを襲ったのはこの怪物に違いないと俺は確信する。鉄パイプを振り上げると此方へ襲いかかってくる怪物。身を躱して反撃の銃弾を撃ち込んでいく。苦戦の末に怪物を撃退すると、俺は再びエイダの捜索に向かった。

 

エイダを見つけた俺は彼女に向かって叫んだ。俺の言葉に押されるまま、エイダは俺の後に続いた。その時、突如銃弾が俺達を襲う。俺はエイダの盾になるべく身を投じた。最後の弾が俺の肩に命中する。肩から全身に走る激痛が俺の意識を失わせていく。気を失った俺が目を覚ますとエイダの姿がない。痛む身体を奮い起こしてエイダの後を追った。エイダの元に駆けつけた俺は、その場に倒れ込む。ゴミ集積場に身を潜める俺達。俺の傷の手当てをするエイダ。その横顔が俺に一時の安らぎを与えてくれた。機関車に乗り込んだ俺達を窓を割って現れた巨大な爪が襲う。傷を負ったエイダ。車外に飛び出した俺の前には倒した筈の怪物がいた。そして、それは俺の目の前で更なる進化を始める。銃を握り、怪物に銃弾を浴びせていく。その銃弾に倒れた怪物。車内に戻ってきた俺に1人で逃げるように促すエイダ。そんなことはできない。その時、機関車がオーバーヒートした。機関車に電力供給をするべく車外へと出た俺だったが、機関車はエイダを乗せたまま発車していく。呆然と立ち尽くす俺を残して。

 

エイダを放っておけず奔走する俺を冷たい声が呼び止めた。アネット・バーキン、怪物と化したウィリアム・バーキンの妻。よくも夫を殺したというアネットの剣幕は凄まじい。目当てはGウィルスかと断言するアネットが向ける銃口を見ていると肩が疼く。アネットからエイダがGウィルスを奪うために送られたスパイだと聞かされた。その時、俺とアネットの前にタイラントが現れる。走り去るアネット。続いて俺も逃げ出すが、タイラントに追い詰められてしまう。その刹那、銃声が響く。タイラントの背後にエイダの姿を確認した。捨て身の覚悟で戦うエイダの銃弾が遂にタイラントの顔面を捉える。たまらずエイダを叩きつけると、タイラントは真下で燃えたぎる加熱処理プールへと転落していった。駆け寄った俺をエイダはいさめる。お願い、逃げてと言ったエイダに俺達はチームだ一緒に行こうと言ったがエイダは最後の言葉を発すると力なく身体を預けてきた。エイダが叩きつけられたのは動力部であり、自爆装置が起動する。機械的な避難勧告のアナウンスが胸に虚しく響く。この絶望的な状況下でエイダの存在が励みと希望になっていた。君を忘れない、エイダ。

 

シェリーを助ける。エイダを失った今、それが俺に課せられた使命だった。俺はクレアからの連絡を受け、シェリーを連れ出す。プラットホームに到着すると、シェリーを車内に寝かせて思考を巡らせた。早く列車を動かさなければいけないがクレアがまだ来ていない。爆破5分前という無機質で無情な警告と同時に、加熱処理プールへ落ちた筈のタイラントが異形の姿に変化して再び俺の前に現れた。こいつのせいでエイダがという怒りに任せて銃弾を撃ち込むが、タイラントは全く意に介していない。その時だった。何者かが頭上から俺にロケットランチャーを放り投げてくる。これを使ってと言った声の主を忘れる筈がない。忘れられる筈がなかったその声にエイダ、君かと思わず叫んだ。エイダに渡されたロケットランチャーでタイラントを打ち倒し、発車を待つ車内でクレアを待ち続ける。爆破まで時間がない。クレアはまだ現れないが列車を発車させることを決断した。列車がしだいに加速していく。諦めかけた瞬間、クレアがホームに飛び込んでくる。間一髪、クレアは列車に飛び乗った。

 

脱出に成功したものの、シェリーの意識はまだ戻らない。クレアが生成したワクチンを投与した。幾ばくかの間を置いてシェリーは目を覚ます。助けられたと喜ぶ猶予もなく、突如列車を衝撃が襲う。異変を調べるため、後部車両に向かった俺が目にしたものは、原形をとどめていないウィリアムの姿だった。決着をつけるために銃弾を撃ち込むと、それに対してウィリアムは外敵に耐えうるべく更なる進化のために沈黙する。直後、バイオハザード発生を告げる非常警報が鳴り響く。この車両が爆破される前に列車を止めて脱出しなくてはならない。クレアに列車を止めるように促すが運転席のドアはロックされていた。振り返るとウィリアムが活動を再開している。俺はデッキに出ると、列車の屋根伝いに運転席へと向かう。いくつもの操作スイッチに戸惑っているシェリーに運転席の天井を開けた俺がそこのスイッチだと教えた。シェリーは思いきりそのボタンを叩く。トンネル内にブレーキ音がこだまする。列車を降りた俺達は、出口を目指して走り出した。そして外に出ると同時にウィリアムを乗せた列車は爆発。トンネルは炎と黒煙で包まれた。夜が明け始めた外の世界。朝焼けが俺達を照らす。行こう、遊んでる時間はないと言った俺にクレアが行くって何処へと問いかける。行き先を尋ねるクレアに俺は、アンブレラをぶっ潰すのさ、と力強く答えた。その後、事件に深く関わった俺とシェリーは合衆国政府に保護されることになる。

 

合衆国政府に保護された俺は、ラクーンシティの惨劇を生き延びた事実を評価されて大統領直属の特務機関に所属することになった。俺とは別の方法でアンブレラと戦うクレアや、彼女の兄で洋館事件を機に同じくアンブレラと戦い始めた元STARS隊員、クリスとも連携を取ることになる。2002年、俺は米陸軍特殊作戦軍所属のジャック・クラウザーと組んで任務に赴くこととなった。南米某国にあるジャングルの中にある小さな村。そこにいる筈の元アンブレラの研究員を俺達は捜しにきた。捜査対象者は、麻薬王としてこの地に君臨し、その後忽然と消息を絶ったハヴィエ・ヒダルゴと接触していたようだ。ハヴィエの発見が急務となる。少女失踪事件の被害者が50人を超えたことを伝えるラジオの声。遭遇した村人達はゾンビと化していた。彼等の身体に蛇の刺青が彫ってあることに気付くが、それはハヴィエが率いる臓器売買を行う組織聖なる蛇たちが敵に残す印。

 

やがて俺達はハヴィエの潜伏先を知る案内人と合流するが、彼は既に重傷を負っていた。ハヴィエの居城から逃げてきた少女を助け、魔物にやられたという。少女失踪と臓器売買は関連しているのか、案内人はその問いに答えることなく息を引き取った。残された唯一の手掛かりはハヴィエの手を逃れた少女、マヌエラ。俺達は少女とともに居城へ向かう。麻薬王の名を冠したダムを進む俺達の耳にハヴィエの声が響いた。ハヴィエは少女に言い訳をするように語る。全ては娘であるお前のため、と。その刹那、流れ込んできた大量の水が俺達を飲み込む。俺達は再び合流すると、マヌエラは腕に巻かれた包帯を外してtーVeronicaに侵された姿をさらし、不治の病を治すために父ハヴィエに投与されていたことを打ち明ける。母もまた同じ風土病を患い、命を落としたという。tーVeronicaを知る俺は、何故ウィルスであるtーVeronicaが発現しないのかという疑問を抱いた。しかし今はハヴィエの居城を目指すのみだと疑問を振り払う。クラウザーは、いずれ脅威となる筈のマヌエラを今の内に始末しようと切り出すが、この作戦はウィルス根絶を目的としており、大統領の特命であることを俺は明かした。tーVeronicaを抑制する方法を得るために協力してほしいと申し出た俺に、クラウザーは固い握手で応えてくれた。

 

ハヴィエの屋敷に入ると、俺達が捜していた元アンブレラ研究員の無惨な姿がそこにはある。さらに目に飛び込んできたのは、失踪した少女達と大量の臓器、そして手術台。姿を現したハヴィエが話したことは衝撃的な内容だった。15年間臓器を入れ替え続ければtーVeronicaを抑制できる。娘のためとはいえ、あまりに非情な行為。怒りを露にする俺の感情の矛先をそらすかのごとく、巨大BOWを差し向けてきた。化け物が射出してきた棘によりクラウザーが左腕を負傷することになるもBOWを退ける。化け物は絶命の瞬間、触手をマヌエラの頬へと伸ばす。彼女がお母さんと呟くと、不気味な生物は涙を流し動かなくなった。地上に出るとクリーチャー化したハヴィエが待ち構えている。激化する戦いの最中、突然マヌエラが飛び出す。身を挺して止めに行った俺を踏み潰さんと脚を突き立てる化け物。それを払いのけたのはtーVeronicaの力によって炎に包まれたマヌエラの腕だった。マヌエラの援護により形成は逆転、ハヴィエを見事に撃破する。

 

夕焼けの空に戦い終えた俺達を運ぶヘリが飛んでいる。マヌエラの身柄は米国政府に保護され、厳重な管理体制が敷かれたが、その後tーVeronicaが発現することはなかった。クラウザーは左腕の傷が回復せず除隊し、消息を絶つ。事故によって死亡したとの情報があるが死体は見つかってはいない。オペレーション・ハヴィエを解決し、大統領からの信頼を得られるようになった俺はやがて極めて重大な事件解決のため2004年にヨーロッパに派遣される。この時点で既にアンブレラ社の倒産が確定していた。通信機にバックアップする本部から連絡が入る。ターゲットの名前はアシュリー・グラハム。大統領の一人娘。数日前、アシュリーはマサチューセッツ州の大学で、謎の集団に拉致された。大統領から救出の特命が与えられて、唯一の手掛かりは、これから向かう先にある村で、黒装束の集団が彼女に似ている女性を連れていたとの目撃情報。通信を切ると手始めに村の入り口に建つ家に向かう。アシュリーの写真を屋内にいる男に見せて情報を聞き出そうとするが、反応は良くない。歓迎されていないことは良く解ったので出ていこうとすると背後から男が手斧で襲いかかってくる。ゾンビのようには見えないが異様な雰囲気がした。動くな、止まれと言っても男は止まらない。引き金を弾くと男を弾丸が貫いた。床へ倒れた男は、もう動かない。

 

得体も知れない狂気が這い寄ってきていることを感じる。辿り着いた村の様子を窺っていた俺は双眼鏡から目を離す。村に向かうと家の中で見つけた白骨の山、来訪者への火炙り、常軌を逸した村人達。村へと侵入した俺を指差し大声を張り上げる村人。四方から集まってくる村人達。数が多すぎる。一軒の家屋に逃げ込んだ俺を村人達が包囲していく。扉の外から聞こえるエンジンの駆動音。窓越しにチェーンソーを持った村人の姿が見える。悪くなっていく状況下で不意に鐘の音が聞こえた。押し寄せていた村人達の動きが止まる。村人達は踵を返し、何かを呟きながら、村の奥に建つ屋敷の中へと消えていく。村の中には俺だけが残された。農場を抜けた先の廃屋で揺れているクローゼットを発見。扉を開けると後ろ手に縛られた黒髪のラテン系の男が転がり出てきた。縄を解かれながら、ラテン男が問いかけてくる。奴等とは違うのかと、それにあんたはどうなんだと答えた。拘束から解放された男は尋ねてきた、一つ大事なことを聞かせてくれと前置きしてから、たばこあるかと聞いてくるラテン男にガムならと答える。

 

会話を中断した。農具を持った2人の村人が現れたからだ。村人達の背後から、黒く煤けたロングコートを着た大男が現れた。左右の目の色が違い、禿げ上がった頭とは対照的に、口元には黒く縮れた髭を生やしている。ラテン男がここのボスだと呟く。村内をくまなく捜索して事前に入手していたメモに書かれていた村長の署名ビトレス・メンデス。どうやらこの大男がメンデスらしい。メンデスに渾身の廻し蹴りを放つ。しかし、メンデスは右の掌で踵を受け止めると表情を変えずに俺を宙へ放り投げる。投げ飛ばされた俺は壁に激しく叩きつけられて意識が遠のいていった。ぼんやりと浮かぶ紫のフードを被り杖を手にする老人の姿。弱き人間よ、我らの力を授けてやろうという言葉のあとに首筋に針で刺されたかのような痛みが走る。やがてお前もこの力に逆らえなくなると言った老人。俺に何を注射したんだ。意識を取り戻した俺は、どこかの納屋の中にいた。後ろ手に拘束具をはめられ、背後のラテン男と繋がれているようだ。ラテン男と会話してみると名前と経歴が解った。ラテン男の名前はルイス・セラ、マドリッドの警官であったらしい。俺も元警官でラクーンシティに配属されていたと語る俺に話しかけていたルイスの話が止まる。納屋に大きな斧を引き摺った、血塗れの村人が入ってきたからだ。

 

何とかしろ元警官だろと言うルイスにお前もなと言葉を返す。村人が俺達に向かって斧を振り上げた。咄嗟に身を屈め、腕を伸ばす。振り下ろされた斧が俺達を繋ぐ拘束具を打ち壊した。続けて攻撃してきた村人を倒したが、気付くとルイスの姿が消えている。納屋から出た俺に此方だと呼びかける謎の男。着いていくと男はコートの内側に仕込んだ武器の数々を見せつけてくる。この男は武器商人であるようだった。武器商人から武器を購入し、幾多の障害を乗り越えて辿り着いた簡素な礼拝堂。鉄格子を開ける仕掛けを解いて扉を開く。アシュリーは最初警戒していたが語りかけて素性を明かすと助けがきたと目を輝かせていた。とりあえず、此処から出ようとアシュリーを促して礼拝堂に戻り梯子を下りて出口に向かう途中、背後から声が響く。その娘を返してもらおうかと言った声の主は紫色のフードを被り杖を持った老人だった。我らの力を与え、そして返すと言った老人にアシュリーが、はっとして呟く。レオン、首に何かされたわと言うアシュリー。アシュリーに何をしたと問い詰めるとその娘には種を植え付けたと言う老人。

 

サドラーと名乗った老人が君達に植えたのは特別でね、卵が孵化すれば、君達はわたしの思うがままに行動すると言い放つ。その時、フードを被り、炎が灯るボウガンの矢を構えた男達が現れた。俺はアシュリーの手を取ると、ステンドグラスへ駆け出し、突き破って外に飛び出す。教会から東へ向かう途中も村人からの襲撃は続いたが突如として追撃が治まる。このチャンスを逃す訳にはいかない。先を急ぐ途中で一時的に避難した小屋でルイスと遭遇。しばらく会話を続けたところでお前達の症状を抑える薬があるとルイスが言い出した。そいつを取ってくると言い出したルイスを見送りヘリの降下ポイントへ向かう俺達の前に怪しげな小屋が現れる。アシュリーを外に待機させ、鉄製の扉を開けて侵入した。遭遇した村長のビトレス・メンデスを打ち倒して義眼を手に入れる。そうして村の最後の門を義眼を用いて開けた。城の正門から入った俺達を迎えたのは甲高い笑い声。

 

声の主は2階のテラスから此方を見下ろしている。まるで中世の貴族のような服装の小さな男。その左右には衛兵のようにフードを被った2人の男を従えている。ラモン・サラザールと名乗った男。この城の城主らしい。サラザールは笑い声を上げ、両脇に従えたフードの男達とともに姿を消す。古城の中は迷路のようだ。通路を進む最中アシュリーが咳き込む。指の隙間から血が流れていた。吐血したアシュリーに大丈夫かと声をかけた俺を振り切り駆け出したアシュリーが罠にかかり拘束具に捕らえられ、壁ごと反転して姿を消す。古城西側の広間で探索していた俺の背中にいきなり銃口が突きつけられる。手を上げてという女の声に女性には手を上げない主義なんだと答えた。上げなさいと言う女に振り返りながら相手の利き腕を巻き込むようにして掴み、肩を押さえ込む。間をおかず、女は銃を捨てて腕のひねりをほどくように上体を屈め、俺が掴む銃を蹴り上げた。宙に浮く銃の動きを追うように前転する彼女は着地と同時に銃を受け止めるつもりだ。だがそれよりも早く俺は鞘から引き抜いたナイフを女の首に突きつけていた。赤いドレスを着た黒髪の女性。見覚えのある顔。サングラスを外して、レオン、久しぶりねと言った女性はエイダだった。6年ぶりの再会。合衆国政府での任務を受ける最中、エイダに似た女の噂は耳にしていた。ウェスカーの組織に入っているらしいと聞いている。エイダはルイスからのプレゼントと言って薬剤が詰まった瓶を放り渡してきた。

 

貴方達の症状を抑えるための薬だから直ぐにでも飲んだ方が良いと思うわ、もう1人のお嬢さんもねと言ったエイダ。ルイスはどうしたと聞くと安全な場所に今頃エスコートされているところねと笑うエイダにこんなところで何をしていると聞いた時、床に落ちていたサングラスが閃光を発した。目を庇った瞬間、エイダは瞬時に銃を拾い上げて窓際まで下がっている。またね、そう言い残すと窓の外に姿を消したエイダ。拘束具で捕らわれたアシュリーを救い出したものの、宙を飛ぶ人間大の羽虫にアシュリーを連れ去られてしまう。塔の最上部に設けられた祭壇にサラザールが立っていた。祭壇の奥の壁には巨大な生物が壁に根を張っている。巨大な生物と融合したサラザールを打ち倒した俺を待っていたかのように船着き場に現れたエイダ。彼女の操作するモーターボートの助手席から俺は建ち並ぶ工業施設を眺めていた。彼女の横顔を見つめていると視線に気付いたエイダは急にハンドルを回し、ボートを崖下に着けるとフックショットからワイヤーを射出し、島の断崖を上がっていく。またね、レオンと言葉を残して消え去るエイダ。蛇行するボートを慌てて修正しながら俺は呟いた、なけるぜ。

 

島に上陸し戦闘員達を倒しながら進んでいった先でアシュリーと合流することができた。岩盤掘削用の車両に襲われたり、ゴミ集積場にダイビングするという危険な場面もあったがなんとか切り抜ける。地下通路の逃げ込んだ部屋で俺達を待っていたサドラー。サドラーが俺に向けて左手をかざした。胸の奥に耐え難い激痛が走り悶えることしかできない。サドラーの左手がアシュリーにむけられた。さあ、こっちへ来いアシュリーと言ったサドラーの言葉に従うアシュリーの目は村人達と同じような赤い色の輝きを放ち、導かれるままサドラーの前へ進んでいく。苦痛が和らいだ時、既に2人の姿はなかった。震える足で立ち上がりながら、自分達の症状を意識せざるを得ない。エイダから渡されたルイスの薬を飲んでいたにも関わらず、この有り様だ。連れ去られたアシュリーの後を追って地下に広がる施設内を進んでいく。ここは教団の施設というより、大規模な研究施設のように見える。背後に気配を感じて振り返ったが誰もいなかった。しかし頭上から迫りくる何者かから発せられる殺気を感じ取り、後方へ跳ぶと、体重を乗せたナイフが床に突き立てられる。ナイフがかすっていた頬から血が垂れた。ナイフを手にした男が顔を上げる。

 

久しぶりだな、レオンと言った男の顔は見覚えのある顔だった。クラウザー、と名前を呼ぶ。かつてともに死線を潜り抜けた陸軍兵士。クラウザーは2年前、事故で死んだ筈、と言いたいのかと言いながらナイフを回し、一定の間合いを取り、此方の周りを歩いている。アシュリーを連れ去ったのはお前かと問いかけるとクラウザーは、なるほど、やはりオレとお前はコインの裏表という訳だ、察しがいいと言ったかと思えば、いきなりナイフを振るう。俺は刃先を躱すと、クラウザーの顔へ向けてナイフを突き出す。クラウザーは上体を反らして躱し、間合いを取った。突きと払いの応酬が続く。組み合う格好になり、クラウザーに腹を蹴りつけられ、床に蹴り飛ばされる。落としたナイフを拾う間もなく、頭上に覆い被さってナイフを振り下ろしてくるクラウザー。その腕を受け止めるがナイフの切っ先がジリジリと喉元へ迫ってくる。銃声と同時にクラウザーのナイフが弾け飛び、俺はクラウザーの腹を蹴って立ち上がった。やはり何処かのメス犬だったか、そう言って銃を構えるエイダを見返すクラウザーは人間離れした跳躍力を見せつけると俺に向けて警告をして姿を消す。

 

地中を掘って作られた通路の途中で、クラウザーが仲間に宛てたメモを発見する。クラウザーが教団に近付いた目的はプラーガのサンプルを奪取することだったようだ。クラウザーはウェスカーの指示に従ってエイダと連携していたが、今や足並みが乱れている。地下通路から地上へ出ると、そこは古代都市の遺跡だった。そこで再びクラウザーと戦うことになる。寄生体の力を解放したクラウザーを打ち倒し集めたレリーフで先へと進んだ。島の奥に建つ施設に潜入した俺は遂にアシュリーを発見した。彼女は巨大なカプセル状の装置に入れられている。駆け寄ろうとした俺に、背後からサドラーの声が響く。サドラーは地を滑るように接近し、右の掌底で胸を突いてくる。身動きひとつできず、後方のカプセルに激突した。胸部の激痛で咳き込む俺へ歩み寄りながら、サドラーは笑みを浮かべている。けたたましい銃の連射音がサドラーの歩みを止めた。エイダはマシンピストルを連射しながら叫んだ。レオン、今よという言葉に背中を押されてカプセルからアシュリーを助け出す。エイダに促され、俺はアシュリーを連れて出口へと向かう。背後では再びマシンピストルの連射音が聞こえ、続いて何かが爆発する音が響く。

 

アシュリーを連れて逃げる途中でプラーガに関する記録を見つけた。それによれば、プラーガが成体になる前なら特殊な放射線で、体内の寄生体のみを死滅させることが可能らしい。この記録の筆跡はルイス・セラのものだった。彼が残した個人的な記録が俺達の希望を繋いだ。手術室を見つけた俺達は自動化された放射線治療の装置を発見すると、まず俺が手術台に上がった。危険性がないか確かめるためだ。放射線が体内のプラーガに照射され、思わず呻き声を上げる。全身の神経が焼かれる激痛が俺を襲う。痛みはあったがプラーガの除去は完了した。続いてアシュリーが手術台に上がる。プラーガに寄生されたのはアシュリーの方が先だった筈だがエイダから渡されたルイスのカプセル薬剤が効いていることを祈りながら、俺は放射線の照射を開始した。苦痛の叫びを上げる彼女と同様に、体内のプラーガも身をよじらせている。照射が止まり除去完了と表示された画面。ゆっくりと目を開いたアシュリーは俺に抱きついてきた。無理矢理負わされた重荷から解放され、これまでこらえていた感情が溢れ出たのだろう。俺は彼女の肩に手をかけながら言った、さあ、家に帰ろう。

 

アシュリーと屋外に脱出した俺は周囲の様子を確認した。鉄骨が剥き出しの巨大な塔が建っている。誰かに見られているような張り詰めた空気を感じ、アシュリーを待機させて、俺はリフトで鉄塔の上に出た。鉄塔の頂上部には、縄で縛られたエイダが宙吊りにされている。俺達を逃がそうとして、逆に捕まってしまったのだろう。その傍らにはサドラーが立っていた。俺の体内の寄生体を操ろうと奴は右手を此方に掲げながら歩み寄ってくる。俺はナイフを投げ、エイダを拘束するロープを断ち切った。それを眺めながらサドラーは笑い声を上げている。おもむろに開かれた口から巨大な眼球が現れた。3つの目で此方を見つめるサドラーの身体が激しく震え出し、変化が起こる。巨大な節足動物のような怪物に変貌したサドラー。苦戦する戦いの最中、これを使って、というエイダの声が聞こえたかと思えば脇へ何かが落とされる。それは使い捨ての赤い弾頭を持つロケットランチャーだった。拾い上げたそれでサドラーの身体を狙い撃つ。射出された弾頭が怪物の身体に突き刺さり、閃光に包まれる。爆発は肉片を四散させると、怪物の身体は煙を上げながら崩れ落ちた。

 

終わったようね、と言ったエイダは鉄塔の端まで駆け出すと、そのまま鉄塔から跳躍して待機させていたヘリに飛び乗る。貴方も早くこの島から出た方が良さそうよ、と言うと何かの装置を取り出してスイッチを押して見せた。思わず押すなよと言った俺に、これ、あげるわ、と言ってジェットスキーの鍵を投げ渡すと、彼女を乗せたヘリは水平線へ向けて遠ざかっていく。エイダからの贈り物であるジェットスキーの鍵についているキーホルダーの熊が揺れている。言葉が漏れた、なけるぜ。鉄塔を下りた俺はアシュリーの手を掴むと、有無を言わさず駆け出し、海へ通じる水路へ急ぐ。そこに止められていたジェットスキーにエイダから受け止った鍵を差し込むと、エンジンが起動した。走り出したジェットスキー。背後から聞こえる轟音が水路の中に響き渡る。水路の後方から津波が押し寄せてきていた。ジェットスキーのスロットルを限界まで開いて加速する。津波に呑み込まれる前にジェットスキーは広い海原へと飛び出した。後はアシュリーを本国に送り届けるだけだ。ジェットスキーのスロットルを開き、陸を目指して海面を疾走した。

 

生還していたルイスがBSAAに保護されたようだ。プラーガに対するアドバイザーとして働いていくつもりらしい。BSAAに保護される前の期間は何をしていたのかとルイスに聞くと若作りの妖怪に保護されていたとよく解らないことを言っていたな。2005年のハーバードヴィル空港テロ事件の際にはNGO団体テラセイブの一員となっていたクレアと再会し、彼女とともにGウィルスに絡んだウィルファーマ社首席研究員フレデリック・ダウニングの陰謀を解決することになる。2011年に設立されたDSOのメンバーとなり極秘任務をこなす日々を送っていると2013年にアダム・ベンフォード大統領と共にトールオークスを訪れてラクーン事件の真実についての講演を行うことになった。ラクーンシティからの生存者としての観点から講演を行うことになり、精一杯できる限りのことを話したつもりだ。拍手で迎えられたが、どれだけの人の心に言葉が届いたのかは解らない。アダム・ベンフォード大統領の講演は何事もなく終わった。

 

新たな任務を遂行している最中、エイダと再び出会うことになる。今回は何が狙いなんだと聞くと今は休暇中だから個人的なことねと微笑むエイダ。それが本当だとしても油断はできない。エイダのことを情報として知っているらしい同僚のヘレナが銃を抜きかけたのを止める。腕は優秀だが少々ヘレナは血の気が多い。エイダに振り回されるのに慣れている俺以外の人間には、苛立たしい相手なのかもしれないがな。またね、と言ってフックショットで去っていくエイダを見送りながら、貴方の知り合いは胡散臭いわね、と言うヘレナを宥める。神出鬼没のエイダに、血の気の多い相棒。この任務は前途多難だな。まあ、女に振り回されるのには慣れている。何が起こるかは解らないが、切り抜けていこうと思う。それが俺にできることだ。

 




ネタバレ注意
バイオハザード2に登場する人物
ベン・ベルトリッチ
超一流の腕を持つフリージャーナリスト
功名心が強く金にもうるさい男だが、危険を冒してまで不正を暴こうとするジャーナリスト魂に満ち溢れた人物でもある
ラクーンシティで続発する猟奇殺人事件に不審を抱き、真相を探るために街を訪問
その過程でブライアン・アイアンズ署長の不正を調査したために、ラクーン市警察の留置場に拘置されていた

アネット・バーキン
Gウィルス研究の第一人者であるウィリアム・バーキンの妻
夫の研究を陰で支え続けた彼女は、元はアークレイ研究所の研究員で、ウィリアムが主任研究員時代に知り合った女性である
結婚後、ウィリアムが新種のGを発見する2年前に娘のシェリーを出産

バイオハザード4に登場する人物
ビトレスメンデス
村の村長
長いアゴ髭をたくわえ、トレンチコートに身を包む大男
ロス・イルミナドス教団の神父でもあり、敬愛するオズムンド・サドラーの手足となって働く忠実なる部下である
一般のガナードとは異なる支配種と呼ばれる寄生体を宿しており、常人離れした怪力を得ながらも完全に自我を保っている

ラモン・サラザール
アシュリー捜索の対象となった地域を代々統治してきたサラザール家の8代目当主
家族を持たない孤独をロス・イルミナドス教団の教祖オズムンド・サドラーに付け入られたサラザールは、領民達を守るべくロス・イルミナドス教団を弾圧してきた先代達の意思に背き、サラザール城に封印されていた寄生体プラーガを解放してしまう
サドラーに心酔した彼の全面的な協力によって教団の力は領内に広まり、やがて全ての村人が信徒となってしまった
自らも支配種プラーガを体内に受け入れており、城の邪教徒を統率する

オズムンド・サドラー
ヨーロッパのとある地方に古くからある宗教団体、ロス・イルミナドス教団の現最高指導者
地域の現領主サラザールの協力を得て、いにしえより教団が用いていた寄生体プラーガを用いた布教法を復活させる
プラーガには宿主をコントロールする能力を持つ従属種と、それらを統率する支配種が存在し、これらの性質を利用してサドラーは地域において絶対的な権力を手に入れた
しかし彼の欲望はこれにとどまらずプラーガの力で世界をも支配しようと目論み、その足掛かりとして合衆国大統領の娘アシュリーの誘拐を計画
まずは大国を中枢から操り、やがて全世界に君臨する野望を抱いている

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