とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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後日談その6

 月 日

走り回る子供達、あくびをしながら歩いていく男性、平穏そのものといった日常の風景。街中を歩く人々の中で平穏を噛み締めていると日常の風景は一変する。街中で突如としてウロボロス・ウィルスを投与された男性が遺伝子の選別の過程で適合する遺伝子を持っていなかったために暴走状態となり黒い触手状の生命体が集合と離散を繰り返す異形へと姿を変えた。周囲のあらゆる有機物を摂取して成長を続ける暴走状態のウロボロスはその魔の手を此方にも伸ばしてくる。変形した左腕義手の火炎放射器による火炎放射で、炎上させたウロボロスの腕のような部位に露出するオレンジ色のコアをL・ホークで撃ち抜いて破壊するとウロボロスは活動を止めた。問題はウロボロスではなくウィルスを投与した人物だ。街中で人混みに紛れて逃走しようとした下手人を追いかけると通行人に再びウロボロス・ウィルスを投与する下手人。先ほどの男性とは違い適合したかのように思えたが結局は適合せずに暴走して変貌しウロボロス・ムコノと化した。先ほどのウロボロスよりも大型だが熱に弱いという基本的な弱点は変わっていない。変形した左腕義手から連続で発射した焼夷弾が着弾し大炎上するウロボロス・ムコノから露出したコアを破壊して打ち倒す。

 

逃げ出した下手人を追い詰め、拳銃で自決しようとした下手人の動きを上回る速度で動いて拳銃を弾き飛ばした。自白剤を投与して情報を吐かせたところによるとウロボロス・ウィルスによるバイオテロを計画していた組織の一員だったらしい。今回はそのバイオテロの第一回だったようだが偶然居合わせた私にウロボロスが排除されて計画が狂ったと考えて逃走を図り追いかけてくる私に向けて再びウロボロスを差し向けたが、瞬く間に排除されて追い詰められたので機密保持のために自決しようとしたとのことだ。バイオテロを計画している理由は、世界を選ばれし者だけが生き残るウロボロスで埋め尽くすことで汚れきったこの世界を浄化すると考えている。そんな危険な思想を持った連中が大勢いるみたいだ。何とも傍迷惑な連中だな全く。とりあえず問題の組織の拠点の位置は、この下手人が知っているようだから場所を聞き出してご挨拶に伺わせてもらうとするか。危険な連中には早いところで消えてもらおう。

 

 月 日

到着した問題の拠点に侵入すると機関銃で武装した構成員達が銃を乱射してきた。弾丸を躱しながら接近し銃を奪い取り額に弾を撃ち込んでいく。頭部の一部分から血を噴き出して倒れ込んでいく構成員の数が次々に増えていった。確実に一発で仕留めていったので奪い取った銃が弾切れになる頃には生きた構成員がいなくなる。落ちている銃から弾倉だけを取り外していき空になったそれと交換して余りは予備の弾倉として懐にしまっていく。拠点の奥まで進み組織の首領の元へ向かうと首領は自らにウロボロス・ウィルスを投与していた。人間の形を保ったまま肥大化したような変異を遂げた首領は殺意のみに支配された意思で此方に襲いかかってくる。変形した左腕義手から放たれる火炎の放射が組織の首領を炎上させていく。身体が熱いと叫びながら胸部にコアを露出させた組織の首領の露となったコアめがけて機関銃を全弾発射。撃ち尽くした弾倉を取り外し新たな弾倉を装着して撃ち込んでいく。先ほど手に入れた弾倉を全て使い切っても組織の首領は倒れない。変形した左腕義手から焼夷弾を発射して組織の首領を燃え上がらせてコアを剥き出しの状態にさせてやりコアに手刀を叩き込んで無理矢理抉り出してトドメを刺した。これでウロボロス・ウィルスによるバイオテロを計画していた奴等は排除できたな。後は拠点に残されているウロボロス・ウィルスを全て処分しなくてはいけない。悪用されることがないように全て消し去っておかなくてはな。

 

 月 日

アフリカで手に入れて以来すっかり相棒のような存在となったL・ホークの整備を行う。一度分解してパーツの痛み具合を確認してから新品のパーツを組み込んでいく。10インチバレルに換装したこの大型拳銃の重さは優に2kgを越えているが私にとっては軽いものだ。50口径で長銃身へとカスタマイズされたL・ホークの反動はかなりのものになるが私ならば完全に反動を抑え込める。L・ホークに装弾されているアクション・エクスプレス弾は、貫通力を重視したものではない。弾頭は硬質金属で覆われていないホローポイントタイプで、弾速も比較的に遅く。鉛の大口径弾は、着弾すると同時に弾けてその凄まじいエネルギーを拡散させ、標的の内部をズタズタに引き裂くのである。防弾着の上からでもその衝撃で人を死に至らしめる代物だ。そんな代物をいつも使ってきたがL・ホークには今まで随分と助けられてきた。アフリカでL・ホークを見つけられて良かったと思う。ウェスカーを追い詰める一助にもなったからな。これからもL・ホークを頻繁に使っていこうと思っている。L・ホークの整備も何事もなく完了した。これで問題なくL・ホークを使うことができる。出番がない方がいいことなのかもしれないが、いざというときに使えないよりかは良いだろう。

 

 月 日

出向いた先で手に入れた数々の品々の1つである蛍石の髪飾りをエヴリンに着けてやると「ありがとう、パパ」と言ってエヴリンはとても喜んでいた。宝飾のある砂時計を息子に渡すと息子は「ちょうど砂時計が欲しかったから助かるよ、ありがとう、パパ」と笑顔で受け取る。駒もセットで存在する豪華な装飾のチェス盤をアレクシアにプレゼントするとアレクシアは嬉しそうに笑って「今度勝負しましょうね」と言ってきた。とっておきの輝く妖光蝶のランプを飾っておくと家族皆が「綺麗」と言って眺めている。集めた宝の数々は換金するのも良いが、鑑賞用にするか実際に実用するのも悪くはない。宝の使い道は持ち主が決めるものだ。他にもスピネルやヴェルベット・ブルーなどの宝石も大量に手に入れてはいるが此方は換金してもいいかもしれないな。そう何個も持っていても嵩張るだけだ。スピネルとヴェルベット・ブルーは全て売り払ってしまっても構わない。数が数だけに全部売ればそれなりに懐は暖かくなりそうだ。その金で家族に何か買ってやるとしようか。何か欲しいものがあるか聞いてみるとするかな。エヴリンは蛍石の髪飾りで満足している様子。息子も宝飾のある砂時計だけで十分らしい。アレクシアは豪華な装飾のチェス盤で勝負ができればそれでいいみたいだ。全員何も欲しがっていないのでとりあえず貯金しておくことにする。今日じゃなくてもいずれ何か欲しいものが決まった時のために貯金して残しておけば必要な時に使えるだろう。

 

 月 日

依頼されて向かった先で遭遇したのはある意味懐かしささえ感じる生物だった。人間の名残を残す顔に皮膚を剥ぎ取り赤黒い筋繊維を剥き出しにしたかのような肥大化した両腕。右の二の腕が割れて覗いた巨大な眼球がその生物がGであると証明していた。そいつが一足ごとに歩く度にずしりと重々しい音が響き渡る。随分と見かけ以上に高密度らしいG生物に向けてL・ホークの引き金を弾く。着弾した50口径の弾頭。体内で柔らかな鉛が飛散し、内臓や骨を原型を留めぬまでに粉砕する。連続して引き金を弾きながら反動を完璧に抑え込み正確な射撃を行なっていくと生命力の高いG生物でも生命を維持できなくなるほどのダメージが与えられたのか倒れ込んだG生物。これで終わりだと思えるほどG生物は甘くない。撃ち尽くした弾倉を抜き取り新たな弾倉を装填する。想定通りより強靭に変異を遂げたG生物が起き上がった。右手でL・ホークを連射して牽制し左腕義手を変形させる。義手からせり出した荷電粒子ライフルの銃口をG生物に向けて発射した。分子レベルで生物として重要な器官を破壊されたG生物が再び倒れ込んだ。倒れ込んだG生物に高性能な爆薬を幾つも設置していく。退避が完了したところで爆薬を起爆してG生物を木っ端微塵とした。これで完全にトドメを刺すことができたな。生命力の高いG生物は非常に厄介な存在だ。

 

 月 日

情報収集の依頼を受けて単独で潜入した組織の拠点。原型を留めないほどに力づくで叩き潰された轢死体の如きリッカーBの死体の数々が点々と散乱している拠点内部。疎らに倒れている構成員達は全て頚椎を捻り壊されていた。既に侵入している何かによって拠点内部は随分と荒らされているようだ。銃弾を寄せ付けない硬い外皮を持つリーパー達も容赦なく叩き潰された形跡が死骸に残されている。損壊具合から判断してこの惨状を引き起こした何かが少なくとも「暴君」並みのパワーを持っていることは理解できた。依頼された情報収集はまだ終わってはいない。拠点の更に奥まで入り込むことにする。潰されたBOW達の死体が道標のように続いていた。遂に最奥の部屋まで辿り着く。扉を開いた先には頭部を無惨に潰された男の死体が残されていた。この男だけが頭部を潰されている。着ている服も上等なもので恐らくはこの男が組織の首領だろう。まるで警告のように首領だけが無惨に殺されている。元の顔がどんなものだったか判別できないほど執拗に叩き潰された頭部。よほど恨みがあったのか、それとも顔が判別できると不都合があるのか。どちらであろうと私にできることは既に組織が壊滅しているとの情報を依頼主に送ることだけだ。

 

 月 日

情報屋も兼ねている店主が経営している酒場でグラスを片手に気になっていた情報を受け取り内容を確認していた私に話しかけてくる男が1人。ここの酒場で情報を確認している最中に話しかけるのはマナー違反だ。マナーがなっていない男に注意をしていた店主が男に首を掴まれて片手で軽々と持ち上げられていた。恰幅のいい店主の体重はそれなりにある筈だが男は見かけ以上に力があるらしい。確認していた情報が表示されている電子機器の電源を切って懐にしまい込み、男に話を聞くから店主を放してやれと言う。男が笑って手を放すと店主が尻餅をついて咳き込んでいる。店主は乱暴な奴とは関わり合いになりたくないと言いながら立ち上がって去っていく。私の隣の席に座ってきた男は楽しそうな笑みを絶やさずに話しかけてくる。男の用件は単純に言えば私と喧嘩がしたいとのことだった。真っ向から喧嘩がしたいと言われたのは初めての経験だ。私のことを知ってからどうしても戦いたくて仕方がなかったと言う男は冗談ではなく本気で私と素手で戦いたくてこの酒場まで来たようだった。私にメリットは欠片もないが馬鹿正直な奴は嫌いじゃあない。受けて立つことに決めて酒場を後にする。情報の料金と酒代は先払いで払っているので問題はない。

 

お誂えむきの人通りが少ない路地裏で人知れず喧嘩は始まった。男が繰り出してきた右拳のストレートを受け止めると「暴君」並みのパワーを持っていることが理解できる。どうやら男は普通の人間ではないようだ。何らかのウィルスの適合者か支配種プラーガを宿しているかのどちらかであろうが、まともな喧嘩にはなりそうだな。上段廻し蹴りを繰り出してきた男の蹴り足に肘打ちを叩き込んでやる。弾かれた足を立て直す前に足払いを放ち男の地に着いている片足を掬い上げた。体勢を崩し倒れ込んだ男の顔面を踏みつけようとするが地を転がり避けられる。起き上がった男が跳躍し胴廻し回転蹴りを披露してきたので蹴り足を回避してサッカーボールを蹴り上げるような蹴りを男の頭部に喰らわせようとするが寸前で腕を挟み込んでいる姿が見えた。ガードの上から蹴りを入れることになったがそれなりに力を込めていたのでダメージにはなったらしくふらつきながら身構える男。構えの隙間に刻むような拳の突きを連続で叩き込んでやると反撃の右フックを打ち込んできた男の右拳を受け止めて捻りを加えて投げ飛ばす。地に叩きつけられた男を引き起こして顔面に頭突き。鼻血を噴き出した男の顎にかち上げるような掌底を叩き込み宙に浮かせて腹部に拳をめり込ませた。

 

吹き飛んでいく男は空中で体勢を立て直して着地する。地を蹴ると此方に急速で接近し至近距離からエルボータックルを繰り出してきたが片手で受け止め。中段廻し蹴りを男に放ったが蹴り足を肘と膝で挟み込まれることになった。しかし無理矢理力づくで蹴りを叩き込んでやることにした。挟み込む力よりも私の力の方が強いからできることだ。強引に叩き込まれた中段廻し蹴りは男にとって予想外の一撃だったらしく。蹴りを喰らった横っ腹を押さえて笑う男の顔には汗が垂れている。続けるかという私の声に当たり前だと答える男。接近して容赦なく痛んでいるらしい横っ腹にフックを叩き込んでやると男が苦痛の声を漏らす。弱っているところを狙うのは当然だ。そこばかりを狙う訳ではないが、重点的には狙うかもしれない。動きが鈍りながらも反撃の鋭いアッパーを繰り出してくる男の左拳を上体を反らして躱してボディブローを放ったがバックステップで避けられる。打ち込んできた拳と拳がぶつかり合い、男の拳が弾かれた。大きく体勢を崩した男に近寄り拳を振るう。顎をかすめる高速の拳頭。脳を揺らされてふらついた男の頭部に上段廻し蹴りを繰り出した。それが決着の一撃となり、男は倒れ込んだ。倒れ込み動かない男は気絶しているだけで息はしている。殺し合いならともかくただの喧嘩で殺す訳にはいかない。

 

とりあえず男が起きるまで待っているとしようか。待つこと数十分、意識を取り戻した男が起き上がる。立ち上がろうとしてふらついている男に手を貸してやり立たせてやった。喧嘩で負けたのは初めてだと静かに言う男にいい運動になったと礼を言っておく。俺は強かったかと聞いてくる男に弱くはなかったと正直に答える。ウィルスで進化してから敵なしで生きてきたが、あんたには敵わなかったかと残念そうに言う男に一度負けたらもう諦めるのかと問いかけた。諦めないに決まってんだろ、次は俺が勝つぞ絶対にと力強く言葉を発する男に、私が暇な時ならいつでも相手をしようと伝えておく。じゃあ早速やろうぜと言う男はやる気満々だ。元気なのはいいことだな。まだまだ元気な男の相手をすることにする。喧嘩開始から10分後に再び倒れ込んでいる男。先ほどのダメージが全快もしてないのに万全の私を相手にするからそうなる。また起きるまで待っていることにしようか。放置していって財布でも盗られたら可哀想だと思う程度には男のことを気に入っている。楽しい喧嘩をしたのは私も初めてだからかな。組み手以外で相手を必要以上に傷つけない戦いをしたのは初めての経験だ。殺し合いばかりしてきた私が喧嘩を挑まれるなんて思ってもみなかった。悪い気分ではない。さて男が目覚めたが、再び喧嘩を挑まれない内に立ち去るとしようか。私の連絡先を書いた紙は握らせておいたから、問題はない。連絡がきて私が暇な時は相手をしてやろう。

 




ネタバレ注意
バイオハザード5に登場するクリーチャー
ウロボロス
始祖ウィルスをもとに開発されたウロボロス・ウィルスの投与を受けた人間が、もたらされる遺伝子の変化に耐えられずに暴走した姿
全身を覆ってうごめくヒル状の物質には、被験者の肉体を吸収して爆発的に増殖したウィルスが詰まっており、これが統率されたウィルス集合体として、不定形生物のように活動している
この状態になった感染者はもはやウィルスの乗り物に過ぎず、より優れた別の宿主を求めて人間を無差別に襲い続ける

ウロボロス・ムコノ
スワヒリ語で腕を表すムコノの呼び名通りに、ウィルスの塊で編み上げられたような伸縮自在の両腕を備える暴走体
被験者となった男性はウロボロス・ウィルスを投与されたのち、遺伝子選別の過程を経て安定化に向かう兆候を見せたが、わずかに適性を欠いていたらしく最終段階で怪物化してしまった
選別にもれた失敗作であろうと、ウィルスによる強制進化への適合の度合いが高いほど、より強力な個体へと変化する実証例であると言える

バイオハザード4に登場する宝
蛍石の髪飾り
美しいが割れやすい宝石をあしらった珍しい髪飾り

宝飾のある砂時計
台の部分に変わった装飾が施された砂時計

豪華な装飾のチェス盤
珍しい装飾の入った盤と金と銀でできた駒のセット

輝く妖光蝶のランプ
盲目の蝶のランプに、グリーンアイ、レッドアイ、ブルーアイを組み合わせて完全に復元させたもの

盲目の蝶のランプ
ガラスの上に蝶の飾りが施されたランプ
何かを嵌め込む穴が3つ空いている

スピネル
ピンク色の小さな宝石

ヴェルベット・ブルー
紫色の水晶

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