とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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追憶編


2と4のレオンを見比べると技術の進歩を感じます

 月 日

数日前から軟禁中のプラーガ研究者に口汚く「クソガキ」だの「生意気な小僧」だと言われたので君よりは歳上だと実年齢を教えた上でその証明となる写真を何十枚も見せた。それからは態度が少し変わったが、若干怯えられているような気がする。別にきみの事を始末したりはせんよ、余計な事を言い触らさなければね。

 

 

私は、あるウィルスの適合者だ。

しかし超人的な身体能力や他者を殺害出来るような特殊能力は持っておらん。しいて言うなら不老長寿に無病息災だろうか。

肉体は老いず病に侵されることも無い。

18歳で老化が止まってかれこれ33年。

今年は2004年か。

古ぼけた写真の一つ一つを順に眺めていると、ふと昔を思い出した。

 

私がまだアンブレラの幹部養成所に配属されたばかりの頃、勝手に忍び込んだマーカス所長の研究室で見付けた奇妙な花。

毒々しい色のそれに異様に惹き付けられた事を覚えている。

吸い寄せられるように手を伸ばした事を覚えている。香りを嗅いだだけでとてつもない多幸感を感じた事は忘れられない。

最早理性など残っていなかった私は本能の望むままに口を開いて、得体の知れない赤い花を口内へ押し込んだ。

一輪の花を咀嚼し飲み込んで平らげた私は心地よい満足感に浸りながら研究室を誰にも見つからないように脱け出した。

 

後に知った事だ。私が食したその花は、ある部族には「太陽の階段」と呼ばれているそうで食すると絶大な能力を手に入れることが出来ると言い伝えられていたらしい。

そしてアンブレラには数多のウィルスの原型である「始祖」ウィルスを宿す始祖花だと呼ばれていた。

 

そんな物を食べたとは知らないその頃の私は暢気に腹を壊したりしないだろうかと心配していたがね。他に気にしないといけない事がもっと有るだろうに、食中毒の心配しかしていない。

何というか、その。

あの頃の私は。

無駄に行動力が有る馬鹿だったな。

 

私が異変に気付いたのは6年後、幹部養成所で養成される側から養成する側になってからだ。

この頃から髪型やメイクに付け髭で誤魔化す事を覚えた。

ちょうどその年にグラサンとウィリアムが幹部養成所に候補生として配属されたんだが、この二人だけが飛び抜けて優秀で互いをライバル視していた事を覚えている。

そして翌年にマーカス所長、いやマーカス博士がTウィルスを開発した。

マーカス博士がヒルに執着し始めたのはこれからだ。

同年に幹部養成所は閉鎖されてしまい、私は他の研究所へ転属を繰り返す。一ヶ所に留まれば私の異常性に気付かれる可能性が高まると考えたからだ。

養成所が閉鎖されてから3年後、私は南極の研究所に配属されていた。

そこで主任研究員を務めていたアレクシアに目を付けられる事になる。

どうにも戯れに抜け落ちた私の毛髪を採取して実験を行なったところ興味深い結果が現れたらしい。獲物を狙う猛禽類のような目で此方を見る十歳児がおっかなかった事を私は確かに覚えている。

髪じゃ足りないから肉を、いっそのこと腕を一本寄越しなさいと言われた事も覚えている。

血液の提供で何とか勘弁してもらった事は忘れられない。

隠していた素顔と年齢がアレクシアにバレたのもこの時だな。

 

翌年、アレクシアが父親へ「tーVeronica」を投与。

結果は失敗、それを何故か私へ嬉しそうに報告してきたのが何とも恐ろしかった。

まるで「次はお前だ」とでも言われているような気分だった。

というか絶対に失敗するって解っていただろう本当は。

 

結局は予想通り私も「tーVeronica」を投与されたんだが始祖花の恩恵で耐性があった為に何も起こらなかった。適合や定着もせず、肉体が変異する事も無く。私の体内から「tーVeronica」は消えていた。

 

 

更に翌年、アレクシアが自らにウィルスを投与してコールドスリープに入った。この頃は他の研究所に配属されていたんだが突然私宛に彼女から「15年後にまた遊びましょう」とメッセージが届いていて驚いたな。子供が言ったら可愛らしいが彼女が言うと不吉な言葉にしか思えんよ。

それから3年後、度重なる転属で知人を増やした私がアンブレラの研究員として最後に配属されたのがアークレイ研究所だ。

1986年。

日記を書き始めたのはこの頃だった、今ではすっかり日課になっているがね。

グラサンやバーキンにハーブ中毒と恋人がいる方のジョン達が同僚になって、ウィルス研究を重ねている内に。

恋人がいない方のジョンとも呼ばれたな。

そしてハーブ中毒と他数名がTウィルスに感染した日、ハーブ中毒が発病を遅らせた姿を見た私がハーブに興味を持った。

 

其処から全てが始まったような気がするな。

 

 

ウィルスの研究にしか興味が無かった私が、今ではハーブの研究者だとは。まあ一応対BOW兵器の研究もしているが、それ以外は基本的にハーブだけしか研究していないからな。ハーブの研究者で良いんじゃないか。

 

まあこれからも、出来る限りは好き勝手に生きていこうじゃあないかね。さて、プラーガの研究者である彼が持っていた改良型のプラーガのサンプル。コイツはどうしてくれようか、正直私には必要ないんだがな。

 

 

もう日が暮れる、一日の日記としては量を書きすぎたようだ。

 

面倒な事は明日考えるとしよう、今日は久しぶりにハーブパイでも作るとするか。

食わせる相手も居ることだしな。

 




ネタバレ注意

ジェームス・マーカス
始祖ウィルスを発見した人
マーカス博士がヒル以外に信頼していたのはアルバート・ウェスカーとウィリアム・バーキンだけだったが、皮肉にもその二人に殺害される事に。
しかし実験体のヒルが彼の体内に侵入し、記憶や思考パターンを取り込んでいた

後に男なのに女王(ヒル)として復活



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