横島が子供達と遊んでいる中、桃香達は横島を捜して邑の中を歩いていた。
「横島様、何処に居るのかな?」
「どっかに逃げたんとちゃうやろか?」
「そうかもしれないな」
「え~~、それはダメだよ。う~~、横島様ぁ~~」
……まさんが、こ~ろんだ」
「ん?」
「どしたん、凪?」
「いや、子供達の声が聞こえた様な」
「子供達の?」
桃香はそう言われ、辺りを見回していると邑の子供達と遊んでいる横島を見つけた。
「や~い、動いた動いた。また鞘花の負けだ」
「ぶう~~、おにいちゃん、もういっかいやろ」
「分かった、もう一回な」
――横島様…子供達と一緒に遊んでいる。皆、本当に楽しそう。
「だ~るまさんが、こ~ろんだ」
横島が子供達に教えたのは「だるまさんがころんだ」。
初めての遊びに子供達は一喜一憂し、夢中になって遊んでいる。
「さーわった!」
「ああ、触られた。俺の負けだな」
「わ~~い、やったぁ~~!」
――私達の知らない遊びだけど、どうやらさやちゃん達が勝ったみたい。横島様に抱きついてはしゃいでいる。
でも……
――でも何故かな?横島様、笑顔なのに……ちっとも笑っている様に見えない…
「あ、玄徳さまだ」
「げんとくさま~。いっしょにあそぼ~」
「え、ちょ、ちょっと待って。私にはまだお仕事が残って…」
――そんな抵抗も虚しく私は子供達に引っ張られて行く。……あぅ~、横島様が横目で見ている。うう~、恥ずかしいよ~~。
子供達に連れて行かれる桃香を凪達は少し諦めた様な表情で見ている。
「ああ、桃香様が連れて行かれてもうた」
「仕方が無い、残った仕事は我々で片付けるぞ」
「ええ~~」
「げえ~~」
「何だ、何か文句でもあるのか、二人共?」
「うっ!な、凪ちゃんの目が怖いの~~」
「しゃーないな。頑張りまひょか」
―◇◆◇―
その後も横島は子供達に歌を歌ってやったり、おとぎ話などを話してやったりして、それは夕暮れ時まで続いた。
「鞘花」
「あっ、かかさまだ」
――母親が迎えに来たらしく、さやちゃんは走って行く。……何だろう、あの中学生くらいの背丈と容姿、そして凶悪なまでのバストサイズは……いかん、ワイはロリやないロリやない。
「さあ鞘花、帰りましょう。玄徳様、ありがとうございます」
「いえ、いいんですよ。私も楽しかったし」
「かかさま、あのね、きょうはおにいちゃんがいろんなことしてあそんでくれたんだよ」
「そうなの、よかったわね。ありがとうございます」
「いや、俺の方こそ。こんなに楽しかったのは久しぶりでしたから」
「おにいちゃん、またあそんでね。ばいば~い」
母親に手をひかれて帰って行く子供達に横島は手を振ってやる。
鞘花も横島に手を振りながら帰って行き、そんな横島の隣に桃香がやって来て話かけて来る。
「あの、横島様…」
「いい子達だね」
「え?は、はいっ!とてもいい子達ですよ」
「そしてこの世界には自分達の欲望の為だけにあの笑顔を奪おうとする奴等が居る……か」
「そうなんです。……何故なんでしょう?皆、ただ普通に笑って居たいだけなのに。平凡な幸せが欲しい、…たったそれだけの事なのに……」
「普通の、平凡な幸せ…。(俺も欲しかった。彼女と、ただ笑い合ってるだけのそんな普通の幸せが。ルシオラと毎日あの夕陽を眺めていられれば…、それだけで良かった)」
横島はそんな事を思いながらこの世界での初めての夕陽を、空を流れる茜雲を見つめているがその夕陽には何処となく血の色が混じっている気がしていた。
暫く二人でそうしていると凪達三人が桃香を迎えに来た。
「桃香様、そろそろお戻りください」
「兄ちゃんもガキ共も相手で疲れたやろ」
「うん。ゴメンね、お仕事押し付けちゃったみたいで」
「何時もの事です。お気になさらずに」
「うえ~ん、ゴメンなさ~い」
「気にせんでええって桃香様。凪の言う通り、何時もの事なんやから」
「お前達が言うな!」
「はうっ、真桜ちゃんのせいで私まで怒られたの~」
「あはは……、一緒に怒られよう」
桃香達は笑いながら宿舎に帰ろうとするが、横島は夕陽を見たまま動こうとしない。
「横島様?」
そんな彼等を通りかかった桂花は見つけ、其処に居た横島をさっそく邑から追い出そうと怒鳴りつけようとするが……
「どうかしたんですか、横島様」
「……紅いな」
「え?」
「夕陽って…、茜雲ってこんなに紅かったっけ?」
「夕陽ですか?確かに赤いですけど…、横…島様?」
――横島様は泣いていた。
とても澄んだ、でもとても哀しそうな涙を流しながら。
この人は何を無くしたのだろう?
この人は誰を亡くしたのだろう?
何故だか心が疼く、何故こんなにも心が痛くなるのだろう?
――知りたい、もっとこの人の事を解りたい。
御遣い様じゃ無いのかもしれない。
でも、それでもと、信じたくなる何かがこの人にはある。
「違う、違う、違うっ!俺が見たいのは、あいつが見たがってたのは……」
「横島さ…」
「ルシオラと一緒に見たかったのはこんな夕陽じゃ無いっ!」
――横島様はそう叫ぶと蹲り、頭を抱えながら大きな声で泣き出した。
気付いたら私も泣いていて、そっと横島様の頭を抱きかかえていた。
知りたい、やっぱり知りたいこの人の事を。
そして何時か一緒に笑いたい。
凪ちゃん、真桜ちゃん、沙和ちゃん、荀彧ちゃん。
皆と一緒に笑顔で、大きな声で。
―◇◆◇―
そんな一部始終を家の影から桂花は覗いていた。
普段の彼女なら突然泣き出した横島を激しく罵倒しながら蹴り飛ばしたりしていただろう。
だが、大事な誰かを亡くしたからこそ流れるその涙の意味を彼女は解っていた。
だからこそ、今の横島にそんな事をする愚かさを彼女は理解していた。
「何よ、男の癖にあんなに大泣きしちゃってさ。情けないったらありゃしない、フンっだ」
そう呟きながら桂花は踵を返して今来た道を戻って行く。
横島の泣き声に、僅かな心の痛みを感じつつ……。
《続く》
(`・ω・)鞘花の母親、見た目はロリっぽいですけど実年齢は何と紫苑と左程変わりはありません。
つまり、熟j……おい、まテ、ヤメテェェェェェェェェェ!
ギャアァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!