GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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ようやく投稿です。

まず先に、活動報告にも有りますが第14話をほぼ全て書き直しています。
今回の話には14話の内容も含まれますので、先に一読して頂ければと思います。

楽しんで頂ければ幸いです。


第16話

 

「やはり、拙いですね……」

「拙いよなぁ……」

「拙いですわね……」

 

 日本、赤坂。ある料亭にて。

 そこでは内閣改造を行い、本位総理が信頼出来る閣僚と官僚だけが呼ばれて集まり、秘密裏に会議をしていた。

 内容は勿論、<門>と特地についてだった。

 この料亭は昔から政治家に利用させる場所であり、此処の従業員は非常に口が堅い事で有名だ。恐らく、会議に使われる場所では最も安全に行える場所だと言える。

 

 非常に情けない話なのだが、首相官邸や国会議事堂、主な会議室には盗聴器やら口の軽い政治家や役人が居る事があるのだ。

 戦前からの伝統というか、日本の防諜体制はザルである。今では特地、そして扶桑国についての事もあって公安やら自衛隊やらの引き締めを図り、強化しているがまだまだ甘い部分が多い。それでも情報漏えいを行った者の数は増えているのだ。

 だから最もガードの堅い筈の政治の中枢で、今後の方針や報告については気を使いながら慎重に話をしなければならないという、何とも馬鹿馬鹿しい事態が起きているのだ。

 

「<門>、これがこうも問題を持ってくるとは……」

 

 日本はよく、資源が無い国と言われる。

 実際には木材や水産資源(特にそのまま利用できる真水)が豊富であり、日本の商社が世界各国に進出して積極的な先行投資で油田や鉱山の権利などを買い集めているから違うと言う人もいるだろうが、それはさておき。

 

 多くの人が日本は国土が狭くて資源が無い国だと思っている中、<門>が開通し、特地が見つかった。

 開通した先のファルマート大陸にはハーディの加護もあってか、豊富な地下資源が存在する。

 資源は地球にある物とほぼ同じであるが、石油や天然ガス、そしてレアメタル、つまりタングステンやニッケルなどを含む純度の高い鉱石やレアアースが馬鹿みたいな量で、しかも簡単に採掘出来るのだ。

 

 これらは地球でも採れる。だが石油やタングステンなどは生産国が偏重しているのもあり、輸入で賄っている日本は近年の価格高騰と供給の不安定さに頭を悩ましていた。

 

 つまり、先の北条前総理が言ったように特地を日本国内と考えた場合。

 長年の望みだった豊富な資源が日本国内に、しかも手つかずで残されていたのだ。そして扶桑国の存在もあり、国交を結べた。

 そして開示された情報がスクープやら特ダネやらの大きな見出しで新聞雑誌テレビにと掲載され、人々を熱狂させる。だから、一般の人々にとっては希少な資源と未知の存在が豊富にある特地は宝の山と言えた。

 

 この影響は様々なところで現れていた。 

 経済で見てみれば、特地開発に一枚噛みたいと考えている多国籍企業が日本に対し、積極的に人と物を動かしていた。これを見て投資家達も儲かりそうだと判断し、日本に対して投資を増やしており、日本経済は好転しつつあった。

 政府関連では今まで何かしらの外交交渉で資源輸出の規制をチラつかせたり、恫喝してくる事が多かったある資源輸出国の外交官が急に下手に出て来たり、輸出している資源の規制緩和を申し出てきたり。

 手近な事となればガソリン価格やトイレットペーパーといった商品の価格が下がり、暮らしが少しだけ楽になりつつあった。

 

 こう見れば、<門>は日本にとって有益に見える。

 

 だが、少し熱狂から覚めてみる。そしてちょっと考えてみれば、直ぐに気が付くのだ。

 この<門>、そして特地という存在は根本的かつ重大な問題を抱えている事に。そして知れば知るほど価値が低くなっている事に。

 

「特地の開発も、展開させている自衛隊の費用は仕方ない。だが、<門>そのものを如何にかしなければ意味が無い」

 

 まず、<門>の幅。

 銀座にある<門>の幅は15m程で、周辺の道路幅と同じぐらい。これでは狭過ぎるのだ。

 資源開発しても<門>が小さい為に運ぶ量が少なければ採算が取れない。それに特地で展開中の自衛隊の補給が優先される為、極僅かしか持ち出す事しか出来ないのだ。

 

 また唯一の繋がりである<門>を破壊させられれば、完全に遮断されてしまう。しかも<門>自体がローマの遺跡のようなデザインをした石造りであり、耐震強度は全く無い。ちょっとした地震が来たら崩れてしまいそうだ。

 <門>の破壊は論外。かといって、魔法などの知識が全く無い日本が<門>を弄くる事は出来ない為、そのままにして置くしかない。

 

 現状では、特地という宝の山を目の前で見る事は出来ても、手出しが難しい。そういう状況であった。

 

「<門>は水道の蛇口と同じです。特地というタンクに大量の水があっても、蛇口から出てくるのは一定の量でしかありません。しかも流しっ放しは出来ない。幾ら簡単に採れると言っても一から開発しなければなりませんし、採算が取れるかどうか……」

「輸送トラック以外で大量に物を運べると言ったら、鉄道か?」

「……難しいですね。線路の敷設工事となると周辺道路を封鎖して行いませんと出来ません。それにビルが多すぎます」

「パイプラインを引くというのは? あれなら輸送の手間も小さくなるのでは」

「それだって産地から<門>までの間を警備の為の戦力を張り付かなけなければならんし、第一、何処に敷く? 地上はまず無理だし、地下も過密状態で難しいぞ」

「……どうしようもねーじゃねーか」

 

 外務大臣兼特地問題対策担当大臣になった嘉納がうんざりした表情で呟く。

 

「いっその事、こっちで絶滅した動物とか、ドラゴンの鱗とか、未知の植物とか、そんなのを集める方に切り替えた方が良いんじゃねーか?」

 

 既に自衛隊が捕獲した動物や、採取した植物や鉱石、竜の鱗からは未知の酵素や新素材が発見されている。そういったものは地球には無く、後々の研究に役立つ為、此方を重点的に調査した方が良いのでは? と嘉納は言った。

 

「確かにその通りなんですが」これに総務大臣が答えた。「未だ特地の豊富な地下資源の存在に目が眩んだ者が多いのが現状です。特に経団連は石油やレアメタルなどの資源開発を推進しろと圧力をかけていますし、国民の間でももっと積極的に特地へ行くべきだという声が大きいままです。取り止めれば、また圧力をかけてくると思われます」

 

 あの業突張り共め、と誰かが悪態をつく。

 とはいえ、民意を無視する事は出来ないし、経団連の意見を無視すれば嫌がらせや圧力が面倒である。

 

「特地について情報公開をしたのは、間違いだったかもしれませんね……」

 

 本位は疲れを吐き出すようにため息をついた。

 もし仮に、扶桑国から齎された資源の所在地の情報を知らされなければ、此処まで熱狂しなかったかもしれない。まあ、今更言ってもしょうがない事なのだが、あの時自制しておけば、と思ってしまう。

 

「経団連にはアルヌスの丘の開発を進めてから資源開発を進めると言っておきましょう。暫くは時間が稼げる筈です」

 

 本位は続けて言った。疲れ切った表情だったが、まだ話すべき事はあるのだ。

 

「話によれば、ハーディなる神を如何にかしなければ、また<門>が開かれる事も有り得るのですね?」

 

 これに総理補佐官の白百合が答えた。

 

「はい。<門>は一度に一つしか造り出せないそうです。しかし理論上、ホワイトハウスだろうが、クレムリン宮殿だろうが、更には宇宙や深海など何処でも繋げる事は可能だそうです」

 

 この情報に誰もが呻いた。

 はっきり言えば、別にホワイトハウスやクレムリン宮殿や中南海に<門>は開こうが、どうでも良い事だ。

 だが、繋がった<門>の先が深海や宇宙だった場合、どうすればいい? また特地は未だ致死率の高い病原菌などは発見されていないが、再び繋がった先にペストが流行していたりいたら間違いなくパニックになる。

 

 <門>は危険過ぎるのだ。

 現状、分かっているのは<門>を開けっ放しには出来ないこと。このままでは災害が発生し、世界が壊れてしまうという信じがたい報告がある。

 だが閉めれば諸外国の批判は凄まじく、「日本は特地の情報を独占しようとしている」といちゃもんをつけられる。また今度は何処に来るか分からない以上、今は<門>を開けたままにするしかないのだ。

 

「だが、<門>は扶桑国が如何にか出来ると言っていたらしいが、そこんところどーなんだ?」嘉納が訊ねた。

「一年以内には<門>を造り出せるよう如何にかする、だそうです。ただ、あれ以上大きくするには難しいと言っております」

「あれ以上の大きさは無理なのか……」と、嘉納は残念そうな表情となった。

「仕方ありませんよ、嘉納さん」本位が言った。「しかし、こうやって話していますと本当に特地の価値が低くなりましたね」

 

 これに白百合は苦笑いで答えた。

 

「仕方ありませんわ、総理。あの時は銀座事件の事もありましたし、まさか<門>が神が造った物とは考えもしなかったですもの。それに、今では何時もと同じく、マスコミや胡散臭いコメンテーターやら野党が元気に騒いでいますよ」

 

 銀座事件の際、多くの一般人と警察官や自衛隊員が亡くなり、また皇居を攻撃されている。

 

 態々、完全武装の自衛隊を派遣する為に必要な法案を通し、派遣したのもその時の恨みと、諸外国では「日本の逆鱗に触れてしまった」とされる凄まじい怒り。そして異世界というものに経済界が強く関心を持っているのもあるが、理由の一つにマスコミが一部を除いて盛んに「特地へ自衛隊を派遣するべき」と政府を積極的に支援していた。

 彼らも銀座事件の際に社員や本社が襲撃されて甚大な被害を受けた為、再び侵攻してきて自分が襲われたら、と恐怖したからだった。

 

 最も、喉元過ぎれば何とやらで。今では敵が中世レベルの存在で自衛隊が圧勝していると聞きつけ、自分は襲われないと分かった途端、再び政府批判を元気良く始めていた。

 

「なんか、あの時はマスコミを気持ち悪く感じましたけど、ようやく何時もの感じになった気がしますね。全く嬉しくありませんが」

「本当だよな」嘉納が言った。もう少し大人しくしていれば良かったのに、と心底思う。

「しかしだ総理。帝国の存在はどうする? 下手に追い込むと周辺の治安が一気に悪化するぞ」

「ピニャ殿下の講和派を支援するしかないでしょう。既に交渉の下準備に外務省から数名が帝都入りしていましたよね?」

 

 訊ねられた白百合は小さく頷き、答えた。

 

「はい。ピニャ殿下の帰国と合わせて、外務省から特地問題対策委員会に出向している菅原が帝都に入っております」

「では、彼に出来るだけ早く人脈を広げるよう言ってください。時間は掛かりますが、これが一番安全で平和的に進められます」

 

 防衛省が行った図上演習では、侵攻すれば八十時間で帝都制圧が可能だとしている。

 

 だが、これには幾つもの問題があった。

 まずは補給の問題。

 補給するには<門>を通らなければならない為、何らかの原因で物資が不足してしまえばどうする事も出来ない。

 次に政治的な問題。帝都に侵攻すれば市街戦を行わなければならない為、どうしても民間人に被害が出てしまうこと。これは避けなければならない。

 扶桑国との国交樹立と特地についての情報開示で幾らか支持率が上がってはいるが、元気になったマスコミが政権批判を始めるだろう。

 

 そしてこれが一番の問題。帝国を降伏させた後の問題である。

 ファルマート大陸は<帝国>が君臨し、その大半を領有している。表面上は平穏が保たれているが、領土拡大の過程で侵略戦争を行い隷属させ、また諸外国を抑えつけている為、相当な恨みを買っていた。

 

 もし仮に自衛隊が帝都に攻撃を行い降伏させれば、鬱憤の溜まった各国が一斉に動き出してファルマート大陸は戦国乱世の時代へと移る。

 

 こうなれば各地の調査どころの騒ぎではない。

 

 各国からの物資供給が絶えた帝都。自衛隊は講和条約を結び、賠償をせしめるまでは動かす事は出来ない。

 そして<門>の関係上、日本からの緊急支援による物資の供給も間に合わず、各地で僅かな物資を取り合う某世紀末な世界の様な光景が出来上がる。

 そうなれば、恨まれるのは自衛隊、そして日本だ。曲がりなりにも平穏だった世の中をぶち壊したから、と人々は考えるだろう。

 経済の悪化、飢餓、兵の野盗化などによる治安悪化。これを防ぐために各地の治安維持出動に自衛隊を派遣する羽目になり、疲弊してしまう。そしてまた人々から恨まれる。

 

 正に泥沼。

 

 下手に手を出せば、その先は泥沼の地獄であり、これに巻き込まれるのは御免だ。それが本位達の考えであった。

 

「話は変わりますが、伊勢神宮や林野庁から扶桑国への協力要請があります」ある官僚が言った。

「うん? 防衛省とかなら分かるけどよ、伊勢神宮と林野庁が何故?」

「平殿の桜丸ですよ。あの映像を見て、植物の急成長が可能なら作物や木の生育に役立つと考えたのでしょう。特に遷宮を行う神宮や神社は毎回莫大な資金と材木を必要としますから」

 

 ああ成程。確かにそういう使い方も出来るか、と嘉納は納得した。

 確かにそれが出来れば有益だろうが、果たして協力してくれるだろうか。

 とりあえず、駄目元で聞いてはみよう、と嘉納は告げた。

 

 その後も扶桑国から何かしら協力が得られないか、というような内容の議題を進めていく。

 

「そう言えば嘉納さん。EUから申し出がありましたね。」

 

 ひと段落した所で、本位が訊ねた。

 

「ああ、総理。確かに国連軍の派遣と扶桑国と会談出来ないかというような話は有ったが」嘉納は怪訝そうな表情となり、本位の顔を見やる。「まさか、受け入れる気か?」

「それこそまさかですよ。絶対に断って下さい」本位は言った。「それに、あちらも国内向けに特地について動いているとアピールする為でしょうからね」

 

 各国は特地に関心は有れど、アメリカやEU、ロシアなどは積極的に軍を派遣したいとは考えていないのだ。

 

 何故、と言えば、先の事に繋がる。特地に行くには<門>という不安定な物に頼らなければならないのだ。

 

 日本は政治的に一国の中枢に各国の軍を受け入れられない。もし仮に派遣出来ても、物理的に補給は難しい。そして資源は有っても大量に持ち出す事は難しい。<門>が破壊されてしまえば人員も兵器も全て無くなってしまう。

 

 つまり、軍を派遣させろと言っているが、逆に許可を出されるとちょっと困るのである。

 なら現状の様に、大変な所は日本にやって貰い、文句を言いつつ美味しい所だけを貰うのが一番儲かるのである。

 首脳部はそれが分かっていた。

 アメリカやEUは友好国であり一応の支援はするけども、自分達は負担したくないと考えている。ただし分け前は強請ってくる。

 ロシアは今のところ自国の資源外交に影響が出ないと分かる為、積極的に動きはしない。当然、分け前はきっちりと貰う。

 中国は、まあ、ずっと騒ぎ立てているのは中国は特地に人民を送り出して自国の負担を軽減したいからだろう。そうすれば、かの国の問題が幾らか無くなるからだ。

 仮に国連軍が編成されれば、それは国連軍という名の中国軍、下手すれば少数民族など中国にとって邪魔な連中を送り込もうとするだろう。そして送り出したら後は知らん、自分で如何にかしろ、という感じである。

 

「ともかく、今は現状維持に努めるしかありませんね。情報管理だけはしっかりして下さい。それと、扶桑国の方々に失礼が無いようくれぐれもよろしくお願いします。<門>をどうにか出来るのはあの国だけなのですから」

 

 本位の言葉に全員が分かっています、と頷く。

 

 そして全員が座敷から退出し、座敷の中は本位一人となる。

 

「あー、畜生が」

 

 本位は悪態をつきながら瓶に残っていた清酒を呷った。

 

「うわー、くそっ、辞めてぇ、辞めてぇぞ畜生が……」

 

 何でこんな時に首相になっちゃったんだろうか。

 本位は酒臭い、深いため息をつく。

 

 此方の苦労を知らないで無理無茶を言ってくる諸外国。

 有事に対して即断即決の出来ない官僚共に、口の軽い役人達。

 金と利権に目の眩んだ経済界と、その意向を受けて発言する与野党。

 滅茶苦茶な理論で騒ぎ立てるマスコミ。

 

 これを全部相手にしなければならないのだ。

 正直、全て投げ出して辞めてしまいたい。何もかも忘れて、帰ってゆっくり寝たい。ストレス製造機である国会に出たくない。あんなクソ野郎どもを一々相手にしたくない。

 だが、首相という責任のある立場と、自分にもプライドというものが有る以上、それは出来ない。

 

 だけどこれ以上苦労なんぞしたくない。こん畜生め。

 

「……………はぁ。ああ、特地には魔法が有ったんだよな。扶桑国にお願いして、何か良い魔法が無いか聞いてみるか」

 

 馬鹿に付ける薬は無い、と言うが、魔法なら馬鹿に効くものが有るかもしれない。いや魔法じゃなくても良いから、あいつ等を如何にかしてくれ。そしたら楽なんだ。

 

 本位は酒でぼんやりとする頭でそんな事を考えてつつ、部屋の外で待機していた秘書に抱えられながら首相官邸へと戻っていった。

 

 こうして本位らは悪態をつきつつも仕事に取り掛かり、国内外で奮闘する事になった。

 


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