GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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第2話

 ――ファルマード大陸の東部から東へ真っ直ぐ進んだ先に、「フソウ国」と呼ばれる国がある。

 

 このフソウ国は、

 

 首都である「ミヤコ」があり、最大の面積を持つトヨス。

 その右隣にあるトヨスの半分ほどの大きさであり、龍種の住処となるリュウシュウ。

 北方にあり、寒冷な気候と鉱山開発が盛んなチトセ。

 南方にあり、温暖な気候から農業が盛んなツクシ。

 

 以上、四つの島からなる島嶼国家である。

 

 この国は独自の文化が発展しており、同時に成立の古い国家である。

 この国の王である「ミカド」と、ファルマードで言う貴族に当たるのが「ブケ」と「クゲ」、そして平民で構成されている。

 

 この国では奴隷制度は禁止されており、この国に入国した際には例え一国の王の所有物であろうが即座に奴隷は解放されることになっている為、渡航する際には十分注意しなければならない。

 

 独自の進化を遂げた龍種や獣が多く生息しており、これらに対抗する為に発展した高品質な武具が有名である。また金銀細工や「シッキ」と呼ばれるある種の樹液で赤や黒に塗装した木工品、絹織物が特産品として有名である。

 

 

  ***

 

 

 フソウ国はファルマートにいる神とは違う存在を祀っており、「ヤオロズ」、フソウ国の言葉で「八百万」を意味し、それだけの数の正神がいるとされる。

 

 その中でも有名なのが、水と風の神である「リュウジン」様、そしてフソウ国で最も古い神とされる「モリト」様がいる。

 

 この「モリト」様は謎が非常に多く、調査した私もよく分かっていない。

 単純に権限の及ぶ範囲が広い為である。

 

 フソウ国の神話ではフソウ国をたった一人で創り上げたとされており、また「モリト」様によってここに連れて来られた住民が住むようになってからは「カタナ」と呼ばれる剣で襲いかかる竜種や獣を討伐し、また魔法を自在に操り、住民には知識を授け、また土地を開墾して田畑を作り出し、更に鉱山開発や都市を造ったりと非常に多くの逸話が多い為である。

 

 その為、他の正神のように「~の神」と呼ばれることはなく、ただ「モリト」様とだけ呼ばれている。

 

 

  ***

 

 

 さて、ここに住むヒト種は多種多様であり、これらを全てひっくるめて「フソウ人」と呼ばれている。

 

 共通して、礼儀正しく温厚である。こちらが礼節を持って接すれば何も問題は無いが、一たび怒らせると非常に恐ろしい存在となる。

 

 かつて、ファルマード大陸東部のある国では、フソウ国特産の金銀細工や絹織物を見て、制圧しようと考えていた事があった。

 

 当時はまだ交易船の数が少なかった上に、現在でもフソウ国の品物は大変貴重品であり、貴族様方にとっては一種のステータスである。

 

 その為、フソウ国を抑えれば莫大な富が約束されているはずなのだ。

 

 その国は近隣諸国にも戦力を募り、大艦隊を編成し、多くの兵を乗せてフソウ国へ出兵した。

 

 しかし、この目論見は成功しなかった。

 

 ファルマード大陸とフソウ国の間にある「皇海」は非常に難所である。

 

 年中海は荒れ狂っており、また海中には巨大な海獣が棲んでいるのだ。

 フソウ国の船は巨大で頑丈。また優れた船乗りを擁しているが、寄せ集めに過ぎない大艦隊は嵐や海獣の襲撃によってフソウ国にたどり着く前に皇海に全て沈んだという。

 

 しかし、フソウ人達には宣戦布告も無しに攻撃されそうになったことには変わりなく。

 

 すぐさま軍と艦隊を編成し、そのまま出兵を発案した国とそれに賛同した近隣諸国へ攻め込んでいった。

 

 彼らは一様に「タチ」と呼ばれる大型のカタナを振るえば騎士ごと翼竜を切り裂き、「ツルギ」と呼ばれる鎧を身に纏っていた。

 この鎧は剣や弓矢はおろか、魔法や龍種の牙や爪ですら傷付けることは叶わず、また特殊な魔法が刻まれているのか空を自在に飛び回ることが可能であった。

 

 その為、直ぐにこれらの国は降伏。

 フソウ国は東部諸国に対して賠償金の請求と、沿岸部の港湾のみを無期限に租借しただけで済ませた。

 その後、この東部諸国は国力が落ちたところを別の国に攻められて滅亡し、現在は帝国の領土となっている。

 

  

  ***

 

 

 現在、帝国は領土拡大政策を執ったことにより、ファルマード大陸の大半を領有することになった。

 その為か、帝国では未だ従わないフソウ国を制圧すべきだと唱える者は多い。

 

 昔と今。東部諸国と帝国は違うといえばその通りだが、武器や戦術といったものはほぼ同じである。

 

 フソウ国の「ツルギ」と戦えるような装備があるのか?

 また、調べた限りでは今までフソウ国に侵攻できた事も、かの国所属の船以外で渡航に成功した例は一つも無い。

 

 最低でも、これら二つの事をクリアできるようにならなければ、外征は非常に危険であると言わざるを得ない。

 

 

             ――――ある研究者の「フソウ国に関する報告書」より一部抜粋。

 

 

   ***

 

 

 

「ああ、空が青いねぇ。良い天気だぁー」

 

 扶桑国、首都である京の近くに残る原初の森。その森の中央に鎮座する「神宮」。

 

 そこに祀られている守人は、縁側で夏空を見上げながらのんびりとした口調で言った。

 

 守人の第一印象は、真っ白。

 

 ざんばらな髪は漂白したかのように真っ白であり、身体を包む白の狩衣で露出している部分が少ないが、適度に引き締まった身体をしているように見える。

 その顔は柔らかい印象を受ける目鼻立ちで、どことなく幼さを残していて中性的に見える。パッと見ただけでは男か女か、判断がつかない。

 今は琥珀色の瞳は細められ、ぽやぽやした表情になっている。

 

 そういえば、あの時もこんな空だったの、と小さく呟く。

 

 今でももう、昔のことは覚えていることの方が少ないが、その時の事だけは今でもはっきりと思い返すことが出来る。 

 

 あの時、劔冑に魂を吹き込んで死んだと思っていた。

 

 が、急に意識が戻り、辺りを見渡せば寂れた神社の中。それを偶々様子を見に来ていた天龍が見つけたのだ。その天龍はやはり生きていたと驚き、そして狂喜した。

 

 どういうこっちゃ? と混乱する守人を余所に、あれよあれよと祝い事や祭りだとどんちゃん騒ぎ。

 守人はそのまま神社に祀られて崇められるようになり、後に正神という存在となった。

 

 正神に成れば肉体を失うらしいが、守人は特殊な例で劒冑という肉体を持ったままである。

 

 この頃になると人化できるようになった。

 まあ、折角なので顔はちょっと美化して体型も己の理想通りにと、守人の趣味が思いっきり反映された形になったのはご愛敬。

 

 そしてまた暫くして、ちらほらとヒトがこの世界にも来るようになった。

 

 守人はようやく人に出会えたことに喜びつつ、「折角、造った都市があるからここに住んで貰おう」とヒトを集めることにした。

 

 四つの島の各地に折角建設した都市を放棄するのは勿体ないし、すぐに受け入れることが可能であったからだ。

 

 集められたヒトらは明らかにヒトとは違う存在に驚き、そしてこれから住むことになる美しい都市に再び驚いてしまった。

 

 守人から「自由に使って構わない」と言われた彼らは呆気にとられたものの、そこで思い思いの生活を始めることになった。

 

 そこで農夫や鉱夫として働き始めたり、狩人になって竜種や獣を仕留めたり、森で採取した薬草から薬を作ったりと様々な方面で活躍することになった。

 

 またその後も何度かヒトを受け入れ続け、守人が建設した都市はようやく賑わう様になった。

 

 それからヒト種から「守人」様と呼ばれるようになり、平和な時代、戦乱の時代を繰り返していって、現在は四つの島で一つの国とする扶桑国となった。

 

 そんな事を思い返していた守人に、「ナーオ……」と小さく鳴き声を上げながら近寄ってくるものが居た。

 

「ああ、不破。今日も元気だねえェ……」

 

 剣歯虎(サーベルタイガー)の不破である。

 

 守人がよしよし、と言いながら不破の首元をわしゃわしゃと撫でてやると、ごろごろにゃー、と嬉しそうな声で鳴く。

 

 不破は、守人がまだ人だった頃に調教し、仲間にした剣歯虎の末裔であった。代々、剣歯虎のボスは不破と名付けられ、守人に懐き、付き従うようになっていた。

 

 

 ああ、本当にのんびりとして良いなぁ。

 

 不破を撫でながらそう思う。

 

 昔なら考えられないほど静かで穏やかな日々を過ごしている。

 

 前はこの国をより良くしようとこの身体になってからも色々と手出ししていたが、皆がそれに慣れてしまって次々に問題が起きるようになってからは最小限の事しかしなくなっていた。

 

 少々、退屈ではあるが、話し相手には不破や天龍達、巫女さん達が居るし、娯楽も文化の発展に伴って良くなってきている。

 

 それに、昔のように食う寝るに毎日困りながら猛獣や翼龍の群れに何日も延々と追い掛け回されたり、刀一本でドラゴンと戦っていた日々に比べれば遥かにマシである。

 

 平和。素晴らしい。

 

『――――』

 

 “声”がかけられた。 実際には、頭に直接語り掛けている。「念話」と呼ばれる、対象のみに言葉を届ける伝達魔法の一種であった。

 

 空を見上げると、細長い影がこちらに向かって来ていた。

 

『守人、遊びに来ましたよ』

 

 やってきたのは、天龍と呼ばれる龍種であった。姿形は翼は無く、蛇のように細長い東洋竜である。

 

「太郎か、久しぶりだの。元気だったか?」

 

 太郎と呼ばれた天龍は、かつて、人間としての肉体があった頃の守人と勘違いから戦いになった龍であった。今でもその時の傷跡が、左眼の上から頬にかけて走っていた。

 

 今では天龍の中でも最古参の龍となっており、この国では、龍神様として崇められる存在であった。

 

『ええ、元気ですよ。貴方も変わりないようで』

 

 穏やかな笑みを浮かべて太郎が言った。

 

「うむ。儂はこんなんでも劔冑じゃからな。兵器なら風邪一つも引かぬわ」

『ハッハ。それは私も同じですよ。守人』

 

 それもそうだの。そう言ってお互いにまじまじと見つめあった後、小さく笑いだした。

 

 それからやってきた巫女さん達に守人は茶と菓子、それと不破の乳酪(ミルク)を頼んだ。

 

『私は酒が良いですね』太郎が言った。

 

『先ほど空から見ましたら、表に酒樽が積んでありましたよね? しかも、匂いからして筑紫の一等良い清酒。あれが良いですね』

 

「この蟒蛇(うわばみ)め。相変わらず遠慮がないの」苦笑しながら守人が言った。「すまぬが、誰かやって酒樽を4つ5つほど持ってきておくれ」

 

 巫女さん達も忍び笑いを零しながら、はい、直ちにと言って退出した。

 

 その言葉通り、すぐに頼んだものが運び込まれた。

 

 太郎は嬉しそうな表情で酒樽を開け、魔法で冷酒にし、ゆっくりと飲み始めた。

 守人や不破も、それぞれ茶と乳酪を飲み始める。

  

「それで、何かあったのか?」

 

 ひとしきり楽しんだところで守人が言った。

 

 太郎が来る時は大抵、何かしらの用事も持ち込んでくるのだ。

 

 今年の秋の祭事はまだ先だ。

 最近は何か問題が起きたとも聞かない。

 

『ええ、ファルマート大陸についてですよ』

「む? ああ、<帝国>か。またぞろ何か言ってきたのか?」

『いえ。ああいや、それもありましたけどね。今回のはちょっと違うようです』

 

 言い淀む太郎に、守人は怪訝な表情を浮かべた。

 

『どうやら、<門>を開いたようです』

「……ふうん、また<門>を開いたのか」

 

 懲りないねェ、と茶を啜りながら言った。不破も同意だ、と言わんばかりに鳴いた。

 

 <門>とは、この世界と異世界を繋げる装置である。

 

 この世界の生物はその大半が<門>が繋げた世界から渡ってきた。中には国家や大陸ごと渡ってきた事もある。

 

 現在、この世界で最も新しくこの世界に来た生物はヒト種であると言われている。

 もしかしたら、守人が最初のヒトだったのかもしれない。まあ、これはどうでもよい。

 

『<門>を開けたのは、経済が行き詰っているからでしょう。随分と念入りに調査し、結構な数の軍勢をアルヌスの丘へ派遣したのですが、どうやら失敗したようです』

 

「ううむ……」

 

 帝国は中世レベルの国家とはいえ、今代の皇帝は有能であると聞く。調査して勝てると判断した場合でしか軍を動かさないはずだ。

 それが少し気になった。

 

「まあ、ウチには余り関係が無いか」

 

 扶桑国は殆どのことが自国内で完結している。別にファルマート大陸との交易は過去の因縁から多くなく、最近では、またちょっかいを出してきて面倒臭いことになっているので交易を減らしている状況であった。

 

 今は調査として未開の大陸や島などを探検している為、交易を止めてもさほど問題も起きないのだ。

 

『私も少し気になったので、若いのを送って調べさせてみました。その結果、こちらの小銃や自動車を使う集団によって<門>周辺が制圧されたそうです。なんでも、その集団は<二ホンコク>の<ジエイタイ>と呼ばれていたとか』

 

 

 太郎の言葉に、守人はぴたりと動きを止めた。まさか、という気持ちで一杯であった。

 

『貴方の故郷は、確か二ホンという国でしたね。何か知っていませんか?』

 

「―――ああ、ああ。知っているとも。よぅく知っているとも」

 

 己がいた日本かどうかはわからないが、恐らく、さほど違いは無いだろう。

 

「他に、どこかの違う国が混ざっていたとかはないか?」

 

 震える声で守人は言った。

 

『いえ、若いのが聞いたのはそれだけです。数も少なかったようです』

 

 となると、自衛隊が出来たのは戦後。昭和中期だったはず。もしかしたら平成時代から来たのかもしれない。

 

 そう考えてしまうと、やはり望郷の念にかられてしまう。

 もう永い間、この国で生きている。家は此処だと思っている。

 

 だが、一度だけでも良いから日本に帰りたいと思ってしまう。

 

 何か察したのか、不破がすり寄ってきて顔を守人の身体へ押し付けてきた。

 守人は不破の頭を撫でてやる。

 そして、決めた。

 

「――太郎。自衛隊の人達に接触を図ることは可能か?」

 

『ええ、勿論』穏やかな笑みを浮かべて太郎が言った。

『永い事、故郷から離れていたのでしょう? 一度でも帰りたいと思うのは当然のこと。我慢せずともよろしいかと。それに、()()の事もありますから』

 

「……ふむ、彼らの事も考えないとな。それと、ありがとう」

『いえいえ。では、もう一度誰かを送りましょう。すぐに取り掛かりますよ』

 

 そう言って、太郎は残っていた酒を飲み干して飛び上がる。

 

『準備が出来ましたら、また連絡を下さい。それまでは可能な限り情報を集めておきます』

「すまない、頼んだ!」

 

 太郎は念話ではなく、一声大きく吠えて答えた。そのまま一気に空高く飛んでいく。

 

 不破も大きく吠えた。

 辺りが騒がしくなる。龍神である太郎の声に反応した猛獣や龍種によるものだった。

 

「さて、ちと忙しくなるかね……」

 

 不破の頭を撫でながら、守人はこんなにも楽しい気分になったのは久々であると、心が浮きだっていた。

 

 まるで未知のことに遭遇した時のような、ワクワクした気持ちを抑えずに自衛隊、そして日本と接触するのに必要なことを始めた。

 

 さしあたっては、まず巫女への連絡か。個人的なことだが、まあたまには我儘に付き合ってもらおう。

 




2016/8/11 大幅な修正と変更を行いました。

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