GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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閑話2

 日本は扶桑国との間に国交が結ばれた事により、僅かだが人や物が行き来するようになった。

 扶桑国は外貨獲得の為に日本で何が売れるか、何が珍しいのかが分からない為、現在、扶桑国にあるものを片っ端から日本へ輸出し、その反応を見ている最中であった。

 

 これに、狂喜している者達がいた。

 

「うひっ、うひひっ……」

「嗚呼、なんて美しい遺伝子なんだ……」

「うへへ、この様なサンプルに出会えるなんて……」

 

 半ば逝っちゃった表情で素材を解析する研究者達。それぞれの大学や研究所ではドン引きされるような彼らであったが、此処に居るのは似た者同士なので誰もが気にしない。

 

 ここは政府が新設した、特地の素材を解析、研究するための総合研究所。そこには日本が誇る、各分野のマッドでHENTAIな研究者らが集められていた。

 誰が言い始めたのか、通称「マッドの巣」である。

 

 彼らはこの人生で、素晴らしい物に出会えた事に狂喜していた。

 

 例えば、金属工学の専門家は、地球には無い組成の鉱石や、劔冑の甲鉄のサンプルを見て。

 歴史学では、扶桑国に渡った者達が遺した文章の解読に文字の読み方、そして新たな歴史の発見に。

 動植物学では、図鑑のイラストや剥製でしか見た事が無かった絶滅種の動物や全く未知の働きを持つ植物を。 

 医学では、特地由来の動植物から採れた未知の酵素や遺伝子に。

 薬学では、アニメやゲームの様に怪我を瞬く間に癒す回復薬に、難病治療に有用な効果を持つ調合薬に。

 

 彼らの今までの常識では全く説明できないものが多い。

 だからこそ、燃える。素晴らしい。絶対に解析して己のモノにしてやる。そう意気込んで寝食を忘れて研究に没頭する者が相次いでいた。

 

 当然ながら、この動きは諸外国にも分かった。

 直ぐさま政府にサンプル寄越せやら研究者に接触して共同研究を持ち掛けたり、それとなく研究内容を尋ねたりした。

 サンプルに関しては如何にか手に入れた国もあるが、それ以外は悉く失敗。

 

 研究者達が口を割らなかった為である。

 彼らは別に愛国精神を発揮したとか、そういう訳ではない。

 彼らはマッドである。故に、今の環境を気に入っていた。資金は政府持ち。自分で好き勝手やらせてくれる。素晴らしいサンプルをどんどん提供されてくる。

 もう、夢の様な環境なのだ。

 

 もし、口を割って研究から外されてしまう。それは死んでも嫌なのだ。こんな魅力的なもの、絶対に己が研究するのだ! と考えていたので誰も口外しなかっただけだ。

 

 となると、正攻法では無理である。

 だが周りには自衛隊ががっちり警備を固めている所為で研究資料の強奪や誘拐といった強硬手段は取れない。先に馬鹿やった某国の工作員やら現地拠点を文字通り全滅させている為、リスクが高過ぎたのだ。

 そんな訳で、研究者達は邪魔される事無く、今日も元気に好き勝手研究を進めていた。

 

 そんな中、休憩所ではひと段落したらしい各分野の研究者がコーヒーを片手に談笑していた。

 

「お疲れ様です。どうですか、そちらは?」

「ああ、お疲れ様です。いやぁ、楽しいですよ! 最初は強引に集められて文句の一つや二つ言いたくなりましたが、あんな植物を研究させてくれるなら如何でも良くなりましたよ!」

「先生は確か、樹の専門でしたか?」

「ええ、湧水樹という樹の研究に携わる事になったんですが、もう凄いですよ、ホントに」と、興奮気味で話す研究者。

 

 彼が研究している湧水樹は簡単に言えば、天然の浄化装置がついた樹である。

 この樹は汚水を根で汲み上げ、体内で飼っているバクテリアで分解、ろ過し、幹の洞から清水を流す事からこの名がついている。生育は非常に遅いが、製材は非常に硬くしなやか。そして腐りにくい。劔冑を纏った武者が全力で殴りつけても損傷しない為、扶桑国では専ら船材や建材などに使用されている。

 

「これ数十本植えれば、小さな都市の上下水場一つ分の働きを持ちます。流石ファンタジーだと思いましたよ」

「それは凄いですね」

「先生は、動物でしたな。どうですか?」

「いやぁ、まさか図鑑でしか見た事のない存在をこの手で研究出来るとは思いませんでしたよ。もう楽しくてしょうがいない」

「本当に、扶桑国様様ですね」

「全くですよ」

 

 そこに、他の研究者達もやって来て其々の近況やら研究について話し合う。一人の研究者が言った。

 

「これだけ素晴らしいサンプルがあるのだ。是非とも、扶桑国に行ってみたい」

「確かに。こっちでは絶滅した筈の動物や未知の存在が居るのだ。私も行きたいぞ」

「ですが、政府が認めますかね? 未だ特地は戦争状態ですし、<門>は不安定だと聞きます。あっちに取り残されたとしたら研究を続けられますか?」

 

 確かに、といった表情で頷く面々。

 彼らにはとって<門>が閉鎖した事によって日本に帰れないよりも、研究が続けられるかどうかの方が重要であった。

 

「なら、あっちに研究所を造ればいい」

「研究所を特地に? それは確かに良い考えですが、現状では難しいのでは?」

「今の政府は<門>の近くに街を造っている。万が一に備えて自活出来るようにするらしいから機材も大量に運び込んでいる。そこに研究所の一つや二つ増えた所でも変わらんだろ」

「出来れば扶桑国にも造ってほしいですね。彼の国の方が色々とサンプルが手に入りそうだ」

「それに、彼の国は特地で最も進んだ国だと聞く。不便さはあってもある程度は似た物を作ってくれるだろう。あと予備を大量に持っていけば研究は続けられそうだ」

「まあ、それなら……」

 

 と、彼らは納得し、連名で政府に直ぐに研究所を建設するよう進言しておこう、という事になった。最も、既に彼らの心の中では特地に行く事と研究所が建てられるのは決定事項となっていた。

 

「しかし、特地か。どんな場所なんだろうか?」

「映像で映っていた森は見た感じ此方と微妙に違うみたいだ。うむ、是非フィールドワークしてみたい」

「私はそうは思いませんけどね。私は植物の遺伝子は好きですけど、植物自体は余り好きでは無いんですよね」

「なに? 貴様、確かに植物の遺伝子は至上だが、植物全部愛でてこそ真の研究者だろうが!?」

「いや、動物の持つ遺伝子配列が至上だろうが!」

「……何言ってるんですか。この人達は。金属の組成こそ最高でしょう!」

「「「やかましいわ、無機質好きの変態野郎が!」」」

「てめぇら表出ろや!」

 

 突如始まった乱闘は警備員が駆け付けるまで続いた。警備員も「何時ものじゃれ合いか」と内心ため息をつきながら手慣れた様子で仲裁し、解散させる。

 

 今日も日本は平和です。

 

 

   ***

 

 

 地球世界の諸外国は、今のところ目立った動きを見せていなかった。

 精々、今までの焼き直しの様に「<門>の向こう側が広く国際社会に開かれる事を期待する」と言っているだけである。

 まあ、現状では不満はあるものの、日本から提供された翼竜やゴブリンやオークといったサンプルの研究や解析で利益は出ている。此処で無理に日本にもっと利益寄越せと言い募っても意味が無い。そしたらその国は他の国々から袋叩きに遭い、自分の分け前は他の国々に回されて無くなってしまう。

 それが分かっている為、無理に動こうとはしなかった。

 

 しかし、二つの国は違った。アメリカと中国である。

 

 アメリカではこの日もホワイトハウスにて、ディレルらは議論が交わされていた。

 内容は、先日入手した特地由来の物の解析結果についてだった。

 

「ふむ、それでツルギと呼ばれるパワードスーツの解析結果はどうだったのかね?」ディレルは訊ねた。

「はい、大統領。現在分かっている情報を纏めたものが此方です。それと、入手した劔冑の破片を解析にかけましたが……」

 

 素材の出所は当然、日本からである。

 現内閣は扶桑国との交流で支持率を持ち直しているが、度重なる不正や汚職疑惑によって死に体には変わりないのだ。本位首相や嘉納大臣などはガードを固め、また汚職を行っていた閣僚や官僚達を少しずつ中枢から追い出して健全化を図っていたが、未だアメリカに握られた秘密の方が多い。

 この素材も、秘密を握られた閣僚や官僚を脅し、極秘に横流しさせたものだった。

 

「現状では、殆ど分からなかった、と。全く未知の金属に、未知の物質が幾つも発見されました。解析を行った研究者曰く、ファンタジーどころかSFだそうで。欠片からはナノマシンの様なものが確認されたそうです」

「……あの世界はファンタジーでは無かったのかね?」

「その筈なのですがね。やはり、世界は変わっても日本人は日本人。我が道を往く、という事なのでしょう」

 

 クロリアンは肩を竦めて言った。

 

「……ふぅ。つまり、当面はツルギの複製は無理、という事か。やはり既存のパワードスーツ開発を進めるしかないか」

「はい。それにツルギは此方では製法に問題が有り過ぎます」

 

 劔冑の製法は「焼いた鎧を鍛冶師が装着し、水で焼き入れする」こと。故に一領造るのに一人の命が必要。

 この事実はアメリカ上層部を驚愕させた。

 流石のアメリカでも、現状では好き勝手出来る訳では無かった。昨今は国際ハッカー集団によって国家機密が流出したり、CIA職員がロシアに亡命するなど情報管理体制が甘くなっていた。

 

 友好国であるから日本政府だけでなく、扶桑国の用意したサンプルも手に入れており、ディレルはそれを外交の成果として発表していたが、僅かに支持率を持ち直した程度。ここで人を材料にした実験など行い、バレれば確実にアメリカ上層部全員の首が飛びかねないのだ。

 

「フソウ国への武器輸出の話はどうなったのかね?」

「はい、非公式ながらもキクチ大使と面会は出来ました。自衛隊が運用してる銃器を実際に見ている為、性能に関しては文句が無いようです。ですが、銃器の整備や補給などの問題から導入には慎重な姿勢のようです」

「此処でも<門>が関わるのか……」

 

 ディレルはため息をついた。

 <門>は日本にある。そして小さい。アメリカお得意の軍事オプションは取れない。

 そして、銃器の生産には高精度の作業機械と資金が必要となるが、技術格差の大きい扶桑国では難しい。となると輸入するしか無いのだが、<門>を通して一度に運べる量には限界がある。

 

 何か一つ、大きく目に見える成果が欲しい。ディレルはそう考えていた。

 

(だが、急いて失敗したら笑い者だ。此処は一つ、じっくり待とうじゃないか)

 

「だが、これで接点が出来た。後は、日本とフソウ国と友好を深めて特地の権益を手に入れる事だ」

「はい、大統領。既に外務省やマスメディアを通じて親米派を増やすキャンペーンを始めております」

「実にクールな方法だ。だが、同じ手段を取っているチャイナが五月蠅いのではないかね?」

「お任せください大統領。面の厚いチャイナ共にアメリカ流のやり方を見せてやりますよ」

「よろしい。期待しているよ」

 

 

 一方、中国では。

 

「ふむ、成程。道理でツルギの生産が出来なかった訳だ」

 

 中南海の主である董徳愁国家主席はそう口にした。彼が手にしているのは、アメリカが行った劔冑の破片の解析結果が纏められた報告書であった。

 アメリカに限った話ではないが、チャイナマネーの息がかかった政治家や官僚、軍人など何処にでもいる。中国はそれを利用し、サンプルの解析結果を横取りしていたのだ。彼らにとっては合理的な手段である。

 

「となると、一旦は止めるべきだろうな。金と時間の無駄遣いとなる」

 

 中国では劔冑を知った情報通りに生産しようとしていた。幸い、材料は豊富に存在した。だが、鉄屑と焼死体を作っただけであった。

 

「扶桑国、か……」

 

 董は報告書を机の上に置くと椅子の背にもたれ掛かる。

 

「特地を日本の独占にする訳にはいかない。だが、扶桑国の存在が厄介だな」

 

 中国では古代より、扶桑国の伝説がある。そこは扶桑樹と呼ばれる毎朝太陽を生み出す樹があり、不老不死の仙人が棲むというユートピアであるというもの。

 

 中国国内では、この伝説と、<門>の向こうから現れた扶桑国は同じではないか? という説が広まっていた。

 

 扶桑国について書かれた「山海経」は紀元前四~三世紀頃と、今から二二〇〇年程前に成立したと考えられている。

 そこに書かれている国名は同じ。しかも未だ若さを保つ歴史上の人物。魔法。劔冑による超常の力。古代の人は、魔法を操ったり、劔冑を纏った武者を仙人と見ても可笑しくはないだろうという説は一定の支持を集めていた。

 

 董自身はどちらでも良いと考えていた。だが、魔法や劔冑を手に入れれば中国の地位は高まり、己の発言力の強化にもなる。

 

 そうするにはまず、日本や扶桑国と友好関係を結ぶ必要があるが、中国にはこれが難しい。

 彼の国は日本人が祖先であり、文化的にも多くが日本と類似している。しかも、戦前の事を知る人曰く、「戦前の日本と似たような雰囲気がある」らしい。

 中国では反日運動が日常的に起こっている。これは国内の不満を逸らす為にガス抜きでやらせているが、董が日本と扶桑国に友好なぞ言ったらその時点で何が起こるか分からない。

 下の者の暴走だけでなく、派閥争いで董の敵は多いのだ。ここぞとばかりに董を叩こうとするだろう。

 

「なら、今までと同じくマスメディアを動かし、友好的な面を押し出すしかない」

「ですが、強硬派が暴走するのでは?」秘書官が言った。

「なに、下の者共なぞどうにでもなる。後は伝説はあるかもしれないとでも言っておけば暫くは大人しいだろう」

 

 昔から地位と名誉、そして財を成した権力者が次に欲しがるのは不老不死。

 既に実例があるのだ。その情報を手に入れる為と言えば強欲な老害達は直ぐに大人しくなるだろう。

 

「今まで以上に日本のマスメディアに働きかけてくれ。それと、強硬派にも監視を置くように」

 

 嘘を何度も言えばいつか真実になる。そして記者交換協定によって、中国は今まで自国に不利益な報道を控えさせるようにしていた。

 例え今まで反日発言を繰り返していたとしても、自分達の失態を誤魔化して、友好関係をでっち上げる。そして日本や扶桑国の世論がそういう雰囲気になってしまえば此方の勝ちである。

 

こうしてアメリカと中国は、特地の利益を得るために着々と日本と、そして扶桑国との友好関係を強化する方針を定める。そして特地の利権を他国よりも多く取るために、両国は水面下で激突しながらも準備を進めていく事になった。


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