GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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第3話

 

 というわけで。

 

「ちとファルマート大陸に行ってくるから、あとはよろしく」

「いきなり何言ってるんだ、あんたは」

 

 神宮の本殿。

 

 守人から急に呼び出された筆頭巫女は開口一番、そう答えた。

 

 上下共に白の巫女服を纏い、長い黒髪をポニーテールにした、若く見える巨乳の美女である。

 

「うむ?言ってなかったか?」

「ファルマート大陸に行くとは聞きましたが、理由は聞いていません」

 

 既に旅支度を整えたらしい守人に非難を含んだ視線を浴びせても、彼は柔らかい笑みを浮かべたままだった。

 

「今、アルヌスの丘に新たに<門>が開いたそうでな。そこに異世界の軍勢がやってきているそうだ」

「<門>、ですか?」

「そう。しかも今回は固定化しているようでな。それで太郎にも動いてもらっている」

 

 そこまで聞かされた巫女も、ある程度は察した。

 

 今までも<門>は幾度となく開いていた。

 この世界と似た所ならばまだ良いが、全く違う世界、例えば巨大な昆虫が襲い掛かってきたやら未知の病気が流れてくるなど被害が出ているのだ。

 

 しかも、<門>はあのハーディが関わっている。

 今までも此方にちょっかいを出してきている、はた迷惑な冥府の神である。

  

 そこで龍神様まで動いているとなれば、一介の巫女に過ぎない自分では止めることなど無理だし、今後の事を考えると何かが起きても可笑しくはないのだ。

 

「……分かりました。すぐに御前会議へ知らせます」

「うむ、ついでに異世界観光もしてくるのでな」

 

 それを聞くや、巫女は呆れた表情を浮かべた。

 

「……本音はそれですか。調整するのは私の仕事なんだけどねぇ」

「はっは。まあ儂の今代の巫女だったことを恨んでくれ」

「はあ、もう分かりましたよ」

 

 渋々と、まるっきり納得していない表情で頷く。

 

 今までも、こうやって守人が思い付きで行動することは度々あったのだ。

 ただし最近は大人しかったから、そろそろ始まるかな、という意見があった位だ。

 

 本来ならば、亜神とはいえ国が祀る神があっちこっち出回るのは良くないのだが、お人好しな性格からか、国外に出れば人助けをしていくので信者は多くなり、また国内でも同様の事をして治安が良くなるのだ。

 

(これで、あと少しでも神としての威厳さえあれば……)

 

 まあでも、偉ぶらないから今の人気とこの国があるのかもしれない。

 そう考えて、ふと思った。

 

「でも、何で態々異世界を見に行きたいと? 今までも<門>が開いた時にはそういった事はしていないと聞きましたが」

「ああ、それか」

 

 守人は何気ない態度で言った。

 

「新しく<門>が開いた先は、儂の故郷かもしれないのでな。ちと里帰りしたいのだ」

「………………は?」

 

 その後、神宮にてある巫女の絶叫が響いた。

 

 

   ***

 

 

 そしてその後。

 

 扶桑国、みやこ空港。

 

 空港と言っても名ばかりで、ただ野原に飛空船の整備所と倉庫があるだけの閑散とした場所である。

 だが、この日は開港以来初めてになる賑わいを見せていた。

 

「いやはや、随分と大仰な使節団となったのぅ」

 

 守人のため息交じりの言葉に、仕方ないよ、というような鳴き声で不破が答えた。

 

 守人と不破が空港の隅に張った天幕で待機している時、扶桑国が誇る飛空船<伊吹>には大量の物資が積み込まれている最中だった。

 

 この飛空船はファンタジーらしく、気嚢部と船が上下にくっついたようなもの。船の両舷には複葉の翼と推進機である動力機関があった。

 水上を走る船と違って海獣に襲われることもなく、最短距離を安全に行くことが出来る優れ物である。

 

 だが、この飛空船は便利ではあるが、使用する素材とコストの高さからこの国でも三隻しかない為、民間利用はまだされておらず、緊急時や軍の演習時にしか使われない。その内の一隻を出すということから、首脳陣も本気なのだろう。

 

(それだけ期待している、ということかの?)

 

 この国の現状を知っている守人からも、その理由は察することが出来た。

 八省の長らによる緊急会議が行われ、守人のファルマート大陸行き、そして異世界行きが了承される。

 

 これは正神・守人の故郷かもしれない、という言葉もあったが、守人と天龍の話によれば、今現在<帝国>とやり合っている集団が自分達よりも高い技術を持っていると分かったからだ。

 

 ファルマート大陸の<帝国>は停滞を打破するために<門>を作り出し、開いた。

 そして停滞しているのは何も<帝国>だけに限った話ではなかった。

 

 扶桑国は21世紀の地球から見れば、恐ろしく歪な国である。

 

 これは守人による知識と技術によって発展してきた国であり、この国特有の生物に対抗してきた結果によるものだった。

 

 この世界には、地球のファンタジー小説に出てくるような生物が多く居る。

 

 ドラゴン、翼龍、飛龍といった龍種。

 グリフォン、コカトリス、ミノタウルスなどの怪異。

 剣歯虎(サーベルタイガー)豪象(マンモス)のような地球では絶滅した古代種。

 

 他には天龍、てばさき、といった扶桑国の固有種、等々。

 

 扶桑国は国土が狭いが、独自の進化を遂げた生物が多く生息していたのだ。

 最初、守人が来た時も「ここはモンハン世界なのか?」と暫くの間疑ったぐらいであった。 

 こういった生物に対抗するには唯の鉄剣や弓矢では到底敵わない為、生き残るには急速に発展せざるを得なかった。

 

 その結果、開発された代物が<劔冑(つるぎ)>と呼ばれるパワードスーツである。

 

 元ネタはとあるPCゲームからだが、仕手と呼ばれる装着者の熱量(カロリー)を消費することによって運動能力の増加による剛力と傷の治癒能力を発揮するようになる。

 また背中の合当理と呼ばれるブースターによって空を飛ぶ事も可能で、特に業物と呼ばれる劔冑は陰義(しのぎ)と呼ばれる、いわゆる必殺技が備わっている。

 

 その製法は高い技量を持った劔冑専門の鍛冶師が制作している。

 その最終工程で己自身を素材とすることで完成し、鍛冶師の魂は劔冑の意思となり、PCで言う機体を制御するOSとなる。

 それ故に生涯に一領のみしか作り出せないが、その性能は破格で扶桑国では古来より最強の兵器として用いられている。

 

 この劔冑に使われている技術と、また現在進めている劔冑の量産化の過程で生まれたのが再生医療技術。

 四肢や内臓が無くなっても、元に戻すことが可能なレベルである。

 つまり、21世紀の地球と比較すれば特定の分野ならば数世代先に行っているが、それ以外は精々が近代に入ったかどうか、というレベル。

 

 そして、急速に発展した弊害として扶桑国の技術力が突出しすぎてしまい、同等の競争相手が居なくなってしまった。

 

 また太郎や当時の帝らから、

「知識や技術を与えることに慣れてしまうと自力で発展できなくなる」

 と言われて、守人は緊急時以外は口出しせずに一定の距離を置くようになった。

 

 この結果、急速な発展は止まり、また技術競争が起きない為、長い停滞を余儀なくされた。

 対策としては<帝国>が発展していけば良いのだが、仲が良いとは言えない間柄であるし、古来より隣国を支援する国は滅びると言われる。

 わざわざ技術支援する気は無かった。

 その為、他の大陸の調査を行っているが、未開の部族が住んでいるのみで扶桑国はおろか、<帝国>並みの文化技術を持った国とは未だ出会えていない。

 

 そこで現れたのが、守人の故郷かもしれない国から来た軍勢。しかも、こちらと同等、もしくはそれより高い技術を持った国である。

 高い技術を持っていることは即ち、扶桑国と競争相手になるかもしれない。

 また積み重ねてきた経験や知識、そういった物は扶桑国にとっては刺激になるのだ。

 

 これが、どうしても欲しい。

 

 その為、予定では異世界に行くのは守人と太郎、不破の三柱だったのが、扶桑国の上層部の意向から使節団も派遣したい為、交戦中の場所に行くから軍も必要と、あれよあれよと膨れ上がり。

 結果、移動の為に飛空船が一隻。

 神職に外交官、軍から派遣された一般兵、そして<劔冑(つるぎ)>を扱う武者。

 総勢100人を超える大規模な使節団が編成されることになったのだ。

 

「しかし、こんな人数で押しかけても大丈夫なのかね?」

『だから、私は一足先に行って、彼らと接触してみることになりました』

 

 守人の呟きに対して、念話が入る。太郎だ。天幕の外に出て見上げる。

 太郎はゆっくりと旋回しながら飛んでいた。守人の姿を見つけるとそこに目掛けて一気に急降下し、激突する直前でピタリと止まると、四本の脚で地面に降り立った。

 

「お見事」

『もう少し、止まるのを遅くしても良かったですね』 

 

 それだと儂を吹き飛ばしてしまうわ、と言いながら守人は満面の笑みで太郎を出迎えた。

 

 太郎はとぐろを巻いた姿勢になり、守人も天幕から床几を引っ張り出して座る。不破は守人の足にひっつく形で座り込んだ。

 

「しかし、太郎が先行するのか。若いのにやらせるんじゃなかったのか?」

『いや、その予定だったんですがね……』

「なんだ、また問題か?」

 

 明らかな苛立ちを含んだ声で言う太郎に、嫌な予感がしながらも守人が言った。

 

『炎龍ですよ。あの火吹き蜥蜴が<門>の近くに出たそうです。あの忌々しい、人語も話さないでかいだけの蜥蜴が、観察していた若いのを襲ったんですよ』

 

 ふん、と不機嫌そうな表情で太郎が言った。

 

 その天龍によれば、離れた場所の上空からアルヌスの丘にある<門>と自衛隊の駐屯地を観察していたところ、雄叫びと共に炎竜が襲い掛かってきたらしい。

 

 天龍も若いとはいえそれなりの経験を積んだ龍であったが、いかんせん相手が悪い。

 単純な力ならば天龍よりも古代龍の方が上である。それに経験の差もあって終始押されてしまった。

 天龍も、今の自分では敵わないと判断し、全身に火傷と裂傷を負いながらも隙をついて炎竜の眼と翼に攻撃。

 炎竜はよろけて墜落した為、その隙にどうにか帰ってきたそうだ。

 

「その若いのは大丈夫なのか?」守人が言った。

『薬師によれば、火傷と裂傷で暫くの療養は必要ですが、しっかりと治るとのこと。まあ龍族は丈夫ですからね。死ななければ大抵治りますし』

「そうか。しかし、この時期に炎竜か……」

 

 守人は嫌そうな表情になる。

 

「あの女の手引きだな……」

『でしょうね。あの蜥蜴は今は休眠期だったはず。目が覚めるのが早すぎる』

 

 炎竜はハーディの眷属だ。

 恐らくは<門>から来た軍勢の様子を見る為に炎竜を起こしたのだろう。

 もし、炎竜に襲われて全滅すればそれまでだし、逆に返り討ちにすればそれはそれで面白い。自分の意に適った魂があるかもしれない。そう考えるだろう。

 

 俗人など知ったこっちゃないという、自分勝手で気ままに動く、神らしい神。

 ハーディはそういう神なのだ。

 

『とはいえ、私の一族の者が襲われた以上、あの雌は一度ぶちのめさないと私の気が済まない』

「……あんまり派手にやりすぎるなよ」

 

 太郎は龍神。水と風を司る神である。

 その気になれば嵐を巻き起こしてその一帯を湖にすることぐらい可能なのだ。

 そう言えば、ファルマート大陸に行っていた若いのは、太郎の直系の子じゃなかったか……?

 

『分かっていますよ。安心して下さい。私ももう年寄りです。冷静にやらせてもらいますよ』

 

 いや、全く安心できないです。

 

『では、そろそろ行きますかね。…………待ってろよクソ蜥蜴が』

「あー、気を付けてな。それと、仕事は先方への伝令だからな、間違えるなよ」

『ええ、ええ、分かっていますとも。ではお先に』

 

 太郎は身体をしならせ力強く飛ぶと、そのまま高みへと昇って行った。

 入れ違いに、巫女らがやってきた。出港準備が整ったそうだ。

 

「丁度良い時に来たの。飛空船の出航時間を遅らせておくれ」

 

 疑問符を浮かべる巫女らに、守人は引きつった笑みで言った。

 

「太郎がキレた。暫く天候が荒れるからゆっくりと行こうじゃないか。荒魂となった太郎の怒りに巻き込まれたくなかったらの」

 




2016/7/18 文章の修正を行いました。

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