GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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遅くなりました。
しかも、今更ながらにバレンタインデーのネタ。
申し訳ありません。


閑話4

 ロゥリィ・マーキュリーは、死と断罪と狂気と戦いを司る神エムロイに仕える使徒である。

 特地において、仕える正神の特性とロゥリィ自身の亜神としての能力の高さと逸話から『死神』と恐れられている。

 

 とはいえ、ここアルヌスの街でのロゥリィは一般人からすれば至って普通の少女だ。

 ロゥリィ自身、辺り構わず命を狩る存在でもなく、普通に話は通じる。

 日本側からすれば知らないという事もあるのだが、守人から「閻魔様みたいな存在」と言われて大抵の者は「ああ、成程」と納得してしまった。それに可愛いのは正義である。

 扶桑国ではそもそも武者は戦場での死を誉とする風潮があるので、エムロイ信者も少なくはない。

 

 そんな訳で、ロゥリィは自衛隊に特地宗教アドバイザーとして雇われており、自衛官や扶桑兵からはよく柏手で拝まれ、偶に模擬戦を行ったり、街中を見回りして罪を犯す者(小物)をとっ捕まえ、信心深い者には教義を行って生活していた。

 

 この日も扶桑国の侍との模擬戦を終え、家に帰る途中であった。

 目に見えて上機嫌である。怪鳥の様な奇声を発し、血走った眼で突撃してくる侍に最初は軽く引いていたものの、エムロイの教義に似た価値観と武人としての誇りを持った彼らを好ましく思っていた。

 

 自室に戻ると何時もの様に、ふぅ、と小さくため息をつく。すると、自分が少し汗臭い事に気付く。

 まあ、あれだけ動き回り、筑紫兵を叩きのめしたのだから当然なのかもしれない。

 

 となれば、あそこに行こう。着替えと入浴道具一式を持って街の銭湯へ向かう。

 この銭湯はついこの間、守人が唐突に「そうだ、銭湯を造ろう」と言い始め、そしていつもの如く太郎と不破を巻き込んで源泉を掘り当て、僅か数日で完成したものだ。扶桑式と呼ばれる、和風にファルマート大陸で見られる建築様式が入り混じった独特の造りをしている。

 

 ロゥリィが中に入ると、まだ早い所為か人影は疎らだった。靴箱にブーツを入れ、藁を編んだ柔らかい床を踏みしめながら番台にいる神官に軽く挨拶をする。

 適当な空いた籠に髪飾りを入れ、背中から腰の紐を解き、黒ゴス神官服を脱ぎ、黒の大人な下着をサッと取っていく。すると、決して熟れる事のない、魅力的な肢体が現れた。肌は白く滑らかで、小さくも膨らみのある胸に細いたおやかな腰。小振りながらも張りのある臀部が露わになる。

 周りからどこか羨ましそうな目で見られるが、ロゥリィは気にせずタオルと石鹸を持って大浴場に繋がる引き戸を開ける。

 むわぁ、とした白い蒸気と共に仄かな草の香りがあった。

 長い黒髪と身体を洗い、湯船につかる。

 薄い緑色をした湯からは溶けている薬草と木の爽やかな匂いが仄かに香り、全身を心地よい湯の温かさが包み込む。ほぅ、と思わずため息を漏らせば全身の疲れが湯に溶けていくかのようだ。

 

「はぁ~」

 

 ゆっくりと鍛錬で凝り固まった身体を解し、温まった所で湯船から上がる。

 そして身体を拭き、浴衣に着替えてからぐい、とよく冷えたフルーツ牛乳を一杯。これが美味い。

 ぼへーとしながら藤細工の椅子にもたれ掛かり、机の上にあった雑誌を手に取る。多くの人が読んだせいなのか、雑誌はしわが出来ていてよれている。そこに気になるものがあった。

 

「バレンタイン……?」

 

 曰く、気になる異性にチョコレートを送る事で自分の気持ちを示す特別な日、らしい。まあ、市販のチョコを友人に配ったり、自分で食べる様に買ったりと色々あるようだが、基本的には告白の日であるらしい。

 

「いいわねぇ、これ」

 

 ロゥリィが目指しているのは愛の神。この風習は正しくピッタリではないか。

 それに、真心を込めて作ったチョコレートを伊丹に渡し、そして……。

 

「ふふふ……」

 

 思い立ったら直ぐ行動。早速、道具と材料を買いに行こう。

 あれこれと夢想しながらPX前まで行くと、そこで見てしまった。

 

「もう、レレイ。何でこんなに一杯買うの?」

「もうすぐバレンタインだから」

 

 丁度、PXから出てきたのは、テュカとレレイの二人だった。テュカは小さな紙袋一つだったが、レレイは見るからに重そうな袋を抱えていた。

 バレンタイン。それを聞くやロゥリィは慌てて近くの建物の陰に隠れ、様子を窺う。

 

「バレンタイン?」

「女性から男性にチョコレートを贈る日。チョコレートを作るにはこれらが必要」

「へぇ……。あ、そういう事ね」

 

 納得した表情でテュカが頷く。

 

「私もユノに作ろうかしら?」

「同性には買ったチョコレートをあげると書かれていた」

「あ、そうなの? じゃあ今度買ってこようかな。レレイも頑張ってね」

「ん、当日までに一番良い物を作る」

 

 そこから先、どんな会話をしていたかロゥリィには分からない。

 だが、言えるのは唯一つ。

 

「負けられないわぁ……!」

 

 そして、ロゥリィはPXに突撃した。

 

 

 

「で、なんで儂の所に来るのだ」

「だってぇ、他に言える相手が居なかったしぃ……」

 

 分社。そこで細工物を作っていた守人は、いきなり半泣きの状態で突撃してきたロゥリィの相手をしていた。ロゥリィからは非常に甘ったるい匂いを放っていた。

 バレンタイン。そういえばそんなのもあったなぁ、と守人は思い出した。まあ、日本にいた頃はテレビや街中でもよく喧伝されていたが、この街にいるのは自衛隊と扶桑国と現地人のみ。バレンタインについて詳しいのは自衛隊側だが、ここには任務として来ているのだから宣伝する筈も無く、聞く機会が無かったのだ。

 それに、人間だった頃に義理すら一度も貰った事が無いので自分には関係ない事だと思っていたのもある。

 

 さて、ロゥリィが訊ねて来た理由はごく単純。バレンタインのチョコレートの作り方を教えて欲しいとの事だった。

 

「んなもん、雑誌に作り方とか書いてあると思うのじゃが。その通りに作れば良かろう」

「それが、できなかったのよぉ……」

「……お主がいた、フェブロン神殿は確か炊事も習うはずじゃ?」

「……習ったけどぉ、久々すぎて、ねぇ?」

 

 あー、と言われてみても納得した。亜神だから行く先々で持て成されるし、神殿からは路銀を支給されている。それに旅の途中、何も食べなくても死ぬことは無いので我慢すればいいとなってしまう。

 

「なら、単純に市販のチョコを買って渡すか、溶かして好きな型に流して固めるのが一番楽じゃろ」

「それじゃあ、真心が籠っていないしぃ、負けちゃうじゃない……」

 

 なんだろう、凄くめんどくせぇ。

 

「そういうのは基礎が出来てから言うもんじゃな」守人は呆れたように言った。「そも、そんな回りくどい事せずに、手段を選ばなければ良かろう。問答無用で襲えば良い」

「えー、だって、ねぇ? 雰囲気も大事じゃなぁい。ヨウジィと二人っきりで食事してぇ、チョコレート渡してぇ、それで一緒の部屋に泊まって……」

 

 そこまで言って、ロゥリィは顔を真っ赤にしてしまった。

 どうも、ロゥリィは「死神」として畏怖と畏敬を集めているが、こと恋愛に関しては乙女のようだ。雰囲気を大事にし、相手が積極的に動いてくれる事を望む。だから最初までは自分から積極的に誘うが、後は受け身になってしまう。

 それ以上自分から積極的に言って、もし嫌われたらどうしよう、とかそんな風に考えているのだろう。エムロイ信者であっても近付けば恐れられ、敬遠されてしまいがちであるから、その所為なのかもしれない。

 

「(そんな歳でもないのにのぉ……)」

 

 ロゥリィは剣呑な表情でハルバートの穂先を突き付ける。

 

「……何か言った?」

「別に何も?」

 

 それはさておき。

 

「まあ、良いじゃろ。お主でも作れそうなチョコレートを考えておくよ」

「ありがとぉ」

 

 ロゥリィは笑みを浮かべて感謝する。そして軽く雑談すると、そのまま自宅へと帰っていった。

 再び一人になった守人はため息をつく。

 

「さて、どうするかねぇ」

 

 まあ、バレンタインのチョコレートは実際にやって見せ、後は口出ししながらやれば問題は無いだろう。

 ただ、折角のバレンタインだ。何かもう一つ欲しい。

 

「そうさな、日本と同じく祭りにしちまおう」

 

 これは名案だ、と守人は笑みを零す。

 ロゥリィは愛の神になりたいという願いがある。偶には後輩の指導をするのも先輩の務めだろう。それに、この間の件で不破に肉を貢いだ所為で金欠なのだ。少しばかり稼いでおきたい。

 

「ふっふっふ、これでロゥリィ好みの雰囲気もばっちり。旅館に部屋を予約しておいてやろう。そうだ、チョコレートは薬じゃから、一服盛っておけば……。いやぁ、楽しみじゃのぉ」

 

 人、それを要らぬお節介と言う。

 

 

   ***

 

 

 そして、2月14日。日本ではバレンタインデーである。 

 とはいえ、ここアルヌスではいつもと変わらない朝。

 

 ……そのはず、だったのだが。

 

「……なんだこりゃ」

 

 とある住民が街中を見て一言。

 

アルヌスの街は、バレンタイン一色になっていた。どこか甘い匂いが漂っている。

 

 至る所にポスターやリボン状の布飾りが貼られ、大通りに建てられたばかりの街灯には黒の地に銀糸で「St Valentine's Day」と刺繍がなされた旗が吊り下げられている。

 ポスターには綺麗にラッピングされた、ハート形のチョコレートを大事そうに抱えた女性のイラストが描かれており、

 

『好きな人にあげたくて、みんなに配った』

『甘い気持ちと一緒にあの人へプレゼント』

『勇気は一瞬。甘い記憶は永遠』

 

 などとでかでか書かれた文字がある。

 

「バレンタインの広告が何でここにも……」

 

 住民から通報を受けた伊丹ら自衛隊員が巡回していると、妙な人だかりがあった。

 

「いらっしゃいませー」

 

 街角に屋台を出し、笑顔で揉み手しながら綺麗にラッピングされたチョコレートを販売している者がいた。狩衣姿にエプロンを付けた守人であった。

 

「……何してるんですか」

「今日はバレンタインじゃ。だから、小金稼ぎにバレンタインのチョコレートの販売をしている」

「正直すぎませんかね?」

 

 どうやら、前回の一件で手持ちがないらしく、バレンタインで一稼ぎしたいようだ。

 

「それに、本当は欲しいじゃろ? 可愛い子から、好きな女性からチョコレートが」

「はい、めっちゃ欲しいっス。特にペルシアさんから」

 

 倉田が真顔で言い切ると、他の隊員達(独身)も大きく頷いた。

 

「正直で良い。さて、ここでバレンタインをやったとしよう。お主らの中にはチョコレートを貰い、彼女が出来る可能性はあるぞ?」

「マジっすか!」

「マジじゃ。その為の飾りじゃし」

 

 街中にある飾りは全て守人が作り上げたものであり、恋愛成就の呪いが掛かっている。といっても、無いよりマシな極々小さな呪い、女性が好意を持っている人に頑張ってチョコレートを渡そうとする気持ちになる程度である。それ以上のものだと、流石に精神操作の類になってしまう為、危険すぎるからだった。

 

「なんでそこまで無駄に凝るんですか……」

 

 伊丹には何というか、努力の方向が間違っているとしか思えなかった。自ら教義を行ったり寄付を募れば簡単に資金を集められるのに、こうも微妙にせこい方法で小銭を稼ぐのだろうか。

 

「そりゃ、儂の好みの問題じゃから仕方ない」と守人は嘯く。

「それに、今日はあれじゃろ、女子が好みの男性に色々と薬効のあるチョコレート渡して一夜頑張る日じゃろ」

「ブフォオ!?」

「それはちょっと……、いや、間違っていないのか……?」

 

 まあ、これは恣意的な解釈だが、日本ではバレンタインの日はホテルの利用率が上がるそうなのであながち間違ってはいない。

 それに、チョコレートの原料であるカカオは地球世界でも古くは薬として扱われていた。心臓病の予防や疲労回復、また集中力を高める効果がある。またカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラル類を豊富に含む栄養バランスに優れ、健康に良い食品であった。

 

 また誰にも言っていないが、販売しているチョコレートには守人特製の薬も混ぜており、体力増強や疲労回復にも効果があったりする。

 

 

 そんな訳で、急きょ、特地には全く馴染みのないバレンタインデーが始まった。

 

 一番安いのでもデナリ銀貨十枚と、竜の鱗並みという強気な値段設定だったものの、これが飛ぶように売れていった。

 正神が作った代物であり、貴重なカカオや砂糖を使ったチョコレート菓子である。またアルヌスの街の好景気から一般人であっても所得は結構高い。そして何より、恋愛成就が出来ると聞きつけ、女性らがそれに乗っかったからだ。世界は違えど、女性がこういう催しが好きなのは変わらないようだ。

 

 そして、買ったチョコレートを持ち、勇気を出すシーンが多くみられた。

 

「クラタ、いつもプレゼントありがとニャ。これはお返しニャ」

「ペルシアさーん!」

 

 少し気恥ずかしそうにしているペルシアから渡されたチョコレートに感激する倉田。

 まあ、その後に倉田は先輩や同僚の自衛官ら(独身)に連行されてしまったのだが。

 

「その、トミタ殿、こ、これを……」

「う、ああ、その、ありがとう……」

 

 共に顔を真っ赤にし、何とも初々しい反応をする富田とボーゼス。

 そこにチョコレートを渡そうとしていた栗林が獣の様な唸り声を上げて乱入し、ちょっとした喧嘩に発展する。

 

「ユノ、 はい、これチョコレート!

「ありがとう、テュカ。私からもチョコレートあげるわ」

「ふふ、ありがと。じゃ、今夜、ね?」

「……うん、今夜、ね」

 

 同性ながら互いにチョコレートを渡し合うエルフの二人。非常に仲が良い。

 

 その他にも薔薇騎士団の侍従や扶桑国の巫女ら、イタリカのメイドから貰って嬉々洋々とする者。

 

「なんであいつがあんな美人と……」

「義理でも良いから欲しいと思う事に虚しさを感じるぜ……」

「ああ、妬ましい、妬ましい、妬ましい……」

「ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」

 

 と、まあ、未だ貰えなくて悲しみと嫉妬の余りおっかない顔をしている者らも多く発生する事になったが、概ね成功のようである。

 

 

 さて、ロゥリィはと言えば。

 

 貴族や豪商向けに建てられた、扶桑国の高級旅館。

 その中でも一等良い部屋の中にいるのは確保された伊丹。彼の目の前には、ロゥリィが顔を赤らめ、バレンタインのチョコレートを伊丹へ差し出していた。

 

「なにこの状況」

 

 伊丹は思わずそう口にした。あの後、レレイからバレンタインだというチョコレートを貰い、一緒に食べた後は街中を歩いていたのだが急に意識を失い、気が付けばここに居て、ロゥリィからバレンタインのチョコレートを差し出されている。嬉しいという気持ちもあるが、まず困惑してしまう。

 

「ねぇ、ヨウジィ。これ、私からのバレンタインのチョコレート。受け取って、くれるわよねぇ?」

 

 ロゥリィが差し出したのは表面に細工のある小さな木箱だった。

 

「あ、ありがとう……」

 

 伊丹は感謝を述べながら受け取り、中身を確認する。小さな円型で焼き上げたチョコレートケーキ。オーストリアの代表的な菓子、ザッハトルテであった。

 

「じゃあ、食べてみてぇ?」

 

 既にカットされており、フォークと皿も用意されていた。

 パクリと一口。ザラッ、とした独特の歯触りに濃厚なチョコレートの香りと味が広がる。微かに果物の酸味も感じられ、思ったよりも重く感じない。一切れが小さいからか、幾らでも食べられそうだ。

 

「あ、美味い……」

「ほんとぉ!?」

 

 ロゥリィは、ぱあ、と花が咲くような満面の笑みを見せた。伊丹はその笑顔に思わずドキッとしてしまい、慌てて「二人で食べよう」と取り繕った。

 

 そして食べ終わり、幸せそうにするロゥリィを見やった。

 改めてみても、物凄い美少女なんだよなぁ、と伊丹は思った。

 腰まで伸びる絹糸の様に細く長い黒髪。陶磁器の様に滑らかで真っ白な肌、嬉しそうに眦の下がった黒曜石の様に輝く瞳。何時もと変わらない黒ゴス神官服だというのに、今日は妙に艶やかに見える。

 

(いやまて、何かおかしい)

 

 身体が熱い。異常に火照ってる。これは、いったい――。

 

「ねぇ、ヨウジィ……」

 

 艶めかしい声と共に、ロゥリィがゆっくりとした動きで近づいてくる。桜色の唇からは小さな舌先がチラリと見えた。

 これは、拙い。

 

「い、いや、ほら、チョコレートも食べたし、そろそろ……」

「ここね、今日は貸し切りなのぉ」

 

 クスクスと笑う声が脳を溶かしていき、淫靡に輝く瞳に視線が吸い込まれていく。ロゥリィは顔を上気させていた。

 これはヤバい!

 伊丹は慌てて立ち上がろうとするが、上手く力が入らず仰向けに崩れてしまう。すかさずロゥリィが衣擦れの音を立てながらずいッ、と迫り、そして馬乗りの姿勢になる。

 

「ねぇ、ヨウジィ……」

「あ、ロゥリィ……」

 

 そして、段々と二人の顔が近づき――、

 

 

(そこだ、いけ、押せ押せ押せッ!)

(若いっていいですねぇ……)

(ナーウ……)

 

 物陰に隠れ、その様子をワクテカしながら見る正神ら。

 ロゥリィはピタリと動きを止め、能面のような表情でスクッと立ち上がると近くに置いていたハルバードを手に取る。その身体からは、黒いオーラが立ち上がっていた。

 

「やべ、バレた! 逃げろ!」

 

 同時に、上空から魔法が降り注いだ。

 

「ぬおおおおぉぉ!!??」

 

 慌てて避けたため無傷だったが、誰がやったのかを見て固まる。レレイだ。神官らに足止めさせていたが、どうやら駄目だったようだ。冷ややかな目線でこちらを見ていた。空飛ぶ箒に二本足で立ち、杖を構えている。更に氷柱を作り出し、円環を纏わせている。

 既に太郎は空高く飛び上がっており、不破は砂煙を残して走り去っていた。取り残された守人も慌てて逃げ出す。

 

「――まぁちなさぁい! この覗き魔共が―ッ!!」

「ギルティ」

 

 烈火の如く大激怒したロゥリィとレレイの両名は、そのまま追いかけていった。

 

「た、助かった……」と、一人残された伊丹は安堵のため息をついた。

 

 

 さて。

 あの後、守人は足止めされていたレレイやロゥリィによって一日中追い掛け回され、爆轟魔法とハルバートの乱舞でアルヌスの街に被害が出た。結局、守人が稼いだ資金の殆どが修繕費に消える事になったが、まあ、これは割とどうでも良い事である。

 


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