GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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(´・ω・`)イマイチ話が進まない。


第4話

 ファルマート大陸。 

 

 特地の調査の為に編成された六個の深部情報偵察隊。

 そのうち、伊丹率いる第三偵察隊は三台の軍用車両を走らせていた。

 

 遮る物などない青空に、見渡す限りの草原。

 コンクリートジャングルと呼ばれる都内での生活に慣れた者からすれば、ちょっとは異世界なんだな、と思えるかもしれない。

 

「でも、日本でも北海道とか、田舎に行けば見られますよ。こんな風景」 

 

 北海道の名寄駐屯地から来た倉田三等陸曹が言った。

 日本で見られるアニメやゲームのような、多種多様な人種がおり幻想的な風景が広がっているようなファンタジーな世界を想像していた彼からすれば、田舎と何ら変わらない風景には不満が多いところであった。

 

「まあ、世の中そんなもんさ。それに長閑で良い所じゃないか」

 

 隊長の伊丹二尉がゆるい顔で言うと、倉田は「そりゃ、そうですけどねぇ」と返した。

 

「こう、ファンタジーらしくエルフとか、妖精とか、ケモ耳とか居ないんですかね?」

「さあ? どっかには居るんじゃないの」

 

 そんな気軽に、なんともゆるい会話をしている伊丹を見ると、とてもマスコミで連日騒がせた<二条橋の英雄>には見えない。

 <銀座事件>において英雄として取り上げられた彼であったが、その性向は一般的な英雄と呼ばれる性格の持ち主ではない。

 伊丹はいわゆるオタク趣味を持つ人間で、モットーは「食う寝る遊ぶ、その合間にほんのちょっとの人生」。

 なんとなくで自衛官になり、かつての上司もその怠け癖を治そうとしたができなかった、筋金入りの怠け者。

 そんな人間である。

 

 そんな彼が咄嗟の機転で多数の民間人を救い出し、それで英雄と呼ばれるようになり、その功績で一階級特進して銀座の<門>から繋がる異世界<特地>で偵察隊の隊長になっちゃったのだ。

 

 彼を知る者や、彼本人も含めて「どうしてこうなった」と思うほどであった。

 

「伊丹二尉、もうすぐ次の集落が見える頃です」

 

 桑原陸曹長が言った。叩き上げのベテランで、「おやっさん」と呼ばれている隊員である。

 

「はいよ、じゃあそこもさっきと同じようにしましょう」

 

 伊丹の言葉に桑原は軽く頷き、マイクで他の車へと知らせる。

 

(うーん……)

 

 妙な感じがする。伊丹はそう感じていた。

 今のところ偵察任務は順調。

 

 ただ、なんとなーく、いやーな予感がする。

 そして、その予感は三つ目の集落である<コダ村>に着いた時に的中した。

 

 

 第三偵察隊が<コダ村>へ着くと、そこは酷く慌ただしかった。

 村人を捕まえ、「村長に会いたい」と伝えると、目的の人物は面倒臭そうな表情を浮かべながらも直ぐにやってきた。

 

「あ~、私達、色々、調べてる。何があった?」

 

 辞書を見ながら、たどたどしい言葉で伊丹が言った。

 

「炎龍じゃよ! 炎龍が近くのエルフの村を襲ったんじゃよ!」

「炎竜?」

「なんじゃ、おぬし炎龍も知らんのか……。まあ良い。そこに炎龍から逃げてきたエルフがおる。何か聞きたいことがあるならそやつらから聞くと良い」

 

 村長は口早に言うや、隅に居た集団を指差してさっさと戻って行ってしまった。

 残った伊丹は他の面々と顔を見合わせる。

 村長が指差していた先には、金髪と、笹穂の形の耳をした美形の集団。

 

「隊長。まさか彼らって、エルフですか?」小さく、倉田が言った。

「みたいだね」

 

 伊丹はエルフと思われる十人ほどの集団に近付く。此方に気が付いたらしい彼らからは、絶望したような濁った瞳が向けられた。明らかに疲弊している。そして、焦げた酷い匂いが漂ってきた。

 

「あ~と、すみません、話、良いですか?」

 

 伊丹が訊ねても、エルフ達は反応しない。

 言葉が通じてないのか、と思って身振り手振り伝えようとしても、他の隊員が訪ねても亡羊とした表情のまま黙りこんでいた。

 

「……駄目だね、こりゃ」

「どうしますか?」

「うーん……」

 

 伊丹は頭をガリガリ掻きながら、これでは情報が集められないな、と内心ごちていると、見かねたのか一人の村人がやってきた。

 14,5ほどの、貫頭衣を纏ったプラチナブロンドの少女であった。その手には杖を持っている。

 

「フソウ国の人?」

「えっ?」

「フソウ国の人?」

 

 少女の問いに、伊丹達は返答することが出来なかった。

 何故ならば、少女の言葉は発音がやや違うものの、日本語であったからだ。 

 

「フソウ国の人、違う?」

「い、いや。あー、私達は日本国の自衛隊です。フソウ国という国は知らないな」

 

 動揺しながらも、伊丹が答えた。

 

「……違うの?」少女は首を傾げた。「その顔と言葉、フソウ国のヒトによく似ている」

「そうなのか……。まあいいや。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、良いかい?」

 

 少女は少し不思議そうな表情を浮かべていたが、やがて小さく頷いた。

 

 伊丹が日本語が喋れる少女――レレイと名乗った――と会話して情報を収集した結果。

 村長の言っていた炎龍とは、古代龍と呼ばれる存在。銀座にも現れた翼竜よりも馬鹿デカい存在で、所謂火を噴くドラゴンのようだ。

 

 数日前、エルフの村の上空で炎龍と天龍(これも古代龍の一種らしい)が争っていたらしい。

 結果、天龍は逃げ出し、炎龍は村の近くへ墜落。その後、炎龍によって村が襲われたのだ。 

 ここに居るエルフは、炎龍と天龍が争っている際に地下の貯蔵庫へと逃げて助かった面々である。

 それ以外の者は、皆死んでしまったという。

 

 村を焼く炎が落ち着いた頃を見計らって外に出て、着の身着のまま<コダ村>へと逃げてきたそうだ。

 そして、その知らせを聞いた<コダ村>ではすぐさま村を捨てる準備を始めた。

 それが、慌ただしい原因であった。

 

「……これ、ちょっと拙いよ。ドラゴンだってよ」

「人が好物で、腹を空かせると襲ってくるって……」

「翼竜とかより弱い筈ないですよね……。あいつら、12.7㎜の徹甲弾でも柔らかい腹部でどうにか、って話ですよ」

「ゲッ、マジかよ……」

 

 一同騒然とする中、伊丹は静かに言った。

 

「撤退しかないね」

 

 どのみち、この村より先の集落は炎龍に襲われてしまい、集落巡りは不可能になった。

 それに、古代龍とやらが現れれば今の隊の装備では太刀打ちは難しいだろう。

 ならばとっとと撤退するしかないのだ。

 

 伊丹はそう言って通信のアンテナを立ててアルヌス駐屯地に「ドラゴンが現れ、これ以上の情報収集は不可能です」という事だけを連絡。本部からも「さっさと帰ってこい」と言う感じの返事が来た。

 

「というわけで、桑原曹長。そんなわけで宜しくお願いします」

「はい」桑原は言った。納得した表情であった。

 

 そのまま桑原が逐次指示を飛ばし、壊れた荷車をどかしたり、怪我人の治療などを始めた。

 ここで、村人達が避難を始めている、と馬鹿正直に伝えても、本部からは先ほどと同じ言葉が返ってきた事だろう。

 つまり、村人は見捨てろということ。

 伊丹も最初はその予定だったが、レレイという少女が言う自分達と同じような顔と言語を使う「フソウ国」。

 これが気になったのだ。

 それに困っている人を放っておくのもなんだか悪いし、道すがら、この少女にフソウ国について聞きたいと思ったのだ。

 

 そんなわけで、自衛隊員らが手伝い、ようやく準備が整う。

 そして、逃避行が始まった。

 

 

   ***

 

 

 逃避行を始めて三日目。

 

 キャラバンは遅々として進まない。ぬかるみに嵌って動かなくなった荷車、照り付ける太陽の暑さと、消耗する精神。日が経つにつれて問題は多くなっていき、それに伴って落伍者や傷病者も増えていく。

 

 一応、伊丹は避難民の救助として本部に車両の増援についてお伺いを立てたのだが、戦線の拡大を招きかないとして却下されている。

 だから、助けられる者は助けて、それ以外の者は見捨てるしかなかった。

 途中、エムロイの神官だという黒ゴス少女を乗せることになった時、ひと悶着が起きたが、ゆっくりと歩を進めていく。

 

 そして、奴がやってきた。

 

「……ん? あれは何だ?」

 

 隊員が空を見ると、雲の合間に黒い影があった。

 少しづつ、大きくなっている。形もはっきりしてくる。

 いや、あれは、まさか―――。

 

「敵襲――ッ!!」

 

 黒い影は、エルフの村を襲った炎龍であった。

 腹を空かせ、餌となる人を探し求めてやってきたのだ。

 逃げ惑う人々は炎龍に踏みつぶされ、炎に巻かれ、噛み砕かれていく。

 たちまち地獄と化した。

 

「くっそう! 撃て撃てッ! キャリバー、牽制しろッ!!」 

 

 急加速し、砂塵を巻き上げて疾走する中、伊丹は部下達に命じた。

 

 隊員の六四式と、軽装甲機動車に備え付けられたキャリバーの火箭が炎龍に集中する。

 絶え間なく銃弾を浴びせているというのに、全てが炎龍の鱗に当たって火花を散らし、阻まれてしまう。

 

「全然効いてないっすよォ!?」

 

 キャリバーを操作している笹川の言葉に伊丹は怒鳴り返した。

 

「良いから撃て! 当て続けろ!!」

 

 効かなくても鬱陶しいはず。此方に引きつけておかないと……。

 

 そう考えていた瞬間、炎龍がその場で一回転する。

 どうにか丸太のような尾の一撃を避けたが、次の瞬間、火炎放射のようなブレスを伊丹の乗る高機動車に向けてまき散らす。

 

「倉田ッ!」

「くうッ!」

 

 倉田が急いでハンドルを切り替えているが、間に合わない!

 

 全てがスローモーションに見える。

 

 炎のブレスが、眼前に迫っていた。

 

 ……、

 …………、 

 ……………………、

 

「あれ?」

 

 何時まで経っても、炎がやってこない。

 

 恐る恐る、目を開けてみる。

 すると、水色の膜のようなものが伊丹らの乗る高機動車を包んでいた。

 いや、それだけではなかった。よく見れば、コダ村の民衆全員がこの膜の中に入っていた。

 

『遅かった、ですか……』

 

 頭の中に、死者を悼むような声が響く。

 

 声の主は、上空に居た。

 全長ならば、炎龍よりも遥かに長いだろう。

 蛇のように細長く、黄土色の鱗に包まれたしなやかな身体。鹿のような雄大な角を持ち、たてがみとひげは日差しを浴びて白く輝いている。

 

 アジアにおいて広く知られている、伝説の霊獣。龍。そのものの姿。

 

「天龍……?」

 

 怪訝な表情でレレイが言った。天龍にしては、あまりにも巨大で、覇気に溢れていたのだ。

 

「いえ、違うわぁ、龍神よぉ……!」

 

 ロゥリィが、小さく呟いた。その声には、明らかな喜色が混じっていた。

 

『さて、クソ蜥蜴』

 

 龍神・太郎は炎龍に顔を向ける。

 声と、兎に似るとされるその眼には、憤怒の情が混じっていた。

 

『よくも私の眷属に手を出してくれたな……!』

 

 雄叫びと共に、龍神・太郎は炎龍へと殴り掛かった。

 

 

「え、何この怪獣大決戦」

 

 西洋と東洋の龍が、互いに噛みつき、引っ掻き、そしてブレスを吐き合う姿を見て伊丹は気が遠くなりそうだった。

 そうしていられるのも、目の前にある水色の膜のお蔭であった。

 

 どういう原理なのかはわからないが、この膜がやってくる炎を消し去り、飛んでくる石や泥といったものも弾いているからだ。

 触ってみると弾力があり、ひんやりして冷たい。そのまま押し込むと水の膜から出ることは可能なようだ。

 

「隊長、今のうちに逃げましょうよ」倉田が言った。顔色はすっかり青ざめていた。

「今なら撤退出来ますって」

 

「うーん、その通りなんだけど……」伊丹はレレイに訊ねた。「あの龍、何か知ってる?」

 

 すると、レレイはロゥリィと軽く一言二言会話して、小さく頷いた。

 

「ん、龍神様」レレイが言った。「フソウ国にいる、風と水を司る神様」

「神様か……、それだったら任せても――」

『自衛隊員殿、聞こえますか?』

 

 大丈夫でしょ、と言おうとした瞬間、再び声が頭に響いた。

 

「え? あ、はい、聞こえます!」反射的に、伊丹が答えた。

『そうですか、少しよろしいですか? 少しの間、あの蜥蜴の気を引くことは可能ですか?』

「えっ!?」

 

 気を引く?

 なんの?

 炎龍の。

 

 自衛隊員全員が龍神と炎龍の戦いを見やる。 

 

 龍神は体長の長さを利用し、鞭の様に強くしならせた尾を炎龍に叩きつけていた。

 炎龍はその痛みに咆哮を上げながら、その鋭い爪で反撃し、龍神の胴体へと噛みつく。

 噛みつかれた龍神は慌てる事無く、ただ『ふんっ』と気合を込めた右のアッパーを顎にぶち込み、更に左のフックを顔面に打ち込んだ。

 流れるようなコンビネーションを顔面に受けてよろめき、たたらを踏む炎龍。そのまま龍神は前傾姿勢となり、右へ左へ上体を動かしながら炎龍にフックの乱打を始めていた。

 

「あ、あれはまさかッ! テンプシーロールッ!?」

「なんで龍がボクシング技使ってんだよ!?」 

 

 そして、思う。 

 

(……あの状況の中に混ざるの。え、嘘でしょ……。嘘だよね?)

 

 伊丹だけでなく、全員がそう思った。図らずも自衛隊員の心の中が一致した時だった。

 

『少しの間で良いのです。そうすれば、コイツをぶち殺すことが可能ですので』

 

 乱打を続けながら龍神が言った。

 

「あー、もう、分かりました! やりますよッ!」やけくそ気味に伊丹が答えた。

「勝本! パンツァーファウスト用意! 他の者は眼を狙え!!」

 

 龍神が炎龍を右ストレートで殴り飛ばして離れた瞬間、隊員達の乗る車は水の膜から飛び出し、炎龍の顔面へと攻撃を始めた。

 炎龍は眼を守ろうと顔を背け、そしてダメージもある所為なのか動きが止まった。

 

「勝本ォ!」

「了解!」

 

 後方確認。そして狙いを定め、発射。

 弾頭は炎龍に向かって加速していく。だが、LAMは無誘導で、しかも狙いの定まらない行進間射撃だという事もあり、その命中コースは僅かに外れていた。

 炎龍は向かってくる弾頭を避けようとして翼を広げ、そして脚を縺れ込ませて倒れる。 

 見れば、ロゥリィが己のハルバートを投げ、それが炎龍の脚を払ったのだ。

 バランスを崩した炎龍の左肩に吸い込まれるように、パンツァーファウストが命中する。

 

 轟音。

 

 流石の炎龍でも耐えきれず、左腕が吹き飛ばされる。

 

「■■■■■■■■■■■■――ッッ!!??」

 

 絶叫。

 

 炎龍は今まで感じたことがない痛みに咆哮を上げる。

 人は、その恐ろしい咆哮に身体が委縮し、魂が凍り付いた。

 それを打ち破ったのは、歓喜に満ちた声だった。

 

『――素晴らしい! よくぞやってくれました!!』

 

 パン、パン、パン――。

 

 空に浮かぶ龍神は三度、手を打ち鳴らし、三つの竜巻を発生させる。

 上では空に浮かぶ雲が竜巻に吸い込まれ、千切れていく。

 下では泥や石が舞い上がり、茶色く染めていく。

 

「――うわッ!」

「いてッ!?」

 

 離れているはずの伊丹達にも、突然の突風から身を守ろうと慌てて避難していた。

 

 龍神は竜巻を収束させ、巨大な槍とする。

 危機を感じ取った炎龍は翼を広げ、急いで逃げ出そうとした。

 だが、殴られたダメージと、左腕を失ったことで既にボロボロであった。その飛び方もよたよたとしていた。

 

 槍の狙いを定める。

 

天魔反(あまのまがえし)

 

 風の槍が、放たれた。

 

 その巨大な槍に炎龍は逃げ出すことも出来ず飲み込まれ、その強靭な鱗も、皮も、肉も、全てがずたずたに引き裂かれていく。

 

 槍が消え去り、炎龍は血だるまになりながら地上へと墜落。

 

 全身に裂傷を負い、満身創痍となった炎龍。翼も、腕も、尾も千切れ飛んでしまっていた。

 だが、炎龍は近付いてきた龍神に無事な右眼で睨み付け、掠れた唸り声を上げた。

 

『ふん……』

 

 太郎は一瞥すると、爪でその首を刎ねた。

 

 炎龍が、討伐された。

 その事実に、コダ村の面々は呆けた表情で眺めていた。

 討伐したのは、龍神である。

 だが、その前に炎龍へ攻撃を浴びせ、攻撃を通さないはずの炎龍の左腕を吹き飛ばしたのは<緑の人>と呼んでいた自衛隊員、彼らであった。 

 

 龍神はともかく、ただの人である彼らが、逃避行を手伝い、無償で人助けしていたお人好しな彼らが、龍殺しに一役買ったのが信じられないのだ。

 だからこそ、村人の目は龍神と自衛隊に向けられていた。

 

 その自衛隊員はというと、

 

「隊長……」

「なんだ?」

「ファンタジーって凄いっすね……」

「そうだな……」

 

 目の前で見た、龍同士の対決と、最後の大技の結果に未だ呆けていた。

 


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