GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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一章 交流編
第8話


「流石ファンタジー。何時でも俺達の予想を超えてくれる」

「いや、いくらファンタジーでもこれは無いっすよ……」

「凄いですね。あそこ、空を飛んでますよ」

 

 訓練を終え、難民キャンプへとやって来た伊丹達第三偵察隊の面々は目の前の光景を見てそう零した。まだ何か言えるだけマシで、殆どの隊員達が口をあんぐりと開けて見ている事しかできなかった。

 

 近くには、これまた呆然としているレレイやテュカ達が居た。難民キャンプを建てる際に見た自衛隊の凄さを目の当たりにしてある程度耐性が出来たと思ったが、それとは違う凄さに驚愕していたのだ。

 

 

 日本国と扶桑国との事前会談は無事に進み、扶桑国側の要望である日本行きと友好関係になることが認められる運びとなった。

 日本側も、特地側にいざという時に助けてくれそうな国が居れば安心であり、対価として提示された石油や鉄など各種資源の位置は喉から手が出るほど欲しいものだったのだ。

 

 正式な友好関係になる為の条約締結は、使節団が日本に行ってから行われることになる。

 ただ、条約を結ぶまで少し時間がかかることになった。まあ、日本側からすれば段取りというモノがあるし、扶桑国の存在をどう発表するか、日程の調整、諸外国への対応などに苦慮している為だった。

 

 それまでの間、使節団の面々はいつまでも飛空船で生活するのもまた窮屈なので、日本側の許可を取り、難民キャンプの隣に仮の住居を構えることになった。

 

 日本側は扶桑国の飛空船や兵の装備を見て、産業革命前か、その辺りの技術力だと考えていた。

 なので、善意とちょっとした打算(扶桑国側を驚かせて交渉を有利に進めようと考えていた)を含めて自衛隊の協力を申し出たのだが、丁寧に断られてしまった。

 

 その理由を聞いてみて、そして彼らが見せたあるものにぶったまげることとなった。

 

 <劔冑(つるぎ)>、いわゆる鎧武者姿のパワードスーツである。

 

 扶桑国で古来より造り出され使用されているこの兵器は、並みの劔冑と仕手(つまり搭乗者)であっても、

 

 生身とは比べ物にならぬ剛力。

 こちらの小銃程度では傷が付かない装甲。

 多少の傷ならば瞬く間に再生してしまう治癒能力。

 金打声と呼ばれる通信機能を持ち、互いにやり取りが可能。

 背中の合当理と呼ばれる機構で空を自由に飛び回り、その速度は亜音速を超える。

 その速度で切り合える異常なまでの動体視力と反射神経を発揮する。

 

 

 そして、業物と呼ばれる劔冑ならば更に高性能で、<陰儀(しのぎ)>という必殺技を持ち、太郎がやった気象操作のような技が使えるらしい。

 特殊な製法が必要な為、数は多くないらしいが、日本側から見れば「何この超絶チート兵器?」と思わず呟いてしまう代物だった。

 

 その、チート兵器な劔冑がだ。

 

 頭に鉢巻を巻いたり首に手拭いを下げた一般の兵に混じり、刀で木を切り倒し、ツルハシやシャベルを持って地面を掘りしたり、えっほえっほと大量の土が入ったもっこを担ぎ、空を飛びながら建材を運んでいた。

 

 更に、掘った穴に水を貯めて池にしたり、気圧を操作して切り倒した木材を乾燥を速めたり、築いた窯で火炎操作で瓦や煉瓦を焼き上げたり、植物操作で植えたばかりの苗木や種を一気に成長させたり、等々。 

 

 自衛隊の誇る施設科となんら遜色のない速度で、しかも明らかに仮設住居とは思えない立派な木造家屋が建てられ、街が出来ていく。

 

「でも、凄いよね。あんな風に自在に飛んだり、強力な魔法を使ったりできるなんて」

 

 テュカが感嘆した様に言った。それ以上の事は考えないようにしていた。

 

「……ああいうのって、この大陸にもある?」

 

 伊丹が訊ねた。あんなのがこの大陸にもあったら、炎龍以上の脅威になることは間違いないからだ。

 

「ない」レレイが答えた。「私も初めて見た。そもそも扶桑国自体が謎に包まれた国家。偶に交易品を持ってくるとか、遥か昔に東方諸国が扶桑国と戦争になった時、たった二十人の鎧を着た兵に敗れたと伝わっているぐらい」

「まあ、その鎧を着た兵がアレだとすれば、二十人程度でも勝てるわな」

「でもなんか、劔冑って言うんでしたっけ? アレ。よく知らないですけど、明らかに使い方が違うような気がするっす」

 

 倉田が素直に思ったことを口にする。伊丹が何か言う前に、別の声が答えた。

 

「あれも訓練の一環じゃよ」

 

 振り向くと、いつの間に後ろへ立っていたのか守人が居た。

 何故か砂色の作業服に着替えており、手にはシャベルを、頭には「安全第一」と書かれた黄色いヘルメットを被っていた。これが妙に似合っており、首に巻いた手拭いで汗を拭く仕草が手慣れていた。

 

 慌てて隊員達が敬礼する。

 

「普通に人と接する程度の扱いで構わんよ。その方が儂も気楽じゃ」

 

 ひらひらと手を振り、守人は言った。

 その言葉通り「あ、そうですか」と言って態度を崩したのは伊丹だけだった。

 他の隊員達が何か言いたげな視線を伊丹に向ける。

 

「だって、本人が良いって言ってるし」伊丹が言った。

「そうじゃな。で、先の続きだが。劔冑を扱うには仕手に相応の技量と熱量が必須となる。また陰儀は強力だが、仕手の負担が大きいのだ。ああやって連続で使用し、細かい操作を続けることで鍛錬を積むんじゃよ」

「へぇ……」

 

 伊丹たちは素直に感心した。

 

「まあ本当はただの口実で、さっさと家を建てて街を造る為じゃが」

 

 続けて言われた身も蓋もないことに、思わずずっこけた。

 

 守人はそう言うが、実際、訓練としては結構有用だったりする。

 劔冑は仕手の技量に大きく左右され、稼働時間も仕手の熱量が尽きるまでとなる。故に自分の限界を知ることにもなるし、必要な熱量を必要な量だけ取り出し、扱う訓練は稼働時間の向上にもなるのだ。

 

「ところで、何でそんな恰好を? お付きの方などは……」伊丹が訊ねた。

「そりゃ、さっきまであそこで作業していたからの。他の連中も忙しいし、不破もまだ寝込んでいるし、太郎は扶桑国に行って必要な資材を早急に運ぶように言っておるからおらんしな」

 

 道理でどこにも龍神様が居ないわけだ、と伊丹は納得した。あと何で神様が土木作業しているんだろ、とも思ったが、そういう神様なんだろう。そう考えることにした。

 

 飛空船は積載量が多くない為、最低限の荷物しか積んでいなかった。ここに拠点を造るとなると、やはり色々と不足するモノが多い。飛空船でチンタラ運んでいても時間がかかる為、守人の中では移動が速く荷物も多く運べる太郎をこき使うことが決定している。

 

「あと、太郎が随分と世話になったらしいからの。ああもはしゃいでいた太郎を見るのは久々じゃから、噂の人物を訪ねてきたのじゃよ」

 

 そう言って、伊丹やレレイたちの顔を見やる。

 

「はしゃいでいたのですか?」

「ああ。彼奴は普段は傅かれる存在じゃから、その所為もあるんじゃろ。まあ奴だけでなく、儂や不破にも気楽に接してくれると有り難いの」

「不破、と呼ばれる方は、やはり神様で?」

「いんや、儂の、まあ飼い猫じゃの。可愛いぞ」

「えっ!?」

 

 可愛い猫、と聞いて栗林が反応する。ちびっ娘爆乳脳筋女と呼ばれる彼女だが、可愛いものには目が無いらしい。傍にいた黒川も同様のようだ。

 守人が会いたいなら、あとで会うと良いと言われ、栗林達は喜ぶ。

 後に、可愛い猫と聞いて三毛猫のような存在を思い浮かべていた栗林達は不破と会って驚愕することになるが、それは別のお話。

 

「ああ、忘れるところじゃった」守人が言った。「炎龍の遺骸を譲ってくれぬかの?」

「炎龍、ですか? あれは龍神様のモノなのでは?」

「うん? 太郎は自衛隊に譲ったと言っていたが……。まあ良い。譲ってくれるなら刀でも鎧でも、何でも作ってやるぞ。古代龍の素材は使い勝手が良いからな」

 

 ファルマート大陸において、古代龍の鱗は美品で鱗1枚がスワニ金貨10枚で取引される。また、これを加工できる者が少ない為、古代龍の鱗を使った鎧があればその希少さから神話級の宝具として国が買えるほどの値段となる。

 

 扶桑国では定期的に天龍から鱗や爪などを貰うことがある為、比較的手に入り易いものの、高級品のひとつとして扱われている。

 こういった素材は専ら劔冑の材料や、鍛冶炉などに使用されていた。特に炎龍は耐火性に優れており、これを使用した炉で作る金属(かね)は品質が良い。業物と呼ばれる劔冑の甲鉄なんかも、大抵はこういう炉で作られる。

 

「へえ、なら炎龍の鱗も一緒に売りにいった方が良いのかな?」

「なんじゃ、どっかに行くのか?」

「イタリカの街に、翼竜の鱗を売りに行く」レレイが答えた。

 

 古代龍に比べれば、翼竜の鱗は現実的な値段で取引される。それでも鱗1枚で最低デナリ銀貨30枚はする。この銀貨1枚で1人が5日は生活できる。レレイたちはこれを200枚、用意していた。

 これだけの翼竜の鱗を買い取れるのは大店の商人でなければならず、またきちんと取引できる者が必要な為、カトー老師の旧友である商人を頼ることになったのだ。

 伊丹たち第三偵察隊はその道中の足と、情報収集の為に同行することになっていた。

 

 これを聞いた守人は面白そうだから付いて行きたかったが、勝手に居なくなると流石に拙い。特に目付け役が五月蠅いのだ。

 それにまだ作業が残っているので、放り出すわけにもいかなかった。

 

「ではな。汝らの道中の加護を祈るよ」

 

 互いに敬礼。

 商品である翼竜の鱗が入った袋を載せ、隊員達が次々と乗車していく。そして最後に、ロゥリィは守人の方へ、何とも言えない妖艶な笑みを見せてから車へ乗った。

 そして第三偵察隊は、イタリカの街へ出発していった。

 

 その車列が見えなくなると、しゃがれた老爺の声が響いた。

 

「いやはや、化け物ですなぁ」

 

 スゥ、と姿を現したのは、声と外見が全く一致しない、赤髪のスタイルの良い妙齢の女性。風魔一族の末裔であり、扶桑国の隠密である。

 

「あのエムロイの神官、ワシの隠術を看破しておった。側に居た自衛隊の隊長とやらもどこか感づいていたようじゃ。いやはや、異世界の軍隊も中々どうして……」

 

 自身の術が破られたというのに、隠密は何処か楽しそうな表情であった。

 

「お主、趣味が悪いの」

「分かっております……」

 

 そして顔を引き締めると片膝を突き、報告を始めた。

 

「どうやら、皆様方の予想通りでございまする。帝国軍、及び連合諸王国軍。合わせて十二万もの兵を失った影響大きく、各地で領主不在による家臣の汚職、難民や生き残った兵の野盗化、更に一部の貨幣不足が起きております」

「貨幣不足?」守人が言った。

「自衛隊は兵の亡骸をそのまま埋めたそうで。彼らの持っていた貨幣がそっくり失われている状況です」

「あー、単純に十二万もの兵が持っていた金が無くなったことになるからの……」

「はい。ですので、菊池様が自衛隊から許可を取り、全て集める予定です」

 

 預金という制度がない為、金は自分の身に着けているのが基本のこの世界。アルヌスの丘に埋葬された六万人分の将や兵の財布をかき集めれば莫大な資金になる。倫理の問題はあるが、経済の混乱を前面に押し出せば良いだろう。

 

「相分かった。行って良し」 

 

 隠密は一礼すると現れた時と同じく、スゥと消え去る。

 守人も「さて頑張るかの」と呟き、土木作業へと戻っていった。

 

 そして、事態は動く。

 

 第三偵察隊より、救援要請。内容は「イタリカに現れた武装勢力の排除」。

 

 これにあたり、自衛隊は健軍一等陸佐が率いる第四戦闘団を、扶桑国は守人、および武芸者を四騎派遣することとなった。

 

 自衛隊と扶桑国の初めての共同作業は、何とも血生臭いものとなった。

 


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