GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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第9話

 

 <帝国>皇帝モルトの命を受け、第三皇女ピニャ・コ・ラーダは自身が率いる薔薇騎士団でアルヌスの丘へ偵察に向かう途中であった。

 道中、イタリカの街が正体不明の武装集団に襲われていると聞きつけ、急いで参戦したのだが、居たのはピニャが考えていた自衛隊ではなく、元連合諸王国軍の敗残兵からなる盗賊集団。

 

 ピニャは幼い当主に代わり、防衛戦の指揮を執ることになったが急いできた為に手持ちの戦力である騎士団は引き連れておらず、部下はグレイ、ハミルトン、ノーマの三人のみで、僅かに残っていたイタリカの正規兵に民兵を率いてどうにか戦っている程度だった。

 

 あともう一度攻められれば落ちる、という時にやって来たのが、翼竜の鱗を売りに来た伊丹達であった。

 少しばかりの事故はあったものの、伊丹達はイタリカの住民を守ることには同意し、ピニャは「炎龍討伐に加わった<緑の人>が救援に来た」と喧伝した。これにより、どん底だった士気も回復した。

 

 ピニャは一度突破された南門に十二名しかいない自衛隊を置くことで敵の攻撃を南門に向けさせ、囮にすることで時間を稼ぎ、騎士団到着まで粘ろうと考えていた。

 だが、その思惑は外れてしまう。

 

 日の出まであと数刻という頃、東門から攻撃が始まったのだ。

 

 そもそも、敗残兵の大半は連合諸王国軍に雇われていた傭兵であった。

 雇い主を求めて各地を転々とし、戦慣れしている彼らにピニャの教科書通りの戦術などお見通しだったのだ。

 

 それに、彼らは他の市民や農民と違って帰るべき故郷もなく、支払われる筈だった俸給もない。糧秣、そして財産でもある家畜などは撤退の最中の混乱で全て失ってしまった。

 

 故に、彼らは盗賊となった。

 金、食料、そして女。集落を攻撃して略奪し、アルヌスの丘では味わえなかった殺戮と戦いを味わう。すると似たような他の集団、死に場所を求める者、難民も加わり、一大武装集団となった。そして更なる略奪と殺戮を行う。

 

 いつしか狂気は伝播する。「生きていく為に」から「自身が思い描く戦争を楽しむ為に」に変わる。

 規模が大きくなれば、そこらの村落を攻撃しても利益が少ない、つまらない。

 アルヌスの丘の、あの非常識な軍勢と戦わせた帝国に意趣返ししたい。

 

 そんな思いで彼らが狙いを付けたのが、帝都へ物品を送り出す集積基地となっており、当主が幼く家臣も兵も少ない城塞都市イタリカであった。

 

 ただただ勢いのままに、戦慣れした兵による力任せの攻撃に俄仕立ての民兵も警備兵も自然と腰が引けてしまい、崩れてしまった。

 東門を守っていた騎士ノーマは戦死。城壁は突破され、城門は開いてしまった。

 柵の内側に籠る市民には、民兵も警備兵の遺体を投げつけて挑発。耐えきれなかった彼らは柵から飛び出し、乱戦状態となってしまった。

 

 もう、ピニャの思い描いた作戦が破綻してしまったのだ。

 

「どうすれば良い……、どうすれば良いのだッ!」

 

 目の前が真っ暗になる中、ピニャは一人自問する。

 

 自衛隊? 彼らは捨て駒として南門に配置した。来るはずがない。

 他の門の守備兵? もう既に東門へ投入している。

 

 そして、ピニャはようやく気付いた。

 朝日から少しずつ近づいてくる、空気を叩く重い音、楽器と女声による歌。そして、空を引き裂くような甲高い音に。

 そこから一つ、更に速度を上げて門前に群がる野盗へ落ちて来た。

 

<DAAAIRAAHH!>

 

 轟音と共に突如現れた、何か。着地した衝撃で地面はへこみ、土煙が舞い、人馬は吹き飛ばされてぽっかりとした空間が出来上がっていた。

 

<かァ!>

 

 土煙を斬り払い、現れたのは濃紺の武者であった。

 相州正宗。

 刀を振りぬいたその姿は正に威風堂々。

 天を突く黄金の前立て。曇り無く、濃紺に輝く堅牢な装甲。その荘厳さから当時の劔冑鍛冶師のプライドを打ち砕き、天下一名物とまで謳われた名甲である。

 

 正宗と仕手は、死んだ後も嬲られ、全裸で地に伏した男女を見やり、怒りを露わにする。

 

<おのれェ、畜生共がァ! 無辜の民を嬲り殺しィ、そして辱めるかぁ! ゆるさん、許さんぞめェェ!!>

 

 金打声に乗せられた剱冑の絶叫が、周囲に響く。それが衝撃となり、呆然と立ち尽くしていた者共の身体を震わした。

 

<この正宗! 例え天が見逃そうとも、貴様らの様な蛆虫は、断じて認めぬ! 断じて許さぬ! 我が剣で悉く斬り滅ぼしてくれるわァ!!>

 

 両手で見事な冴えの斬馬刀を右肩に担ぎ上げ、合当理に火を入れる。

 

 そして空から響くオーケストラの調べと女声の歌。

 

「Ho-jo to-ho! Ho-jo to-ho! Ho-jo to-ho!」

 

 そして自衛隊の戦闘ヘリ部隊の攻撃による、城門の爆発を合図に、正宗は野盗の群れに飛び掛った。

 

 自衛隊のUH-1Jの三機編隊が門外の盗賊達に銃撃を浴びせ、お土産よろしく手榴弾を落としていく。東へ西へ、絶え間なく波状攻撃を仕掛けてムラ無く塗り潰していく。

 地上では、正宗が罵詈雑言と共に盗賊を数人纏めて斬り飛ばしていた。他の劔冑は淡々と盗賊を排除していく。

 気丈な者が、劔冑に向けて弓を引いて矢を放つ。だが、矢は軽く拳で払われ粉々になり、上空からの銃撃で穴だらけになって倒れ伏した。

 

 先程まで街に猛威を振るっていた盗賊の姿はなく、まるで蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。劔冑とヘリが追撃し、後ろから一撃を浴びせる。

 中には運良く、逃げて城内へ入れた者もいた。助かったと安堵するも、彼らにとってここも地獄であった。

 

「あははははははっ!!」

「イイィアアアアッ!!」

 

 門内にある柵の前では、黒と白が舞っていた。

 それは巨大なハルバードを手に持ち、フリルの多い黒の神官服の少女と、刀を差す、異国風の白い服を纏った人。

 黒い少女、ロゥリィの双眸には狂気が満ちており、その口元には凄惨な笑みが浮かんでいた。そして鉄塊の如きハルバードが恐ろしい唸り声を上げて、敵を吹き飛ばす。

 白い人、守人はただ無表情に、振るう刀は銀色に煌き、何か爆ぜるような乾いた音の後に敵が切り捨てられる。

 

 守人が手拍子のように鳴る破裂音と神速の踏み込みで大地を鳴らし、ロゥリィは盗賊たちの血潮を頬に浴びながら白が出す音に合わせてハルバートを振るい、軽快なステップを踏む。

 まるで二人でダンスを踊っているかのよう。これに無遠慮に近づいた者による屍の山が築き上がっていく。

 

「テストゥド隊列!」

 

 首領の号令と共に盗賊たちが即座に密集し、盾を並べて守りを固める。傭兵なだけあって錬度が高い。

 だが、意味がない。

 

「ふっあははははっ!!」

 

 ロゥリィが突っ込み、盾の合間から突き出された槍を躱し、隊列を強引に薙ぎ倒す。

 ロゥリィの動きが止まる。

 好機と見たのか、数人の盗賊が駆けて槍や剣を突き出そうとする。

 

「ヘイィアアアアア!!」

 

 瞬間、盗賊達は速く鋭い煌きによって剣を斬られ、盾を斬られ、鎧を斬られ、身体を斬られる。後に残るのは、バラバラになった鉄と肉の塊が血を噴き出して大地に転がる姿。

 

「なんだ……、これは……」

 

 そこに、喚声を上げた栗林が混ざった。ロゥリィの後ろに居た敵兵の腹に銃剣を突き刺し、単連射。反動で抜き去り、違う敵に銃撃。更に刺突、打撃、銃撃を加えていく。

 パートナー交代、とばかりに守人が下がり、二人に近づく者を斬り伏せていく。

 やや遅れてやって来た伊丹、富田の両名も発砲する。単連射。三人の背後に回る敵を撃つ。

 

「なんなのだ、これは……」

 

 実に爽快な笑みを見せ、戦う二人の女性。いっちゃった表情ながらも、見事な連携と戦い振りを見せる。

 形勢が一気に傾く。

 盗賊たちはハルバードで叩きつけられ、銃剣で押し返され、刀によって両断され、銃撃によって倒れ伏せ、手榴弾で吹き飛ばされる。

 その姿を見たイタリカの警備兵と民兵達が気勢を上げ、勢い付く。

 

 そして現れる、鋼鉄の天馬。

 

「Ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha!!

 Ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha! ha!!」

 

「――こんなものは、こんなものはッ! 戦いではないッ!!」

 

 首領の叫びは空から響く嘲笑と爆音によってかき消され、その首を迫りくる刀によって斬り落とされてしまった。

 

 そして直ぐに、残っていた盗賊達も自衛隊の戦闘ヘリ部隊と扶桑国の劔冑によって掃討されることとなった。

 

 

   ***

 

 

 戦闘後。

 

 生き残ったイタリカの市民達は盗賊達が殲滅されたことに気付き、ようやく街に木霊するほどの歓声を挙げて喜んだ。

 救援にやって来た<緑の人>、いや<自衛隊>と扶桑国の武者にありったけの感謝の言葉を口にし、敵味方の生存者の救助に当たることになった。

 

「おう、随分と男前になったの」

 

 そんな中、伊丹に声が掛けられた。右目にはロゥリィに殴られたアザがあった。戦闘ヘリの掃射に巻き込まれないよう、ロゥリィを抱きかかえた際に胸を揉んだ結果であった。

 

 伊丹が顔を上げると、柔和な笑みを浮かべた守人が居た。あれだけ暴れまわっていたというのに、返り血どころか汚れひとつ無かった。

 

「守人さん、強かったんですね……」

「ロゥリィも儂も長生きしてるしのぉ。まあ、あれぐらいは出来んとな」

 

 からからと笑う守人に伊丹は乾いた笑みで答えた。

 敵勢のど真ん中で暴れまわっていたロゥリィと守人の動きはどちらも凄まじかった。

 ロゥリィはまるで餓えた狼のようで、力に任せてハルバードで敵を粉砕していった。

 対する守人のは修練を重ねていった技量によるもので、鋭く速く斬り伏せていった。

  

 見た目が人と変わらないので忘れがちだが、神と呼ばれるだけあって普通とは違うんだな、と伊丹は思った。

 

「で、翼竜の鱗はどうなった? 売れたのか?」

「いやぁ、イタリカに着いた途端、この状況でしたので……」

「ふうん? まあ、この後に帝国との交渉が始まる。お主も出席するんじゃよ」

「え゛っ」

「仕方なかろう? 元はお主の救援要請で来たんじゃから。それに、通訳できる娘っ子、お主の側に居るじゃろ」

 

 そして、こちらを見るや扶桑国の武者と倉田が駆け寄ってきた。

 もうすぐ交渉が始まるから、と守人や伊丹を呼びに来たそうだ。

 

「ほれ、行くぞ」

「うぇー、どうしてこうなったんだ……」

 

 守人は伊丹の様子にカラカラと笑いながら、フォルマル伯爵家の城館へと歩いて行った。

 

 

 今回の交渉にあたり、

 

 帝国からはピニャ、ハミルトン、グレイ、そしてミュイと側付きのメイド長と執事の六名。

 自衛隊からは健軍と伊丹、そしてロゥリィ、テュカ、レレイの五名。

 扶桑国からは守人、連れてきた武者の指揮官の二名。

 

 が出席していた。

 

 といっても、扶桑国は自衛隊に協力したからとりあえず、という形だった。

 正直な話、扶桑国が協力を申し出たのは自衛隊の戦力を測る為と、劔冑の強さを見せつける為であった。

 なので<帝国>と戦争しているわけでもないし、積極的に交流する気もない。目的を達した今、協定については自衛隊に丸投げしていた。

(連いてきた正義馬鹿こと正宗が生き残った盗賊を皆殺しにしようとしていた為、それ所じゃなかった、というのもある)

 

 そんな訳で、羊皮紙に書かれた協定を確認したのち、ささっと署名する。

 

 協約は直ちに発行され、401中隊と扶桑国の武者はイタリカの市民に見送られつつ、アルヌスの丘へと帰還した。

 また、レレイ達による翼竜の鱗と爪の商談は上手く纏まった。

 協約により、自衛隊と扶桑国が後見して発足したアルヌス協同生活組合はフォルマル伯爵領内での租税が無くなり、通行の自由も認められたのでこれから自活していけるようになった。

 

 守人はなんか面白そうだから、と言って伊丹達に強引に付いて行き、共にアルヌスの丘へ帰還することになった。

 

 




イタリカを襲った敗残兵が元は傭兵、というのは個人的な考えから書きました。

中世の傭兵は大所帯(傭兵と輜重隊(妻、子供、召使い、御者、売春婦など)で各地を転々とし、食料兼財産として大量の家畜を連れていました。

家畜を連れているのは移動中の荷物運びと、当時、塩は高価で食料の保存が効かなかったため。
自衛隊の火力で散々叩かれれば、家畜は音に驚いて逃げ出してしまうし、賃金は払われていない。残ったのは大所帯の家族だけ。

農民や市民なら、どうにか故郷へ帰れるかもしれないが、無一文となった傭兵には出来ないので、この内容となりました。

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