魔人族の母になりました   作:美坂 遙

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国土整備開始6

 帰り道はマーチの眷属が頑張ってくれていたようで、道がある程度整備されスムーズに帰ることが出来た。城の前ではリリーが出迎えてくれた。

 

「お帰りなさいませ、すでに食事の用意が出来ています。」

 

「ありがとう、子供達は?」

 

「食堂で待っていますよ。」

 

「ソーヤ様、私は作業に戻りまス。」

 

「無理はしないでくれよ?」

 

 俺達を城の前に下ろすとマーチは再び作業に戻るそうで港へと戻って行った。俺はリリーと共に食堂へと向かった。

 

 俺が食堂に入ると子供達は嬉しそうな顔で俺を見てきた、どうやら打ち解けてきたようだな。まだ青香と陽炎の距離が遠いのは最初があれだったから仕方ないだろうな。

 

 リリーが用意してくれた食事を食べ終わると俺は疾風と麻白に声を掛けた。

 

「疾風と麻白の作った地図は良い出来だったよ。ありがとう、おかげで作業がはかどったよ。港が完成したら皆で見に行こうな。」

 

 誉められた二人は嬉しそうに笑っている。青香達は少しうらやましそうに見ている。

 

 その後は今日は何をして遊んだとか、何が楽しかったとかを四人から聞いて過ごした。しかしいつまでもこうしているわけにもいかないので、子供達はリリーに連れられ出て行った。子供達はすでにお風呂には入っていたようでそのまま寝室へと向かうらしい。俺は風呂に向かいながらバーンズに話しかけた。

 

「もう少し早めに帰ってきてやったらよかったな。」

 

 そう言うとバーンズは首を振った。

 

「いえ、ソーヤ様は確かにあの子達の親ではありますが、一人一人にそれ程手を掛けていてはこれ以上増えてくると公平に手を掛けられず不満がたまる子供が出てくるでしょう。出来ることならあまり手を掛けない方が後のことを考えれば良いと思います。」

 

「そうだな、親としては複雑だけど、確かに今は良いけど人数が増えたら大変だよな。」

 

 俺は風呂に着くと浴槽に浸かりながらおなかの中に感じる卵の事を考えていた。リリーとバーンズだけでは手が回らないなら魔神様の言うように早めに街に向かうべきなんだろうな。でもそうなると子供達は連れていけないから二人のうちどちらかは残らないと、街に行けないんだよなぁ。

 少し不安な気持ちを首を振り鎮めると風呂をでて自室へと向かった。

 

 ベッドに座るといつものように卵を産んだ。今日は青と緑だな。

 

「ソーヤ様、今日はどうしますか?」

 

「そうだな、食堂や風呂の中でも考えたんだけど人手が増えるまでは俺の手で孵化させるのはなるべくしないことにしておくよ。バーンズ達だけじゃきつくなるだろ?」

 

「わかりました。来週位には私達が引き受けた卵も孵化するでしょう。それまでは私達が安置室で何とかします。」

 

「生まれたばっかりでもう働けるのか?」

 

「恐らく大丈夫でしょう。我々の力を受け継ぐ者なら働くことが役目だと感じるはずです。鳥が本能で飛べるようになるのと同じようなものですね。」

 

「そんなものなのか。なら当分はそれで頼むよ。港が出来たら教会で人手を借りような。」

 

 俺は卵をバーンズが運んでいくのを見送りベッドに横になった。そして夢の中では結衣と港の事を話し海に行けることを羨ましがられた。

 

 そして、それからの一週間は特に事件や問題もなく子供達とのんびり過ごした。午前中は子供達と遊び、午後はマーチの作業を見学やバーンズと共に浄化に向かう生活。だがついにバーンズとマーチから港がほぼ完成したと報告を受けた、城の屋上かに上がるよう促され外を見ると、そこには道路の側に水路が出来池も完成していた。

 

「港が出来たって聞いたけど水路も完成したんだな。」

 

「いえ、池はとりあえず完成しましたが、水路は小型船が城に来れる程度の幅と深さにして完成です。あそこに見える海から運河を作り水路につなぐ予定です。ただ、完成にはしばらく掛かるでしょう。ソーヤ様が街から帰る頃にはおそらく出来ているでしょう。」

 

「へえ、それは楽しみだな。所で街へは誰がいくんだ?」

 

「子供達の世話があるのでリリーは行けません。それにリリーの神術は国外での使用に難がありますので、マーチと私の予定です。もしそろそろ孵化する我々が管理している卵の子が役に立ちそうなら連れて行くつもりです。」

 

 俺は生まれたばかりの子を連れて行くのはどうかと思ったけどまぁバーンズ達が判断したなら大丈夫かと思い池へと目を向けた。ぼんやり見ていると何か動くものが池の近くに有る。よーく見てみるとリリーと子供達が池の周りで遊んでいた。

 

「ありゃ、もう遊びに行ったんだな。もう生き物は居るのか?」

 

「マーチの話では水ごと生物を流し込んだので有る程度は居るとのことでした。確実にいるのは藻を食べる蟹や貝そして魚ですね。後は餌を探して自然に増えるでしょう。港にいく途中寄ってみますか?」

 

「そうだな、池を見てみたいしそうするよ。それにしても青香達ももう俺から離れて遊ぶようになったんだな。青香と陽炎の仲は相変わらずみたいだけど。」

 

 俺はマーチに乗り港へと向かう途中にある池に向かった。俺が着くと楽しそうに走り回りながらこちらに手を振っている、手を振る子供達に手を振り返すとまた楽しそうに走り始めた。

 

「子供達にはマーチが動いているときには近付かないようにリリーが言っているはずですので寄ってこなかったのでしょう。」

 

 子供の成長は早いなぁと考えているとマーチは港へと進み始めた。

 

 トンネルを抜けると数日前までは建物はなく平らな土地だった場所に石で出来た建物が出来ていた。

 

「すごいな、もう港だけでなく建物も出来たのか。」

 

「港としての最低限の機能は完成しましたが、人手がや食糧は足りないので宿泊施設はまだ建ててはいません。後は周りの浄化をしてもらえれば魔草などを植える事が出来ますので、人間でも滞在できるでしょう。」

 

「なら人手は教会に頼まないとな。食糧は船団頼みか?」

 

「いえ、この近くに人間でも食べられる植物を植えて、マーチの眷属が育てる予定になっています。」

 

「マーチは大変だな。体を壊さないでくれよ?」

 

「お気遣いありがとう御座いまス。」

 

 そうだな、マーチだけじゃなく子供達にも手伝わせるか。

 

「よし、明日は子供達を連れて緑化作業をするぞ。海を見せてあげたいしな。」

 

「わかりました。リリーと話しておきます。それではソーヤ様浄化をお願いします。範囲はこの港中心部から出来る所までで構いません。」

 

「分かった。それじゃ行ってくるよ。」

 

 俺は二人と別れのんびりと歩きながら灰素を吸収し始めた。

 

 しばらく集めていると卵の素が出来たのが分かった。そしてしばらく続けていると慣れてきたのか吸収し浄化した魔素の流れが分かるようになってきた。

 

「ゲームで言うところのレベルアップって所か。ゲームみたいに明らかな違いなんてのは無いけど、感覚で分かってくるのはありがたいな。」

 

 お腹の辺りの流れを感じていると一つの卵作成が終わったのか二つ目の卵の素に成るのか魔素が集まり始めた。

 

「そういやこの時点での卵に魔素を集めたらどうなるんだろな。」

 

 何となく一つ目の卵を覆うように力を集めてみるが特に変化は無いようだ。いや、僅かに大きくなってるか?特に異常が感じられるわけじゃないから作業を続けてみることにした。

 

港の基礎周りが終わった頃限界に成ったのか、上手く吸い込めなくなったのでバーンズ達と城に戻ることにしたがその頃には卵の数は最初の一つだけだが大きさが明らかに大きくなっていると感じた。これ、大丈夫だよな?

 

城に戻りお風呂に子供達と入った後、明日皆で港に行って手伝いをしてくれないかと言ってみたら皆嬉しそうに返事をしてくれた。

 

 部屋への移動途中バーンズと明日の事が決まったことを話すことにした。

 

「皆が手伝ってくれるのは助かるな。」

 

「そうですね。あの感じだとソーヤ様の役に立てるのが嬉しいのでしょう。魔人族の本能にはソーヤ様への忠誠心が有るはずですし、ソーヤ様子供達の事をよく考えていますから親としても懐いているのでしょう。」

 

「まぁ、子供達の信頼を裏切らないように頑張らないとな。」

 

 部屋に着いた俺はいつものように卵を産むことにしたが、なぜか上手く産むことが出来ない。

 

「あれ?もしかして卵が大きいせいか?」

 

「どうしましたか?」

 

「いや、ちょっと卵に力を注ぎすぎてサイズが大きくなったみたいで、上手く出てこないんだ。どうしよう?」

 

「さすがに私達にはわかりません。しかしその身体なら無理な事をしようとしても制限が掛かるはずですので産めないことはないと思います。そうですね、リリーを呼んできますからソーヤ様は色々試してみてください。」

 

 そう言うとバーンズは部屋を出ていった。俺は仕方なくお腹に力を込めてゴロゴロと転がっていると痛みと共にお腹から産卵管に卵が移動したのが分かった。

 

「痛!?まさか裂けてはいないよな?」

 

 恐る恐る鏡で後ろを見るとパンパンに膨らんだ管が見えた。どうやら限界まで伸びてはいるが行けそうだ。手も使い少しずつ先へと進ませていくが中々の痛みがおそってくる。

 

「いたた、今度からは考えて卵は作ろう。涙が出てきたし。」

 

 そして普段の倍ほど掛けていつもの卵より一回りほど大きな卵をなんとか産み落とした。

 

 俺は産まれた卵を抱きながらリリーをのんびり待っていると扉が開きリリーが入ってきた。

 

「ソーヤ様大丈夫ですか?」

 

「何とかなったよ。これからは考えて卵は作ることにするよ。とりあえずお尻の辺りが痛いから見てくれないかな?」

 

 そう言うとリリーは神術を使い体調を確認していたが安心した表情で答えた。

 

「大丈夫、特に異常はありません。限界まで伸びたせいで痛みがあるのでしょう。明日には治ってますよ。それでその卵はどうしますか?」

 

 俺は苦労して産まれた卵を抱きながらリリーに告げた。

 

「今までで一番苦労したから俺が育てることにするよ。」

 

「わかりました。それにしても大きな卵ですね。色や模様も複雑ですし何が産まれてくるのやら。」

 

「確かにな。それじゃ俺は寝ることにするよ。呼び出して悪かったな、お休み。」

 

「いえいえ、ゆっくりとお休み下さい。」

 

 俺はリリーが出て行くと卵を抱きながら横になった。

 

 いつもの空間に着くと結衣と港が完成したことを話し、近い内に外の国へ行くことを伝えると羨ましがられた。

 

 そして結衣が消えたのに俺は目覚めないので周りを見渡すと魔神様が立っていた。

 

「無茶をしたようだな。確かにお前の身体には身体が壊れないように制限は掛かってはいるが、限界まで育てるのは次からは控えろよ?」

 

「はい、次からは気を付けます。痛いのはもういやです。」

 

 俺は痛みを思い出し人間の出産はあんな感じなんだろうかと、世の中の女性を尊敬した。

 

「反省しているようだからこの話は終わりだな。港が完成したようだな。いつ向かうのだ?」

 

「多分数日のうちに行けると思いますよ?明日は子供達と緑化作業をする予定ですから、順調に行けば明後日ですかね?」

 

「そうか、なら神殿には五日以内と伝えておこう。神殿から教会へ連絡が伝わるのには時間は掛からないから、お前達が教会に着く頃には神官に伝わっているだろう。教会に着いたらこの前渡した髪飾りを出しておけよ?あれは意識すれば具現化出来る。」

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

 俺がお礼を言うと魔神様は消え俺の意識も薄れていった。


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