ウルトラマンゼノン ウルトラの奇跡   作:ウルトラゼロNEO
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ヒーローの条件 part3

 

 

「ハァッ!!」

 

「…」

 

 

声を上げ大きくジャンプして一回転。そのまま飛び蹴りを放つアネーロ。この一連の動作はジュンヤがヒーロー番組でよく見ていた動作だった。しかしゼノンは静かにそれを見るとバックステップで後方に下がる。標的がその場にいない為、宙にいるアネーロは先程までゼノンがいた場所にそのまま着地。ゼノンを見る為、前を見ようとした瞬間、ナイフのような鋭い回し蹴りを浴びせられる。

 

 

「グゥッ…!」

 

 

痛烈な一撃を浴びせられたことで地面に倒れるアネーロ。しかし自分は創造主であるジュンヤが生み出したヒーローだ。目の前の"悪"を倒さねばならない。決して諦めてはいけないのだ。そんな意思を表すようにグッと握り締めた拳を掲げて立ち上がる。

 

一気に踏み込んで殴りかかるアネーロ。しかしその拳もゼノンに受け止められ更には捻られる。捻られたことで痛みに悶え動きを制限されたアネーロ。間髪いれずにゼノンから顎先を蹴られ再び地面に頭をぶつける。

 

 

「ッ…!」

 

「ジュゥッ…」

 

 

地面に倒れたアネーロはそれでも諦めずに立ち上がり、それを見てゼノンはため息を付くように小さく肩を落す。アネーロの動きはゼノンにとってとても見極めやすい動きばかりだった。"悪"を倒すためアネーロは頭上で両腕をクロスさせると紅蓮の炎に包まれる。

 

・・・

 

 

「あれは…ッ!!」

 

 

戦闘を見ていたジュンヤはハッと険しい表情を浮かべる。見る見るうちにアネーロの身体は紅く染まり、より筋肉質な身体へ変化する。あれこそ自分が描いたアネーロのパワーアップ案の姿であった。

 

 

「──君、大丈夫か!?」

 

 

戦闘を見る限りゼノンの方が上手であるのを見て取れるがパワーアップしたアネーロの力はどうなっているのかは分からない。ジュンヤがゼノンの身を案じていると、そこにマツミズ達がジュンヤとフィスを見つける。ユウマを探している最中に見つけたのだ。

 

 

「君は…ヤツの事が描いてあったノートの持ち主だったな」

 

「…あれは…僕の願いが表れたものなんです…。僕がコレにアイツを願ったから…。アイツは僕が考えたヒーローなんです…」

 

 

マツミズはジュンヤの顔を見て、アネーロの事が描かれていたノートの所有者の少年という事を覚えており、そのことについて言うとジュンヤはおずおずと手に持つ青い宝石とバックからノートを見せながら答える。

 

 

「そんなおかしな話…」

 

「…だが、実際に起きている以上は信じないわけには行かない」

 

 

いくらノートを魅せられても、流石にあり得ないと言わんばかりの矢矧に俄かには信じがたいと言った表情を浮かべるも、現にノートに描かれたアネーロが現実に姿を現している状況にマツミズは静かに答える。

 

・・・

 

 

「ディアッ…!」

 

 

両手にそれぞれ撥のようなモノを持ったアネーロ強化態は振る事でその先端から炎を出す。ゼノンはすぐさま両手を突き出してバリアを張り防御するもそのあまりにも強い威力に驚いていた。このまま撃ち続けられるのは不味い。しかしアネーロ強化態は少しずつ前に進み、ジワジジワリと距離を詰めていた。

 

 

「ジェイアッ!!!」

 

 

このままで危ない。ゼノンはバリアを払い、前へ転がるように飛び出し、地面に両手をつき、そのまま力いっぱい地面をドンッと勢いつけて蹴りをアネーロ強化態の腹部を強く蹴る。ゼノンの行動に身構えて蹴りを耐えるとそのまま蹴りを放ったゼノンを撥状の打撃武器で地面に叩きつけた。

 

 

『止めて、アネーロ!!』

 

「…」

 

 

ジュンヤの声がアネーロの頭に届く。いや先程からずっと届いていた。何故、創造主であるジュンヤはそこまで自分を制止しようとしているのか。

 

──自分の都合で呼び出したくせに…。この創造主も"悪"なのか?

 

アネーロの中でそんな疑問が出てくる。いやしかし彼は自分の生みの親だ。"悪"を絶対に倒すと教えてくれたのは彼の筈だ。

 

 

「…」

 

 

そこで考える。近くにいるマツミズ達の存在を。奴らが自分の創造主であるジュンヤを唆したのではないかと。ならば奴らも“悪”だ。“悪”は絶対に倒す。アネーロ強化態は再び打撃武器から鋭い熱線のようなモノを放ちマツミズ達を焼き払おうとする。

 

・・・

 

 

「ッ!?」

 

 

こちらに向かってくる鋭い熱線。それはジュンヤを除いたマツミズ達だけに向けられていた。このままでは危険だ。しかし今からでは避けられない。マツミズ達が身構えたその時…。

 

 

「──デェアァッ!!?」

 

「ほぉ…」

 

 

自分達の前に滑り込んだゼノンが熱線を浴びる。その自己犠牲の行動にフィスは小さく声を漏らす。それは感心しているのか、呆れているのかは彼女にしか分からない。

 

・・・

 

 

「ウゥッ…!!ジェァアアッ!!!」

 

 

何とか耐え続けるゼノンは両手を水平に広げエネルギーを溜めるとL字に組んでゼノニウムカノンを放ち熱線を押し返してアネーロ強化態に浴びせる。流石にゼノニウムカノンの威力は絶大なのかアネーロ強化態は数歩下がり光線を終える頃には強化態が解け膝をついていた。

 

 

「…」

 

 

ゼノンが膝をついているアネーロに歩み寄る。後数歩のところでアネーロの元だ。その瞬間、アネーロは飛び掛るようにゼノンに殴りかかる。

 

 

「「──ッ!!」」

 

 

鈍い音が周囲に鳴り響く。アネーロの拳はゼノンに届く事はなく逆にゼノンの拳がアネーロの腕を交差しクロスカウンターとしてアネーロの顔面に抉るように浴びせられアネーロはそのまま崩れ去ると粒子となって消え去ったのだ。

 

消え去ったアネーロ。再び現れるような気配もない。そこである視線に気づく。フィスのモノだ。気にはなるもののゼノンは空を見上げそのまま飛び立ち空の彼方に消えるのだった…。

 

・・・

 

 

「僕がヒーローなんて望まなきゃ…」

 

 

戦闘が終わりジュンヤが一人、呟く。自分のせいで危うくカケル達が死ぬところだった。その責任を重く感じていたのだ。

 

 

「別にヒーローという存在が悪いわけじゃない。君にとってのヒーローとはなんだい?」

 

「…悪い奴は絶対に倒す人」

 

 

マツミズがジュンヤの目線に合わせてしゃがみ、ヒーローという存在その物を嫌いになりそうなジュンヤに優しく問いかけると、俯きながらボソッとジュンヤは問いに答える。

 

 

「これはあくまで私の考えだが…世界や誰かの為に自分の意思で自分が出来る精一杯の事を進んでやれる人が結果的にヒーローという存在なんだと思う。そこに力は関係ない。ウルトラマンもきっと同じだと思うし、もしこれが出来るのであれば君も私にとってのヒーローだ」

 

 

マツミズの中のヒーロー観をジュンヤの両肩に優しく手をかけながら説くと、その話を聞いた俯いていたジュンヤは静かに顔を上げ、マツミズを見る。

 

 

「これ…オジサンが持ってて欲しい」

 

 

ジュンヤは手に持っていた青い宝石をマツミズに差し出す。この人なら渡しても大丈夫だろうと心から思った。マツミズもこれが本当ならどんな事が起きるか分からない。受け取り、軍で保管するべきかと受け取ろうとした瞬間、青い宝石は突如として消えてしまう。

 

 

「あれ…!?」

 

「──おーい!!」

 

 

突然、消えてしまった青い宝石にジュンヤを始めとするその場にいた者達は驚く。マツミズも立ち上がり、周囲を見渡せばフィスもいないのだ。しかしそんな彼ら、いや、ジュンヤに声をかける者がいた。声の方向へ振り返るとそこにはカケル達がこちらに走り寄って来ていた。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「えっ…僕は大丈夫だけど…君達は…」

 

 

カケルがジュンヤの両肩を掴んでブンブンと揺さぶる。心配されるのはありがたいが、寧ろ危なかったのは彼らだろう。

 

 

「俺達はゼノンに助けてもらったから大丈夫だよ!…それより俺、お前に悪い事しちまったよな」

 

「えっ…?」

 

 

カケルは両手を離し手を広げて特に問題はないことを教えると、手を合わせて申し訳なさそうにジュンヤに謝る。その行動にジュンヤは目を丸くする。一体、何故と。

 

 

「…ちょっとからかって笑い話にしようと思ってたんだけど…予想外にクラスの奴らに広まっちゃってさ…。お前のさっきの顔を見て本当に嫌がってるなんて思ってなかったんだよ…俺、よく無神経とか言われるしさ…。本っっ当にごめんっ!!」

 

「や、止めてよ…。それに僕だって君達に…」

 

 

頭を深々と下げるカケルに困惑するジュンヤ。信じてくれないかもしれないが自分も彼らに酷い事をしてしまったからだ。

 

 

「まぁ兎に角、まずは病院に行こうか。ウルトラマンに治して貰ったって言ったって一応、診てもらわないと」

 

 

カケルとジュンヤの肩をそれぞれ抱いてマツミズが語りかける。別にゼノンの能力を疑う訳ではないが、やはり病院にちゃんと連れて行かねば。

 

・・・

 

 

「♪~♪~♪」

 

「──待て!」

 

 

アネーロの出現で人気のないジュンヤ達がいた場所から然程離れていない公園の橋を渡りながらジュンヤの手から消え去った青い宝石を手で弄り、フィスは上機嫌に鼻歌を歌っていた。そんな彼女を後ろから声をかける者がいた。ユウマだ。それが分かっているのかフィスは振り返らないものの口元に微笑を浮かべていた。

 

 

「君は何者だ…?人間ではないな」

 

「それは君もでしょ?今の君は人間?それとも宇宙人?」

 

 

ゼノンとして戦闘を終えた時にフィスの視線からフィスのことが気になっていた。人間とは違う何かを感じる彼女にユウマが警戒しながら問いかける。するとフィスは背中の後ろで両手を組んで振り返り、少し前屈みになって悪戯っぽい笑みを浮かべながらユウマに問いかける。

 

 

「…両方だ。文明を監視し生命の未来を救う為に戦う存在だ」

 

 

ユウマは少し間をおいて静かにフィスの問いかけに答える。それはユウマとゼノン、両者の意思の言葉だ。それを聞き、風に靡く艶やかな黒髪を触りながらフィスは自嘲気味に笑う。

 

 

「…今の私はどっちなのかは分からない。死んだらこの姿。人間なのか宇宙人なのか分からない」

 

「…今回の騒動は君の仕業か?」

 

「私はあくまで切っ掛けに過ぎない。ヒーローに憧れるあの子の心に挑戦したんだよ。一体、どんな事になるんだろうってね。まぁ結局、彼も人間だね。感情に任せてこの力を使った」

 

 

寂しげな悲哀さを感じるその笑みは紛れもない彼女の本心だった。彼女がソーフィ達と同じ存在だと知ったところでユウマは先程のアネーロの一件について尋ねると一転、先程の笑みがなくなり再び青い宝石を弄くりながら嘲笑するように答える。

 

 

「危うく子供の命が奪われる所だったんだぞ!?それにそれはなんなんだ!?」

 

「さあね。私が知ってるのはこれがある文明を滅ぼしたモノと似たタイプのモノだってことだよ」

 

 

ユウマは声を荒げる。今回の件、彼女はなにも感じてはいないのだろうか。しかしフィスは涼風を浴びたような顔で手に平に乗せた青い宝石を見せる。青い宝石は姿を変え、赤い球体に変化する。

 

 

「…兎に角、俺と来てもらう。もし抵抗するなら…」

 

「おっと止めてよ。私は争いごとが嫌いなんだ。一応、君も私も宇宙人のようなものなんだし宇宙人同士が争っても、しようがない」

 

 

静かに身構えるユウマ。彼女は危険だ。ソーフィ達のもとへ連れて行かねば。しかしフィスは両手を広げ、肩を竦めて首を振る。大人しく連いて行く気はないようだ。その反応を見て、ユウマが動き出そうと一歩踏み出した瞬間、フィスの身体は足元から消え、その場から完全に消え去る。

 

 

『私も一応は元の能力もある程度は使えてね。今日はこれで失礼させてもらうよ。それに君も私ばかりに気をとられている場合ではないと思うよ。まぁ…精々頑張ることだね』

 

 

先程までフィスがいた場所で周囲を見渡すユウマ。幾ら探してもフィスはいないが、フィスの声だけがその場に残る。最後に気がかりな言葉を残し、彼女はいなくなった。

 

・・・

 

 

「それでは鎮守府の再建も終わり、それを記念しての鍋パーティーだ。皆じゃんじゃん食べて欲しい。乾杯っ!!」

 

 

アネーロの一件から後日、再建した鎮守府では小さいながらも所属する者を集めたパーティーが行われた。結局、アネーロの事後処理のせいでマツミズや赤城達は鎮守府へ戻り、鍋を食べる事は出来なかった為、改めてここで鍋が振舞われることとなったのだ。マツミズの乾杯の音頭でパーティーが行われる。

 

 

「こういうの良いわね」

 

「ええ」

 

 

艦娘達は並べられた様々な鍋を食べ熱いや美味いなど様々な反応をする中、矢矧とユウマ、ジョウは並んで鍋を小皿に取り分け食べていた。そんな中でふと矢矧が周囲を見ながら口にするとユウマは頷く。こんな賑やかな食堂は普段の戦いのことなど忘れさせられる。

 

 

「…私ね、この間の非番の時、外の世界に出て皆と買い物したりして思ったわ。もし、この先の未来があるなら今度は艦娘じゃなく、違う未来もいいかもって…」

 

「…きっと矢矧さんなら、そんな違う未来に手が届きますよ。いや他の皆さんだってそうです」

 

 

矢矧がふと小さく悩みを打ち明けるように答えるとユウマも周囲を見渡しながら答える。寧ろ、彼女達が艦娘以外の生き方を見出すのはいい事だと思うからだ。

 

 

「この野菜、ちゃんと切られていて美味しいね」

 

「…それは私が切った」

 

 

ユウマは取り分けた鍋の野菜を食べながら鍋の感想を口にする。熱くはあるもののそれ以上に味が染みていて非常に美味しかった。それを隣に座っていたジョウが静かに答える。

 

 

「えっ…でも君、包丁とか使えたの?」

 

「私の頭の装置は知りたいことをリアルタイムでネット上などで検索し教えてくれる。だって私はスーパーロボットだから」

 

 

彼女は目覚めて時間があまり経ってない筈だ。疑問に感じたユウマの問いかけにジョウは若干したり顔で頭の装置を指差しながら答える。どうやら頭の艤装のようなモノはネット上で知りえた情報などをそのまま自分自身にフィードバック出来る様だ。そこが彼女が生まれ変わり見た目こそ人間だが違った存在であると改めて実感させられる。

 

 

「Hey、ユウマ!この前は一体、どこ行ってたんデスカ!?心配したんデスヨ!?」

 

「あっ、それは私も気になってたわ。皆で探したのよ?」

 

 

そんなユウマに背後から金剛がタックルのように抱きつきながら問いかける。彼女、いやこの鎮守府に所属する艦娘達にとってユウマはもっと小さい頃から知っている手のかかる弟のような存在なのだ。矢矧も気になってはいたのか頬杖をつきながら答える。

 

 

「えっ!?あっいやそのっ…!子供…っ!あの時ぶつかった子供があの巨人がいた方に行ったのを思い出しまして…っ…探してたんですよ…っ!」

 

 

途端にしどろもどろになって答えだすユウマ。完全に目が泳ぎ視線を逸らしている。そんなユウマを怪しく思ったのかパーティーのノリも加わって金剛達が更なる追求をするのだった…。




<次回予告>

ユウマのもとに二人の少女が訪れ地球の危機を知らせる。現れた二体の改造怪獣と宇宙人。懸命に戦うゼノンだが遂に敗れ捕らえられてしまう。絶体絶命のゼノン。その時…宇宙を超え銀河の彼方から“最強・最速”あのウルトラマンがやって来る──!

次回 ウルトラマンマックス参上!







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