ウルトラマンゼノン ウルトラの奇跡   作:ウルトラゼロNEO
<< 前の話 次の話 >>

17 / 25
棲星怪獣

ジャミラ

登場


母の温もり part1

押しては引く穏やかな小波の耳障りのよい水音が聞こえてくるこの静かな夜、突如、異変は起きた。

 

 

「オォォォオオ…」

 

 

50メートルはあるか否かの巨大な粘土状の皮膚を持ち、どことなく女性を思わせるような流線形の怪人が鎮守府があるこの静かな街に突然と現れたのだ。突如現れた巨人に真夜中の街は大混乱に陥るなか、まるで唸るような声をあげるその巨人は周囲を静かに見渡している。

 

 

「ッッ!!!」

 

 

すると巨人は突然、その頭と肩が繋がったような独特な頭部を抑えて苦しむような素振りを見せると、やがてその瞳から光がなくなり、大きく腕を振りかぶって、今まさに破壊活動を行おうとする。

 

しかしその前に下方から現れた光が巨人の注意を引くと、そのまま人の形を形成する。光が収まったそこにいたのはウルトラマンゼノンであった。

 

巨人に対して、静かに身構えるゼノン。何が目的が分からないにせよ、今腕を振り上げて破壊活動を行おうとしたのは誰が見ても明白。故に警戒を崩さず、臨戦態勢をとったまま対峙していた。

 

 

「ッ…」

 

 

だがゼノンと対峙する巨人は一瞬、突然現れたゼノンに警戒する一方でふとゼノンの中に何かを感じ取ったかのように動きを止め、まじまじと見つめている。先程まで光を失っていた瞳にも光が再び宿っていた。

 

やがてまるでその存在を確かめるかのように両腕を伸ばして近づいてくる巨人にゼノンは困惑してしまう。このような相手は初めてであり、先程、破壊活動を行おうとした時のような敵意は感じず、寧ろどこか不思議と優しさすら感じてしまうのだ。

 

 

「──ッ!?」

 

 

巨人の手がゼノンの頬に触れかけたその時であった。轟音が鳴り響き、ゼノンの目の前にいた巨人に直撃する。どうやら砲撃であり、その方向である海上を見てみれば、そこには鎮守府から出撃した艦娘達の姿があった。

 

砲撃に一瞬、巨人が怯むとどこからか円盤型の宇宙船が現れ、強烈な閃光を発する。あまりの眩さにゼノンや艦娘達が目を逸らし、光が収まり漸く視界が回復して巨人を見やるが、もう既に巨人と宇宙船は姿を消していた。

 

 

「あの巨人…。ウルトラマンに反応をしていたようだけれど…」

 

 

鎮守府から出撃した艦娘の一人である鳳翔は巨人の行動に何か感じ取ったのか考えを巡らせるように眉間に皺を寄せる。だが自分と共に出撃した艦娘達の呼び声を聞き、思考を中断して柔らかな笑みを浮かべながら返事をすると帰還するのであった。

 

・・・

 

 

「んっ…んぅっ……ん?」

 

 

数時間後、眩い日差しと小鳥の囀りが心地の良い朝を演出するなか、布団に眠って、寝返りを打っていたユウマはふと違和感を感じて、寝ぼけながらでも目を覚ます。

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

 

目を覚まして、真っ先に視界に映ったのはガッツであった。突然のことにユウマが固まっていると、ガッツは呑気に寝息を立てている。だが次の瞬間、ユウマの悲鳴が朝のマツミズ宅に響き渡るのであった。

 

 

「──ユウマ、大丈夫か!?」

 

「どーしたのー…?」

 

 

ユウマの悲鳴を聞きつけてドタドタと慌しくエプロン姿のベムスターがユウマの部屋に乗りこみ、同じくやって来たが寝ぼけているゴモラが目を擦りながら室内を見やると、そこにはユウマと同じ布団に寝転がっているガッツの姿があった。

 

・・・

 

 

「いやーごめんねー。驚かせるつもりはなかったんだけど、あんまりにもユウ君が気持ち良さそうに寝てるもんだから釣られて寝ちゃってさあ」

 

「だからって人の布団にいきなり入るなんて…」

 

「なぁに?もしかしてお姉さんに悶々としちゃった?」

 

 

ニュース番組ZAP!を見つつ、食卓を囲むユウマ達。折角なのでと朝食をご馳走になっているガッツはおどけた様子で頭を撫でながら全く悪びれた様子もなく謝っていると、ユウマは心底驚いたのだろう、ため息交じりで答える。だがその発言に口角を上げたガッツはニヤニヤと笑みを浮かべながらユウマをからかい始める。

 

 

「…」

 

 

しかしその発言にユウマは押し黙って目を逸らす。よく見れば頬どころか耳まで真っ赤に染めているではないか。いくらウルトラマンと同化しているとはいえ、高校受験を控える15歳の年頃の少年。目の前の柔らかな女性の身体など生唾物だろう。

 

 

「あ、あぁそう。いやーそれじゃあ気をつけないとなー。アハハ…」

 

 

そんな年相応のユウマの反応に伝染したようにガッツもどことなく頬を染めながら照れた様子を見せ、どことなく食卓にほわほわした空気が流れる。

 

 

「そ れ で ?一体何しにここに?」

 

 

そんなユウマとガッツの間の空気を打ち壊すように自身の目玉焼きにかけていた醤油の瓶をドンッと強く置いたベムスターは鋭い視線をガッツに向けながら問いかける。どうやら完全に朝の一件で機嫌を損ねているらしい。

 

 

「そ、そうですよ。それに鎮守府のほうは…」

 

「あぁ、あっちは分身に任せて抜け出してきた。ここまではテレポートでちょちょいってね」

 

 

普段、ガッツが生活の拠点にしているのは鎮守府だ。外出するのにだって提督であるマツミズの承諾が必要なはずだ。ガッツの様子を見るにこの家に訪れたのは皆が寝静まった深夜帯であろう。その時間に外出するなどいくらなんでもマツミズが許可するとは思えない為、考えられるのは彼女の言うように無断で鎮守府から出てきたことだろう。

 

 

「そんなゼットンさんみたいな…」

 

「あれ、あの娘も来てたの?」

 

 

辟易したように重いため息をつくユウマ。どうやら前にも先日、人となったゼットンと似たようなことがあったらしい。

 

 

『アナタに勝つためにも身近で研究する必要があります』

 

「深夜に気配を感じて目を覚ましたら、枕元に立っていて…」

 

 

ユウマは当時のことを振り返る。目を覚ましてみれば、夢枕に立っていたのだ。元々物静かな性格の為、その存在に気付いた時には流石のユウマもゾクッとしたようで今もなお、どこかやつれた様子だ。

 

 

「…聞いてないんだが」

 

「いや、流石に言う必要まではないかなって…」

 

 

この家に暮らすに辺り、ユウマとの距離も縮まっているのだろう。当初の敬語も砕けた口調となり、不満そうにジトッとした目でこちらを見やるベムスターの鋭い眼光にユウマは頬を引き攣らせる。

 

 

「いやぁそれにしてもすっかりエアちゃんに目を付けられちゃったね」

 

「エアちゃん…?」

 

「あぁあのゼットンちゃんのこと。前々から思ってたけど、そのまんまゼットンとかガッツとか呼ぶのって可愛くないじゃない?もしかしたら今後、ずっと地球に暮らしていくかもしれないし、ユウ君達を地球人って呼んでるようなもんだしね。それに今後、同じガッツ星から私みたいになった同種の存在が現れないとも限らないし、だったらソーフィちゃんみたいな個人名をつけようかなって」

 

 

するとペガッサから聞いた覚えのない人名が出てきた為、ユウマが怪訝そうに尋ねると、どうやらゼットンのことをガッツがそう名付けたようで、その裏では彼女なりに今後の地球での生活を考えてと言うことだった。

 

 

「因みに私はミコって名前にしようと思うんだけど」

 

「理由は?」

 

「天啓?」

 

 

ガッツは自身が考えた名を口にして意見を伺うと、ユウマの問いかけに可愛らしく小首を傾げながら答えていた。

 

 

「じゃあ僕は?」

 

「そうねぇ…」

 

 

個人名と言うものに興味が湧いたのだろう。今までむしゃむしゃ朝食をとっていたゴモラはガッツことミコに対して面白うに尋ねてみると、ミコはジッとゴモラを見て…。

 

 

「ミカヅキなんてどう?」

 

「ミカヅキ?それはなんで?」

 

「天啓?」

 

 

すると頭部の上に電球の明かりが灯ったかのようにパッと閃いた様子のミコはゴモラの個人名を口にすると、やはり自分の名だけあってその名の理由を身を乗り出して聞いてみると、これも先程と同じ態度で答えられてしまう。

 

 

「オ、オホン…」

 

 

とはいえ名前その物は嬉しいのか、ゴモラはミカヅキという名前を大層、気に入っている様子だ。あまりのゴモラことミカヅキのはしゃぎように自分も気になり始めたのか、ベムスターはさりげなく咳払いをしながら主張する。

 

 

「ベムちゃんはねぇ…。ホシヒメなんてどう?」

 

「そ、それも天啓ですか?」

 

「いや、何となく?」

 

 

ベムスターはどう命名したものか。僅かに考えた後、ミコが口にした名前に妙にそわそわした様子で尋ねるも、これだけ理由は全く違うものであり、思わずずっこけそうになる。

 

 

「良いんじゃない。星から来たお姫様みたいで」

 

「お、お姫様…。そ、そうか…。それなら良いかな…」

 

 

とはいえユウマにとっての受けは良かったのか、彼の言葉に頬を染めながらベムスターことホシヒメはかみ締めるように頷く。

 

 

「で、話が逸れちゃったけどね。この家に来たのは、ゴモラ…じゃなくてミカちゃん達をより人間に近づけた外観にしようかなって」

 

 

名前の話は程々に軌道修正をしたミコはこの家に訪れた理由を話し始める。それはどうやら自分達の外観に関する話だ。確かにミカヅキやホシヒメなどその姿は地球人に似てはいるが、それでも元の怪獣の姿を思わせるパーツのようなものがある。

 

 

「私達は便宜上、怪獣娘って呼んでてね。今のミカちゃん達みたいな怪獣と人間の合いの子みたいな状態をハーフって呼んでいるの。今後、人間の生活圏で生活する以上、悪目立ちしちゃうから外観だけでも人間にしようってね」

 

「…別に僕は人間に溶け込まなくたって」

 

 

艦娘の次は怪獣娘だ。とはいえ、確かにミコの言うようにミカヅキ達の姿は目立つ。ミコやミカヅキといった名前のように今後の生活を考えての提案だが、人間に対して決して良い感情を抱いていないミカヅキはどこか不機嫌そうに話している。

 

 

「…でも俺は一緒にいたいよ。もっと自由に気兼ねなく色んな場所に行ってみたい」

 

「…ユウマ」

 

 

ミカヅキの人間嫌いは理解しているし、それをどうにか、それこそ無理にでも人間を好きになれとは思ってはいない。だがミカヅキ達と共にいられるのであれば、今のような生活が出来るのであればずっとこうしていたいとも思っている自分もいる。そんなユウマの想いにミカヅキは少しは心が動いているのか、ユウマを見つめている。

 

 

「…因みにどうすれば良いのでしょうか?見たところ…そのミコさんも人間と変わりないように見えますが」

 

「あぁ私ももう使ってるからね。これでさ」

 

 

そんなユウマとミカヅキのやり取りを見て、ホシヒメはミコに話を聞いてみる。実際、この外観のせいで外を自由に歩けないのは事実だ。それに今のミコの姿はかつてスラン星人との戦いで見せたガッツ星人を髣髴とさせるような姿ではなく、流行りの服を纏って、一人の人間として違和感がない姿ない。どうやら確かなようでそんなミコが取り出したのはスマートフォン型の機械だ。

 

 

「ソウルライザーって言ってね。リィーディバイザーの技術を応用して作ってみたんだ。これを使って地球人を意識すれば、外観だけは人間のそれに出来るんだよ」

 

 

機械の名はソウルライザーというらしい。どうやらまだ一つしかないらしく、説明をしながらミコはソウルライザーをミカヅキに渡す。

 

 

「人間…」

 

 

ミカヅキはソウルライザーをまじまじと見つめると、そのままユウマを見やる。ユウマが微笑むなか、ミカヅキが静かに目を閉じて、念じる。思い描くのはユウマと一緒にいる自分の姿だ。するとソウルライザーを媒体に光がミカヅキを包んでいく。

 

 

「な、なれ…た…?」

 

 

光が収まり、自身の姿を見たミカヅキは驚く。確かにミカヅキの姿は怪獣を思わせるパーツはなくなり、まさに人間と言っても過言ではないだろう。

 

 

「なれた!なれたよ、ユウマ!!」

 

 

これならばユウマと不自由なく外を出歩ける。そう思ったミカヅキはユウマにはちきれんばかりの笑顔を見せながら、ユウマに詰め寄るが、対してユウマは頬を染めながら目を逸らしていた。

 

 

「どうしたの…?」

 

 

いくら呼びかけてもユウマは慌てた様子でミカヅキを頑なに直視しようとしない。悲しさと寂しさを感じたミカヅキは不安げに尋ねると…。

 

 

「ふ、服…」

 

 

片手で自身の視界をふさいだユウマはわなわなとミカヅキを指差す。そう、確かに外観は人間になれた。しかしそのお陰で今のミカヅキはまさに全裸なのだ。

 

 

「あわわ…っ!!」

 

「そりゃ服までオプションで付いてるわけないよ」

 

 

ホシヒメが慌ててユウマの指示を受けて、彼の衣服を取りに行くなか、当たり前だろうと言わんばかりにミコは今のミカヅキを写真に収める。どうせ彼女のコレクションの一つになるのだろう。

 

 

「ユウマ?なれたんだよ?これで色んなところにいけるよ」

 

「分かった!分かったから!」

 

 

ホシヒメが衣服を取りに言っている間、特に気にした様子のないミカヅキはユウマに身を寄せて自身を見るように促す。どうやら人間になれたというよりは彼と自由に出歩けると言うほうが嬉しいようだ。しかしいくらミコやホシヒメに比べて未成長の身体とはいえ、女体は女体だ。ユウマは湯気が出そうなほど、顔を真っ赤にしてみようとはしない。

 

しかしそれでもミカヅキは逸らした視界の先に割り込もうとするのだが…。

 

 

【教育上良くない】

 

「おぉっとユウ君の便利ブレスレットからアニメで上手い具合に隠してくれる光のラインがミカちゃんにぃっ!」

 

 

見かねたゼノンがギャラクシーブレスレットを光らせて、ミカヅキの身体を閃光で隠すところを隠す。その光を目の前に現実でこんなことがあるのかと嬉しいような悔しいような複雑そうな様子でミコが叫ぶ。その後、ホシヒメが持ってきたユウマの衣服をミカヅキに名何とか着せ、漸く事態は収まる。

 

 

「じゃあ、ヒメちゃんの番ね」

 

「この流れで!?」

 

「お、俺、出てくよ!」

 

 

流れるようにミコはミカヅキから受け取ったソウルライザーをホシヒメに渡すが、全裸のような状態になる為、羞恥心があるのか、ユウマを見つめている。耐えかねたユウマは慌てて廊下に出て行き、呼び声がかかるまで待機するのであった。

 

・・・

 

 

「二人とも…これで一緒にどこで行けるんだね」

 

 

暫らくして呼び声がかかったユウマが部屋に戻ると、そこにはユウマの衣服を着たミカヅキとホシヒメがおり、改めて外観だけとはいえ、人間のそれになった彼女達に嬉しそうに話しかけると、彼女達も照れ臭そうに笑う。

 

 

「ハーフに戻りたくなったから、怪獣の本能を感じながらソウルライザーを使えばいいよ。日を改めてちゃんと人数分作ってくるから、今はそれ一つで共有してね」

 

 

今日、ミコが持ち込んだソウルライザーはそのままミカヅキ達が譲り受けて良いようだ。その後、彼女の詳しい説明を聞きながら、改めて二人は礼を口にする。

 

 

「さて、朝御飯も食べ終えたし、早速服を買いに行くかーっ!!ちゃんと選んであげるからね!!」

 

(…これが一番の目的だ)

 

 

するといよいよミコは待っていましたとばかりに声を上げ、立ち上がる。あまりのうきうきとした様子にユウマは人知れずため息をついていると…。

 

 

「ん…?」

 

 

ふとインターフォンの音が鳴り響き、ユウマは応対する為にいそいそと玄関に向かっていき、横開きの扉を開く。そこにいたのは妙齢の美しい婦人だった。

 

 

「あぁっこんなに大きくなってっ!!」

 

 

誰か尋ねる前にユウマの顔を見た瞬間、その女性は感極まった様子でユウに抱きつき、何度もその頬に頬ずりをする。

 

 

「あっ、あの!?貴女は!?」

 

「あぁっごめんなさい…。私ったら…」

 

 

あまりの行動にユウマが慌てて女性について尋ねる。感極まっていた女性だが、あまりのユウマの慌てぶりに冷静になったのか、気恥ずかしそうに照れた様子で一歩距離をとる。

 

 

「私はアスノ・ウミカ。宇宙飛行士であり、何より…アナタの母親よ」

 

 

騒ぎを聞きつけたミカヅキ達がこちらの様子を伺っているなか、女性は己の素性を明かす。だがその内容にユウマは驚くしかない。なぜなら自身の母親は確かに宇宙飛行士ではあるが、宇宙に飛び立ち行方不明になったのだから。しかし目の前の母と名乗るウミカはただユウマに対して慈しんで微笑むのであった。




本作のジャミラはパワード版などこれまでのシリーズの設定とオリジナルを混ぜ込んだ存在となっております。







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。