ウルトラマンゼノン ウルトラの奇跡   作:ウルトラゼロ
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母の温もり part2

「何だか変な感じー?」

 

 

ここはマツミズ宅から程近い衣類店だ。更衣室のカーテンを開きながら、そこからミカヅキが現れる。しかし今の彼女の服装はユウマから借りた男性物の衣服ではなく、愛らしくフリルのついたガーリーな服装であった。ただでさえ元は怪獣なのだから服を着る習慣もないのでミカヅキは物珍しそうに身体を左右に動かして、フリフリと揺れるスカートに興味を持っている様子だ。

 

 

「可愛いわぁっ!そうだ、次はこれ着てみない?」

 

「キュートとプリティのフュージョンアップだね!可愛い奴頼みます!」

 

 

そんなミカヅキに自身が選んだ彼女に似合うであろう衣服を持って詰め寄るウミカとミコ。とはいえ、こうして服選びを始めて、それなりに時間が経過しているのだろう。飽きることもなく次から次に服を持ってくるウミカとミコにミカヅキも少しうんざりしたような表情を浮かべる。

 

 

「ユウマのお母さん、何だかノリが良い人だね」

 

「うん…。俺も正直、記憶がおぼろげだからさ。伯父さんから聞いた話でしか知らないんだけどね…」

 

 

その光景を傍から見つめながら、こちらもこちらでホシヒメの服選びを行っていたホシヒメとユウマは嵐のような存在であるミコに負けず劣らずのテンションで付いていき、既に馴染んでいるウミカになんとも言えない様子で苦笑しつつも、彼女がユウマ達の前に現れたあの瞬間の出来事を振り返る。

 

・・・

 

 

「本当にあの人がユウ君のお母さんなの?」

 

 

ウミカがマツミズ宅を訪れた時間まで戻る。いつまでも玄関先で話しているわけにもいかず一先ず居間に案内をする。座布団の上に座ったウミカが周囲を何気なく眺めている間、廊下からその様子を眺めながらミコはユウマに尋ねる。

 

 

「伯父さんに昔、見せてもらったアルバムを引っ張り出したんですけど、確かに写真の通りの人でした。でも宇宙飛行士の仕事に従事して、その後行方不明っていう話でしたし…」

 

「ここ最近のニュースには何も言ってなかったね。流石に行方不明になった宇宙飛行士が帰ってきたとなれば大騒ぎになると思うけど」

 

 

物心つく前からマツミズに引き取られたユウマからしてみれば、宇宙飛行士として宇宙に旅立ち、その後、行方不明となっていたウミカに会ったところで彼女を母親と断定できるほどの記憶がない。そんなウミカが写っている写真を見せながら答えると、ミコは写真を受け取って、注視すれば確かに年数は経っているとはいえ、ウミカと思わしき人物は写っていた。しかしウミカは人類の希望を背負って宇宙へ旅立ったのだ。行方不明となった彼女が地球に帰ってきたのであれば世界中で騒ぎになる筈なのに、彼女は突然、ユウマの前に姿を見せたのだ。

 

 

「一応、伯父さんには連絡しました。すぐには無理でも、こっちに来てくれるそうです」

 

「まあ確かに提督も無視できないだろうしねぇ…」

 

 

どちらにせよ、ここにいる者達では判断がつかないのは事実だろう。幸い、ユウマが連絡をとったマツミズは時間の合間を縫って、こちらに来てくれるそうだ。ミコもそれが一番であろうと頷く。

 

 

「──わぁっ、すっごーいっ!!」

 

 

すると居間から続く台所の方から感嘆した様子のミカヅキの声が廊下まで聞こえてくる。果たして、どうしたのだろうかと顔を見合わせたユウマとミコは声のする台所まで向かう。

 

・・・

 

台所に到着したユウマ達が見たのは、今まさに包丁で長ネギを細かく微塵切りにしているウミカの姿であった。非常に馴れた手つきで手早く長ネギを切るその姿にミカヅキとホシヒメは驚いて、釘付けになっていたようだ。

 

 

「…なにやってるんですか?」

 

「え?あぁもうそろそろお昼も近いかなぁって思ったから、みんなの分のご飯でも作ろうかなって。材料の都合で簡単なものしか作れないけどね」

 

 

とはいえ何故、料理なんてしているのだろうか。怪訝そうに顔を顰めながら問いかけるユウマにウミカは居間のほうの壁時計を顎で指す。確かに時刻はもう11時を過ぎたところだ。ミコがやってきてから、それからソウルライザーでの変身、そしてウミカの登場で気付けばこのような時間までになってしまったようだ。

 

思うところはあるが、見たところただ普通にあり合わせの材料で料理を作っているようだし、ミカヅキに至っては早く食べたいと涎まで見せているのだ。時間にして10分程度で完成したのは炒飯であった。

 

 

「いっただきまーすっ!!」

 

 

きっちり人数分用意された炒飯を前に食卓を囲む。ユウマがどこか複雑そうな表情を浮かべるなか、今か今かと待っていたモチヅキはスプーン片手に食べ始める。

 

 

「おいっしぃいっ!!美味しいよ、これ!!」

 

「そぉ?ありがとー」

 

 

するととたんにミカヅキの瞳は感激で輝ぎ、思ったままの無邪気な感想を口にすると、その感想を聞いたウミカは満足そうににっこりと笑う。

 

 

「ほら、ユウマも早くっ!!」

 

「う、うん…」

 

 

これは食べなくては勿体無いとミカヅキはまだ食べていない0ユウマの腕を揺らしながら促すと、ユウマもおずおずとスプーンを持って、一口、口に運ぶ。

 

 

「美味しい…」

 

 

口に含めば、ごま油とネギの風味が広がっていく。また一口、もう一口とどんどん食べたくなるほどだ。それを表すようにユウマはパクパクとどんどん炒飯を食べていく。

 

 

「アナタには一度も手料理を作ってあげられなかったからね」

 

 

無邪気な子供のように食事をとるユウマの姿を慈しむように優しげに見つめていたウミカはふと零す。確かにユウマが物心つく前にウミカは宇宙飛行士として旅立った。ユウマは所謂、母の味というものを知らなかったのだ。

 

 

(…本当に母さんなのか…?悪い人には見えないし…)

 

 

そんなウミカに気付いて、ユウマは何ともいえない表情を浮かべる。突然、現れたウミカは普通ならば警戒すべきなのだろうが、この家に訪れてからの彼女に全くの敵意や悪意の類は感じられない。それどころか温かで柔らかい陽だまりのような印象を受ける。

 

 

「そう言えば、ミカヅキちゃんとホシヒメちゃんって言ったっけ?言っちゃ悪いけど随分と不恰好な服装ね」

 

「実は今からちゃんとした服を買いに行こうという話になっていたんです」

 

 

食事もそろそろ済む頃、ふとウミカはずっと気になっていたのか、ミカヅキとホシヒメをそれぞれ見やる。k二人ともユウマの私服を身に着けているため、サイズが合っているとは言いがたいのだ。

 

 

「あらそうだったのね!だったら、こんなところにいないで買いに行きましょうよ!おばさんが見てあげるからっ」

 

 

するとウミカはこうしてはいられないとばかりに両手を合わせて、善は急げとばかりに買い物に行こうとする。その姿を見て、まるで嵐のような勢いのウミカに驚くものの、いち早く反応したミコとモチヅキも加わって、あれやあれよと言う間に衣類店に向かったのだ。

 

・・・

 

 

「いやぁ似合ってるわよ、ミカちゃん」

 

「ホントに?でも、これ動きやすくて良いよっ」

 

 

そして時間は服を買い終えた時間まで進む。ウミカは満足そうにミカヅキを見れば、薄手のオレンジ色のパーカーに動き易いスポーティーな服装で纏めたミカヅキも気に入っているのか、満面の笑みで答えていた。

 

 

「ヒメも似合ってるよ」

 

「ヒ、ヒメって…。で、でも…ありがとう…」

 

 

ホシヒメも彼女から感じるどこかクールな印象を元にシックな服装で纏めていた。そんなホシヒメに荷物持ちをしているユウマが声をかけると、照れ臭そうに頬を紅潮させながらボソボソと話している。

 

 

「でも、驚いたわぁ。まさかユウマが女の子に囲まれて暮らしているなんて」

 

「いや、それは成り行きでこうなったと言うか、何と言うか…」

 

 

五人で歩くなか、ウミカはミカヅキとホシヒメと共に暮らしているユウマに、やはり驚いていたようだ。言われてみれば一つ屋根の下のあの状況にユウマも苦笑してしまう。

 

 

「でも、ちゃんと家族がいたようで安心したわ」

 

「…っ」

 

 

とはいえ、何気ない会話からユウマとミカヅキ達が良好な関係でいることは分かったようだ。そんな彼女の言葉にユウマは息を呑む。

 

 

「まあでも、私とはまだ距離があるみたいだけど」

 

「それは…」

 

「ううん、私が悪いの。物心つく前にいなくなったのに、いきなり現れてお母さんだなんて言う人がいたら、そりゃ怪しいわよね。ホントお母さん失格よ」

 

 

そんなウミカもやはり彼女にどこか距離をとるユウマには気付いているのだろう。寂しげに笑う彼女にユウマは何か言おうとするが、下手なことは言わなくていいとウミカは自嘲しながら、宇宙飛行士として従事するも母親の役割を担えなかった自身を責める。

 

 

「あの、さ…。なんで宇宙飛行士になろうと思ったの?」

 

 

やはり彼女を見て、悪い印象は感じない。そんな彼女との距離を少し縮めるかのようにユウマはウミカが宇宙飛行士になろうと思った理由を尋ねる。

 

 

「そうねぇ…。きっかけは星を見上げるよりももっと近づいてみたいと思ったからかな。そこに向かえば、誰が待ってるんだろうって…。ほら人ってさ、出会いで変わるの。それが今の私達を形成してる。良いようにも悪いようにもね」

 

 

まさかそんなことを問われるとは思っていなかったのか、一瞬、間の抜けた表情を浮かべたウミカは首を傾げて、彼女が宇宙飛行士を志した理由を話し始める。

 

 

「俺は…分からない。未来に何がしたいかが見えてこないんだ」

 

「それはそれで仕方ないんじゃない?」

 

 

かつて赤城にも言ったことがある。何がしたいのかも目指したいものが何かも分からない。故にそれが自分の未来に繋がらない。ずっと靄がかかっているようなものなのだ。だがそんなユウマにウミカはあっけらかんと答える。

 

 

「だって見えてこないんでしょ?なら焦ったって仕方ないじゃない。でもね、さっきも言ったけど、要は出会いよ。出会いが未来を作るの。いつかユウマに共振する出会いがあるかもしれない。まあもうしてるかもしれないけど」

 

 

驚いた様子でウミカを見やるユウマに、彼女は己の考えを口にしながら、ユウマが出会い、今に至るミカヅキ達を見やりながら話す。

 

 

「だから未来へ繋がる一つ一つの出会いを無駄にしないように前だけは向いていなさい。例え傍にいなくても、出会った多くの人達がアナタの心に確かに息づいてくれるように」

 

 

ミカヅキ達との出会いはお互いに影響を与えているはずだ。出会いを無駄にするな、そんなウミカの言葉にまだ具体的な未来の方向性が分からないユウマも考えるように俯く。

 

 

「さて、ちょっと湿っぽくなっちゃったから今日は私が晩御飯を作るわっ!どうせシンちゃんも来るんでしょ?だったら特製ウミカレーを作ってあげましょうっ!!」

 

「わぁーいっ!!」

 

「よければ、レシピを…」

 

 

少なくとも今のウミカの言葉はユウマの中で何か影響を与えているようだ。とはいえ、柄でもないと思ったのか、どこか湿った空気を払拭しながらミツミズの名を挙げ、夕食の提案をするウミカに、炒飯で完全に彼女の手料理の虜になったのだろう。ミカヅキは手放しで喜び、ホシヒメもおずおずとレシピを尋ねていた。

 

・・・

 

 

「ただいまー」

 

 

帰りにスーパーで買い物を済ませたユウマ達はマツミズ宅へ戻ってきた。玄関を開きながら、ぞろぞろと家の中に入って、そのまま居間まで向かって行くと…。

 

 

「帰ってきたようだね」

 

 

そこに待っていたのはマツミズであった。その隣には鳳翔とソーフィの姿もある。

 

 

「伯父さん!それに鳳翔さんにソーフィさんも…」

 

「彼女達は私が頼んで、同行してもらったんだ」

 

 

マツミズとその近くにいる鳳翔とソーフィに反応するユウマに簡単ながら、彼女達が同行している理由を話す。しかし大方、鳳翔はマツミズの護衛だろうが、ソーフィは何なのだろうか。

 

 

「ガッツ、お前ぇ…」

 

「い、いやー奇遇だねー。アハ、アハハハ…」

 

 

するとソーフィは呑気な顔で居間に顔を見せたミコに白い目を向ける。非難するようなその視線に耐えかねたミコは目を逸らしながら乾いた笑みを浮かべている。

 

 

「さて…宇宙からの帰還、か」

 

「やっほーシンちゃん。お久しぶりー。なんか痩せてない?ちゃんと食べてるー?」

 

 

軽く咳払いをして、マツミズは場の空気を正してウミカを見やる。それに合わせてソーフィ達も姿勢を正し、ユウマ達も空気が変わるのを感じて、息を飲むなか、能天気と言うべきなのか、特に気に止めた様子のないウミカはマツミズに声をかけ、誰しもがずっこけそうになる。

 

 

「…我が妹ながら相変わらず我が道を行くなぁ」

 

「んー?そのニュアンスって褒めてる?」

 

 

どこか残念なものを相手にするかのようにため息をつくマツミズにその言葉のニュアンスから首を傾げるウミカだが、まぁ良っかと自己完結する。

 

 

「悪いけど、私達と一緒に来てもらうよ。どうやって地球に戻ってきたかは分からないけど、お前の身体を調べないと。聞かなきゃいけないことは山のようにある」

 

「あー…それ明日じゃダメかなー?故郷は地球!やっと帰って来れたんだし、ゆっくりしたいよぉ。今日は流石に疲れたし、ウミカレーを作る約束もしちゃったしね。なんだったらシンちゃんも食べなよ。材料はいっぱい買ってきたし」

 

 

マツミズとしてもウミカに対して不可解なことは山のようにある、政府に所属する提督という立場の者として、鎮守府への同行を求めるが、のらりくらりと一蹴したウミカは材料が入った買い物袋と共に台所まで持っていく。

 

 

「どうお考えですか、提督」

 

「どうもこうもね…。話した限り、まさに私の妹だよ。あぁいう風に言った後はてこでも動きやしない」

 

 

台所で作業をしているウミカを横目に鳳翔はマツミズにそっと耳打ちする。マツミズもどこか複雑そうにウミカを見ていた。

 

 

「ともあれ、私もウミカさんのお手伝いをさせていただきますね」

 

「ああ。よろしく頼むよ」

 

 

すると鳳翔は自身もこの場で出来ることは台所仕事だろうと手を貸すために立ち上がると、マツミズはそれを見送りながら、ソーフィに目配せをするそれに気付いたソーフィは頷くと、タブレット型の機械を取り出して、なにやら操作を始めるのであった。

 

・・・

 

 

「私もお手伝いしますね」

 

「あぁ、ありがとう。助かるわ」

 

 

台所にやって来た鳳翔はウミカに声をかけると、折角の申し出にウミカも笑顔で快く迎える。

 

 

「ごめんね。無理言っちゃって」

 

「いえ、提督も無理に連れて行くつもりはないようなので」

 

 

マイペースな人物かと思いきや、無理を言っている自覚はあったのか、非礼を詫びるウミカにマツミズも今も様子を見ているようなので、その意向に鳳翔も従うようだ。

 

 

「私はさ、ユウマに母親らしいこと出来なかった…。出来ることをしたってこの十数年の空白は埋められない…。恨まれたって仕方ない」

 

「でも、ユウマ君はウミカさんを恨んだりしていませんでしたよ。寧ろ誇りに思っていたように私は感じています。あの子は…とても良い子ですよ」

 

 

ふとウミカは自嘲しながらユウマへの懺悔のように話し始めると、これまでの艦娘として生を受け、今日までユウマの口から母親への恨み言を聞いたことがない鳳翔はフォローするように口にする。

 

 

「そっか…。でもユウマは私や父親がいなくても、ちゃんとあの子の周りに家族がいたのは純粋に嬉しかったなぁ…」

 

「最近は賑やかになりましたからね。ユウマ君も毎日が楽しそうですよ」

 

「それはアナタのような存在が近くにいるのもあるだろうね」

 

 

居間の方に目を向ければ、ミカヅキ達と賑やかに戯れているユウマの姿が見える。まさに兄妹か何かのようだ。そんな彼女の言葉に頷きながらその様子を見守る鳳翔にウミカは微笑みかけながら安心したように話す。とはいえ、鳳翔はいえいえ、そんなことはと謙遜していた。

 

 

「…本当に…良かっ……た…」

 

「え?なにか仰いました?」

 

 

ふと消え去りそうなほどのか細い声で呟いた声を聞き逃し、鳳翔は何気なくウミカに目を向ける。彼女は今、カレーやサラダに使う野菜を水で洗っていた。

 

 

「ウミカさん…!?」

 

 

しかしその様子は尋常ではなかった。野菜を水で洗っているだけだと言うのに、水に濡れた彼女の腕は激しく震え、脂汗すら流れているではないか。あまりの様子に鳳翔はウミカに駆け寄ろうとする。

 

 

「大丈夫よ、気にしないで…」

 

 

だがウミカは鳳翔を手で制しながら、水に濡れるたびに痙攣して震える腕を必死に抑えながら、ふと居間を見てその瞳にユウマを焼き付けるように見つめる。

 

 

「あの子には…母親として…ちゃんとした私の手料理を食べさせてあげたいの…。今の…うちに…っ!!」

 

 

何とか水に耐えるように下唇をギュっと噛んで、料理に専念する。そのあまりの姿に鳳翔は推されながらも、おぼつかない足取りで料理をするウミカを気遣いながら、その手伝いを行うのであった。








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