ウルトラマンゼノン ウルトラの奇跡   作:ウルトラゼロ
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暴君怪獣

タイラント

極悪宇宙人

テンペラー星人

登場


ケモノの影を纏って part1

「やれやれ、この宇宙船も随分、寂しくなったものですね」

 

 

不気味なほど薄暗い宇宙人連盟が使用するこの宇宙船でババルウ星人はまるで皮肉混じりにくつくつと笑いながら、自分とヒッポリト星人しかいない船内について口にする。

 

 

「フンッ、ここで生き残れないのであれば、この先も容易く淘汰されるであろうよ」

 

 

ババルウ星人の物言いに鼻を鳴らしながら一蹴する。確かにこの宇宙船内で宇宙人連盟として連ねていたナックル星人やスラン星人はウルトラマンの活躍によって敗れ去った。今、宇宙人連盟に残っているのはここにいるヒッポリト星人とババルウ星人、そしてこの場にはいないテンペラー星人と協力関係にあるぺダン星人だ

 

 

「それにもう少しだ。計画そのモノは順調に進んでいる」

 

 

するとヒッポリト星人は立体映像を表示する。それはこの船内のとある場所を映す映像のようだ。そこにはかつてゴモラに降り注いだあのカプセルがあり、その中には様々な怪獣の部位を組み合わせたような外見を持つ暴君怪獣タイラントが眠っていた。

 

今は大人しく眠っているようだが、これが解き放たれれば、まさにその名に恥じぬほどの災いを齎すだろう。そんなタイラントを見て、ヒッポリト星人はまるで狂気に呑まれたかのように話し、その後ろで壁に寄りかかって腕を組んでいたババルウ星人は「だと良いんですがね」と肩を竦めていた。

 

 

「そう言えば、テンペラーはどうした?」

 

「あぁ…確か暴れられないからと業を煮やして、どこかの宇宙に向かったはずですよ」

 

「なにをやっているんだ、奴は…。今すぐ連絡して、呼び戻せ」

 

 

ふとヒッポリト星人はこの場にいないテンペラー星人の名を挙げる。普段であれば、この場でなくても船内にはいるはずだ。するとテンペラー星人の行き先について知っていたのか、ババルウ星人は思い出したかのように軽く話すと、下手なことをさせないようにとすぐさまヒッポリト星人の指示が与えられるのであった。

 

・・・

 

宇宙を越えたその先には水泡のような宇宙が多元宇宙マルチバースとして無数に広がっていると言う。その中の宇宙の一つ、その先にあるユウマ達とは異なる地球の市街地でテンペラー星人の姿があった。

 

この街の名は星山市。普段は怪獣こそ時折、現れるが、それでも和やかに人々の営みが育まれる場所だ。だが、そんな安息をの場所を打ち壊すかのようにテンペラー星人が現れて、猛威を振るっているのだ。今も、電気エネルギーを鞭状にした光線を放っていた。

 

そんなテンペラー星人を食い止める為に、この世界のウルトラマンが戦っていた。しかし一見してみれば、赤と銀の体表にカラータイマー等の一般的なウルトラマンとしての特徴を持っているのだが、やはり一番、目を引くのは、ツリ上がったその青い目だろうか。

 

それだけでもどことなく異様さを感じるのだが、このウルトラマンの野性味を感じさせるような戦い方はまるで荒らしい獣のような印象を抱かせる。

 

 

「貴様のことは知っているぞッ!さあ、ここまで来たのだ。その力を示してみよォッ!!」

 

「僕が目的だって言うのか…!?」

 

 

テンペラー星人が現れた当初はこの街で破壊活動を行っていたのだが、このウルトラマンが現れた瞬間、待ち望んでいたとばかりに襲い掛かってきたのだ。自分を目的に出現したであろうテンペラー星人にどことなく困惑したような声をあげる。

 

 

「戦うのなら、ここじゃなくったって戦えるのにッ!!」

 

 

だが例え自分が目的であろうと、その為だけに関係のないこの星山市の人々を危険に晒したことを許すわけには行かない。青い目のウルトラマンは獣のようにアスファルトの地面を蹴って、テンペラー星人に飛び掛っていく。

 

 

「良いぞ、良いぞォッ!!噂に違わぬ力を感じるッ!!」

 

 

それはまさに地を大きく震わすような激闘と言っても過言ではないだろう。戦闘の状況に応じて、姿を変えるこのウルトラマンを目的にこの世界に訪れたテンペラー星人は戦いの中で滾るような喜びを感じていた。

 

 

《──そこまでです》

 

 

激化していく戦闘の最中、ふとテンペラー星人にテレパシーが届く。それはババルウ星人のものであった。突然、動きを止めたテンペラー星人に青い目のウルトラマンもその様子を伺う。

 

 

《戦いは結構ですが、我らが連盟に名を連ねた以上は自重していただきたい》

 

「…貴様、戦いが盛り上がったタイミングを狙ったな?変わらず悪趣味な奴よ」

 

《偶然じゃないですかねぇ。兎に角、一度お戻りを。計画を進めるそうです》

 

 

咎めるようなババルウ星人の物言いだが、轟くような戦いに心を躍らせていたテンペラー星人は冷や水を浴びせられた気分となり、苛立ちを一切、隠さずに話すが、そんな文句もどこ吹く風か、気にした様子のないババルウ星人はテンペラー星人を呼び戻そうとする。

 

 

「チッ、興が削がれたわ。勝負は預ける」

 

「──ッ!待てッ!!」

 

 

ババルウ星人の横やりに白けた様子のテンペラー星人はこれ以上、戦う気にはなれないのか、ワームホールを開いて、そこに潜っていく。だが青い目のウルトラマンもすぐにその後を追い、彼の仲間達の声を背後に聞こえるなかワームホールに突入するのであった。

 

・・・

 

 

「ユウマ、目は覚ましたか…?」

 

 

テンペラー星人と青い目のウルトラマンとの戦いから十数時間が経過した頃、ユウマ達の宇宙であるグローリースペースでは、丁度朝を迎えていた。晴天に恵まれた…とは言えず、どんよりと今にも雨が降り出してきそうなほど、濁った暗雲が立ち込めるなか、マツミズ宅ではホシヒメがユウマの部屋の前で声をかけていた。

 

 

「…入るよ」

 

 

しかし一向にユウマからの反応はない。別にユウマが不在なわけではない。確かにこの戸の奥には人の気配があるのだから。声をかけても了承が得られないまま、ホシヒメは戸を開く。

 

そこには壁に寄りかかったまま、座り込んでいるユウマの姿が。髪もボサボサで生気を感じられない瞳で虚空を見つめていた。

 

 

「その…朝ご飯、出来たんだ…。ちゃんとご飯は食べないと…。ここ最近、ずっとまともに食べてないんだし…」

 

 

ホシヒメが室内に入ってきても、ユウマは何の反応もない。指一本も動かす気配のないユウマに何とか笑みを作りながらでも彼に声をかけるのだが、彼は返答どころか何か素振りを見せる気配もなかった。

 

それもこれも、やはりウミカの一件があったからだろう。あれから数日が経ったが、ユウマは学校に行くこともなく、廃人のようになってしまったのだ。

 

しかしこれは幼い15歳の少年の心に目の前で母親が自身の生命の火を消し去る姿が深く刻み込まれているに他ならなかった。お陰で食事もまともに取っておらず、ウミカが家に来た時よりも、見る見るうちに痩せ細り、頬もこけ始めているのが分かる。日を重ねるうちに痛ましい姿になっていくユウマにホシヒメ達も心を痛めてしまう。

 

 

「うぅっ…あぁあっ…!!!」

 

 

そして何より、彼の頭の中でウミカの死がフラッシュバックすることがあるのだろう。その時だけ何か反応を起こして乾いた唇を動かし、頭を抱えてもがき苦しんでいるのだ。

 

 

「ユウマ、しっかりしてっ!!」

 

 

錯乱しているユウマを何とか抱きしめて落ち着かせようとするホシヒメ。しかしユウマは落ち着く気配もなく、嗚咽を零して涙を流しながら、悶えていた。

 

 

「お願いだからっ…戻ってきて…っ!」

 

 

騒ぎを聞きつけたミカヅキが様子を見に来て、ユウマのその姿に沈痛な面持ちを浮かべて目を逸らすなか、ホシヒメは必死に呼びかける。大丈夫だから、などとは言えず、何と声をかけて良いかも分からなかった。

 

しかし、例えユウマがどんな状態であろうと、世界は絶えず回る。良いようにも、そして悪いようにも…。宇宙人連盟の円盤で眠る暴君の目覚めは近かった。








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