ウルトラマンゼノン ウルトラの奇跡   作:ウルトラゼロNEO
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ケモノの影を纏って part2

「参ったな。これ…違う世界…だよな…」

 

 

ユウマがいまだ塞ぎ込むなか、町を散策している青年がいた。まだ幼げな顔立ちで、オレンジ色のシャツにデニムジャケットを羽織った彼はこの町の住人、いや、この世界の人間ではないのだろう。どこか困ったように引き攣った笑みを浮かべながら、周囲の町並みを見て回っていた。

 

 

「あの宇宙人ともこの世界に来た瞬間に見失っちゃったし…。やっぱり、みんな心配してるよなぁ…」

 

 

自身の世界へ想いを馳せる。この青年には、多くの仲間がいる。それこそその仲間達の笑顔が彼の力になるほどに。だからこそ今の自分の状況に頭を抱えたくなる。

 

彷徨うように町を歩く青年はそのまま商店街に入っていく。ここは都市部のように喧騒としているわけではないが、それでもこの町なりの活気が満ちた温かさがあったのだ。

 

 

「ラムネ…」

 

 

そんな中、青年は駄菓子屋の小さな業務用冷蔵庫の中で冷やされているラムネを見つける。

 

 

「そう言えば、この町…。海があったっけ」

 

 

ふとラムネを見て、何かを思い出しているのか、懐かしんだような表情を見せる青年はラムネから海を連想する。しかしラムネと海でどこか感慨深そうにしている彼の過去には一体、何があったのだろうか。青年は時間を確認して、「20時間は長いなぁ…」とぼやきながらそのまま闊歩していくのであった。

 

・・・

 

 

「…ユウマは、どうしている?」

 

 

執務室では、休憩を取っていたマツミズだが、ふと秘書官である長門にユウマについて聞かれ、ピタリと動きを止める。

 

 

「…すまない。私事は聞くべきではないのだろうが、その、ユウマが売店のバイトに顔を出していないと聞いてな」

 

「…」

 

「…鎮守府内ではアスノ・ウミカ飛行士の一件が既に広まっている。母親が怪獣となったショックで塞込んでいるのではないか、と」

 

 

動きを止めたマツミズに非礼を詫びながら、言い辛そうに質問したその理由を話し始める。マツミズが視線だけ向けて黙って話を聞くなか、小耳に挟んだ噂を口にする。

 

 

「…参ったな。ソーフィ達かな?それとも事後処理での話を誰かに聞かれてたのかな。何回か政府の要人も来てたし、誰かの耳に入る可能性を考慮するべきだった」

 

「…鎮守府内に留めておくように緘口令は敷いておくつもりだ。だが提督、誤解しないで欲しい。皆、好奇心からではなく、純粋にユウマを心配しているのだ」

 

「大丈夫、分かっているつもりだよ。けどユウマに知られるとは思わなかったな。ガッツ…じゃなくて、ミコの話じゃ、僕達の後をこっそりついて来ていたんじゃないかって話だけど」

 

 

一体、噂の出所はどこなのか。重いため息をつくマツミズに長門は弁明をする。そんな彼女を安心させるように微笑を浮かべながら、マツミズは席を立つと静かに移動を始める。そもそも何故、ユウマがあのようになったのか、マツミズが知っているのかは当人の状態もそうだが、ユウマがゼノンだと知るミコのフォローもあった。とはいえ、正体を明かせぬこともあって、目の前で母親が命を落としたのも大きな理由だとは言えなかったが。

 

 

「長門も知っていると思うけど、ここ最近、休暇届と外出届が色んな娘から提出されていてね。受理する為にスケジュールを組みながら、少し疑問に思っていたけど…成る程、そういうことか」

 

 

しかし別に噂が広まったところで、それでユウマが嘲笑の対象になるなど思ってはいない。と言うのも、ジャミラの一件以降、妙に気を使われている実感がマツミズ自身にもあった。他にも彼が言うように、ここ最近、艦娘達からの休暇届等は多く、皆、ユウマの元へ向かおうとしているのだろう。

 

そんな彼女達の行動に嬉しく思いながらマツミズは扉の前に立つと、そのまま一気に開く。するとどうだろう。そのまま雪崩れるようにして、艦娘達が執務室内に入り込んできたのだ。

 

 

「お前達っ…!?」

 

「みんな、優しいからね。ごめんね、気を使わせちゃって」

 

 

聞き耳を立てていた艦娘達に長門が驚くなか、気まずそうな顔を浮かべている彼女達に合わせて、マツミズが屈むと申し訳なさそうに笑みを浮かべ、咄嗟に「提督が悪いわけじゃ…」と口々にしている。

 

 

「みんなは大切な存在を失う痛みを知っているから、ユウマのことも気になるんだろうね…。ありがとう、本当に…。ユウマに会わせられるように、働きかけてみるよ。このままじゃいけないってことは分かってるからね」

 

 

ソーフィやミカヅキ達がかつては宇宙人や怪獣だったように、艦娘達はかつては軍艦だった。当時の記憶も残っており、だからこそユウマが負った痛みを理解できるのだろうと話す。彼女達がここまでユウマを気に欠けてくれているのだ。その思いを無碍にしないように何とかしようと考えている時であった。

 

 

「──ッ!!?」

 

 

ふと地面が大きく揺れたのだ。思わずふらついたマツミズを長門が支えていると…。

 

 

「キュオオオオオオオオオオオオオォォォォォォーーーーーーーーーーーーーンンッッッッ!!!!!!!」

 

 

発生源はここではなく、町の方向であろうと言うのに、耳を劈くような咆哮が聞こえてきたのだ。

 

・・・

 

 

「キュアアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーッッ!!!!!!」

 

 

突如として、市街地に空から降り立ってきた怪獣に市民は大パニックとなる。その怪獣は腹部にベムスターのような五角形の口、背部には鋭角的な棘もあり、その他にも左手は鋭い鎌、右手は鉄球などまさに暴れ回る為に生まれたのではないかと思うほどの攻撃的な外見をしていたのだ。

 

その怪獣はタイラントの名を持ち、またの名を暴君怪獣と呼ばれている。かつては怪獣の怨念が集まって、生まれた怪獣だが、ゾフィーからウルトラマンエースまでのウルトラ五兄弟を破った恐ろしい怪獣である。

 

 

「ユウマ、怪獣が!」

 

「早く逃げなきゃっ!」

 

 

タイラントの出現と共に避難が行われるなか、マツミズ宅でもミカヅキやホシヒメがユウマを連れて、避難しようとする。今のユウマが到底、戦えるとは思えなかったからだ。

 

 

「…ユウマ…?」

 

 

しかしユウマの部屋はもぬけの殻だった。一体、彼はどこに行ったのか、僅かに考える二人だが、揃って同じことを考え付いたのだろう。慌てたように顔を見合わせる。

 

・・・

 

 

「…あの怪獣はッ!」

 

 

またこの世界に迷い込んだ青年も避難誘導を行いながらも、タイラントの存在を知っているのだろう。険しい表情で見つめるなか、妙に忙しない様子でしきりにまだかまだかと時間を確認していた。

 

 

「あれは…」

 

 

この辺りも避難が済んだ。何とかタイラントへの対応をしなくてはならないと表情を険しくさせる青年だが、ふと人影に気付く。

 

ユウマだ。

 

まるで夢遊病のようにおぼつかない足取りでタイラントに向かっている彼がそこにいたのだ。青年はすかさずユウマを避難させようと彼の元へ向かおうとする。

 

・・・

 

 

【…戦えるのか、ユウマ】

 

「…」

 

 

ユウマと一体化しているゼノンから問われる。今のユウマの精神状態で戦えるとは到底、思えなかったのだ。しかしユウマはゼノンの問いかけに答えず、無言でギャラクシーブレスを立て構えると、光に包まれてゼノンとなる。

 

・・・

 

 

「ウルトラマン…ッ!?」

 

 

ユウマに駆け寄ろうとしていた青年だが、ユウマが立て構えたギャラクシーブレスの強烈な光に思わず足を止めて、目が眩んでしまう。視界が回復して、ユウマを探せば、彼がいた場所には光の巨人が佇んでいたのだ。

 

 

「キュアアアアアアアァァァァァァッッッ!!!!!!」

 

 

ゼノンを視認したタイラントは身を震わせながら、咆哮をあげる。まるでこれから己が力を震える相手を見つけて喜んでいるかのようだ。対してゼノンは静かに佇むだけだ。

 

だが、そんなゼノンをお構いなしにタイラントは鉄球の先の鎖を放ち、ゼノンの腕に絡めると、そのまま強引に引き寄せて、その鋭い鎌の刀身に当たる部分で打突し、吹き飛ばす。

 

 

(ユウマ、やはり君は…戦える状態ではッ!?)

 

 

ゼノンの身である為、ある程度、ゼノンとしての意志で戦うことも出来るが、一体化している弊害からか、ユウマの不安定な精神状態が働いて、満足な行動が出来なかった。ゼノンがユウマに呼びかけるが、その途中でタイラントがいまだゼノンの腕を拘束している鎖を力一杯引いて、そのままグルングルンと宙で遠心力を利用して回転させると、そのまま海の近くへ投げ飛ばす。

 

 

「…ッ」

 

 

地面に強く叩きつけられ、ゼノンがもがき苦しんでいると、海の近くに投げ飛ばされた影響からか、ふと海の小波の音が聞こえ、ゼノンはドクンと強く鼓動が響いたのを感じる。

 

 

『サヨウ、ナ…ラ…。愛しテ…るヨ、ユウ、マ』

 

【あっ…あぁっ…あああああぁぁぁぁっっっ!!!!!!?】

 

 

一体化しているユウマの中で目の前で、そしてこの海で命を絶ったウミカの姿がフラッシュバックしているのだろう。内側から彼の痛ましいほど半狂乱となった叫びが聞こえてくる。

 

 

(しっかりしろ、ユウマ!!戦いに集中するんだッ!!!)

 

 

そしてそれはゼノンにも影響を及ぼしていた。単に内側からユウマの悲鳴が聞こえてくるだけではない。一体化している影響で、彼の精神状態が、そのままゼノンに伝わってくるのだ。

 

それでもこのままでいて良い訳ではない。ユウマに檄を飛ばしながら、ゼノンは何とかタイラントからの鎖を振りほどくと、両腕を水平に広げて、エネルギーを溜めこみ、そのままL字に組んで、ゼノニウムカノンを放つ。

 

 

「ッ!?」

 

 

黄金の光の奔流がタイラントに直撃した…が、恐るべきことにタイラントは軽傷で済んだだけで物ともしていないのだ。これにはゼノンも唖然とするが、戦いはまだ続いている。

 

タイラントはその耳に当たる部分から。青白い光線を放って、ゼノンの動きを怯ませると、すかさず口から灼熱の火炎を放射して直撃させると、流石のゼノンも膝をつき、パワータイマーを点滅させる。

 

 

「──フンッ、随分と腑抜けになったものよ」

 

 

パワータイマーの点滅音が痛ましく響くなか、空から声が聞こえる。そこには青い小人のような存在が見えたが、次の瞬間、それはフラッシュのような光を発し、光が収まって確認してみれば、そこにいたのはテンペラー星人だったのだ。

 

・・・

 

 

「奴め、なにを考えている!?」

 

 

誰もが驚くなか、それは宇宙人連盟のリーダーであるヒッポリト星人も驚いていたのだ。タイラントを放つまでは、彼の計画の内だった。だが、テンペラー星人も出撃するなどという指示はしていない。最もババルウ星人に至っては、こうなったかとばかりに肩をすくめていたが。

 

・・・

 

 

「満足にタイラントの実験役も務まらん。であれば、今後の有用性もない。ここで消し去るのみよ」

 

 

ヒッポリト星人からのテレパシーが届き、戻ってくるように促されるが、テンペラー星人は聞き入れることなく、膝をついたまま、こちらを警戒しているゼノンへ冷淡に言い放つ。元々、宇宙人連盟がゼノンを野放しにしているのは、実験台という理由があったからだ。しかし今のゼノンを見て、その価値がないと判断したのだろう。テンペラー星人が直々に消し去ろうとこうして姿を現したというわけだ。

 

 

「アイツは…ッ!!」

 

 

威圧するかのように鞭状のエネルギーを地面に何度か叩きつけてゼノンに対し、放とうとするテンペラー星人。その姿を見て、今まで歯痒そうに見ていた青年は時計を見る。

 

 

「時間はッ!?」

 

 

時計の針を見て、今か今かと待っていた青年は漸く彼が待ち望んでいた時間…彼がもう一つの姿であった頃から20時間に達したことを確認すると、改めてタイラントやテンペラー星人を見やる。

 

 

 

 

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇッ!」

 

 

 

 

 

青年は表情を引き締める。それはまさに覚悟を宿した戦士のように。その腕には赤と黒を貴重としたスキャナーのような機械が握られ、胸の前で構える。

 

 

「You go!」

 

 

青年が次に取り出したのは、栄光の初代ウルトラマンの姿が映し出されたカプセルであった。そのままカプセルを起動させ、左腰に装着されていたナックルに装填する。

 

 

「I go!」

 

 

そして次に取り出したのは、光の国が生み出した最強最悪の戦士ウルトラマンベリアルのカプセルだ。起動させたベリアルのカプセルをもう一つ空きのあるナックルに装填する。

 

 

「Here we go!」

 

 

スキャナーのトリガーを引き、中央のクリスタルが発光すると青年はスキャナーでナックルに装填された二つのウルトラカプセルを読み込ませる。

 

 

 

「決めるぜ、覚悟ッ!!」

 

 

 

それはまさに青年の決意を表すような言葉だった。カプセルを読み込ませたスキャナーを胸に翳した青年はトリガーを引く。するとスキャナーから真紅の光があふれ出す。

 

 

 

 

 

 

 

──きっと生まれた時から決められていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ジイイイイィィィィィィィィィィィーーーーーーードオオオォッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

──光と、そして悪魔の如き力をその身に宿すことを。

 

 

 

 

 

 

 

《Ultraman》

 

 

 

 

 

 

 

──だが彼は自身の過酷な運命をその覚悟と絆を持って乗り越えたのだ。

 

 

 

 

 

《Ultraman Belial》

 

 

 

 

 

──その気高き戦士の名は

 

 

 

 

 

 

 

《Ultraman Geed! Primitive!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──大きな光の影が地面を揺らして、降り立った。

 

 

 

 

「ウルトラマン…?」

 

 

 

誰かがそう呟いた。確かにその存在はゼノンに身体的な特徴が一致していたが、そのつり上がった青い目とゆっくりと身体を起こすその姿は異様さを感じさせた。

 

 

 

「ハァッ!」

 

 

 

誰もが言葉を失うなか、運命に抗いし戦士・ウルトラマンジードは暴君達に対して、両腕を大きく広げると、そのまま深く腰を落として右腕を突き出すと臨戦態勢を取るのであった。

 






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