ウルトラマンゼノン ウルトラの奇跡   作:ウルトラゼロNEO
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暴君怪獣

改造タイラント

極悪宇宙人

テンペラー星人

登場


絆∞Infinity part1

タイラントとそれを巡るテンペラー星人との戦いから数時間が経った。ジードとタイラントとの激闘によって齎された町の被害でてんやわんやと対応に追われるなか、ウルトラマンジード・朝倉リクは負傷したユウマを彼の案内でマツミズの家まで運んでいた。

 

今のユウマはタイラントによって負った傷が響いていた。半ば無理やりに布団で安静にするように促されたユウマだが、軋むような痛みに表情を歪ませ、悶えている。

 

いや、実際のところ、身体の痛みは然程、問題ではなかった。ジードの救援も早かったお陰もあり、深い傷は負ってはいない。しかし問題はその精神状態だろう。戦闘の中で、海を感じただけで半狂乱になって錯乱していたのだ。

 

 

「っ…」

 

「ユウマ…」

 

 

布団に包まった状態でも分かるほど震えているユウマ。それはまさに今の不安定な彼を表しているかのようだ。そんな彼の傍らで看ていたミカヅキはどう彼に接していいか分からぬまま、悲痛な面持ちを浮かべていた。

 

 

「……そっか。お母さんを」

 

 

そんなユウマの様子を僅かに開かれた扉の間から見つていたのはリクとホシヒメだった。ユウマを家に運んだリクだが、戦闘中にも感じられたあまりのユウマの様子が気になった為、丁度、ユウマの代わりに礼を言ってきたホシヒメから話を聞いていたのだ。

 

 

「…はい。今のユウマに、なんて声をかけて良いかも分からなくて」

 

 

身体を丸めて震えているユウマの姿を切なげに見つめながら話すホシホメ。ここ最近、付きっ切りでずっとユウマを看ていたのだろう。どことなく彼女もやつれた様子だった。更に拍車をかけるかのように、このような状態で家の中も肌にじっとりと絡みつくような陰鬱な雰囲気で満ちていたのだ。

 

まさに負のスパイラルと言えるだろう。そんな家にインターフォンの音が響き渡る。当然、ユウマは満足に応対も出来ない為、ホシヒメが向かっていく。

 

・・・

 

 

「ユウマ…。その、さ。僕はユウマに会えて感謝してるんだ。それはきっとヒメも」

 

 

ホシヒメが来客に応対するなか、静けさが支配するユウマの私室でミカヅキがポツリと木霊するようにユウマに話しかけていた。

 

 

「いきなりごめん…。でも、この際だから伝えたいなって思ったんだ」

 

「…」

 

「僕は知っての通り、人間の都合でこの場所まで連れてこられた。うるさくて、でも不安で…何より許せなくて…。だから暴れようとしてた。そんな時だよ、ゼノンに…。ユウマに出会えたのは」

 

 

突然、話された出会えたことに関する感謝の言葉。彼女に背を向け、返事はしないものの黙って聞いている彼に向かってミカヅキは自身が生活していた島から人間の生活圏まで麻酔で連れてこられたあの日のことを思い出す。

 

 

「最初はただコイツも僕の邪魔をするんだって思ってた。でも、違った。戦いはしたけど、ゼノンは、ユウマは僕を故郷に連れ帰ってくれた。それだけじゃない。傷も治して、僕を撫でてくれたんだ。凄く温かかったよ。優しくて、心も身体も…。受けた傷が癒えていくようだった」

 

 

初めて明かされるミカヅキの…いや、ゴモラの胸の内。それは人間による理不尽に晒されながらでも出会えた…いや、感じることが出来た温もりに関してだ。

 

 

「辛いことがいっぱいあったけど、でもユウマに会えたから僕は沢山の温もりと出会うことが出来た。きっとそれは…あの島に一人っきりでいたら出会えなかった…。全部…ユウマのお陰だよ」

 

「…っ」

 

「だからね…。何があろうと僕はずっとユウマの傍にいる。ユウマがしてくれたように、僕がユウマの温もりになって…ユウマが立ち止まっているなら、その手を引いてあげたいから」

 

 

ミカヅキは背を向けるユウマに回り込むと、優しげに笑いかけながら彼の手を取る。ユウマに出会えたから、ベムスター(ホシヒメ)ガッツ星人(ミコ)など多くの人々と知り合うことが、温もりを感じることが出来たのだ。この温もりを、幸せな日々を教えてくれたユウマには感謝しても仕切れない。だからこそユウマが前に進めないのなら、接戦して自分が寄り添いたいのだ。

 

 

「──HEY!ユウマ、いますカー!?」

 

 

ミカヅキによって齎された温かな空間は握った手を通じて、心を閉ざしたユウマの心に温もりを与えてくれるかのようだ。そんな彼の私室に更なる拍車をかけるかのように飛び込んできた者達がいた。

 

 

「み、皆さん…」

 

「あぁ、こんなに痩せこけてしまってたなんて…」

 

 

そこには金剛をはじめとした艦娘達の姿があったのだ。ユウマが身体を起こして驚いているのも束の間、痩せこけた彼のあまりに見すぼらしい姿を見た艦娘達は途端に駆け寄り、榛名などが痛々しそうにユウマのこけた頬に触れる。

 

 

「なにか食事を…」

 

「でも何が食べられるんでしょうか…。なにかリクエストはありますか?」

 

 

見かねて、赤城がユウマに何か食事をとらせようとするが、一体、今の彼に何が食べられるのだろうか、と翔鶴がユウマに問いかける。

 

 

「食物が喉を通らないのであれば、点滴はどう…?」

 

「ジョウまで…」

 

 

艦娘達の中にはジョウの姿もあった。ユウマの健康状態を省みて、今、彼に何が最も適しているのかを模索する彼女に、わざわざ彼女もここまで来てくれたことに驚いていると…。

 

 

「私もいます」

 

「っ!?」

 

 

涼やかな声と共に背後に突然、人の気配を感じる。ドキリと振り返ってみれば、そこにはミコが口にしていたゼットンであった少女・エアがいたのだ。

 

 

「どうして…ここに…?」

 

「──分かりきっていることだろう?」

 

 

今、このユウマの私室には溢れんばかりの人で満たされている。こんなことは始めてであり、あまりの状況にユウマが戸惑っていると、ふと声をかけられる。声に導かれるように視線を向ければ、部屋の入り口にはマツミズの姿があった。

 

 

「伯父さん…」

 

「皆、お前を想ったからこそ、ここにいるんだ」

 

 

ユウマが驚いているなか、ゆっくりとした足取りで彼のもとに歩み寄ったマツミズはそのままユウマの目線に合わせて、腰を落とすと厳粛な表情でジッと彼の瞳を見据える。

 

 

「勿論、私もな」

 

 

ふわりとマツミズの口角が上がる。それはどこまでも優しく、日向にいるかのような温かな笑顔だったのだ。

 

 

「私達は復興作業を少しでも手伝おうと町に来ていてね。戦闘があった場所は瓦礫の山だったよ。とても昨日まで穏やかな営みがあったとは思えないほどにね」

 

 

ウルトラマンと怪獣の戦いはまさに地を揺らすほどの激闘であった。だがそれは同時にそれだけの被害もあったということだ。ここに来たのは、瓦礫の除去など復興作業に努めていたその合間なのだろう。

 

 

「だが、町はいつか元に戻る。停滞しない限りはね。だが人の心は元通り、というのはその限りではない。心の傷は見えないから、それがどれ程のものなのか正確には分からないからね。下手をしたらずっと痛みを抱え続けることになるかもしれない」

 

 

今でも業者が懸命に作業をしていることだろう。それが続けば、かつてと同じ生活には戻れることだろう。だが、心に傷を受けたユウマのような人間はどうなのだろう。

 

 

「だからこそ寄り添って支えなくちゃいけないんだ。元通りにはなれない。だが、その心の傷を乗り越えた時、誰だって強くなれる」

 

 

包み込むようにマツミズはユウマの頭を撫でる。撫でられた手から伝わるその温かさにユウマは感極まったように身体を震わせる。

 

 

「なぜなら、その心にこそ人の一番、大切な強さが宿っているのだから」

 

 

ユウマを撫でながら、マツミズは片腕を彼の肩に回して、ふわりと抱き寄せる。それはまさに、ユウマは一人ではないと、自分達も寄り添うんだと示すように。

 

ウミカを目の前で失ったのはマツミズも同じだ。それどころか、かつて宇宙飛行士として行方不明になってしまった彼女をまた失ったという喪失感をもう一度、味わっているのだ。にも関わらず、マツミズはこうやって寄り添ってくれる。マツミズだけではない。この場には多くの艦娘達や怪獣娘達が自分のためにいてくれるのだ。

 

それが嬉しくて、何より温かくて、知らないうちにあふれ出た温かな涙がユウマの頬を撫でる。そんな温かな陽だまりのような空間を遠巻きに見ていたリクは自分の仲間達とその居場所をふと重ねるのであった。

 

 

・・・

 

 

「──まさか噂に名高いベリアルの子が現れるとは」

 

 

一方、不気味なほどの静けさを見せる宇宙人連盟の宇宙船ではジードとタイラントの戦闘を立体映像として、この先頭で測定したジードのデータを照らし合わせながら、ババルウ星人は厄介ごとが舞い込んできたとばかりに肩を竦める。

 

 

「テンペラー、貴様の責任だぞ。ゼノンだけなら放置しても問題ないが、ベリアルの子となれば話は別だ。下手をすれば、我々の計画は破綻する」

 

「フンッ、奴一人に全てが破綻するのであればそれまでであろうよ。ゼノンと戦うのであれば、光の国を敵に回すのと同じこと。またウルトラマンマックスが…いや下手をすれば、ウルトラ兄弟だって現れかねん。我々はそういう戦いをしているのだ。今更、なにを臆する」

 

 

非難するように鋭い視線を突きつけるヒッポリト星人だが、そんな視線もまるでそよ風を浴びるかのように軽く流したテンペラー星人は小馬鹿にするように鼻で笑う。

 

 

「寧ろ好都合だろう。奴がいれば思う存分、力を震えるというものよ」

 

 

テンペラー星人は映像を切り替える。そこにはドックのような空間が広がっており、その中心にはジードと交戦したタイラントが…いや、違う。

 

それをあのタイラントと言うには、あまりにもその外見は狂暴過ぎた。まずはゼノンの身長を遥かに上回るであろう巨大なケンタウロスのような体つきになっていたのだ。よく見れば、その後ろ足はゴモラの足にも見え、更なる怪獣の要素を取り込んだ結果、全体的に暴君の名が生易しく聞こえるほどのタイラントがそこにいたのだ。

 

そんなタイラントの姿を見て、まるで一級の芸術作品を見ているかのように恍惚に呟いたテンペラー星人は、このタイラントを早く目覚めさせたいと戦いの時を待つのであった。






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