ウルトラマンゼノン ウルトラの奇跡   作:ウルトラゼロNEO
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絆∞Infinity part2

作業着に身を包み、町の復興作業に勤しむ作業員達。その中には艦娘達の姿もあり、正規空母であり、クールな雰囲気を持つ加賀が作業員達を纏める現場監督と打ち合わせを行っていた。

 

 

「うあぁー、疲れたーっ!!」

 

 

ふと遠巻きに声が聞こえて、加賀達が視線を向ければ、そこには顔中に汗を流したミコが地面に寝そべっていた。彼女もまた復興作業の手伝いに駆りだされたようだが限界が来ているらしい。

 

 

「…なにをしているのかしら。見っともない」

 

「もう働きたくないーっ!分身して働いてもお給料は一人分って、これもうブラック案件だよねっ!?」

 

 

周囲の目もある為、見かねた加賀が窘めようとするが、ミコの不満は頂点に来ているようで、まるで駄々っ子のようにバタバタと暴れている。

 

 

「私もユウ君のところに行ーきーたーいー!」

 

「──そう思っているのは、アナタだけではないわ」

 

 

以前、分身を使って、仕事をサボってユウマ達の下で遊んでいたことが発覚して以降、ミコへの監視の目は厳しい。自業自得と言えばソレまでだが、言動とは裏腹にミコもユウマを心から案じているのだ。しかしそれは別にミコに限った話ではない。声をかけられ、身を起こせば、そこには同じくこの場に訪れていた矢矧であった。

 

 

「ユウマは私達にとって希望のような存在よ」

 

 

きっとユウマに想いを馳せているのだろう。優しく目を細めている矢矧の姿をミコはジッと見つめる。確かにゼノンであるユウマは人類の希望と言えなくはないだろう。しかし矢矧の様子からユウマがゼノンであることを気付いているようには見えない。

 

 

「私達は知っての通り、艦船が人の身を手に入れた存在よ。所謂、艦娘となった当初は人間性のようなものは希薄だった。精々かつて自分に乗っていた人々など艦船だった時の記憶で人間の振る舞いを真似する程度だったわ」

 

「そりゃまあ私達は兎も角、兵器が人に近い存在になったからって、はいそうですかって人間らしくは出来ないよね」

 

「ええ。でもやっぱり変われるものね。艦娘として生きていくうちに様々な人に出会って…私達なりの価値観を手に入れることが出来た。提督達は勿論、特にここにいる私達にはユウマの存在は大きかったわ」

 

 

自身の掌を見つめながら、己の存在を確かめるかのようにギュっと手を握る矢矧。きっとその心中には艦娘としての生を受けた時の記憶が巡っているのだろう。ミコの言葉に頷きながら、ユウマとの出会いを思い出す。

 

 

「私達はね。ユウマを幼い頃から知っているの。それこそ提督がユウマを引き取った時からね。小さくて触れれば壊れてしまいそうなほど繊細で…。でも、そんなあの子の笑顔を見た時、改めて感じたのよ。私達はこんな笑顔を、輝かしい未来を守る為に生まれてきたんだって」

 

 

両親を失い、マツミズに引き取られたばかりのユウマはまだ小さく、艦娘達もその接し方はまさに手探りだった。だが、幼い子供であったユウマと接していくうちに芽生えていく想いがあったのだ。それは兵器として生まれたからこそ感じたことなのかもしれない。

 

 

「それを教えてくれたユウマは希望なの。だからこそあの子のことはどうしても気になってしまうのよね」

 

「希望…」

 

「ええ。希望だからこそ…あの子には暗がりに囚われて欲しくないのよ」

 

 

ユウマが今、精神が限界を来たしていることは知っている。幼い頃から知り、未来を感じさせてくれた彼には前を向いて欲しい。そう思っているのは矢矧だけではないのだろう。ミコも加賀もユウマに想いを馳せるのであった。

 

・・・

 

一方でその数時間後、夕暮れの公園にユウマがいた。ギリギリまでその場にいたが、一度、鎮守府に戻る都合もあったマツミズ達と別れた後、ユウマは一人で考えたいと今、この場に訪れたのだ。

 

 

「母さん…」

 

 

ユウマはベンチに深く腰掛けながら、頭を垂れたように視線を落としている。その頭の中にはウミカのことが。だがそれだけではない。自分のために寄り添おうとしてくれたマツミズ達の姿が思い出される。

 

皆、自分のために来てくれたのだと言うのは痛いほど分かった。お陰でウミカを失ったことで齎された深い傷が温かく癒されていくかのようだった。

 

同時にいつまでもマツミズ達やミカヅキ達に迷惑をかけられないと言うのも分かる。だからこそウミカの一件に踏ん切りをつけなくてはいけないのだ。

 

 

「──随分と辛気臭い顔だ」

 

 

ふと背後からユウマの耳に涼しげな声が届き、振り返ってみれば、そこにはアネーロの一件で出会ったフィスの姿があった。

 

 

「君は…」

 

「ちょっと君に耳寄りな情報を持ってきたんだよ」

 

 

かつて一触即発の空気があったにも関わらず、まるでそんなことがなかったかのように「やぁ」と二本指を軽く振りながらウインクしてきたフィスに驚いているが、そんなことお構いなしにフィスは自分のペースで話を進める。

 

 

「実は宇宙人連盟が動き出してね。今日の深夜辺りにまたこの町に現れるよ」

 

「どこでそれを…」

 

「一度死んでるせいかな?地獄耳なんだよ」、

 

 

僅かに身構えているユウマを他所に何とフィスは宇宙人連盟の情報を口にする。情報その物は驚きではあるが、何故、そんな情報を手に入れたのか?そのことを問いかけられても、飄々とはぐらかされてしまう。

 

 

「でも…今の俺より…リクさんに言った方が…」

 

「ウルトラマンジード…。流石の私もこの世界に彼が現れたときは驚いたよ。だがね、私は彼よりも君に守ってもらいたいんだ」

 

 

しかし不安定な精神状態を加味したとしても、タイラントに手も足も出なかった自分がまともに戦えるとは思えない。リクことジードのことはフィスも知っているのだろう。言葉とは裏腹にくつくつと愉快そうに笑うと、ユウマの隣に座る。

 

 

「君は私に自分を文明を監視し生命の未来を救う為に戦う存在だって言ってたよね?それは嘘だったのかな」

 

「それは…」

 

「ウルトラマンジードは所詮、別宇宙の存在だが君は違う。私はね、ウルトラマンでありながら、この世界に生きる君にこの世界の未来を救って欲しいんだ」

 

 

かつてフィスに堂々と口にしたあの言葉。その時の言葉に嘘偽りはない。視線を彷徨わせるユウマにフィスはジッと彼の瞳を見据えながら話す。

 

 

「だが、もしも戦えないというのなら私に地球をくれないかな?私にたった一言、【地球をあげます】と言ってくれれば、私も自分の大切な所有物を守る為に重い腰を上げるけど」

 

「誰がそんなことッ!」

 

 

フィスの口角はゆっくりと上がる。それはまるで人を惑わす悪魔の笑みだ。しかしすぐさまその言葉をユウマは跳ね除ける。

 

 

「それでこそだ。そうでなければ未来なんて救えはしない。君も完全に腐ったわけじゃないようだね」

 

「っ…」

 

「期待しているよ。君が未来を掴むその姿をね」

 

 

反射的にフィスの提案を蹴ったユウマにその反応を待っていたとばかりにフィスは笑う。完全に彼女にペースを掴まれて乗せられてしまった。僅かに顔を顰めるユウマの耳元でそっと囁くと、またかつてのように突然、消え去ってしまう。

 

 

「…」

 

 

もしかしてあれは彼女なりの激励なのだろうか。だが、そう考えるのは、都合が良すぎるのかもしれない。だがどちらにせよ、宇宙人連盟の話が本当なら見過ごすわけには行かない。

 

 

「──ユウマっ!」

 

 

果たして、今の自分に戦えるのか。今は兎に角、海を見ることも怖いと言うのに。考えれば考えるほど震える身体を抱いていると、ふと呼び声が聞こえる。見てみれば、こちらに手を振りながら向かってくるリクの姿が。

 

 

「リクさん…なにかあったんですか?」

 

「あぁっ、いやそういうわけじゃないんだけど…。ユウマが気になって」

 

 

その様子から自分を探していたようだ。どうしたのだろうかと思ったが、どうやら自分を心配して探しに来てくれたようだ。一先ずリクはユウマの隣に座るが、会話らしい会話がない為、痛々しい沈黙な空気で満ちる。

 

 

「そ、そう言えばさ。あのジョウって女の子、どこか覚えがあるって言うか…」

 

「ジョウを知ってるんですか?」

 

「あっ、いや…僕の仲間に似てるって言うかね」

 

 

沈黙に耐えかねたリクは話題を振り絞って話し始める。ユウマはまさかジョウの何かを知っているのかと問いつめるのだが、別にそういうわけではないらしくリクの仲間に似た雰囲気の存在がいるらしい。

 

 

「…リクさんの仲間ってどんな人達ですか?」

 

「うん?あー…個性派揃い…かな。自他共に厳しい…と思いきや、ちょっと自分に甘いお姉さんみたいな子とかたまに仕事をサボりにくるサラリーマンとか。喧嘩しちゃうこともしょっちゅうあるよ」

 

 

リクの仲間とは一体、どのような人物達なのだろうか。何気なく尋ねてみれば、リクは自分の仲間達の人物像を思い浮かべながら話す。その他にも長い付き合いになる宇宙人の友達や自分達の住処のAI、幼い頃に引き取ってもらった家のお姉さんとその上司などの聞いてるだけで会って見たくなるような話が聞けた。

 

 

「…昔さ、ある人に言われたことがあるんだ」

 

 

仲間達の話をするリクは本当に楽しそうで、輝いて見えた。ひとしきり仲間達の話を終えたリクはふと懐かしむように表情を変える。一体、なにを言われたのかとユウマが続きを待っていると…。

 

 

「支え合う仲間達の笑顔が僕の力なんだって」

 

「仲間達の…笑顔…」

 

 

かつて常夏の楽園を舞台に知的生命体排除を掲げた人工知能との戦いで出会った母親のような女性。彼女が死に際に残した言葉がリクの胸の中に深く刻み込まれているのだとすぐに分かった。

 

 

「…お母さんのことは残念だったね」

 

「…っ」

 

「でも、例えお母さんはいなくても、その想いをユウマはきっと分かっているはずでしょ」

 

 

ウミカに関することを口にした瞬間、それだけでユウマの身体が震えるなか、リクは目を逸らしてはいけないとばかりにユウマの肩を掴み、向き直らせると、その目を見て話す。

 

 

「親の想いを分かってあげられるのは…きっと…その子供だけだから」

 

 

どこか悲しげに話すリク。彼自身、親に関することで何かあり、そしてその想いを理解したのだろう。リクの様子から見ても、壮絶な出来事があったに違いない。

 

 

『心が挫けそうになって…躓いても…。それでも過去を越えて前だけを向いて…明るい未来に…進んでね…。それが…私の願い…』

 

 

そして思い出す母の言葉。あの時、抱きしめられた時に感じた温かさは何より本物だった。母が自ら命を落としたのは、自分に親をその手にかけたという今より重い十字架を背負わせないため。ウミカは自分という過去に囚われず、未来に進むことを望んでいたのだ。

 

 

「僕が僕らしくいるためにも…誰の笑顔も曇らせたくない」

 

「リクさん…」

 

「だからこそ…僕はユウマの笑顔も取り戻したいんだ」

 

 

ユウマの目尻から涙が止め処なく溢れ、ポタポタと落ちるなか、リクは肩をしっかりと掴みながら、ユウマの気持ちを奮わせるように話すと…。 

 

 

「Here we go」

 

 

優しく、それでいて温かな笑顔を見せながら、ちょんとユウマに拳を突き出したのだ。

 

 

(仲間達の笑顔…)

 

 

先ほどのリクの言葉を思い出す。マツミズ達やミカヅキ達…自分にはかけがえのない存在が、仲間がいる。リクが口にした仲間達の笑顔が力になると言うのも理解できる。そしてだからこそ、守りたいという想いも。

 

 

「俺は皆と明るい未来へ進みたい…。それがきっと母さんの願いだから…っ!!」

 

 

ユウマの表情に生気が宿る。それはまさに失った光を取り戻したかのように。それはユウマが打ち合わせた拳からも伝わったのだろう。リクも満足そうに微笑む。

 

 

「リクさん、お話があります!」

 

 

どん底から再び立ち上がったユウマ。もう俯くわけにはいかない。何よりフィスの話が本当ならば時間がないのだから。

 

・・・

 

 

どこまでも吸い込まれていきそうなほど、漆黒のような青い空の下、それは突然、現れた。

 

 

「グゥアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーァアアアアッッッ!!!!!!」

 

 

平穏を打ち壊し、空を裂くような方向が響き渡る。町に程近い海上に現れたその怪獣はタイラントではありながらも今まで現れた怪獣の比にならないほどの巨大なケンタウロスのような体格を持っていたのだ。

 

 

「あれが…ユウマが話していた」

 

「はい…。まさか本当に現れるなんて」

 

 

それをリクとユウマが見ていた。あの後、フィスから齎された情報で警戒はしていたが、リクですらあれ程の巨躯を持つ相手は数える程度しか知らない。しかし現れた巨大タイラントこそテンペラー星人が今か今かと待ち望んだ改造されたタイラントであり、それはゆっくりと町に迫っていたのだ。

 

 

「ユウマ…」

 

 

町に警報が鳴り響くなか、ユウマを案じたミカヅキとホシヒメが後ろから声をかけてきた。二人ともユウマを案じているのはすぐに分かった。

 

 

「二人とも…今まで迷惑をかけて本当にごめん…。だけど今は安全なところに避難して欲しい」

 

「でも戦えるの…?」

 

 

二人には大きな迷惑をかけた。そのことについて謝っても謝りきれないが、今はソレよりも安全な場所へ逃げて欲しい。しかしミカヅキ達の心配はユウマにあるのだ。彼が戦えるのか。それだけが心配だった。

 

 

「…戦うよ。みんなの未来のためにも」

 

 

スッと目を閉じたユウマはその脳裏に仲間達の笑顔を思い浮かべる。それは勿論、目の前の二人の笑顔もだ。だからこそユウマは負けるわけにはいかない。目を開き、しかと目を見て話すユウマの姿に頷いたミカヅキ達は信じてるから、とこの場を後にする。

 

 

「ゼノン…。未来を掴む為にもアナタの力を貸して欲しい」

 

 

いよいよ戦いの時が訪れた。ユウマはギャラクシーブレスにそっと話しかける。今まさに未来が脅かされようとしている。だからこそ彼の力が必要なのだ。そんなユウマの言葉に言葉はなくとも、呼応するようにギャラクシーブレスレットのクリスタルは輝きを放つ。

 

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇッ!」

 

 

リクは変身アイテムであるジードライザーを構えると、ウルトラマンとベリアルのカプセルを起動させ、スキャンすると、ユウマと頷きあい…。

 

 

 

「ゼノオオオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーンッッッッ!!!!!!!」

 

 

 

「ジイイイイィィィィィィィィィィィーーーーーーーーードオオオォッッ!!!!!」

 

 

 

 

二人は同時に大地を蹴って、未来を掴もうとするかのように手を突き出す。すると二人の身体は輝きと共に光の戦士となって、飛び立っていく。

 

 

 

改造タイラントが海上から町にゆっくりと迫るなか、ふと足を止める。すると同時に改造タイラントに立ちふさがるかのように二人のウルトラマンが水飛沫を上げながら降り立ったのだ。

 

 

「母さん…俺は未来に進む…。だから見ててくれッ!!」

 

 

改造タイラントはまさに未来を阻もうとする敵。だからこそ負けるわけにはいかない。ユウマはこの海で散ったウミカを想いながら、ゼノンとしてジードと共に立ち向かうのであった…。




改造タイラントはゴモラ同様、FERをイメージしていただけると幸いです。







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