ウルトラマンゼノン ウルトラの奇跡   作:ウルトラゼロNEO
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ヒーローの条件 part2

 

 

「聞いてる?」

 

「えっ!?あっ…そのっ…! ヒ、ヒーローを…自分で考えたヒーローを描いてました…」

 

 

声をかけてきた女性に見惚れて声が出なかった。話しかけたにも関わらず返事もしないジュンヤに怪訝そうな顔で再び話しかける女性にジュンヤは慌てて答えるが、すぐに、しまったと思った。

 

───きっとこの人も僕を笑うんだ。

 

ヒーローが好きなだけならまだしも、自分だけのヒーローを一人で夢中になって描いてたなんて言えば、クラスメイト達のように自分を笑うだろう。ジュンヤはそう考えたのだ。

 

 

「へー…強そうだね、格好良いよ」

 

 

しかしジュンヤが想像していたリアクションとは違った反応が返ってきた。女性は自由帳を覗き込んで、関心したような声を漏らす。

 

 

「あっ…あの…貴方は僕を笑わないんですか…?」

 

「笑われたいの?」

 

 

今までの人間達の反応とは違った反応を示す女性。クラスメイトも、親でさえいい加減、特撮ヒーローなんて卒業したら、なんて笑うのに目の前の女性はまったく違う。その事に思わず尋ねると変な質問に女性はどこか引き気味に答える。

 

 

「いやっ…あの…今までこんな風にヒーロー描いたり、ヒーローの大ファンだって知られたら、皆笑ったから…恥ずかしいことなんだと思ってて…」

 

「別に構わないと思うけど。笑おうとも思わないし何かを好きである事を恥ずかしいとも思う必要もないんじゃないかな」

 

 

変な風に取られてしまった。慌てて質問の意味を説明すると女性は不思議そうに首を少し傾げながらジュンヤの隣に座って己の考えを口にすると、そうだ、恥ずかしがる必要なんてないんだとジュンヤは笑顔を浮かべる。

 

 

「ねぇ、それはどんなヒーローなの?」

 

「あっ…その…アネーロって言うヒーローで…ヒーローだから悪い奴は絶対に倒すんです」

 

 

女性はジュンヤの隣に座り、優しげな笑顔を浮かべ自由帳に描かれたヒーローについて聞いてくる。ただでさえその顔立ちは見惚れるくらい美しいのにその笑顔、淑女のような女性に鼓動が早くなり顔を赤らめながらもジュンヤは説明をする。

 

 

「絶対に、ね…。面白いよ、君もそのヒーローも…。そんな君にプレゼントをあげるよ」

 

 

ジュンヤの説明に一瞬ではあるが鋭く目を細めた女性は再び笑顔を作り、どこからともなく現した青い宝石を取り出しジュンヤに手渡す。美しい。純粋にそう思った。こんな物は受け取れないと女性を見るが…。

 

 

「頭にアネーロを思い浮かべてこう念じてみて。"アネーロ、僕だけに姿を見せて”」

 

 

女性は意に介さずジュンヤに指示をする。意味が分からない、ジュンヤはそう思いながら女性に言われた通り、宝石をギュッと持ち、目を閉じて念じてみる。

 

 

【…】

 

「わっ!?」

 

 

ふと目を開けてみる。そして驚く。目の前には巨大な足が。見上げてみるとそこには自分が描いたヒーロー・アネーロが自分を見下ろしていたのだ。驚いて宝石を落とすとアネーロは姿を消す。

 

 

「見えた?…これは君に預けるよ。今は色々と物騒だからね。もし怪獣とかが現れた時は、その宝石に念じればアネーロが助けてくれるよ。そう、あのウルトラマンのようにね」

 

 

ジュンヤの反応にどこか含みのある笑みを浮かべた女性は落ちた宝石を拾い、再びジュンヤの手の平に置いて握らせると立ち上がって背を向けて歩き出す。

 

 

「お、お姉さん!また…会える…?名前とか…」

 

「名前…?布良(めら)フィス…って名乗ってるよ。また会えるよ。ばいばい」

 

 

立ち上がって女性の背中に向かって声をかける。これで最後にしたくない、出来ればまた会いたい、話したい。そう思ったのだ。女性は己の名前を名乗り、背を向けたまま表情を見せずにそのまま去っていく。

 

 

「…ヒーロー…か」

 

 

女性の言葉を思い出しながら、手の平の宝石を見る。紙の上の存在だった自分だけのヒーローがその姿を現したのだ。自分だけと念じたが、その気になれば大衆の前で姿を見せられるし、怪獣などとも戦えるかもしれない。自分だけのヒーローではなく、皆のヒーローになれるのだ。いや、寧ろ今のジュンヤは自分がヒーローになったような気分だった。

 

・・・

 

 

「ただいま」

 

「お帰りなさい…って、えぇっ!!?」

 

 

翌日の日曜日、11時頃にマツミズが帰ってきた。マツミズの声が聞こえた為、ユウマが玄関先で出迎えるがマツミズと一緒にいる存在に気づき驚く。そこには昨日の少女や赤城や金剛を始めとしたポニーテールと意志の強そうなツリ目が印象的な阿賀野型の艦娘である矢矧などの艦娘達がマツミズと共に外見年齢に相応しい服装で立っていた。

 

 

「なんで、皆さんが…?」

 

「本当はいけないことなんだけどね。赤城と金剛の復帰を祝って非番だったから誘ったんだ。この先の未来、彼女達の進む道に少しでも刺激になればいいと思ってね。矢矧も同じく非番だったんだけど興味があったみたいで一緒に来てくれたんだ」

 

 

艦娘達が鎮守府以外の大地に立っているのを見たのがこれが初めてだ。思わずマツミズに問いかけるとマツミズは艦娘達三人を見て、まるで父親のような目だ。

 

 

「でも、そんなことしたら他の人達だって…」

 

「勿論、今回、彼女達と予定が合ったから一緒に出かけたが、他の者達も私と予定が合って当人の意思があれば、これからも内密に外の世界に連れて行こうとは思っている。艦娘達も何れは世間に公表される。そうなれば少しぐらい自由行動の幅も広がる。それまでの辛抱さ。他の娘達にもちゃんと説明はしたよ」

 

 

他の艦娘達に贔屓されていると思われるのではと心配するユウマにマツミズは優しく答える。流石に完全に世間に公表されていない今の状況で彼女達を自由に外の世界に行かせるのはまずいと思ったのか監視という名目ではあるが行動は共にするという事だ。

 

だがそれも艦娘の存在が国民に説明されればそれもなくなる。好きに外の世界を散策出来ると言う訳ではないが住民達ともトラブルさえなければ許可があればこの町を自由に行動することくらいは出来るだろう。その後、立ち話もなんだという事で居間に場所を移す。

 

・・・

 

 

「矢矧さん久しぶりですね」

 

「ええ、ユウマも元気そうでなによりよ」

 

 

居間に場所を移し、それぞれ上着などを自分の傍に置きマツミズの勧めでコタツに座るなかユウマは矢矧に声をかける。彼女と会うのは何週間ぶりだろうか。一応、鎮守府でバイト紛いのことはやっているがそれでも時間が合わない艦娘達などはいる。久しぶりの再会に矢矧も微笑を浮かべる。

 

 

「ところで結局、この人は…?」

 

「…この国のことを調べたけど恩返しという言葉がある…。貴方には恩がある。それを返す為に来た…」

 

 

向かい合う形でコタツに座るユウマと昨日の少女。先程からジッとこちらを見てくる少女に少したじろぎながらマツミズに聞こうとすると、答えようとするマツミズよりも先に少女が答える。

 

 

「そういうことらしい。まぁ少なくとも害意はないしソーフィ達も許可したから連れて来たんだ。キングジョーと言う名前だったらしいけど、長いから…」

 

「ジョウ…。そう呼ばれることになった」

 

 

少し補足をするマツミズは少女の名前を言おうとするも、これもまた少女ことジョウが先に答える。

 

 

「ところでお昼なんだけど…今日はなににしようか」

 

「叔父さんが好きな鍋にしようかと思ったんだけど…流石に材料が足りないかな…」

 

 

腹部を撫でながらユウマに昼食の献立を問いかけるマツミズ。時間は11時を過ぎた。少し空腹感を感じる。前日にマツミズが帰ってくることをソーフィから聞いていたので予めマツミズの好きな鍋の材料は買ってはいたのだが予期せぬ来客達の分は買ってはいないため、困ったような表情を浮かべる。その後、全員で今から買いに行くことが決定した。

 

・・・

 

 

「はぁっ…はぁっ…」

 

 

商店街の人ごみを避けながらハンドバックを持ったジュンヤ少年が走っている。この先にあの公園がある。そこにいけばフィスに会えるかもしれない。昨日、フィスと別れた後、アネーロのパワーアップ案を考えたのだ。それを真っ先にフィスに見せたかった。

 

 

「うあっ!?」

 

「──おっ!?」

 

 

曲がり角を曲がろうと瞬間、出会い頭に誰かにぶつかってしまった。相手は自分よりも年上の人間だったのか尻餅をつき、ハンドバック内の自由帳などが地面に散乱してしまう。ぶつかった相手はユウマだった。その周りにはマツミズ達がいる。

 

 

「なにやってるんだ、ユウマ」

 

「ごめん…。君もごめんね、大丈夫?」

 

「はい、ごめんなさい…」

 

 

ユウマを注意しながらこちらに向かってくるマツミズは地面に散乱しているジュンヤの所有物を拾うためにしゃがんでいた。ユウマもジュンヤに謝りながら彼を起き上がらせ、尻の埃を手で払いながら問いかけると、ジュンヤは頷き、自分も謝罪をする。

 

 

 

 

「…ん?これは…今やってるヒーローかなにかかな?」

 

 

謝るジュンヤとユウマに頷きながら自分も落ちたジュンヤの私物を拾うのを参加し出した赤城達に倣って拾い始めると、マツミズがジュンヤの自由帳を拾い、開かれたページを描かれたアネーロを見て、近くのユウマに訪ねると、流石にヒーローなどに詳しくないのかユウマは首を傾げる。

 

 

「あっ!あの…ありがとうございました…!」

 

「あぁっすまない。君も気をつけるんだよ」

 

 

アネーロが描かれたページを見られたことに引っ手繰るように自由帳をマツミズから取ると、全ての所有物を確認しユウマ達に頭を下げるとそのまま走っていく。開かれていたとはいえ勝手に自由帳を見たことにマツミズは謝りながらもジュンヤに声をかけるとジュンヤはこちらに向かって小さく会釈をしながら走り去っていくのだった…。

 

・・・

 

 

「…っ!?」

 

 

あれから数分、昨日の公園にやって来たジュンヤ。公園に入った瞬間、苦々しい表情を浮かべる。それはフィスがその場にいなかったことに対することではない。会いたくない人物がいたからだ。

 

 

「あれお前、ヒーロー好きな奴じゃん。今日も朝やってたけど見てきたのかー?」

 

 

そこには他のクラスの者達に笑われた原因ともなったクラスメイトがいた。確か名前はカケルと言ったか。彼はクラスから人気がある存在だ。その証拠に友達が数名、一緒にいた。カケルもジュンヤに気づくと何気なく声をかける。しかし周りの友人達がそれがからかいに聞こえたのかゲラゲラと笑い、ジュンヤはピクリと反応する。

 

 

「ッ!!」

 

「あっ…」

 

 

別にカケルに悪意がある訳じゃない。カケルのジュンヤに対する印象はヒーロー好きなクラスメイトだ。だがカケルの言葉が周囲の彼の友人達はからかいに聞こえたのか自分もと言わんばかりにジュンヤのことをからかい笑い始める。それがジュンヤの怒りを買ったのか、悔しそうな顔を浮かべたジュンヤはカケル達に背を向け走り出し、カケルはその顔を見てなにか思うことがあったのか引き止めようとするが、思いのほかジュンヤの足は速くもう声が届かない。

 

・・・

 

 

「あいつ…あいつ等…また笑った…僕のこと…!」

 

 

カケル達から然程離れていないが人気のないところに入ったジュンヤは悔しそうに顔を歪ませる。笑われたのが許せないのだ。昨日、フィスから好きなことが恥ずかしいとは思わないと言われた。だからこそ悔しかった。好きで何が悪いと言いたかった。しかし気弱な自分は数名いるクラスメイト達にはなにも言うことは出来なかった。

 

 

「人の好きなことを笑うなんて…あいつ等は悪い奴だ!あんな奴ら…だいっ嫌いだ!!」

 

 

自分の中で怒りがあふれ出す。ポケットにはフィスから貰ったあの宝石がある。完全に怒りに支配されているジュンヤはポケットから宝石を取り出し、自分が思い描いたヒーローの存在を願う。

 

・・・

 

 

「──What!?」

 

 

商店街で買い物をしていたユウマ達は突然、現れた巨人…アネーロの存在に驚く。一番に金剛が声を上げて驚いていた。

 

 

「あれも…ウルトラマン…なのでしょうか…?」

 

 

まるで特撮ヒーロー番組に出ても不思議ではないようなトリコロールカラーのヒーロー然とした姿にウルトラマンの同族かと赤城は誰に問いかける訳でもなく呟く。

 

 

(そうなのか?)

 

【違う。しかし何か嫌な予感がする】

 

 

赤城の呟きを聞き取ったユウマが同化しているゼノンに問いかけると、ゼノンはそれをキッパリと否定する。しかしゼノンの予感は的中することになる。アネーロは公園を歩みを進めるとしゃがんで、カケル少年達を全員纏めてその手に掴んだのだ。

 

 

「ッ!」

 

「あれは…さっきの少年の絵に似てるな…ってユウマ!?」

 

 

それはゼノンと同化している視力が強化されているユウマの目に映っていた。嫌な予感がする。すぐさま持っていた荷物を矢矧達に押し付けると走り出す。アネーロの姿を見て先程のジュンヤの絵を思い出すマツミズだったが、アネーロに向かって走り出したユウマに自分もそして赤城達も追いかけるがユウマの脚力を異常ですぐに見失ってしまった。

 

・・・

 

 

「痛い…っ…痛いよ…っ!!」

 

 

アネーロに掴まれたカケル達はアネーロの両手に包まれながらジワジワと力を込められ苦悶の声を上げる。それはまるで簡単には殺さないと言わんばかりだ。

 

 

「──な…なんで…!?もう良いのに…!?」

 

 

しかしそれは流石にジュンヤの考えではない。少し痛い目をあえば良いと思っていただけで殺そうとまでは思っていなかったのだ。流石にもう良いと感じたのかアネーロに止める様に宝石に願う。しかし幾ら願ってもアネーロは止めない。寧ろまた少しずつ力を込めている。

 

 

「──やってるねぇ」

 

「フィスお姉ちゃん!?」

 

 

そんな自分に聞き覚えのある声が聞こえる。見れば、そこにはフィスの姿が。自分がいる場所がよく分かったなとは思ったが、今はそんな事よりも言わなくちゃいけないことがある。

 

 

「お姉ちゃん、おかしいんだよ!!幾ら願ってもアネーロが言うこと聞かないんだ!」

 

「…あぁっ、それは多分、彼が"ヒーロー”だからだよ」

 

 

このままではカケル達が死んでしまう。怒りに支配され、その場の感情でアネーロに願ったが今の状況を見て、事の重大さを知り我に返ったのだろう。ジュンヤの問いかけに少し考えるような仕草を見せたフィスはゆっくりと答える。その答えにジュンヤは唖然とする。なにを言っているんだろう、と…。

 

 

「"ヒーローは悪い奴は絶対に倒す”…だったよね。だから彼はそれを実行しているんだよ。君の中の”ヒーロー”を実行する為に。君がそう願ったからじゃないのかい?彼らが悪だと。だから彼は止めないよ、"ヒーロー"だからね。何より創造主である君が彼らを悪と決めたんだから」

 

「そんな…僕は…」

 

 

フィスの言葉にジュンヤは両膝をつく。ただ少し痛い目を見れば良いと思った。だがこのままじゃ確実にカケル達は死ぬだろう。その様子を見て、フィスはため息をつく。

 

 

「…止めたいんだったら、願えば良いんじゃない?そういう代物だし…」

 

「なにを…?」

 

「アレを止めたいなら、止められるような存在を願えば良い」

 

 

どこか呆れ気味にフィスは横目でジュンヤに言う。思わず聞き返すジュンヤ。止めろと願った所で止めないのは彼女も知っているはずだ。するとその返答を聞いたジュンヤはゼノンの存在が浮かぶ。

 

・・・

 

 

「ゼノオオオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーンッッッッ!!!!!!!」

 

 

同時刻、アネーロの近くまでやって来たユウマは人がいないことを確認し、拳を突き上げてゼノンの名を叫ぶ。すると突き上げた腕に嵌められたゼノンブレスの宝石が輝き、突き上げた拳からゼノンの姿に変わり、巨大化する。

 

 

「ッ!?」

 

 

アネーロの前を光が通り過ぎる。違和感を感じ、アネーロが握りつつある手を見ると先程まで掴んでいた"悪者達”がいない。もしやと思い、先程の通り過ぎた光の方向を見る。

 

 

「ウルトラマンゼノン…!」

 

 

そこにはゼノンがその場にしゃがんでアネーロの前を通り過ぎた際に奪ったカケル達をゆっくりと地面に降ろし、額のクリスタルの部分に右手を固めカケル達にかざしていた。ゴモラの時に使用した治癒光線だ。傷ついたカケル達の身体が治癒されたことである程度、元気になったのかカケルが自分達を助け、今見下ろしている存在の名前を口にする。

 

 

「ハァッ!」

 

「…」

 

 

アネーロは目の前の巨人を悪と認識する。創造主であるジュンヤが悪と決めた存在を自分から奪い、更には治療までしたのだから。すぐさまヒーローのような臨戦態勢を取るアネーロにゼノンは静かに立ち上がり振り返ると戦う気満々のアネーロを見て自分も構えを取るのだった…。




ということで新たに登場した擬人化キャラ二名に名前がつきました。私はネーミングセンス皆無なので名前も元の名前を並べ替えただけとかそんな感じです。





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