大量大量、肩に背負った金目の物の感触を確かめながら今回の成果を実感する。
「ギュッ」「グエッ」
自称東の海最強なだけあってなかなかの量の金品と人員を蓄えてくれていた。
「ヒギョッ」「ガッ」
そのお陰で金目の物はたくさん見つかったが、死にかけの連中がそこらじゅうに転がりかなり邪魔な障害物となっている。
因みにさっきから煩いのは足を引っ掛けているだけなので悪しからず。
海賊同士の戦闘じゃ無かったのが大きいかもしれない、そのお陰で金目のものには全く手がつけられていなかったか……ら、だ…
今思い出した事がある、原作でクリーク一味がこんな目にあったのは天災でも他の海賊団の所為ではなく、たった一人の人間、鷹の目の所為だった。
そして鷹の目は登場早々クリーク一味のガレオン船をぶった切った様な気がするのは俺の気のせいだろうか?
ちなみに現在の俺はクリーク一味のガレオン船の中であり、乗り込んでからそれなりに時間が経過している……
俺=能力者=カナヅチ=『死』
その時轟音が聞こえた、まるで海を切り裂いている様な音、それがだんだんと此方に近ずいてきている。
俺は絶望と確信を同時に持ち、覚悟を決めた。
海賊になったからには死は覚悟の上。
USSOPさんを甘く見るなよ!
右手を音源の方向に向け悪魔の実の能力を発動させる。
今回鍛つのは剣ではなく、盾。
ただの盾では防御不可能だろう、ならばそれが可能な盾を呼び出せばいい。
心を鍛ち(うち)形を作る。
それは命を持ってこの世界へと顕現する。
俺とカジカジの実に不可能はない。
「I am born of my swordーー|燐天覆う7つの円環【ロー・アイアス】」
俺が創り出したのは4つの花弁を持った光の盾。
本来のこの盾は7つの花弁を持つのだがこれを作るのが非常に難しく完璧に作るのにはかなりの集中が必要だ、今回はとっさの展開の所為で不完全だったようだ。
それでもこの盾は元々トロイア戦争に置いて英雄アイアスが使用したとされる盾である。
一枚一枚が古の城壁と同等の防御力を持ちこれ自体が「投擲武器や飛び道具に対して無敵」という概念を持つ。
まあ、形だけ似せた限りなくそれに近い劣化品なんですけどね。
その強度は巨大なガレオン船をまるで紙屑のように散らした斬撃を受けてなお無傷を誇る様を見ればわかるだろう。
しかし半分近く切り裂かれた船へのダメージは深刻らしく自重でミシミシと音がし今にも崩壊思想になっている。
俺は荷物を背負い直し、急いで崩れ始めたガレオン船を後にした。
倒壊するガレオン船を抜け、丁度良い足場に着地する、近くにゾロ達の姿が見受けられた。
「ふむ、気まぐれに海を漂っていれば興味深い物を見つけたな」
目があった、感じたのは恐怖、まるで全てを見透かす鷹のような目つきに羽飾り付きの帽子に騎士風の格好。
相手はこの船を木っ端微塵にした人物にして危うく俺が殺されかけた当人、王下七武海の一人世界最強の剣士ジュラキュール・ミホーク。
どうやってかは知らないが船への斬撃を防いだのが俺だと気付かれたようだ、向けられた視線に殺気はないが興味の色を持った彼の視線は並大抵のそれを凌駕する。
無意識に体に力が入る、俺は理解した、彼は英雄では無いが正しく人外の領域に足を踏み入れた人物なのだと。
いつでも武器を創り出せるように準備して、
「待て、そいつは俺の獲物だ」
後ろから肩に手を置かれ平静を取り戻す、置かれた手の方を見るとそこには今までにない程の野獣の気配を纏ったゾロの姿があった。
そこにはゾロの剣士としての野望と信念、そして矜持があった
世界最強を目指すゾロにとって正しく今目の前にいる者はその目標に他ならないのだろう
何人たりとも彼の野望への横槍は許されない
「ーー三刀流奥義『三・千・世・界』」
ゾロが繰り出した奥義をミホークは一太刀でその刀ごと粉砕した。
最後に斬りかかるミホークにゾロは残った一本の刀を鞘にしまい体の向きを変え正面を向いた。
「背中の傷は戦士の恥だ」
「見事!」
ミホークから見惚れるような一線が振るわれゾロがその場に崩れ落ちた。
世界最強の剣士の名は本物だった、剣士としてそれなり以上の実力を持つゾロをおもちゃの剣でまるで子供をあやすかのようにあしらい背負っている刀は最後の一回しか抜くことはなかった。
「おれはもう! 2度と負けねぇから! あいつに勝って大剣豪になるその時まで! おれは負けねぇ! 文句あるか、海賊王!!」
「ない!!」
ゾロのまるで魂の叫びのような宣告はここら一帯に響き渡り、未来を知らぬ者でさえ彼が今回一皮向けこの先強くなるであろうことを確信させた。
「では次は貴様の相手をするか」
世界最強の剣士、ジュラキュール・ミホークが次に指名したのは俺だった。
……やっぱり?
体が強張る、奴の実力は本物だ、俺よりも圧倒的に勝っているだろう。
だが仲間に剣士としてあれだけの覚悟を見せられ、何より鍛治師としてあれほどの剣を見せられたら反応しないわけにはいかないだろう。
ほぼ無意識のうちに体が反応し悪魔の実の能力を発動させていた。
心を鍛ち(うち)形を作る。
それは命を持ってこの世界へと顕現する。
現れたのは最も慣れ親しんだ白と黒の夫婦剣。
その刀を見てミホークの目つきが変わる。
「残念ながら私は剣士ではなく鍛治師だ、だがそれほどの剣と剣技を見せられのなら黙っている訳にもいくまい、何そこらの|剣士【セイバー】には負けないことを証明しよう」
油断はできない、今回創り出したのは剣だけにあらず、剣の記憶も担い手の技術や戦闘経験すら自分の体に焼き付け打ち付ける。
『憑依経験』
副作用として一人称と口調が一変しどこか皮肉気に移り変わる。
間違いなくこれが俺の全力全開、本気の戦闘だ。
「成る程、確かに貴様は剣士としての体を取っていない、まるで借り物であるかのようにどこか歪ですらある」
背中から漆黒の刀を抜き構えながらミホークが言う。
黒刀「夜」この世界で最高の刀剣に分類される最上大技物12工の一つ。
だが俺の持つ夫婦剣も負けていない、名を干将・莫耶(かんしょう・ばくや)中国における名剣の一つであり、黒い方が陽剣・干将、白い方が陰剣・莫耶、その堅強さは俺の創り出せる剣の中でも上位に食い込む。
武器のレベルは恐らく互角。
だが技量も才能も経験すら相手が上
覚悟を決めろ、気をぬくことも油断することも、瞬きすら許されない
ここに世界最強の剣士と無限の鍛治師(ウソップ)の戦いの幕が上がった。
ふぅ、USOPPさんもずいぶん偉くなったもんだ。