シリアルに生きたい   作:ゴーイングマイペース

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 今時のジリジリ展開が進んでいくようなラブコメも書きたい。でもちょっと昔にあったようなのコッテコテの2次元ハーレムラブコメも書いてみたい。そんなジレンマが胸を焦がす今日この頃。


え? そこまでしちゃっていいの? ……だ、第3章!
31時間目 : ラブコメって一口で言っても色々なものがあるんですよ


「それで、ネギはあんなにカラカラのフラフラだったってわけね……」

 

「まあ朝から増血剤とレバー食わしといたからその内元に戻るだろ」

 

 決闘の夜が明けて翌日の放課後。雨降って地固まるというのか、どうやらネギと姉ちゃんは教室でも普通に会話を交わすような間柄になったらしい。まあ元々そこまで険悪な関係というわけでも無かったが。

 そしてその様子を見た明日菜が、元々知っていたある程度の事情と合わせて何かがあったことを悟ったらしくこうして俺を呼び出し話を聞きに来たというわけである。ちなみに当の2人からも話を聞こうとしたらしいが、ネギは冒頭の明日菜の台詞そのままの有様で流石に遠慮したらしく、もう片方である我が姉はそもそもまともに相手をしなかったらしく、「そんなに知りたければ世界からでも聞き出すといい」と言ったらしい。あんにゃろう、面倒くさくて俺に丸投げしやがったな……。

 

「で、ミニステル・マギだっけ? 結局それはコタがなったんだ」

 

「そうだな。まあ2人ともガキとはいえ、こうして従者(パートナー)が見つかって、とりあえずネギの魔法使いとしての体裁はどうにかなったって感じかな」

 

 今はそれだけだが、揃って将来性抜群の主従(パートナー)である。といっても今はそれもほぼ形だけで、今しばらくはこれまでと変わらず友人兼ライバルの色の方が強いままだろうけど。

 

「パートナーねぇ。でも、アンタたしか、今の魔法使いのパートナー探しはもう恋人探しみたいなものだ、って言ってたじゃない。なのにネギとコタはいいの? 2人とも男の子じゃない」

 

「だからあくまで現代の風潮としてはそうなっちまってるってだけで、本来はもっと色々なことを見据えて契約するもんなんだって。それにそんなこと言ってたら姉ちゃんなんかスゴいことになるぞ」

 

 なにせ茶々丸、そして初代従者である殺戮人形を筆頭に数え切れない数の人形たちと契約を結んでいるのである。そこに今の風潮そのままの主従契約の意味を当てはめたらとんだ一大ハーレムの主の誕生になってしまう。そうしたら、メンバー全員女だとかその大半が人形だという諸々も合わさって、我が姉の異名の1つである『人形使い(ドールマスター)』の意味合いが凄まじく倒錯したものになってしまうだろう。

 

「ふーん。で、さいきょーの魔法使いのエヴァちゃんから見習いだとかいうネギまでパートナーがいるっていうのに、アンタにはいないんだ」

 

「だから今まではいなくてもどうにかしてきたし、もう、無理して探す必要のあるものじゃないんだってば」

 

 何をおもしろいと感じたのか、ニヤニヤした顔でこちらを見やる明日菜に言い返す。違うんだよ、決して旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)でも魔法世界(ムンドゥス・マギクス)でもパートナーが見つからなかったとかそういう話は無かったんだよ。ホントだよ。

 

「でもいくら強いからって危ないモンっていうのはどこの世界でも変わらないでしょ。まあ、私はアンタが魔法使いとしてどれぐらい強いか、なんてわかんないんだけど」

 

「そんなこと言い出したらキリがなくって何もできなくなっちまうだろ。……なんだ、もしかして心配してくれてるのか?」

 

「……なによ、悪いっての? 当たり前でしょ、アンタみたいなのでも私の幼馴染なんだから。心配ぐらいしたっていいじゃない」

 

 そう言って頬を赤くしそっぽを向く明日菜。どうやら割と真剣に心配してくれているようで、ごく僅かに含みがあるものの、ほぼ包み隠さず俺の身を案じるといったことを言ってきている。

 まあ、すぐにコイツが手だの足だの出してきてこちらがそれを迎撃する、などといった付き合いを普段からしている為に割と忘れがちだが、今目の前で珍しく殊勝な態度を見せているこの女は、かなり友達に対しての情に厚い、良いヤツなのであった。そのことを思えば明日菜のこの態度も当然なのかもしれない。

 

「…ねぇ、世界? もし、もしもだけどさ。アンタがこれから先1人じゃどうにもならないってことがあって、それで、パートナーが欲しいってことになったらさ――」

 

『なにぃッ!? ヤツが、サウザンドマスターが生きているだと!!? どういうことだ、しっかり説明しろぼーや!!!』

 

『うわわわっ、ちゃ、ちゃんと話しますからまずは落ち着いてくださいエヴァンジェリンさんッ!?』

 

「…アレ、ネギにエヴァちゃん? あんなところで騒いで何してるのかしら」

 

「何か姉ちゃんがネギから聞き出そうとしてるみたいだな。…それで明日菜、パートナーが見つからなかったらなんだ?」

 

「え、あー、うん。なんでもなかった。ホラ、早くあの子たち止めないと周りの人達の迷惑になるし行きましょ」

 

 そう言ってネギ達の元へ走っていく明日菜。何を言いかけたのか気になりはしたものの、本人がそれでいいというのならそこまでだと考え、俺も凄まじい形相を浮かべてネギの襟首を掴んでいる我が姉を止めるべくその現場に向かって歩いて行った。

 

 

 

 ○ △ □ ☆

 

 

 

 そんな我が幼馴染の意味深げな発言から数日経ち、週末。俺はアスナの誕生会をやろう、と言ってきた木乃香の誘いを受け、プレゼントを用意するべく都心までやって来ていた。

 

「で、アスナの誕生日プレゼント買いにわざわざ原宿かー」

「なに? ラブ? ラブなの? いいなーいいなー」

「あ、ゴーヤクレープだって~。世界くーん、アレ買って~♪」

 

「会ってそうそうやり放題過ぎじゃないお前ら」

 

 そんなところでこのお騒がしチア3人娘に遭遇した、というのが端的に表した現在の状況である。

 

「でもそっか、そういえばアスナ明日が誕生日だもんねー。そりゃせかっちがこうして誕プレ買いに来てても不思議じゃないかー。あ、桜子ー。私の分も頼んどいてー」

 

「でも、大丈夫なの世界君。先月だって私と、あとこのかと、まきちゃんと、くーちゃんと、ザジさんと……ウチのクラスだけで5人もプレゼント贈ってるはずじゃない」

 

「はーいミサミサの分もねー♪ それにしてもさっすが世界くん、中学生にして学祭長者は伊達じゃないねー♡」

 

「まあその辺は毎月キッチリ予算組んどいてあるから心配してくれなくても大丈夫だよ、ありがとな円。

 あとそこのバカ2人、それぐらいならいーけど今日はあんまいつもみたいに奢れないからな。それでもって言うなら、来月と再来月のお前らのプレゼントはそのゴーヤクレープで決まりだぞ」

 

「「えーっ」」

 

 友人だというのに、我が懐具合に懸念を示してくれるのが3人のうちただ1人だというこの現状に涙が出そうである。といっても、美砂も桜子も以前の学園祭のようなお祭りムードゆえのクラス総攻撃のように本気では無さそうだが。

 ちなみに円が心配してくれたような金銭面の不安は無い。流石に俺も、友達や普段世話になっている人達に感謝の意すら表せないような金の使い方はしていないのである。

 

「まーいいや。それでせかっち、どうせもうある程度アスナへのプレゼントの目星つけてるんでしょ?」

 

「ん? まあな」

 

「じゃあさ、それ終わったら今日は私達と遊ばない? せっかくこうして麻帆良から離れたところで会う、なんて珍しいことになったわけだし。ね?」

 

「お、いいね美砂。そうだ、私達の修学旅行の自由行動日で着る服も、どうせだから世界君に見立てて貰おっかな♪」

 

「それじゃーその後はカラオケだね! 歌っちゃうよー! 9時間歌っちゃうよー!!」

 

「待って、俺プレゼント買う金は持ってきててもそこまで遊んでく余裕ないんだけど」

 

 え? お前少しぐらい使ってもまたいくらでも稼げるんじゃないのだって? 金稼ぎはできてもやりくりが下手なんだよ悪かったな!

 

「だーいじょうぶだって。ほら、行こ行こー♪」

 

 などと言っても一度火が付いた女子がそう簡単に男子の言う事を聞いてくれるはずもなく。

 そうして左右背後と俺の周囲を固め引きずっていく3人を無理やり引き剥がすわけにもいかなかった俺は、なすすべ無く美砂、円、桜子と遊んでいくことになった。

 

 




・情に厚い原作メインヒロインさん
 この人の裏事情とか色々考えながら原作を読み返してみると、この辺特に色々見えてくるものがある気がします。


・主人公さんマメっすね
 女子中等部3-Aをはじめ、同クラスの男子たちや魔法先生、魔法生徒たち、その他にも割と多岐に渡る人付き合いをしている主人公。これらを苦にはしていないものの、それでも財布を見ると涙が止まらない時があるとか。
 なお財布の空っ風具合はほぼ全て自業自得である模様。


・主人公の懐に幸あれ
 ただし原作と違って、同じように明日菜の誕生日プレゼントを買うべく都心に来ていたこのかとネギに逆に写真を撮られ、あやかと明日菜がこのかによって召喚。そのままカラオケに行くというオチがついた。
 ついでに言っておくとネギ君が明日菜の誕生日プレゼントを用意しようとした理由は、吸血鬼事件以来いろいろと気にかけて貰ったお礼も兼ねてだとか。



 というわけで新章開始です。そんなわけでまずは明日菜さん&チア部回。
 3章は、少しずつ原作と比べての違いが大きくなってくる章ですかね。つまりその分これから先は書くのが難しくなっていく、ということで今から震えが止まりません。(白目)
 まあオリジナル展開こそ2次創作の醍醐味ですし、原作の味を残しつつ、この小説独自の味を出せるように頑張って書いていきたいです。

 それでは今回はここまで。感想、あと評価もお待ちしています。

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