シリアルに生きたい   作:ゴーイングマイペース

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 長くなりそうだったので諸々スッパリとカット。おかげで全然話が進まねえ!


38時間目 : 修学旅行3日目:朝その2 ~頑張れ文学少女たち~

「それにしても、上手い事脱出成功で来てよかったですね世界さん」

 

「ああ。……まさか旅館出るのにわざわざ転移魔法(ゲート)使うことになるとは…」

 

 3-Aのヤツ(アイツ)ら、クラス総出で旅館の出入口という出入口を塞ぐという荒業に出てきやがったからな。わざわざそこまでするか女子中学生ども。

 こうなると連中に気付かれずに脱出すると言うのは、ヤツらの中に色々と普通の女子中学生とはかけ離れた人間が多数属している以上ほぼ不可能に近かった。

 なのでこちらも普通とはかけ離れた手段(魔法)を使わせてもらい、ネギと共に旅館を脱出させてもらった、というわけである。

 ……別にやましい事したわけじゃないんだったら逃げる必要ないだろ? 目の前に極上のエサをぶら下げられた猛獣と同じような目をしている女子たちを前にしてからそういう台詞は言えよ、おう。

 

 そんなこんなで現在は、関西呪術協会総本山である「炫毘古社(かがびこのやしろ)」へと向かうべく、2人で電車に乗っている最中である。

 

「それにしても皆さん、修学旅行も半分を過ぎようって言うのに凄いバイタリティですよねぇ。……アスナさん、大丈夫でしょうか」

 

「アイツら全員旅行とかそういうイベント関係なく年中タフだしな。……まあでも、明日菜については朝メシの時に散々盛り上がってたみたいだし、流石にもう大丈夫だろ」

 

 え? お前その騒動の原因になった話題の片割れだろって? ……に、二者択一を迫られてより重要な方に行っただけだから…

 

 

 

 ○ △ □ ☆

 

 

 

「ねえアスナ、あんた本当に世界君と付き合いだしたとかじゃないの?」

 

「だ・か・ら! 何度聞かれてもおんなじって言ってるでしょパル!! 私はアイツの彼女になんかなってなーい!!!」

 

「わ、わかったわかった。ごめん、もう聞かないって」

 

 早乙女ハルナは、度重なる質問の嵐に臨界点を超えたのだろう目の前の彼女、神楽坂明日菜に対して、これはもう、本当に何もないかなと考えつつ謝罪の言葉を発した。

 

「もうっ……皆揃って、ホントにしつっこいんだから。いったい何度同じことを言わせれば気が済むってのよ、たくぅ……」

 

「そんなことゆーてもなぁ、もう片方のせかい君がいつの間にかネギ君と一緒にどっか行ってもーてるし、そりゃ皆アスナから話聞きたがるのは当たり前やん?」

 

「そーなのよッ! 世界のヤツ、全部私に押し付けてとっとといなくなっちゃうしーッ!! 後でぜったい酷い目にあわせてやるんだからーッ!!!」

 

 ハルナはそこまでの会話を見届けると、自身の親友2人に向かって「大丈夫、何かあったのは間違いないとしても、決定的なナニカに関しては間違いなくシロだよ」という意思を込めて視線を送った。

 そうすると、朝の旅館での騒ぎからこっち、ずっと暗い表情を浮かべていた親友達はやっと胸のつかえがとれたのか2人揃って片手を胸に当て、そしてもう片方の手を互いと繋ぎ合わせ大きく息を吐いた。緊張の糸が切れたのだろう、今の今まで隠そうとしても隠しきれなかった悲壮感をようやく霧散させ、顔を合わせ微笑を交わしている。

 まあこれもしょうがない。なにせ彼女たちは、自分たちが何もしない内にいつの間にか想い人が他の女子と結ばれてしまったのでは、とついさっきまでその目に涙すら溢れさせかけながら抱き合い、お互いを慰め合っていたのである。

 その分、きっと今の2人は強い安心感に包まれているのだろう。

 

「(まったく、そこまで慌てるぐらいならさっさと勝負に出りゃいいのに。焦れったいなぁもう)」

 

 心の底からハルナはそう思った。もう自分たちが彼と部活を同じくして3年目。手の早い女子ならとっくに目当ての男子を落としているどころか更に先、更に更にその先へと進んでいてもおかしくない時間が過ぎている。

 だというのに、この親友たちときたらここまであからさまな態度を隠そうともしてこれなかった癖に、こうして3年生になるまで本格的な勝負の1つも仕掛けなかったのである。

 そのクセいざ事態が動いたらこのザマで。正直言って、こんな騒ぎでそこまで狼狽えるならもうさっさと告白でもしろよ、というのが今のハルナの心境であった。

 

「と、いうわけで。――いい加減もう告っちゃいなよ、のどか、夕映。それも、この修学旅行中に」

 

「え~~!? そ、そんなの無理だよぅー!?」

 

「そそそ、その通りですハルナ。いいいったい何を言い出すかと思えばそのような勢い任せで今後の人生全てを左右しかねない重大決心を固めろなどと」

 

「わかんない? もうそろそろそんなこと言ってられなくなるわよあんた達。あと夕映、慌ててるからか知らないけど往き過ぎ往き過ぎ」

 

 本当にもう、ついさっきまであの体たらくだった癖に、この期に及んでいったい何を躊躇っているのだろうか。と、まだ何もしていないのに顔を真っ赤にし目をグルグルと回しながら両手をブンブンと大きく振り回し始める2人を見て、ハルナは思う。

 そこでハルナは、自分達以外の3人がこちらの話を聞きとれないだろう距離にいることを確認すると、まだわからないのか、とのどかと夕映の2人に今の状況を教えてやることにした。

 

「たくもう。いい? まず、世界君が明日菜と意味深な素振りを見せて、それを私達含めみんなが目撃したことで、その結果、2人が付き合いだしたと考えた。ここまではわかってるわね?」

 

「う、うん。だから私達、さっきまであんな風になっちゃってたんだしー……」

 

「ですが、それはもう根も葉もないことだったと証明されたはずです。なので、この話はここで終わりで――」

 

「ぅ甘いっ! 甘すぎるわこのおバカ共ッ!! 本当に気づかないの!? 私達全員、つまり3-Aみんなが世界君に彼女ができたかもしれない、その瞬間を見たのよっ!?」

 

「「――! あ……!?」」

 

「……やっと分かったみたいね、まったく」

 

 相当強い口調で言うよう意識したのが効いたのか、ようやくこの状況の本質を呑み込めたらしい2人が揃ってハッとした表情を浮かべる。それでいい。ここまで言ってわからなければ張り倒してでも発破をかけてやらなければならなかったところだ。

 

 そうなのである。コレはただ自分達が知る2人がカップルとして結ばれたどうこうという単純な問題ではないのだ。その先、この目の前の2人のように、といっても程度の差はあるだろうが皆揃ってかの男子が恋人を作った、と()()()だろうことが問題なのである。

 つまりだ。元々それなりの時間をかけて下地が育まれてきた、かの男子を取り巻くその状況。それが今朝の事件がきっかけとなり、今まさに加速を始めつつあるのだ。例え、その事件の原因そのものが誤解だったとしても、である。この際、そんなことは問題にすらならない。

 そう、真の問題。それはズバリ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう考え、それぞれ差はあれど()()、もしくは()()()()()()()()()()()()()()、である。

 

「どどどどうしよー!? ゆえゆえー!? ハルナー!?」

 

「どどどどうしようと言われましてもこうなってしまっては最早私達も行動に出ざるを得ないのではイヤしかしそのように周りの勢いに自分まで流されたかのような軽挙妄動をしてもしも全てが勘違いなどということだった場合結果として私達は想いを告げるという一歩を踏むことである種の達成感などを得ることができるかもしれませんが肝心の世界さんに本来抱えるはずの無い重荷を背負わせてしまうことになっていえ彼が私達の想いを重荷だと考えてしまうような男性などという風に考えているわけでは決して無くむしろ私は彼のそういった面には心の底から信を置いていて」

 

「あーあーもう、落ち着きなさいな」

 

「「ぁぅっ」」

 

 自分の言いたいことを理解して早々に慌て始めた親友と、慌てるを通り越して暴走を始めた親友の頭へと気持ち強めにチョップを入れる。

 そうするととりあえず気は持ち直したようだが、またも自身らの未来に暗雲が立ち込めるビジョンでも見え始めてきたのか再び泣きが入り始めたようで、2人揃って頭を押さえながら表情を悲しげに歪め始める。

 ハルナは、放っておいたらまた抱き合ってお互いを慰めだしそうな様子の2人を見かね、親友として更なる発破をかけてやることにした。

 

「ま、こうは言ってもまだまだ当の本人が誰に対してもその気ないみたいだし、アンタ達も今すぐ動けば十分チャンスは掴めるわよ。これでわかった? アンタ達が今、何をしなきゃいけないか」

 

「う、うん」

 

「……ハイ…」

 

「それでよし!」

 

 言葉で伝え、ついでにもう1つと背中を勢いをつけてはたいてやる。

 するとようやく覚悟が決まった……かは微妙だが、少なくとも自分たちがやらなければいけないことはしっかりと理解できたらしく、未だ顔を赤くし唇を何やらもにょもにょさせつつも顔を見合わせ頷き合う2人。

 そうして、改めて今出せる精一杯の気合いをその顔に浮かべ、胸の前で握りこぶしを作ってみせた。

 その様子を見て、「まー、まだ少し不安だけどとりあえずはこれでいっかな」と、ハルナは話を次に進めることにした。

 

「まーったく、ホント世話がかかるったら。ほら、そうと決まったら作戦会議でもするわよ。少しの時間だってもったいないんだから。あ、でも他の3人にはバレないよう今まで以上に慎重に……」

 

 時は金なり、特に女の勝負では。と親友たちの為に更に計画を詰めようとするハルナ。

 が、その彼女に、今度は親友達から気遣いの表情と問いが投げかけられる。

 

「でもハルナー、いいのー? 私たちほどじゃないかもしれないけど……ハルナだって少しぐらい世界君のこと気になってるって言ってたよねー?」

 

「そうですよハルナ。今に限らず普段から散々背中を押してもらっている私達が言えたことではないかもしれませんが、貴女とて少なからず世界さんのことが」

 

「ハァーン? なーに言ってんだか。そんな風に人のこと心配する前に自分たちの心配しなさいっての。そうしてアンタ達が勝負決めてみせたら、その時は喜んでお零れに与らせてもらうわよーん。グフフフフ」

 

 そう言って、何やら余計な心配をしてきた親友達の言葉を一笑に付してやる。

 というか、そんなことに気を回すくらいならさっさとターゲットを落としてきてほしいものだ。そうすればその時は喜んで、こうして散々手助けをしてきてやった報酬をいただくとしよう。

 そうしてハルナは、この2人がその想いを遂げた暁には彼女らと彼にいったいナニをしてもらおうかと様々な方向へと妄想を膨らませつつグフグフと笑い声を漏らしつつ、どうやって我が親友達を彼の元に近づけようかという話を2人に始めようとした。

 

 ――だが、彼女たちは知らなかった。

 

「――ッ!? このかお嬢様、失礼をッ!」

 

「ひゃあっ!? せっちゃん? なになに、どうしたん!?」

 

「すいません、お話は後ほどに! 神楽坂さん!!」

 

「――これって!? 桜咲さん、もしかしなくても」

 

「はい、間違いなくヤツらです!」

 

「うんッ! パル、ユエちゃん、本屋ちゃん! いきなりでなんだけど走るわよ!! 死ぬ気で付いて来て!!」

 

 そう、今自分たちが修学旅行に来ているこの京都で、自分たちのような普通の女子中学生の普通の思惑などまるで意に介さない事態が動いているということを。

 

「って、え? なになにどうしたのアスナってば。それに桜咲さんも急にこのかと手ぇ繋いで――って速ッ!?」

 

「な、なぜいきなりあんなに勢いよく走り出すですか!?」

 

「わ、わからないけど、早くしないと置いていかれちゃうよー!」

 

「ああん、もう! せっかくイイトコロだったのにィッ! 待ってよ、アスナーッ! 急にどうしたってのよー!?」

 

 ハルナはそう叫ぶと、理由はサッパリだが遅れる訳にはいかないと、のどかと夕映と共に思い切り京都の町を前方の3人に続いて走り出すのであった。

 




・3-A包囲網、主人公を追い詰めるの巻
 なお、完全に追い詰めたと思ったら自分たちの担任ともども姿を消され、揃って地団太を踏んだ模様。


・文学少女コンビ、決意の巻
 なお、その決意もそんなことに構っちゃくれない連中のせいでうやむやになる模様。


・未来の漫豪、今日今日とて親友達の恋模様にグフフ笑いを漏らすの巻
 なお、当人は恋愛的な何かよりも恋愛的なナニかから主人公に興味津々の模様。



 はい、というわけで前回からほとんど進まない有様です。本当はもう少し話が進むはずだったのですが、それだと文字数がとんでもないことになるのでバッサリ。おかげでこの進み具合だよ!
 それもこれも、図書館探検部って子達が可愛すぎるのがいけないんだ。(責任転嫁)

 では今回はここまで。感想、評価お待ちしています。

 しかし、次回はもうちょっと進めたい。……進めたいなぁ…

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