シリアルに生きたい   作:ゴーイングマイペース

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 色々と試行錯誤な第5話


 5時間目 : 最終兵器主人公

――突然だが、俺はここ麻帆良ではかなりの有名人である。

 

 理由は単純、強いからだ。というか、少々暴れ過ぎたせいで悪目立ちしてしまったのだ。

 

 イヤ、決して自分からケンカを売りに行ったわけではない。これでも裏の世界に生きる人間として生活しているのだから、表の人間相手に手を挙げて悦に入るなどという情けない真似をしたことはない。

 

 ではなぜ、この俺が強いということが知れ渡っているのか。

 

 それもまた簡単な話で、こちらにその意思が無くとも勝負を挑んでくる血気盛んな学生が麻帆良には大勢存在しているからである。下は一桁から上は大学生までよりどりみどりだ。

 

 その方法もまた様々で、決闘や腕試しと称してやってくる者、とにかく名を上げたいと問答無用で襲いかかってくる者などだ。俺にとって最早これら生徒に対処するのは最早毎日のルーチンワークと化している。

 

 具体的には、

 

 登校のため通学路を進んでいれば襲い掛かってくる大学武術サークルの先輩方を蹴散らし続いて襲い掛かって来た3D柔道の使い手に魔法の矢装填パンチ(光)を決めコアラオーラが特徴な友達から朝食を買いその際ちょっとしたアクシデントからトンカチに追い回され昼休み開始早々にわざわざ中等部までやってくる喧嘩三十段にワールド・インパクト(出力0.000001%)を叩き込み放課後はパパラッチの取材活動のボディガードをしていれば赴いた麻帆良工大で暴走していたトリケラトプスロボを粉砕し散歩部の活動をしていればリベンジとして更に頭数を揃えてきた先輩方をデコピンで吹っ飛ばしそのまま「今日こそ勝たせてもらうアル!」と猛るカンフー娘と組手をして図書館探検をしていれば変態司書長に姉ちゃんコレクション鑑賞へとなし崩しに付き合わされ仕上げにどこぞの誰かさんが寄越したと思われる黒服の集団(顔馴染み、いつもご苦労様です)を湖に蹴飛ばす。

 

 といった具合である。多少の変動はあれどだいたいこんな調子で毎日を過ごしている。……改めて見ると殺伐とし過ぎだろ。なんだこの魔境。

 

 あと、なんでもフローチャートが作成され大絶賛発売中だといくらか前に史伽から聞いた。俺が一日どういったルートを辿るかが賭けの対象になっているらしい。オイ人の苦労で甘い汁吸っているふざけた奴はどこのどいつだ。

 

 ……とにかく、幼い頃からこの調子だったもので妙な二つ名まで付けられる始末である。誰が呼んだか『麻帆良学園の最終兵器(リーサルウェポン)』。最後に立ちふさがる壁という意味でなら強ち間違いと言えなくなってしまいそうなので個人的には笑えない二つ名である。

 

 ……イヤ、俺ご先祖様と違って「絶望した! あんまりにも度し難い人間達に絶望した!」なんて理由でラスボスなんてやるつもりないからね?

 

 

 

 ん? ところどころオカシイところが無かったかだって? HAHAHAバカな、そんなものはどこにも無いに決まってるじゃないか。というかこれぐらいで疑問を感じていたら麻帆良生などやってられない。だから何も問題は無いのだ。イイネ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤ、おかしいところばかりだとしか思えんのだが……」

 

「おま、人が少しでもこのふざけた現実から目を逸らしたいってのにソコにツッコんでくる奴がいるか。だからお前はせっちゃんなんだ」

 

「なんでお前は二つ名に恥じないだけの実力はある癖にそう情けないんだ……あと人の名前を罵倒の代名詞みたいに使うな。というか誰がせっちゃんだ!」

 

「んー、強者の宿命というやつでござるなー。まあ拙者たちのような人種にとっては超えるべき壁は高ければ高いほど心が沸き立つというものでござるからな」

 

「ウム、つまり私がこうしてセカイに手合せを望むのもなんらおかしなことではないということアル!さあいざ本気で勝負!」

 

 お前は少し反省しろバカンフー。

 

 と、日々降りかかる災難から逃避しつつやはり拳を揮っている現状、会話から察しているだろうが俺は龍宮神社の能舞台上で麻帆良武道四天王と呼ばれる友人たちと鍛錬の真っ最中だったりする。

 

 ちなみに今はお気楽カンフーチャイナ娘こと古菲(クーフェイ)と組手をしている。だというのに本気で襲い掛かってこようとしたので額へと人差し指で額に(俺にとっては)軽く一撃を入れてやる。ドビシッとか凄い音がしたが罰なので問題は無い。

 

「あうぅ、痛いアルヨ~」

 

「『流』がノロいからそうなるんだ。つうか組手だっつってんのにガチ勝負しようとするから悪い。俺とまともな勝負がしたいって言うんならもっと気を使いこなしてみせろ」

 

「ははははは、またいいようにあしらわれてるな古。もっとも相手が『旧世界から来た人型決戦兵器』では無理もないが」

 

「おい真名。なんでお前がそれ知ってるんだ」

 

「んん? セカイの二つ名はリーサルウェポンと違たアルカ?」

 

「(あっ、バカでよかった)」 「(心配する必要なぞないだろう、バカなのだから)」

 

 イヤそれでも旧世界とか言うなよ、一応はまだ表の人間だぞ古は。

 

 今ギリギリセウトなことを言ったのが、武道四天王最後の一人である龍宮真名である。

 この鍛錬にはたまにしか参加しないが、学園の仕事などを一緒にすることもあるのでそれなりの関係は築けていると思う。ただ、なにかと報酬を請求するのは勘弁してほしいが。

 餡蜜10杯とかよく食えるものである。あんなに同じものばかり食って飽きないのだろうか。

 

 この俺以外の4人、剣士桜咲刹那、忍者長瀬楓、カンフー古菲、そして最後に巫女スナイパー龍宮真名で武道四天王というわけだ。

 

 俺? 人間ではなく物理法則を超越した超兵器なので適用外らしい。せめてチャンピオンとか呼ばれたかった……

 

 ともかく、こうしてこの4人と鍛錬するのも俺の日常の一風景である。バカイエローに稽古をつけ忍者と手合せをし巫女スナイパーはその傍らで神社の清掃をしてせっちゃんは俺のオモチャ。先のドタバタ同様体を張ってはいるが、まだアレ等のように問答無用でないだけマシでというものだ。

 

「待て世界、今私のことを何かスゴく不名誉な呼び方をしなかったかお前」

 

「ん? 何がだ。俺はこの心から溢れる気持ちのままにお前と接しているだけだぞ刹那」

 

「なっ、ぐ、そ、それをやめろと言っているんだ! 毎回毎回悪ふざけばかり、修行するならもう少し真面目にやらんか! だいたいお前は……」

 

 イヤー、せっちゃんは可愛いなぁ。

 

 この子、初めて会った時から変わらず非常にからかいがいがあって非常におもしろい。原作であの明日菜と親友になったのも納得の弄り易さというものだ。この程度の話術で取り乱すのだから都会に一人で放り込みでもしたら絶対に騙されて身ぐるみはがされそうでお兄さん心配です。

 

「と、はい最後の一本取ったっと。お疲れさん古」 「人の話を聞け!」

 

「むむむ、今日も変わらず一本も取れなかったアル……。やっぱりまだ足りないアル、もう一本!」

 

「アホ、無理にやっても結果は変わらないっつーの。ほらよく鍛えたらよく休むよく休む」

 

 刹那のいつも通りの叫びを聞き流しつつ古との稽古がノルマ分終了したので休ませる。

 

 なぜ俺がこうして一般人である古に稽古をつけるなどという真似をしているかと言えば、日々麻帆良最強と名高い俺に勝負を挑み続けた古が勝手に気に目覚めてしまったからだ。まさに天賦の才、俺も原作である程度知っていたとはいえ初めて気を使った攻撃をされた時は驚いたものである。まあぶん投げてやったけど。

 

 そうしたら例によって学園長が俺に古の稽古の監督を命じてきた。俺も責任を感じはしていたので古の気の力の師匠役をこの約1年間やっている。

 

 こいつはいざ稽古を始めてみれば、傍迷惑な勝負癖を除けばひた向きに努力をするので上達速度も速く、見ていて清々しくなるほどだ。その内に裏世界のことも話さなければいけないだろうが、放っておいても足を突っ込みそうなので遅かれ早かれと言うやつだろう。

 

 

 

 さて、組手も終了し古が能舞台の端で休憩を取り始めたことで、これで今日はお開きという空気になっているが俺にはまだやるべきことが残されている。

 

 

 

「楓、どうだ。まだ余裕があるなら一勝負いっとくか」

 

「お、今日はいつになくやる気でござるな。普段は自分から拙者らにそのようなことは言わないというのに」

 

「えー! 楓ばっかりズルいアルヨー!」

 

「たまには俺もそういうことがあってもいいだろ。ていうかその『今日はもう私疲れたアル』って目をやめてから言え。……で、どうする楓?」

 

「ニンニン、もちろん望む所、でござるよ。では一手ご指南お願いするでござる」

 

「よぉし、よく言った。では存分に指南してやろうじゃないか。

――多重、一〇〇〇人影分身!」

 

「ぬおぉっ!?」

「おおおっ、舞台の外の方まで世界がいっぱいアル!」

「ほう、あの密度でここまでの分身体を作り出せるとは……」

「一年前初めて会った時からお前は軟派でヘラヘラしててしっかりキチッとしていれば格好良いところもあるというのに……って何を言ってるんだ私は!?」

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、普段から財布を見て嘆いている男子中学生の怒りを思い知るがいい……!

 




・麻帆良生
 実際あんな生徒ばかりの町があったら俺だったら登校拒否になる。通学できているだけでもちうちゃんってスゴい子なんじゃないかな。


・ワールド・インパクト
 体で覚えた。あの筋肉ダルマ今度会ったらどうしてくれようか……


・黒服さんたち
 たまに現れる苦労人さんたち。この人たちが出現するとある人が痺れを切らす合図。


・ルーチンワーク
 激流に身を任せ同化する。あと句読点がないのは仕様です。

 さて問題、作者はこの中にいくつ伏線を突っ込んだでしょうか? え? 問題になってない?


・麻帆良の最終兵器
 ラスボスの血筋、日常ではこのような形で発現。あらゆる麻帆良生の最終目標でもある。ただし同じチートやバグじゃないと触れることすらできません。


・武道四天王

剣士
 もう少し真面目にしてくれれば私だって……

忍者
 いやはや、こうも近いのに遠いものでござるか。

バカンフー
 届け! この想いアル!!!(ただし物理)

巫女スナイパー
 良き隣人さ。彼との甘味所巡りはなかなかに楽しいものだよ。

 こんな感じ。色々と思わせぶりだったりバレバレだったり。でもとりあえずは良き友人。
 ちなみにせっちゃんの当たりがやたらと強いのは木乃香のストーカーと主人公が勘違いして公衆の面前で取り押さえたのが原因。
 やはりせっちゃんは弄られてこそ輝くキャラ。だからこそもっとその魅力を引き出せるようにならなきゃ(使命感)


・流
 HUNTER×2おもしろいよね。と、いうわけで主人公はあの方式で気や魔力の運用を修め、また同じように古に指導している。
 でも富樫仕事しろ。

・旧世界から来た人型決戦兵器
 幾度か魔法世界に行っているうちについた主人公のあちら側での二つ名。
 主人公がどのような冒険をしてきたかは後日投稿する『ミラクルクエスト~せかいくんのだいぼうけん~(監督:なんか剣が刺さんないおっさん)』で!(嘘です)


・一〇〇〇人影分身
 この恨み果らさでおくべきか。

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