シリアルに生きたい   作:ゴーイングマイペース

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 感想が増えてきてちょっと嬉しい第6話


 6時間目 : おまわりさんこいつです

 休日、バイトを終え朝食をとった俺は麻帆良内のある孤児院にいた。現在は敷地内にある倉庫の中身を整理しなおすという仕事の真っ最中である。

 

 一応断っておくと、俺に積極的にボランティアに励むなどという道徳心に溢れた趣味は存在しない。ではなぜ、今このような場所にいるのかと言えば

 

「ほら手が止まってますわよ世界さん。もっとキビキビ働いて下さらないとお昼までに終わりませんわよ」

 

 この小うるさいお嬢様、雪広あやかに呼びつけられたからである。というか先日俺の所に来た黒服さんたちに頼まれて俺から連絡を入れたら、絶対に来ないと俺の黒歴史を雪広財閥の力を使って麻帆良中に流布すると脅しをかけられたのだ。

 その余りの傍若無人さに膝を屈した俺を誰が責められようか。できるというなら自分の誰にも話したくないような恥ずかしさ満点の過去を心に浮かべてからもう一度言ってほしい。

 というかコイツこういういかにも我儘金持ちお嬢様みたいなことをするのが一番嫌いとか言っていたはずなのに俺に適用されないのはどういうことだ。犬猿の仲(笑)であるあの明日菜にだってこういった無理は言わないというのに。

 

「もう、さっきから人の話を聞いてますの? いくら力仕事は男性である貴方の領分とはいえお二人ばかりに子供たちの相手を任せていては、わざわざ孤児院までボランティアにやって来た甲斐がないではないですか」

 

「その甲斐の無い仕事に孤児院到着早々人を追いやってくれたのはいったいどこのどいつでしたっけねぇ……」

 

「むっ、それは貴方が千鶴さんの胸をじろじろ見たからですわ! あのような助平な視線を年頃の婦女子へと向けるような殿方はまず隔離して頭を冷やしてさしあげませんと危険極まりないですからね!」

 

「じろじろなんて見てないし、よしんばそうだったとしてもあんな胸元くっきり出してる服着てたら男なら誰だって視線が向くわ。ていうかそれが助平だってんなら孤児院に来る度に美少年見て鼻血ボタボタこぼす女はどうなんだよこのショタコン女」

 

「……性癖という心の叫びは誰しも逆らえないものですわね、ええ」

 

「おいこっちを見ろ」

 

自分が不利に回った途端逃げやがったコイツ……。というかコイツこそこの孤児院の平和を考えれば隔離しておくべきなのではないだろうか。気づいたらベッドに男の子を連れ込んでいた、とか言っても俺はきっと驚かないだろう。幼馴染の縁については考えさせてもらうことになるだろうが。

 

「……フフッ♪」

 

 ……とりあえず国家権力へと即座に連絡できるよう準備しておくのが賢明かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー終わった終わった腹減ったー」

 

「何とかお昼までには間に合いましたわね。ご苦労様でした世界さん」

 

「あー、世界兄ちゃんにあやか姉ちゃんだー」

「今日来ないかと思ってましたー」

「ねー、お兄ちゃん遊んで!」 「遊んでー!」

 

「おー今日も元気だなお前ら。じゃあ……イヤ、昼飯が先だガキども。ホラ手を洗いに行った行った」

 

「「「「はーい!」」」」

 

 バカ話をしている内に倉庫整理も終了し現在はちょうど昼食の時間帯。俺とあやかも食事をとるべく食堂に向かっている途中にここに住んでいる子供達と遭遇した。一瞬食堂までの道中で相手をしてやろうかと考えたが隣を歩いていた幼馴染(ショタコン)が子供たちの内の一人を見てヤバい目をしかけたので咄嗟に逃がす。ナイスファインプレー俺。

 

 と、前方に見知った気配が二つ。

 

「お疲れ様あやか、火星君。それにしても、フフッあやかは相変わらずねえ」

 

「イヤちづ姉、今のいいんちょをそんな風にスルーしたら危ないんじゃ……」

 

「俺としてはコイツはそこら辺に縛りつけた方がいいんじゃないかと思うぞ。美少年に対するときの珍獣っぷりならガキどもも怖いもの見たさで楽しめるかもしれないし」

 

「ちょっと千鶴さん夏美さん、それに世界さんも私をどーゆー目で見てるんですか!」

 

「どーゆーって……なぁ?」 「ねぇ?」 「ア、アハハハハ……」

 

 地団太踏む変態は放置しつつ改めて今日ともにボランティアへとやって来た残り二人の友人、那波千鶴と村上夏美に向き直る。この2人とは寮が同室になったというあやかを通じて知り合いとなり、以後あやかと行動を共にする時はだいたい一緒になることが多かったので自然と仲が良くなった。

 

「おっす那波、村上。お前らも昼飯作ってくれてたんだろ? ごくろーさん」

 

「いやまあ、アタシはほとんど手伝いだけでだいたいはちづ姉が作ったんだけどね」

 

「あら、夏美ちゃんだってちゃんと頑張ってくれていたじゃない。おかげで今日のお昼ご飯は渾身の自信作だから楽しみにしててね?」

 

 村上が何が気恥ずかしいのか謙遜すると、那波が村上に抱き着き頭を撫で始めた。その拍子で村上の腕に那波の母性の象徴が押し潰され、一見、2人の少女がじゃれ合っているだけだというのにとてもけしからんことになっている。

 

「あら? 火星君、いったいどこを見てるのかしら。余りおいたがすぎるとまたあやかにお説教されちゃうわよ?」

 

「そのあやかにも言ったが、男子なら一瞬でも視線が向いちまうのはしょうがないんだっつーの。というか、今日は俺が来るって知ってただろお前。んなこと言うんだったらそんな大胆な服着てくるんじゃねーよ」

 

 その言葉に普段から浮かべている微笑みをさらに深める那波。間違いない、こいつ確信犯である。俺を貶めていったいどうするつもりだ。あやかあたりに何か吹き込まれていると考えるべきだろうか。

 

「(その辺どうなんだ村上、またあのバカが俺についてあることないこと言ってたんじゃないだろーな)」

 

「(えっ、いや、えーと、その。ち、ちづ姉は別にイツモドオリデスヨ?)」

 

 あからさまに「私理由知ってます」という顔を逸らす村上。ここは追求したいところだがだいたいこの流れに入ったら黒いオーラを噴出させる修羅が降臨するのがいつものパターンなので俺の心の平穏のためにも早急に追求は諦める。それに安心したと胸を撫で下ろす村上。

 え? いつものパターンってなんだって? やめろ思い出させるんじゃない、ああ葱双剣を構えた修羅が、こちらの反抗心など鼻で笑って消し去るかのような暴虐のオーラが迫る、まるで人類が皆共通して持つ根源的な恐怖を呼び起こさんとばかりに閃く二つの凶器が、ああっ、ネギが、ネギが!

 

「あらあらうふふ、火星君と夏美ちゃんたら今日も仲良しねぇ……?」

 

「「ひぃぃぃぃッ!?」」

 

 気づけばいつのまにか到着していた食堂、過去のこの世のありとあらゆる地獄の具現とはかくのごとし、と言わんばかりの思い出を回想し無自覚の内に2人抱き合って隅で震えていた俺と村上の肩に置かれる手に顔を上げるとそこには女帝。思わず悲鳴を上げた俺たちを誰が責められようか。

 慌ててあやかはと探してみると、俺たちに背を向けて子供たちの相手をしている。あのアマ、俺たちを生贄に捧げて逃げやがった……ッ!

 

「あーッ、また夏美姉ちゃんと兄ちゃんが抱き合ってるーッ!」

「らぶらぶだ、らぶらぶーッ!」

「えーッ、違うよ、らぶらぶなのは千鶴おねえちゃんとだよー!」

「そうだよ、さっきだってお料理にーちゃんの皿に盛り付けるときに……」

 

「――あらあら、オイタが過ぎる悪ガキにもお仕置きが必要かしら……?」

 

「「「「あ、あやかおねえちゃんご飯食べよー!」」」」

 

 

 

 あっ、俺たちへのお仕置きは確定だコr




・いいんちょにあるまじきワガママ
 原作でもネギ君が絡めばやってる。つまりはそういうこと


・主人公ちょっと鈍感すぎませんかね
 あやかさんに対してだけ。他はしっかり気づけるから別に鈍感系でも難聴系でもない。
 アナタなら美少年を見て鼻から愛を噴き出す女性を見て、その女性の隠された想いを察することができるかい?


・麻帆良学園女子学生寮665号室

女帝
 あらあら、彼ったらそんなにコレが気になるのかしら♪

影の薄い人
 おー、ちづ姉ってば大胆……私のじゃ無理か……

 このような感じに。一部戦力差は大きいが原作的に考えてヒロイン力で拮抗できそう。
 
 女帝さんが積極的な理由は、あやかさんと主人公の遠慮の無い関係を羨ましく思い、自分もあんな風にと考えている内に、といった乙女心。この人、公式設定で嫌いなものが「孤独、距離を置いた関係」となっているがどういった子供時代を過ごしたのだろうか。
 影の薄い人はこの年頃の女子にありがちな憧れといったところ。この先それが“ホンモノ”になるかどうか。それは未だわからず


・なんかちづ姉怖いんだけど
 あれっ? と思う人がいたならば原作64話あたりからご覧ください。


・最強アーティファクト葱双剣
 コタロー君いわく400点らしい。


 あともう少し主人公の麻帆良での人間関係を描いたら一気に時間をすっ飛ばして原作突入する予定。具体的な話数は未定。
 


 フフッ、広げ過ぎた風呂敷の大きさにオラわくわくしてきたぞ(震え声)

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