ハイスクールDevil×Hero   作:ずみさん

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第12話 少女

「な、なんなんだオマエは!?ち、ち…近寄るなって言ってるだろ!?」

 

「お嬢ちゃん!危ないから早く離れて!」

 

周囲の人々は一斉に混乱した、錯乱している男は少女に向けてナイフを構える、周囲の人々は少女に逃げろと叫ぶ、しかし直接助けようとするものは居ない。

 

「ねえねえ、ちょうだい?そのキレイなダイヤモンド。そのゆびわはキライだからいらないの、ついてるダイヤモンドだけ…ちょうだい?」

 

少女は周りの様子など目に入っていない様だ、更に男へ一歩近づく。あまりの異様さに男は一歩後ずさる。

 

「ひ、ひぃ…ク、クソガキ!そこから一歩でも近寄ってみろ!?そ、それ以上近寄ったらオレのナイフで…」

 

まずい、男が追い詰められ過ぎている。このままでは何をしでかすか分かったものじゃない!

 

「…くれないんだ。わたしはそのダイヤモンドがほしいのに……くれないんだ?じゃあ…」

 

少女は更に一歩前へ、男に近付く。

 

「う、うわぁぁあ!?」

 

男はついに恐怖の限界に達したのか、ナイフを思いきり振り上げる。

 

「………しんでく「ごぶぁ!?」…あれ?」

 

男がナイフを降り下ろそうとした瞬間、素早く少女との間に割り込み、そのまま体当たりを叩き込む。人間相手なので配慮したのだが、やはり焦りがあったのか、少し威力が強すぎたようだ。

 

男は10メートル程吹き飛び、遠巻きに眺めていた野次馬に激突、全員まとめて道路に転がっている。うめき声をあげているので、どうやらそこまで重症な者は居ないようだ。

 

「……おにいちゃん?」

 

後ろから声が聞こえて振り向く、先程の少女がこちらを見ている。信じられないモノを目にしたように。

 

この少女は…自分をおにいちゃんと呼んだ…先程の男は確か(おにいさん)だったのに?

 

「やっぱり、おにいちゃんだ…あはは、こんな所で会っちゃうんだね?」

 

…どこかで彼女と会った事があるだろうか?記憶には無いが見覚えが有るような気がする。

 

「あ、あの子か!おーい、大丈夫ですか!?」

 

記憶を探っていると、誰かの通報で駆け付けたのであろう警察官が表れた。

 

「こっちだ!そこに倒れてる派手な男がナイフを持っていた!」

 

この子の事も気になるが、まずは先に警察への事情説明が大変そうだ…

 

 

 

 

「ふむふむ…そういう事ですか、まあ、巻き込まれたのは野次馬連中ですし、自業自得でしょう。体当たりしかしていないのであれば過剰防衛にもならないでしょうし、問題はありません…ところで、貴方は?」

 

警察への事情説明は滞りなく終わったが、自分の身分証明を持っていない…少し困った。

 

「ねえねえ、お兄ちゃん。いつまでこのおじさんとおはなししないといけないの?」

 

事情聴取の長さに嫌気が差しているのか、少女がシャツの端を引っ張ってくる。

 

「ああ、この子のお兄さん…道理で。こんな話をこの子に聞かせ続けるのもなんです、今日はもうお帰りになられて結構ですよ。後日、改めてという事で。」

 

そう言うと、警察は例の男と共に引き上げていった。どうやら、この子のお陰で面倒を避ける事が出来たらしい。

 

「お兄ちゃん、おわった?アリスもうつかれちゃった。」

 

この少女の名前はアリスというらしい…名前もどこかで聞き覚えがある様な気がするが…

 

「もしかしたら……人違いをしていないか?俺に妹は居ない筈なんだが…」

 

「ああ、なあんだ…まだおもいだしてくれたわけじゃなかったんだ…」

 

少女はとても残念そうな顔をし、そして突然、何かを思い付いたように笑みを浮かべた。

 

 

「ねえねえ、お兄ちゃん。アリスはヒランヤが欲しいの」

 

「………ヒランヤ?」

 

ヒランヤ…確か、どこかで見た名前だ…そういえば。

 

急いでCOMPを取り出し、ITEMを一覧…あった、回復アイテムの中に混ざっている…何故、これの事を知っているんだ?

 

「……これで、合っているか?」

 

「うん!これだよ!ありがとうお兄ちゃん!……ねえ、今ので何か思い付かなかった?」

 

「何か…?ぐっ!?」

 

突然、強い頭痛に襲われる。…そして、頭の中にいくつかの言葉や光景が浮かび上がってくる…

 

 

 

 

 

 

「×××…×××…!いつまで寝ているの!休みの日だからっていつまでも寝ていては駄目よ!早く起きてきなさい!」

 

「知ってる?イノガシラ公園で殺人事件ですって…わたし、こわいわ」

 

「そ、それ以上近付くな…それ以上近付いたらオレのナイフで…グ、グェッ!」

 

「おまえが×××か…大いなる力を使いこなせるかもしれんな」

 

 

 

 

 

なんだ…これは?

 

「どう?なにかおもいだした?」

 

「思い…出す?俺は…何を忘れている?」

 

頭痛が収まらない、頭が働かない

 

「うーん…まだあんまりおもいだせない?こまったなぁ~…あ、そうだ!おにいちゃん!アリスのおうちにいこう!」

 

「……何故だ?」

 

「だって、おにいちゃんにアリスのことをおもいだしてほしいもの!あそこでなら、きっとおもいだせるわ!おねがい!」

 

……このままでは、何も分からないままだ。それでは、俺の忘れたモノにたどり着けない。

 

「行こう…そこへ連れていってくれ」

 

「やった!じゃあ、アリスについてきてね!」

 

 

 

 

アリスに連れられて来た場所は、街の一等ホテル。部屋によっては一泊で札束が必要だったはずだ。

 

「ここだよ!」

 

アリスは無邪気に笑いながら廊下を駆けていく。

 

「おい、廊下を走るな…人とぶつかるぞ、危ない。」

 

「だいじょうぶよ!このフロアーはみんなおじさまがかりてくれてるの、だからここにいるのはわたしたちだけ!」

 

……人の気配がしない、本当のようだ。

 

「ねえねえ、おにいちゃん…このホテル、あのばしょによくにているとおもわない?」

 

あの場所?…良く観察してみる、赤いカーペット、薄い桃色の壁…実に良くあるホテルの内装に見える…だが、そこへアリスが写り込んだ瞬間

 

「ぐっ!」

 

また頭痛が激しくなる、視界がぼやけ、何か別のモノが見える…これは、牢屋か?

 

『助けて…×××、私…何になってしまったの?』

 

頭の中に響く声…自分と同じくらいの歳の女…体のあちこちが腐り落ち痛々しい…

 

「あはは、おにいちゃん…いろいろ、おもいだしてるでしょ?…もうすこしで、アリスのお部屋だよ。」

 




それでは、またお会いするときまでアクマに体を乗っ取られないようお気をつけ下さい…

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