大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

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近日と言っておきながら、1ヶ月近くお待たせして申し訳ありませんでした。


20 遠洋航海

6月10日 洋上 海防艦八雲 甲板

 

 

「う~~~ん……海だ~~」

 

 

「なんだ、その感想は?」

 

潮風を感じる滝崎の感想に松島宮はツッコミを入れる。

滝崎・松島宮は兵学校卒業に伴う訓練航海に参加し、海防艦八雲と磐手の2隻により、スエズ運河経由で地中海に行く予定であった。

 

 

「いやー、長期航海、しかも外国に行くなんて、前世でも体験してないからさ」

 

 

「ふむ、70年も未来、しかも、航空機技術が驚く程に発展していても、外国に行くと言うのは簡単な事ではないのか?」

 

 

「まあ、書類審査とかパスポートとか…後はお金とか、色々とあるしね」

 

 

「あぁ、確かにな……それなら、こうして機会を利用しようと?」

 

 

「うん。時代は違えど、他国を観れる機会だからね。興味もあるし」

 

 

「どう言う方向の『興味』かは置いておくとして、未来が変わる可能性があるなか、長く本土に居ないのは不味くないか?」

 

 

「確かに…だけど、居ないからと言って何も出来ない人達じゃあないよ。それに逆に僕の言葉に意識を向けすぎて、何か見落としをする可能性があるしね」

 

 

「ふーむ……それを言われると難しいものがあるな」

 

 

「あぁ…まあ、大丈夫だよ。それに一応、『置き手紙』も置いてあるしね」

 

 

「『置き手紙』な」

 

 

「そう、『置き手紙』をね」

 

 

 

 

その頃 海軍省 次官室

 

 

「やれやれ、彼も心配性だな」

 

執務室で滝崎の『置き手紙』を読んだ山本五十六次官は苦笑いを浮かべながら呟いた。

 

 

「大半が前々から言っていた事だから、ある意味念押しと言ったところかな? まあ、早めに取り掛かる方がいいのは解るが……ん?」

 

『置き手紙』の続き、『お願いリスト』と言っていい念押しの箇条書きとは別に様相が違う、長々しい文章が書かれた複数枚の用紙がある事に気付く。

 

 

「なになに…『対潜水艦哨戒、並びに同攻撃に対する一考』か。ふむ、なんだろうかな?」

 

滝崎から散々に『次の大戦』の様相の一つとして、アメリカ潜水艦による補給航路破壊とその影響を聞いていた山本次官としてもタイトルだけで興味を持ち、続けて読んでみる。

 

 

「……未来では『ヘリ(回転翼機)』による対潜水艦哨戒と攻撃を行うか…攻撃は無理かもしれないが、哨戒だけでも出来れば今の潜水艦の性能を考えれば、それだけでも随分と行動を制限できる…そして、今ならこの回転翼機はオートジャイロの事だな。ならば古巣に声を掛けねばならないし、早い方がいいか」

 

滝崎の言いたい事を理解した山本次官はウムウムと頷きながら、この件の答えを纏め、続きを読む。

 

 

「……耳が痛い話だが、これは重要だな。『彼の世界』で我々海軍の至らなさで陸軍が自衛する事になってしまった…だが、故に『迫撃砲による対潜水艦攻撃』を行った、と」

 

その文言に山本次官は椅子に背を預け、思考を纏める。

 

 

(今のところ、潜航中の潜水艦に対しては駆逐艦の艦尾の爆雷投下だけだ。後々には爆雷投射機も開発されるが……だが、曲がりなりにも『前方への対潜水艦攻撃手段』があるのは敵潜水艦に対して色んな意味で大きい。さっきのオートジャイロによる対潜哨戒と組み合わせれば面白いしな。例の『ヘッジホッグ』がまだまだ先の状態を考えると…そもそも、『ヘッジホッグ』も『対潜迫撃砲』と言われている様だしな)

 

脳内で呟きながら、思考を纏めると山本次官は電話へと手を伸ばす。

航空本部、更には迫撃砲の調達の為に陸軍に話を通さなければならないからだ。

 

 

 

 

同じ頃 陸軍省 軍務局長室

 

 

「ふむふむ、なるほど…オートジャイロと迫撃砲の事で山本次官あたりから連絡がきそうだな…….それと、戦車は当分チハを基礎に開発・設計か…なるほど」

 

此方も『置き手紙』を読んでいた永田軍務局長はウンウンと頷く。

 

 

「更にドイツを手本にして、『駆逐戦車』『対戦車自走砲』を開発し、強力な戦車に対抗する事か……対戦車に戦車と拘らず、2手3手と手札を揃えておくべきか……確かにな」

 

ノモンハンと独ソ戦を中心とした戦車開発の加速・発展ぶりを聞いている永田局長としても、『最善策』だけでなく『次善策』も提言している事に満足していた。

 

 

「今から新型を作っても間に合わん。ならば、今は既存の改良に務め、その経験を次の新型開発に活かすか……我々は海軍と違い、来年と再来年に事がおきる。急な現状変更は混乱を招く可能性がある。ならば、比較的混乱の少ない状況を選択し、新型開発などの目処が付くところで大規模に弄るか……なるほど」

 

そう言いながらウンウンと頷く。

 

 

(…日本で本格的な対戦車戦になるノモンハン。現場の奮戦を司令部や我々が無にしては意味はない。更に『無意味な現場幹部の処分』は人材を無駄にする行為だ。これからの我々には現場を経験した人間はどんな資源よりも重要過ぎる…やる事は多いな)

は人材を無駄にする行為だ。これからの我々には現場を経験した人間はどんな資源よりも重要過ぎる…やる事は多いな)

 

そんな事を考えている時、山本次官からの電話が鳴った。

 

 

 

暫くして  八雲艦内

 

 

「お呼び立てして申し訳ありません。ですが、殿下の付き人でありますので、こう言う形を取る他、ありませんでしたので…」

 

 

「気にしなくてもよろしいです、古賀中将。こうでもしないと、周りに怪しまれるのは承知の上です」

 

遠洋航海訓練艦隊司令の古賀峯一中将の詫びに対し、松島宮は答える。

呼び出しを受けた2人が入室すると、古賀中将の他に『黄金仮面』の渾名で有名な現八雲艦長の宇垣纒大佐も居た。

 

 

「君の事は山本次官や高松宮殿下から聞いているよ。もちろん、君の世界での『未来』も触り程度だが、聞いている。さあ、我々にも詳しい『未来』を話してくれないかね?」

 

 

 

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