大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

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さて、皮肉が多分に入った題名なりました。


27 働き者

8月11日(イギリス標準時) ロンドン

 

 

「ですから、日本は我々に敵対する意思などない、と言ったではありませんか。首相閣下?」

 

自らの自宅である為、来客の相手に対しても平気で葉巻を吸いながらの言葉に、張鼓峰停戦の報に自ら足を運んだ現イギリス首相のネヴィル・チェンバレンはその態度に一言言うのを諦め、話を続けた。

 

 

「しかしだね、君が普段から煩く言っているナチスドイツから多数の対戦車砲を買ったのだよ? それに、過去に満州事変の事もあるだろう?」

 

 

「ですが、その日本は2・23クーデター未遂をきっかけに、軍内部の統制強化、更に政府との方針一本化により、あの時ほど暴走しなくなりましたよ。更にチャイナの蒋介石と軍事的な保障条約を結び、更に我が国との再同盟を模索している。これを踏まえれば、日本が我々と事を構える気などないと解るではありませんか?」

 

 

「やれやれ、それ皮肉かな? まあ、そうでなければ、ユニバーサルキャリアーの輸出とライセンス生産を要請してこないか」

 

そう言ってから暫く話してから、首相官邸に戻っていくチェンバレン首相の背中を見送ってから、チャーチルは盛大な溜め息を吐く。

 

 

「まったく、その『普段から煩く言っている』方の話を聞いてくれんかね……にしても、彼方は若い熱血漢な狂気持ち、そして、相棒の男装の殿下が上手い事をやっている。羨ましい事だ」

 

そう呟いて、葉巻の煙を吐き出す。

 

 

「……エンペラーが認め、軍・政府の中央・中堅がその方針を支持しているのなら、『右に倣え』な日本人ならば現場末端は従うだろうし、その意図を悟られずに事を動かす事は容易だ。まあ、『国が滅ぶ』と聞けば、誰しも亡国など望まないのだから、当然だが……我が国は前大戦の影響で国全体が『戦争恐怖症』に陥っているから、中々そうならない上に、儂だけが騒いでいる状況では、日本ほどスムーズにはいかんな」

 

苦々しく呟きなが、またポツリと呟く。

 

 

「あと20年、儂も若ければな…若気で突破するんだがな」

 

 

 

1週間後 8月18日 日本 海軍省 海軍次官室

 

 

「もう少し粘るかと思ったが、意外にもアッサリと此方の条件を呑んだな」

 

 

「これ以上、極東の国境紛争で苦戦していても利はありませんからね。どちらかと言えば、今はスペインを重視したいのでしょうけど」

 

 

「そのスペインもフランコ派が優勢か。まあ、確かにそちらを重視するな」

 

互いに仕事(山本次官は決裁。滝崎・松島宮は書類等の運送)をしながら先の停戦の事を話す3人。

 

 

「航空戦では初陣の第二航空戦隊を含めて貴重な実戦経験を得た訳だ。支那事変がない以上、少ない機会を活かすべきだな」

 

 

「まあ、予定上は短期間でも支那事変並みの航空戦を展開しますからね。他にもやる事はありますが」

 

 

「ノモンハンか。96艦戦で互角なら、後は運用次第だから、戦い様はあるのか…山本次官、新型艦戦『零戦』の投入は出来ないのですか?」

 

 

「難しいな。確かに滝崎君の助言で開発は進んではいる。だが、検証だったり何だったりで同じくらい時間が掛かるからな…ノモンハン終盤に先行量産型の11型が出せればいいところだろうな」

 

 

「ですよね……あっ、航空戦力と言えば、生産態勢の方は?」

 

 

「うむ、新規工場建設と同時に中島のアメリカ式生産法を採用する手筈だが…これまた、『やりながら』になるそうだ。あと、工場に隣接して滑走路を作る事に関しては問題はない。現在、造営中だしな。さあ、口を動かすのはここまでだ。もう少しやって、一区切りつけんとな」

 

そして、暫しの間、3人は無言で職務にあたる。

 

 

 

暫くして

 

 

「そうそう、通商関係でだいぶ動きがあったんで、君には伝えておかんとかな」

 

一区切りつき、3人がお茶と羊羮で一息吐いていた時、山本次官が言った。

 

 

「通商関係…ですか?」

 

 

「うむ。まあ、船舶関係でもあるがな。現在、ドイツとは通商協定、イギリスとは同盟再締結に向けて動いているな? これを見越しつつ、第二次大戦勃発後の事を考え、『欧州諸国巡回大西洋航路』策定を逓信省が進めている。まだ未確定な部分は多いが、優秀船舶建造助成施設枠の新田丸級貨客船3隻を宛てよう、との話になっている」

 

 

「なるほど……にしても、かなり賭けに近い話ですね? 確かに我々は欧州では中立を貫く方針ですが」

 

 

「中立だから、と言って攻撃されない保障も現時点ではない筈なのに…よくやるものだ」

 

 

「だが、大戦が始まれば、英独双方の船舶輸送は支障が出る。特にドイツは海路をイギリスに抑えられているからな。となれば、独自運航も必要だろう。特に我々は両国から様々な物を輸出入するからな」

 

 

「そうですね…まあ、何処まで転ぶか解りませんので、私は口を出しませんが…船の関係ですが、造船の方は?」

 

 

「既存の造船ドックの拡張はもとより、旅順、室蘭などに新たな造船所を建設中だ。新規造船所では海防艦や輸送艦等を建造してもらい、徐々に大型船舶の建造を行ってもらう予定だ。それと、先程の新田丸級が空母として使えない事になるからと、艦政では生産性を重視した護衛空母の設計を開始した。出来る限り、タンカー等の設計を流用するとの事だが…まあ、これも話が始まったばかりで、まだまだな件だがね」

 

 

「ほう、どうやら、お前が口を出さなくても、ちゃんと仕事はしているようだな」

 

 

「それが健全だと思うし、下手に口を出すのも悪いと思うよ」

 

 

 

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