大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

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今やネットでも(色々と情報の誤差が有りますが)普通に出てる事が起点のお話。
現在、難民・移民問題で揉めていますが、『人種差別? いや、この認識が常識』な世界の中で、ここまで『人種で区別せず』を貫き戦った日本が如何に大変だったか…。



29 ユダヤ人対応

時を遡り………

昭和12(1937)年12月26日 哈爾浜(ハルビン)

 

この日、哈爾浜では『第一回極東ユダヤ人大会』が3日間の予定で行われていた。

そこには樋口少将、陸軍の『ユダヤ通』安江仙弘(やすえのりひろ)大佐と共に松島宮と滝崎も参加していた。(服装はスーツ)

そして、開会の挨拶の樋口少将の祝辞から始まった大会を拝聴し、その後、予定外ではあったものの、松島宮が壇上に上がり一言述べた。

 

 

『今回、自らの知見を拡げる為、この様な貴重な機会に参加させて頂きました。私は軍人としても、更に責任ある身としても、未熟な若輩者であります。ですが、あなた方を含めた辛い目に遭っている方々の希望になれる様、微力ながら尽力致します。皆様に平穏と希望がありますように』

 

そして、帰る際に松島宮は滝崎にこう言った。

 

 

「今回の件で気を引き締めた。そして、腹を決めた。偽善と言われても、私は正しいと思った事をやるぞ。末席とは言え、皇族を舐めるな」

 

苦笑いを浮かべながら、滝崎は頷いた。

 

 

 

時を少し進めて……

昭和13(1938)年3月8日 満州・ソ連国境付近 オトポール駅

 

 

極寒の中、多くのユダヤ人が列車や駅舎で足留めされていた。

彼らはドイツで迫害を受け、自らと家族を守る為にシベリア鉄道を乗り継ぎ、ここまでやって来た。

最初はソ連が受け入れていたが、彼らが農作業を含めた開墾作業が苦手であり、シベリア開発に向かないと判断したソ連は受け入れを拒否。これを受け、彼らはビザも何もないまま、ソ連領を横断し、満州国境までやって来た。

しかし、満州国外交部は日本のドイツとの外交関係から、入国を渋っていた。

ここで満州国在住のユダヤ人から相談を受けた樋口少将が外交部に『日本はドイツの属国ではない。ましては満州は日本の属国ではない』と言い、満州鉄道総裁である松岡洋右に頼み、無料輸送の段取りをつけた。

これにドイツは抗議したが、東條参謀長は勿論、日本政府自体が『内政干渉だ』と突っぱねた為、この件は有耶無耶となった。

後に『オトポール事件』『オトポールの奇跡』と呼ばれる一件だが、これを聞いた滝崎はかねてからの案件を実行に移した。

 

 

 

更に時系列を進め……12月6日 帝都東京 海軍省次官室

 

 

『ただいま、集計が終わりました……圧倒的多数をもって、審議されていた『猶太(ユダヤ)人難民保護法』、並びに『猶太人対策要網』が貴族院・衆議院の両院で可決されました』

 

ラジオから流れる放送を滝崎や松島宮、山本次官、前田侯爵らと共に聞いていた。

 

 

「君だけでなく、松島宮殿下が随分と熱心に貴族院議員達を説き伏せていたからね。いやいや、良いものをみさせてもらったよ」

 

ニコニコと微笑みながら語る前田侯爵に松島宮は苦笑いを浮かべる。

 

 

「しかし、かなり大事にしたな。まあ、ユダヤ人保護は陛下の意思でもある訳だが…『国家国民の意志』と堂々と世界に宣言するとはな。ドイツが怒るぞ?」

 

 

「ドイツが怒るなら、放置しておきましょう。どうせ、いつまでも日本に構って、怒れませんし…それに、そのデメリットなんて打ち消してくれるメリットがある訳ですし」

 

 

「君の世界では三国同盟が締結されたから、ユダヤ人の引き込み策が空中分解したんだったね? だが、我々は通商協定、しかも、イギリスとの再同盟に向けて動いている。しかも、イギリスやアメリカは保護もせず、露骨に放置している。なるほど、少々悪どいが…まあ、そこは対価と言うべきかな?」

 

 

「其方に関しては窓口でしっかり説明をして頂かないと…メリットだけでなく、デメリットも公開する事により、疑心暗鬼を解きます。まあ、長年弾圧されてきた彼らですので、完全には解けませんでしょうが…ですが、我々に彼らを害する気も、後ろめたい事もありません。ただ、『協力』して貰えれば良いのです」

 

 

「その『協力』がアメリカを揺り動かす事でもあるんだが…まあ、そうでもしないと、あんな化け物の様な国と戦うなど出来ん訳だしな」

 

山本次官、滝崎、前田侯爵の3人の会話に入れてない松島宮が割り込む。

 

 

「それで、彼らをどう使ってアメリカに揺さぶりを掛けるのだ? 日露戦役の様に金工面をしてもらう過程で、アメリカから盗んで貰うか?」

 

 

「あはは、それは面白いね。まあ、やれたら大打撃だけど…まあ、もの凄く単純な話、『報道工作』さ」

 

 

「なるほど、『自由と民主主義』を標榜するアメリカが大統領でも逆らう事の出来ない『世論』で揺さぶるんだな?」

 

 

「はい。故に山本次官が真珠湾攻撃で意図した『強大な一撃をもって、アメリカ国民を厭戦・反戦感情をもたらし、早期講和に繋げる』は間違ってはいませんでした。なにせ、ベトナム戦争以降、最終的に世論によってアメリカは戦争を『止めざるを得ない』事があった訳ですし」

 

 

「ユダヤ人の伝手を使い、在米ユダヤ人の力を借りて、様々な形で無形な打撃を加えるか…やれやれ、君の話を訊くと、ますます日露戦役の応用だな」

 

 

「そうかもしれません。ですが、この段階での問題はどちらかと言うと『日本国内の世論形成』です。早期講和を目指すなら、日露戦役でのこの失敗を解決しませんと」

 

 

「確かにな。勝ち戦で喜ぶのはよいが…君が言う『日比谷の再来』は今回だとアカが利用する事は容易に予想出来る。国内報道も統制せんとな……やれやれ、ブン屋は余計な事しかしないな」

 

山本次官の最後の呟きに苦笑いを浮かべながら、頷いて賛同する滝崎だった。

 

 

 

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