fate/faker oratorio   作:時藤 葉

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LV.0 【faker oratorio】
運命の夜は訪れない


 何故こうなったのだろうか、そう思考を巡らせる。

 

 今の今まで、特にいつもと変わりない日常を過ごしていたはずだ。

 

 それが今となってはどうだろう。

 おおよそ人間とは思えぬほどの槍使いに胸を一突きされ、虫の息。

 全身と思考の隅々までが死の気配に覆い尽くされている。

 

 そう遠くないうちに命の灯火が燃え尽きると、確信さえできる。

 

 嫌だ、死にたくない、死にかけの我が肉体はそんな命乞いの言葉すらも発してくれない。

 

 せめてもの抵抗として、心中で叫び続ける。

 

 死んではならない、と。

 

 月明かり照らす夜に、養父に誓った言葉が思い出される。

 

――しょうがないから、俺が代わりになってやるよ。

 

――爺さんはオトナだからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ。まかせろって、爺さんの夢は――

 

 そうだ、正義の味方になる、ならねばならない。

 

 それが衛宮士郎という男の使命なのだ。

 

 あの日を生き延びた者として、自分の死が無意味であってはならない。

 

 狂おしいほどの悔恨と絶望、しかしそれすらも死という理が押し潰す。

 

 やがて死は全身を満たし、思考を侵し、命の灯火を消し去った。

 

 

――――この世界に運命の夜は訪れない、あるのは衛宮士郎という男の死のみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 まず最初に感じたのは、暖かさだった。

 

 それは柔らかなベッドで暖かな毛布に包まれて寝ていると錯覚してしまうような、甘美な感覚。

 

 そしてゆっくりと、微睡みから覚める。

 

 まず最初に思い出したのは死の記憶だった。

 

 確かに自分は死んだはずだ。

 青く、人間とは思えない超常の力を持つ槍使いの男に無様に殺された。

 生きたいと願った、生きることが自分の使命だった、だというにも関わらず現実は自分に死を齎すのみだった。

 

 では、今感じている感覚は何なのだろうか。

 

 生憎と天国などというものは信じていない。

 よしんばあるとしても自分が行くのは地獄だろうから、少なくとも死後の世界という類のものではないだろう。

 

 ああ、何も難しい話ではない。

 五感があるのならば、何かの要因で生き延びたということに違いない。

 ならばするべきことは単純、目を開けば良いのだ。

 

 目を開いた先にあるのが、自室の天井か、病院の天井か、何なのかはわからないが。

 

 とりあえず助けてくれた人に礼をしなければならない。

 

 最初に視界に映るのは、何だろうか。

 できれば自室か保健室の天井出会って欲しいが、おそらくは病院の天井だろう。

 

 早めに体を治さなければ藤ねえに怒られるな、なんてことを考えつつ、ついに目を開く。

 

 

――視界に写ったのは、眼前で自分を見つめる並外れた美貌の緑髪の美女だった。

 

「……なんでさ」

 

「ふむ、意外と元気そうだな」

 

 

 

――――これは神々住まうオラリオの地に降り立った、贋作者(フェイカー)聖譚曲(オラトリオ)である。

 

 

 

リメイクについて

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