fate/faker oratorio   作:時藤 葉

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似非関西弁難しい……。


ステイタス

 

「……ステイタスの更新?」

 

「せやでー。強くなるためには欠かせないことやな」

 

 リヴェリアに連れられてロキに私室に入ると、突然『ステイタスの更新をする』と告げられた。

 

「色々忙しそうやったからタイミングを見計らっとったけど、色々話したいこととか説明してないこともあるし、これ以上遅らせるわけにもいかなかったんや。疲れてると思うけど堪忍なー」

 

「構わないけど、それでステイタスの更新って?」

 

「あー、それはやなー。……リヴェリアー」

 

「……まぁ、大方説明係として呼んだのだろうとは思っていたが」

 

 リヴェリアはそう言って嘆息するが、慣れているのかどこか諦めたような雰囲気を漂わせつつ説明を始める。

 

「今日はステイタスとアビリティの説明だな。一週間前にシロウはロキを契約し神の恩恵(ファルナ)が与えられた。では具体的にどのような力が与えられたのかというと、それは五項目の基本アビリティと、特定条件下でのみ得られる発展アビリティ。また発現するかは個人差があるが、発現すれば非常に役に立つスキルと魔法。これらが主に恩恵で得られる能力だ。……まぁ契約したてのシロウに関係有るのは基本アビリティだな」

 

「他のものは関係ないのか?」

 

「関係がないわけではない。ただどれもまだ発現していない、というだけだ。これから先ランクアップしてくるような時にはまた違うがな。さて、基本アビリティは『力』、『耐久』、『器用』、『敏捷』、『魔力』の五項目だ。まぁどれも読んで字の如しだな。では今のシロウの基本アビリティの値が幾つかと言うと……全て初期値、オール0」

 

「……え?」

 

 初期値、オール0。

 要は欠片も上昇していない、ということだろう。

 

「じゃあ、訓練の意味は一体……」

 

「まぁ待て。確かに私の言い方が悪かったが、落ち込むのは話を聞いてからにしろ。『経験値(エクセリア)』を積むことで能力は上昇すると言うのは既に話したことだが、即座に成長するというわけでもない。例えばアイズとの模擬戦。あれは実戦に近いから、実戦ほどではないとはいえ魔力以外の四項目の経験は得られただろう。ではその得た経験でいつ成長するのか、というのがステイタスの更新なわけだ」

 

「……なるほど。強くなるためっていうのはそういうことか」

 

「ステイタスの更新をしなければ、極論を言えばどれだけ経験を積んでも初期値のままということでもあるな。そして基本アビリティの特徴として、熟練度というものが挙げられる。これは初期値I0を基準に100刻みで最大値をS999とする、項目ごとの能力の高低を示すものだな。項目に関連が深い経験を積めばその項目が重点的に伸びるし、質の良い経験や新しい経験をを積めば上昇値は大きくなりやすい。一般的に訓練ではあまり伸びず実戦での上昇がほとんどになるな。新人であるシロウは今のうちなら模擬戦などでも十分な経験値(エクセリア)を得られるが、いずれはダンジョンでの実戦が必要になってくる」

 

「よし、そんじゃそろそろ更新を……」

 

「まて、ロキ。シロウならわかるがお前が急かしてどうする。気になるのはわかるが、まだランクアップの説明が終わってないだろう」

 

「……フィンに説明を任せたほうがよかったんかなー」

 

「そう思うのは勝手だ、私に任せると決めたのはロキだろう。……まったく、では気を取り直してランクアップの説明だな。例えば私やフィンであればLV.6、アイズであればLV.5、シロウであればLV.1というように、同じステイタスにも位階が存在する。その上昇がランクアップというわけだ。ランクが1つ上がるだけで能力は飛躍的に上昇し、その差は子供と大人と表現できるほどに大きい。アイズとの訓練で、その差の一端は理解できたんじゃないか?」

 

「ああ、それはもう。身に染みるほどに……」

 

 思い出すだけでも痛いくらいに、何度も蹴られた。

 一撃で気絶できればいいが下手な手加減で気絶できない時が一番辛い。

 あれで一端だと言うのだから、確かに一つ位階が違えば持つ能力は大きく違ってくるのだろう。

 

「ランクアップは普通に経験値(エクセリア)積むだけでは至れない。通常を比べて遥かに上質な経験値(エクセリア)が求められる。例えば格上のモンスターを独力で討伐したりなど、所謂『偉業』を達成する。それがランクアップの条件だ。そしてランクアップを果たした暁には、基本アビリティの熟練度は一旦リセットされ、一つ上の位階として再スタートとなる。……もっとも、LV.1からLV.2までのランクアップの最短記録は、アイズの一年だからな、まだ先の話ではある」

 

「一年って……相当先の話だな。そんなにかかるものなのか」

 

「さらに言えば、ランクアップを重ねる毎に遠くなる。今から気にしたところで意味は無いさ。……そろそろ、お待ちかねのステイタスの更新というこうか」

 

「よっしゃー! ウチに任せときー!」

 

 更新される当人よりも何故かはしゃいでいるロキに、契約時と同様に上着を脱ぐことを促される。

 慣れたという程でもないが、二回目ということもあり否やはない。

 手早く上着を脱いてで俯せになる。

 

「(……なるほどなー。リヴェリアがただの異世界人(イレギュラー)ではないって言ったのもわかる気がするわ。後は『マジュツ』の確認やな)」

 

 ロキ・ファミリアの主神として数多の眷属たちのステイタスを見てきたロキにとって、ステイタスの更新は手慣れたものである。

 

 そうして確認できた数値は、魔力以外の四項目がおよそ20から30、特に耐久が40近い上昇だった。

 新人であるため値が伸びやすいというのを考慮しても、実戦未経験の模擬戦のみでここまでの上昇は中々のものだ。

 値が伸びていけば流石に模擬戦のみではこれほどの上昇は望めないだろうが、いずれはダンジョンに潜り嫌でも実戦をこなすことになるのだから問題はない。

 

 問題が在るとすれば、それは魔力の項目にあった。

 

「(それにしても、魔力だけ上昇値120オーバーってどういうことやねん!しかも魔法は発現しとらんし)」

 

 基本アビリティは対応する項目に関係の深い経験を積むことで上昇する。

 要するに魔力の項目が上昇するには、魔法の訓練が不可欠なのだ。

 

 しかし魔法が発現していないにもかかわらず、魔力の上昇値は120を超えている。

 リヴェリアの話していた『マジュツ』、というものが原因なのは明らかだった。

 

 ありがたいことにレアスキルなど厄介の種になりそうなものは発現していなかったが、それでも頭の痛い問題である。

 この魔力の上昇を偶然であるとか理由はわからないとかそういうものだとか、とにかく隠すべきなのか、それとも包み隠さず話してしまうべきなのか。

 

 見たところ年齢はそれほど高くもないが、年齢に見合わぬほど精神が成熟しているとは聞いている。

 有り体に言えばあまり頭のよろしくない者が多い冒険者の中でも、シロウは取り立てて知性が深いとリヴェリアのお墨付きだ。

 おそらく話してしまったほうが上手くいくだろう、頭がいい者は察しが良い、それならば下手に隠すよりかはきっちり話した上でその重要性を理解してもらったほうがやりやすい。

 

 リヴェリアに確認するように視線を向けると、頷きを返された。

 

「(ま、とにもかくにもマジュツの確認やな……)さらさらっと、これで更新は終わりやなー」

 

 再びステイタスの隠蔽を施すと手慣れた手つきでステイタスを書き写す。

 士郎は起き上がると上着を着直し、確かめるように両手を握っては開く、という動作を繰り返していた。

 

「……あまり変わった感じはしないな」

 

「ランクアップでもしないと明確に変化を感じたりとかはないなー。でもステイタスが急に上がり過ぎると制御を間違えたりもするから、ダンジョンに潜るようになったらこまめに更新しに来てな。シロウのステイタスはこんなもんや」

 

「……他の四項目と比べて魔力の伸びが異常、か」

 

 ステイタスが書き写された紙を手にとった瞬間、士郎はスッと目を細めそう呟いた。

 

「ま、それに関しての話もあるけど、とりあえずは『マジュツ』ってのをウチの前でしてみてくれんかな」

 

「それは構わないが、強化するものがないとどうしようもないぞ?」

 

「んーそうやな……。じゃあこれで」

 

「…………まぁ、ロキが構わないというのなら俺はいいんだが」

 

 士郎が手渡されたのはロキの私室においてあった、何というか、控えめに言ってかなり個性的な置物だった。

 リヴェリアも苦笑いしている当たり、ロキのセンスが……ということだろう。

 

 しかし強化するにあたって問題はない。

 リヴェリアには一度見せているし、いくらなんでもロキに隠すというのはない。

 おまけにここ一週間それなりの回数行使してきたが、一度も失敗はなかった。

 

 理由は未だにわからないが、成功し続けているという事実があれば十分だ。

 

「――――同調開始(トレース・オン)

 

 基本となる骨子を解明し、構成されている物質を解明し、構成されている材質を補強する。

 成功体験こそ最近のものしかないが、それでも十分に慣れていることもあり程なくして無事に成功した。

 

「よし、成功だな。見た目じゃわかりにくいけど硬度強化、硬くなってるはずだ」

 

「……なるほどなー、流石にちょっとこれは。いや、まぁええか。とにかくそのマジュツが魔力の上昇と関わってるみたいやな。わかっとると思うけど、ウチとかフィン以外の前では絶対に使わんのと話さんこと。シロウのことや、わかっとるとは思うけど一応な」

 

「ああ、もちろんだ。あんまり人前で見せるものでもないからな」

 

「それなら安心や。それじゃ夜も遅いし、早く部屋戻って休みやー」

 

 

 そうして士郎とリヴェリアが去った後、ロキは一人で呟いた。

 

「異世界の何かだろうとは思っとったけど、まさか神の力が関係ないとまではなぁ。これがバレたら、相当厄介なことになるやろな。平和に済めばええんやけど……」

 

 ロキはオラリオに降り立った神々の中でも、一際眷属に対する愛情が深い。

 そのため士郎に対して厄介な拾い物をした、などとは欠片も思っていない。

 

 ただひたすらに、彼女は士郎の行く末が平和であればいいと願うばかりだった。

 

 

 

 

「そういえば明日の連絡だが、明日のアイズとの模擬戦は休みだ。それと一日予定を空けておくように」

 

 ロキの部屋から出て自室に戻る道中、リヴェリアはシロウにそう告げた。

 

「休みなのはわかったけど、一日空けておく理由は?」

 

「いつまでも模擬戦ばかりし続けるわけにはいかないからな。ダンジョンに潜る準備だ。明日はアイズの案内のもと、ギルドでの冒険者登録と武器の買い出しに行ってもらう。ああ、ヴァリスのことは気にしなくていい。新人にそこまで大層な武器を持たせる気はないからな、ちょっとした餞別だと思ってくれればいい」

 

「ああ、わかった。ありがとう」

 

「詳しいことは明日アイズから聞いてくれ。既にアイズに話は通しているからな」

 

 そう告げ終わった後、士郎と別れたリヴェリアは胸中で呟く。

 

「(……まぁ、これを決めたのは全部フィンなのだがな。新人の面倒を見たことが無いアイズにもそういう経験を積んで欲しい、とは言っていたが、間違いなく目が笑っていた)」

 

 無事に済むといいのだが、他人事のようにリヴェリアはそんなことを考えていた。

 

 




 シロウ・エミヤ

 LV.1

『力』: I0 → I32

『耐久』: I0 → I41

『器用』: I0 → I24

『敏捷』: I0 → I20

『魔力』: I0 → H121

《スキル》

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《魔法》

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リメイクについて

  • (ソードオラトリアを読んでから)書け
  • (オリ設定のゴリ押しで)書け
  • (いっそ全く関係ない新作を)書け
  • 書かなくていい

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