オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》 作:XENON
「………………」
薄暗い室内で微かに何かが動いた。頭から布団をかぶり体育座りした少年の姿。研究所立てこもり事件から一週間が過ぎ病院へ運ばれ目を覚ました彼は心を閉ざしてしまった
それ以上に連日連夜のマスコミが押しかけテロリストに射殺された家族の唯一の生き残りの彼に取材をしようとし、今はあてがわれた個室に身を潜め外界から身を守るように閉じこもっていた
胸にあるのは生前の家族の暖かで楽しく過ごした日々…祖父、母、姉、妹と他愛ない会話やストライクアーツを妹と一緒に学んだ、姉から身体を鍛えろよと、祖父と母からは研究テーマを互いに論議していた
何時までも続くと思った日々はもう二度と帰らない…あの笑顔と声も温もりも
激しい絶望が心を深い闇へとおとしこむ…しかし扉の向こうから声が掛けられる
「………☆☆☆☆。起きてるか……あ、眠ってるよな…もし起きてたら聞いてくれ」
遠慮しがちな声に意識を向ける、声の主はニックと言う人物…病院の医師なんだろうと思いながら目を閉じ耳を押さえる
誰の声も聞きたくない。意識が目覚めた彼に待ちかまえていたマスコミが押しかけインタビューをしてきた。中には失礼きわまりない内容《今の気持ちはどうですか?》《答えてくださいよ》《あなたが生き残れたのは何故なんですか?》
家族を失った彼の心に突き刺さる刃のような言葉から逃げた…なんで、なんでこんな事にと何度も何度も自問自答した
「………すまなかった。俺たちが早く突入していれば……すまない……☆☆☆☆☆」
扉の向こうからの謝罪の言葉はもう届かない。布団にくるまろうとした時、堅い何かに足があたり空間投影モニターが開き映し出されたのは会見場、たくさんの報道機関関係者が管理局地上本部提督《大東貴一》に質問を投げかけていた
「では、先日の立てこもり事件ででた犠牲者はアナタの判断ミスでは無いのですね?」
「テロリストからの要求、地球蒼生軍幹部の釈放と逃走経路の確保、そして大東提督の退陣要求があったと聞きますが。もし飲んでいれば犠牲者を出すことは無かったのでは?」
「飲めば彼らは大人しく人質を解放すると本気で皆様は思っているのですか?もし私が要求をのみ逃走し合流すればさらなる混乱が起こるでしょう。まだ残党は地下に潜み今回のようなテロよりもはるかに最悪な事件が起こりうる可能性があるのです」
……大東貴一提督のインタビューが流れていく。しかし彼の瞳には微かな怒りの火が見えた。要求をのめば自分の家族は助かったんじゃないのか?さらに驚くべき言葉を耳にした
「……テロリストと戦う以上避けられないやむおえない犠牲だったのです。今回の事件の犠牲となった四人に誓います。私は必ず地球蒼生軍残党、テロリストを廃し平和を取り戻すことを…」
「ふ、ふざけるなああああ!くそ!くそ!……帰せよ、母さんを、じいちゃんを、ノイン姉さんを、ハーティを………返せよう……」
モニターめがけ殴り抜く、しかし実体の無いモニターをすり抜け壁に拳がぶつかる。しかし何度も、何度も殴りつけ皮膚がさけ血が滴り落ちる…その瞳には怒りの炎が満ち鬼のような形相を浮かべ再び殴りつけようとした時、誰かに腕を握られた彼の目に映ったのはややウェーブがかかった黒髪にサングラス、黒のスーツにタイトスカートに身を包んだ女性のすがた
「……誰だよあんたは……」
「私はP・T。アナタに力を与える者…………復讐をしたいのでしょう?家族を奪った大東に……」
「……なら力を寄越せよ。アイツラに復讐するための力を!!」
「ええ、もちろんあげるわよ……来なさい。アナタの望む力を得られる場所に案内してあげる………《軍神の星》…火星に」
妖艶な笑みを浮かべ少年の手を取るP・T。数十分後、巡回の看護婦が来た時には二人の姿は無かった。そのことを知ったニックはつてを頼り探したが行方はようとして分からなかった
復讐の炎に身を焦がす少年はP・Tに誘われ向かうは軍神の星《火星》…大東貴一。Gspirits隊の首もとに突き立てる復讐の牙は確実に研がれ始めた
翔真が久しぶりにニャル子とのデートにイギリスの街を散策し、黒いオーラをあふれ出させるヒロインズに尾行されていた頃………
「マルス、スラスター出力スロットをあげてくれ」
「うん。いくよ……ん~やっぱり転移した時に基部に異常な応力がかかったかもね。じゃ、ここをこうしてバイパスを繋ぎ直して……」
小島に降りてから1日、ナガスミとマルスは互いの機体の整備をしている。次元転移の際に起きた重力変動で異常がないかと調べたのだが、案の定問題が発生していた
ナガスミのウイングガンダムもだがマルスのエクシェスも関節部と一部管制OSにもダメージが見受けられ、このまま移動し戦闘状態になれば不測の事態に陥ると判断し今に至る
間接周りにかかる負荷を減らすためにOS調整するマルス。モニターに流れるデータ羅列から視線を離さず片手で手慣れたように高速タイピングしていく
「すごいな~まるでコーディネーターみたいだな?」
「……そうかな?でもナガスミくんもスゴいよ。このウイングガンダム、普通の人間なら気絶するGに加えて、ビームを弾く特性をもつガンダニュウム合金、このバスターライフル…ビーム収束帯から生まれる高出力のプラズマと電磁波の奔流……」
ナガスミのウイングガンダムに関しての考察を言いながらOS調整を進める…やがて手がとまりキーボードを左へ収納した
「コレでよし。ナガスミくん実際に動かしてみて」
「お、おう」
パイロットシートからでるマルスと入れ替わり深く身を任せるように座るとコントロールスティックを握り動かす。ウイングバインダー基部が先程と違い滑らかに展開、バーニアノズル方向転換もだか自分の身体のように動く事に驚いていたのもだがウイングガンダムを短期間で機体、武装特性を理解していることに驚いていた
「どうかな?何か違和感はない?」
「いや寧ろ前よりも反応がいいな。サンキューなマルス」
「良かった。でも長時間の戦闘は無理かも…万全にするにはせめてMSが整備出来る施設が近くに…」
言いかけた言葉を遮るようにエクシェスのコックピットから音が鳴り、ウイングガンダムから離れ素早くシートに身体を滑らせ座るとモニターに見覚えがある反応が示されている
スパナが三角形状に組み合わさったシンボルマーク…もしかしたらと思いマルスは現在位地座標を照合すると完全一致。みるみるうちに笑顔に変わる
「ナガスミくん!今から僕について来て!!」
「え?な、なんだよ。今でて誰かにみっかったりしたら…ってかドコにいくんだ?」
「大丈夫。今からいく場所はジャンク屋さんがいる場所だから」
矢継ぎ早に言われ困惑しながらもOSを立ち上げ、ウイングガンダムは機体を起こしウイングバインダーを開き先に飛翔したエクシェスについていった
☆☆☆☆☆☆☆
「よう!久しぶりだなマルス」
「ロウさん?いつ地球に?」
「ああ、ついさっきな。それよりエクシェスのとなりのMSはなんだ?見たこと無い奴だな~連合のGにも似てるしザフト?火星のとも違うし…まあいっか。みた感じかなりガタガタだなぁ~よし、メンテナンスしてやるからハンガーに固定してくれ」
「あ、あの今、持ち合わせが…」
「いいって、いいって、珍しい機体を整備できるなら代金はいらないさ。お~い樹里も手伝ってくれ~」
「わかったから、ロウも手伝いなさいよ~ソレスタルビーイングが近くに現れたから、連合とザフトが調査に来るみたいだよ」
「わかってるって、それにギガフロートは移動するしな大丈夫だって。さあってと気合い入れてやるか」
エクシェスに先導されウイングガンダムと共にナガスミが来たのは海上に浮かぶマスドライバー施設を備えた人工島…ギガフロート。二年前、アーモリーワンとは別に作られIS運用と軌道エレベーター開発および建築資材を打ち出すためにIS学園、連合が建設していたモノだったが情勢悪化に伴い計画は白紙にされ放棄されていたギガフロートをジャンク屋組合が完成させ組合本部へ生まれ変わった。当然、MS整備および解体プラントも備えた最大の移動拠点…そこに着陸しハンガーに固定したマルスは意外な人物《ロウ・ギュール》と再会し、しかもタダで整備してくれる事になった
今、マルスとナガスミの前でロウの指示に従い整備が始まるのを見届け外…ギガフロート上層へでる。
「ん~やっぱり海はひろいや。ってナガスミくん、なにしてんの?」
「何って釣りをすんだよ。整備終わるまで暇だし…やるか?」
「そうだね…」
渡された釣り竿を使い軽くスナップを効かし海へ釣り針を投げる。それを見ながらマルスも同じ風にやる…穏やかな風と潮騒、太陽が照らしていく
「お~い、マルス、ナガスミ、整備終わったぜ………おいおい、なんだ?コレは??」
やがて整備が終わった事を知らせに来たロウが見たもの…マグロ、カツオ、ブリ、鯛などなどが山のように積まれ夢中になって魚を釣り上げる二人の姿だった
……その日は新鮮な海の幸満載の夕食だったと記しておこう○♪