オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》    作:XENON

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煌めく星々の海に浮かぶ赤い星…《火星》。火星開拓者達がすまうオーストレルコロニー群か一隻の船、惑星間航行ユニット兼コンテナを装備し星の海原を進む船《アキダリア》。向かうのはDSSD《バウトロヤ》へ火星で採掘されたレアメタル輸送…それは表向きの事であり、真の目的を知るものは誰も知らない

いや知る者がいる


「…………」


微かな呼吸が狭いコクピットに響く。漆黒のパイロットスーツに身を包んだ十三歳ぐらいの少年がモニターに映るアキダリアをみている。その瞳には暗い炎が見える

「目標確認……オーストレルコロニー政府特務艦アキダリアへ攻撃を開始する………アレス・リアクター、最大稼働……ドラゴン・ファング展開」

両肩に装備されたドラゴン・ファング…その血のような赤い爪が開く。中心部分にパルスレーザが照射、太陽黒点にも似たエネルギー球を形成、放電現象が機体の周囲に発生、やがて結晶化寸前までに高められる


「地球…テラーナ。コレが火星…マーシャンの意志だ…オレの復讐の生贄になれ!ラグナロク!!」


トリガーを引いたアレスの声に答えるように極限までに高められ半ば結晶化した真紅のエネルギー弾が解放され、エクシェスが身を隠すデブリ帯を消し去りアキダリアを飲み込んだ…いや何かに防がれた

この任務は極秘のはず、情報が漏れた事を疑うが有り得ない。急進派の結束は固いからだ…なら誰がと思った時、激しく機体が揺れた。ダメージチェックすると両肩ドラゴンファングが赤く表示され使用不可になっている



「…ドラゴンファング使用不可……あれか!」


モニターに映された機影…自らのエクシェスと同じ漆黒に塗られた連合のG系列の特徴を持つ頭部、躯体はどの陣営のMSの流れを汲まないやや流線型の装甲に包まれている…未知の機体の登場に驚きながらサブモニターに移るアキダリアが離れていくのが見える


「(…どの陣営のだ…連合、ザフト、DSSD、オーブのpシリーズとも違う。コイツは任務遂行の障害になる)………ならば破壊するまでだ」


「………………」


両機のツインアイに光が走る、ヴォワチュールリュミエールを起動し黒いGへ対艦刀を構え切りかかる、相手もビームサーベルを抜き防ぎ切り払う。何度もぶつかり距離をとり再び切り結ぶ

「………貴様の所属を答えろ……オーストレルコロニー政府の手の者か!!」


「………」


「答える気はないか……ソコだ!ドラグ・ファング!噛み砕け!!」


左右腰部に残されたドラグ・ファングが乾いた音と共に離れ、相手に迫る…が意に介さないように左右に構えたビームサーベルで切り払った時、微かに隙が生まれる。ヴォワチュール・リュミエールで瞬く間に懐に潜り込んで対艦刀をコックピットめがけ突き刺す…


「……はあ、はあ……」


ゆっくりとビームサーベルを手放した宇宙に漂う機体には生体反応が消えている事を確認し、アレスはエクシェスの向きをかえアキダリアへ追撃すべく向かおうとした…しかし沈黙したハズの黒いGの瞳に光が蘇る。ゆっくりと離れていく姿を捉え両肩にある脚の爪先まで伸びたユニットを真正面まで可動、固定と同時に凄まじいエネルギーの奔流が溢れさせながら胸に突き刺さった対艦刀をメリメリと抜き、大きく構えエクシェスめがけ投げつけた


「動体センサーに反応!?まさか!!」


機体を反転しアレスが捉えたのは先ほどの所属不明機に突き刺した対艦刀、とっさに振り払った…この時回避していれば運命は変わったのかもしれない。凄まじいまでの高出力ビームがエクシェスの両腕、両脚を飲み込む。いくらビーム耐性が向上したVPS装甲は溶け四肢に内蔵されたアレス・リアクターが誘爆し爆炎に包まれた

「リアクター…消失……ぐあっ!?」

当然、コックピット内も各種モニター、計器から火が吹き小規模の爆発が起きた…四肢を失ったエクシェスはゆっくりとデブリ帯へ向かうのを見届けるように黒い機体はまるで陽炎のように消えていく


「し、死んでたまるか……まだ大東に…Gspirits隊に……復讐……を………復讐するまで死ねるか………」


コックピット内には血が水しぶきのように溢れひび割れたヘルメットが浮かぶ中、アレスは頭から血を流しながらノーマルスーツに空いた穴を補修材でふさぎ内部温度を生命維持ギリギリまで下げ、骨折した右腕の痛みに耐えながら手のひらに新陳代謝を抑制、強制的に睡眠へといざなう効果をもつ注射をした…軽く息をはき予備のヘルメットをかぶった。


「救難信号…発信……冷凍睡眠起動。生きてやる、絶対に生きて…復讐…復讐…復讐するまで……お、おれは………母さん、じいちゃん、ノイン姉さん、ハーティ……かな…ら……ず……」

頭部からの大量出血、加えて鎖骨および右腕上腕骨骨折、内臓にダメージ…普通なら死んでもおかしくないケガ…機体の損傷も激しく任務遂行は困難と判断したアレスが取ったのは自らを仮死にし生き延び救難信号を急進派へ届くようにすること

回収に来る可能性は低い…しかし僅かな可能性と燃え盛る復讐の炎が死ぬ事を許さない


「……かならず……生きて……やる…」


激しい頭の痛みを最後にアレス・ルセディスの意識は深い深い闇へと落ちていく……エクシェスはゆっくりとデブリ帯へ流れていった


半年後……オーストレルコロニー付近

「ひさしぶりの火星だな~」


「ロウ~もうじきしたらオーストレルコロニーに入航準備しないとダメだよ」


「わかってるって……ん?なんだアレは…ジョージ、進路上に何か見えるか?」


『キャプテンだ!ふむ、どれどれ~あれはMSの残骸みたいだな……ちょっと待て!微弱な生体反応を確認した』


「……ジョージ、舵を任せるぜ。樹里、ちょっくらレッドででるわ」


「え?まってよロウったら~んもう……」


樹里の声を背に俺は愛機のレッドへ乗り込むとそのまま宇宙に出た…たしかここらへんだったなとセンサーを生体反応に切り替え探すと直ぐにヒット。モニターに映し出されたのは頭部と胴体だけ残されたMS…とにかく近づいて触れてみて息をのんだ

両脚、両腕を高出力ビームで跡形もなく吹き飛ばされてるのもなんだが俺が手伝ったΔ、アウトフレームと似てる。興味は沸くか今は生体反応を調べるためジョージに調べてもらっている


『まずいなロウ、接触回線経由でアクセスしたんだがかなり重傷だ…冷凍睡眠状態がかなり劣悪だ。コックピット内映像をまわすがかまわないか?』


「ああ、見せてくれ…その前に樹里にメディカルポットを使えるよう伝えてくれ」


『わかったよ』


ジョージの通信が消えるのと入れ替わりに映されたのは乾いた血に空になった注射器、うっすらと霜が降りてるパイロットはぐったりとしてる…やばいな。とにかく急いで《リ・ホーム》へバーニアをふかし向かった


★★★★★★★


「………ん」


「よう、気がついたか?」


「………」


「お前、危なかったんだぞコックピットハッチ開いたら血塗れで樹里が気絶しちまうし、ノーマルスーツ脱がしたらヒドいケガだし…まあ助かったからいいか。あ、俺の名はロウ・ギュール、宇宙最強のジャンク屋だ。名前なんて言うんだ?」

「……か…ない…」

ギプスに固められた右腕に頭に巻かれた包帯が目立つ少年の唇が微かに震えゆっくりと顔を上げた。前髪に赤いメッシュに黒い髪、瞳からは困惑の色が見える


「わからない……なにも……ボクは誰なんですか」


「ジョージ、コレはいったいどうなってんだ?」


『キャプテンだ。ん~いまあらためて詳しく診てみたんだが……どうやら不完全な冷凍睡眠状態が原因で記憶喪失状態になっているようだ』


「だれなんだ……ボクは……思い出せない……」


…復讐鬼アレス・ルセディスとしての記憶は彼岸の彼方へ消えた。ロウから《マルス・レディーレ》と名付けられ、傭兵部隊サーペントテール《六人目》の傭兵となった少年は《王道でないーASTRAYー》と共に喪われた過去を知るため、《力無きものの剣となる》傭兵として戦いを始める


……………そして現在(いま)へ舞台を移す


PHASE-30「シュミレーションとソーナ・シトリー」 side:ASTRAY

星々が煌めく宇宙…あらゆる生を拒絶する空間に幾つもの光の軌跡がぶつかり合う

 

翔真が駆るXXXG-00W0ウイングガンダムゼロ(EW)、リンネの駆るRX-0ユニコーンガンダム、一夏の駆るZGMF-X10Aフリーダム。三機のガンダムが狙うのはたった一機の漆黒のMSアストレイ・エクシェス

 

 

「………」

 

 

それを操るのは傭兵部隊サーペントテール、サーペントテール《6》マルス・レディーレ。パラエーナビーム砲、ビームマグナムのビームを紙一重でかわす技量はサーペントテール《1》叢雲劾、サーペントテール《2》イライジャ・キールと共に任務で培われたモノだ

 

「…………」

 

背後から切りかかるゼロ《EW》のビームサーベルを振り返りざまにシュベルトゲベール《グラム》で受け何度も切り結び、ユニコーンのビームトンファー、フリーダムのビームライフルによる攻撃回避、攻撃に転じながらマルスの意識は別方向に向けられている…

 

 

(………ウイングガンダムゼロ(EW)、RX-0ユニコーンガンダム、ZGMF-X10Aフリーダム…高機動性を確立しながら高火力のビーム兵器で搭載。格闘戦においても油断はできない……だが強いて言うなら弱点がある…それは)

 

 

パラエーナビーム砲、ビームマグナムのビーム我入り乱れるなかを加速…マルスが狙うのはウイングゼロ。こちらに照準を合わせツインバスターライフルの引き金を絞る。すさまじいまでの破壊力を伴ったビームを避けようとせずに飲み込まれた…だが異変が起きる

 

 

ビームの奔流の中に見える金色の二つの光…それが真っ直ぐ迫り、ゼロの前に姿を見せた

 

漆黒のMS…エクシェスの無傷な姿に驚く。よく見ると翼から光の膜みたいなモノが機体を包み込んでいる…ビームサーベルを抜き切りかかるゼロ。その攻撃をあらかじめ読んでいたように僅かにコントロールスティックを傾けかわしていく

 

「………相手MSの関節、武器、センサーを破壊する無力化攻撃。それを貫くのは個々の自由、否定はしない……だが戦場で敵への情けは……」

 

 

ビームサーベルの切っ先をかわし、マシンキヤノンの攻撃を上方にジャンプ。アクロバティックに弧を描きながら回避。エクシェスの瞳に光が走り一気に加速。グラムでビームサーベルを持つ腕を上へと逆手に握りゼロのコックピットに深々と突き刺しレーザーブレードで切り払った

 

 

「………いつか自身の死を招く…」

 

 

…爆発するゼロの姿を見た二機は示し合わせたように再び攻撃を仕掛ける…ビームマグナムを構えたユニコーンの手が結晶化、最大出力のビーム砲撃が襲いかかる。触れただけでVPS装甲は溶解、爆散するビームを前にして怯むどころか真っ直ぐ加速。光の翼の輝きが激しさを増したとき、右腕のシールドが外れ先端のクローが左右に開く。その中心から限りなく長く分厚いビームの刃が生まれ基部から握り手が飛び出した。エクシェスのもう一つの武器、超高出力ビーム剣を迷わずつかみ大きく振りかぶり斬りつけた

 

刃が当たるもサイコフレームから生まれるサイコフィールドがバリアとなり防ぐ…力は互角、だが背後からフリーダムが迫るのを気づいていない。最大加速しラケルタビームサーベルを抜き放ち切りかかる

 

 

「…………サイコフィールドを使って自らを囮にして相手を撃つ連携も含め、短時間で作戦立案したユニコーンのパイロット、それに応えるフリーダムのパイロットも優秀だ…」

 

思わず笑みを浮かべるマルス。フリーダムの身体が震える…コックピットいやハッチの隙間めがけアーマシュナイダーが突き刺さり、エクシェスの右肩にビームサーベルの刃が深々と切り裂き止まりフリーダムの瞳から光が消え力なく漂う

 

 

(……ゼロのバスターライフルでヴォワチュール・リュミエール・シールド使用でパワーエクステンダー八割消費。右肩稼働不能…ソレスタルビーイングのエースは伊達じゃない。データとは言っても手強い)

 

 

そう、今までの戦闘は先の戦闘で大破したウィンダムのコクピットを改造したシュミレーションバトル…これはソレスタルビーイングのエースにして中心的メンバー綾崎翔真がナガスミ、マルスと共に作り出した体感型シュミレーションシステム。仮想敵には翔真、リンネ、一夏の最新戦闘データと乗機がインストールされ、なおかつ実際に受けた攻撃などの衝撃やGなども完全に再現している

 

ようやく完成し、誰が試しにと話になった時に翔真がマルスを推薦し今に至る…翔真もマルスのパイロットとしての技量をみたかったのもあったりする

 

 

 

「んだよアレ……無茶苦茶すぎだろ?」

 

 

そう口にするのはソレスタルビーイングメンバーのノーヴェ。大画面に映されたエクシェス、ゼロ、ユニコーン、フリーダムの戦いに唖然となりながら、エクシェスの一挙手一投足に見覚えがあった

 

(あたし、あの動きをどこかで…いや気のせいだよな)

 

 

エクシェスの機動パターンに懐かしさを感じるノーヴェをよそに画面の向こうでエクシェスとユニコーンの一騎打ちが繰り広げられている

 

 

(……さすがはソレスタルビーイングのメンバーだけはある……エクシェスの動きについてこれるのは劾、もしくはバリー・ホーだけだ………) 

 

 

ユニコーンはNT-Dを発動しビームトンファー部が結晶化、ビーム収束が激しさを増し身の丈を遥かに超えるビーム刃がエクシェスの装甲表面をかすめ白熱化する。圧倒的に不利な状況なのにヴォワチュール・リュミエールを使っていない。ウイングゼロ、フリーダムには使用したのに何故か?

 

(…………エクシェスの機体データも完全に再現されている…)

 

 

ヴォワチュール・リュミエールはエネルギーをかなり消費する。例え新型パワーエクステンダーを装備しているとはいえ最大10分が使用限界、マルスの機体にはアクタイオンのエネルギーカートリッジを武装に採用しているため消費はかなり押さえられても変わりはしない

 

シュミレーターのエクシェスも実機と同じデータを入れているために現在、バッテリー残量は四割を切っていた…

 

(…………武装確認。アーマシュナイダーが一振り、グラムのカートリッジは残り3、ライオットザンバー用カートリッジ、15秒分が一発。リュミエールシールド展開時間10秒に設定、チャンスは一度のみ……)

 

 

驚くほどに冷静に戦術を組み立て、背後から迫るユニコーンに向き直り加速。まさに的になってくれといわんばかりにつっこんでくる。ビームトンファーを収めビームマグナムを構え再び銃身から手首まで結晶化、圧倒的破壊力を秘めたビームが襲いかかり飲み込まれるエクシェス…やがて射線上に爆発が起きる。誰もがユニコーンの勝利だと確信した

 

一つの影がユニコーンの背後に現れ、気配に気づいた時すでに遅く、グラムでビームマグナムごと右腕が切られ、左肩駆動部にアーマシュナイダーがサイコフレームを砕き穿ち、逆手に構えたグラムで頭部を切り払った

 

「はあ、はあ、はあ………ミッションコンプリート…」

 

各関節から火花を散らしながら立つエクシェス…観戦していたメンバーは一言も声を出せなかった。ソレスタルビーイングメンバーをダメージを受けながら下したエクシェス、マルスの操縦テクニックに誰もが息をするのも忘れていた

 

しかし疑問も残った。何故最大出力のビームマグナムの直撃をうけたのに関わらず、あのダメージですんだのか。その疑問に答えるように翔真が静かに口を開いた

 

「……マルスはあの時、ビームマグナムの射線にわざと入った。同時にリュミエールシールドを展開し、マグナムのビームの上を波乗り、ビーム粒子の加速を利用して亜光速でユニコーンの背後へ回り込んだんだ」

 

 

マルスが取った策に皆が驚きながら、画面へ再び目を向けた時、システムが新たな相手を出現を警告。エクシェスは満身創痍ながら右手に構えたグラムの切っ先を向けた。その先には白を基調としながら右手に構えた巨大なメイス、特徴的な頭部に剥き出しのフレームが目立つ機体

 

マルスのシュミレーターシートのサイドモニターに相手の機体名称が流れた

 

 

   ーGANDAM・BARBATOSー

 

 

「…………バルバトス…ソロモン72柱、序列八位の悪魔…白い悪魔か。いくぞエクシェス」

 

 

 

ソロモン72柱序列八位《バルバトス》、《王道でない》アストレイの名を冠する《アストレイ・エクシェス》…ガンダムの名を持つ機体は互いの武器を、グラムとメイスが激しくぶつけあう!

 

 

 

次回に続く!

 

 






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