オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》 作:XENON
火星コロニー
同、アレス・ルセディス宅
「でさ、今日は後輩があたしに歌を一緒にって……上手いのを聞いたらしいんだ……しっこくてさ」
「そうか」
「………なあ、兄貴。あたしの歌ってそんなにいいかな…」
「……なんでそう思う」
「ママやパパは上手だって言ってくれたけど、正直、自信ないんだ……あたしにみんなの前で」
「俺が聞いてやる………クリス、お前の歌を……」
「あ、兄貴が!?………わかった……で、でも、絶ッッッ対にッ笑うなよ…………♪~」
軽く目を伏せ、大きく息を吸い歌い始めたクリスの歌がリビングに広がる…無表情だが真剣に聞き入るアレスの目か微かに光が宿りある少女と重なる
(ハーティ?…………そうだな生きていたらクリスと同じぐらい……)
『お兄ちゃん』
「兄貴?やっぱりうまくなかったよな?あたしの歌…」
「そんなコト無い」
「でも…」
「……クリス、自信を持て。お前の歌。オレは好きだ…」
「そ、そうか、なら、今度さ学祭やるからソレにでるから観に来て…でも、仕事があるよな……だったら」
「……必ずあけておく……」
「本当に本当だな!う、うそつくなよな!!」
いいたいことだけ言うとソファーに倒れ込み足を可愛らしくパタパタさせるクリスに少しだけ笑みを浮かべたアレス…粘りつくようなどす黒い闇、憎悪にかすかな光が差した瞬間だった
「なんてスピードだ!さっきとはまるで動きが違う!」
「………(二段放熱…バイオコンピューター冷却…さすがはミカドだ。オレにあわせてくれている……)8、冷却カートリッジ残りは?」
『……残量8だ…さっきザフトのデータベースにアクセスしてわかったぞ。ZGMF-X56S/θ、インパルスに《デスティニーシルエット》装備させた機体だ』
クジャクとエクスカリバーの刃がぶつかり合い、切り払うも寸前で回避するマルスの耳に届くと表情が険しいモノに変わる、前々から懸念していた戦力強化が現実のモノになったこと、そしてその力を目の前でモニター越しに嫌でも感じながら光の翼を広げ、肩に装備されたフラッシュエッジビームブーメランを構え投げつけてくる、たがゴーストガンダムの周囲に荒れ狂うIフィールドの前で霧散し虚しくかわされクジャクで切り払われた
「ビームが効かないか.………なら!」
「……くっ!まだまだだ!」
「やるな!ホァシン!!(………この機体越しから感じる気迫は一夏、翔真と同じだ!油断したらやられる)」
「………(荒削りだが、間違いなく強い。このまま成長したら……いや、今はクリス、ナカジマから注意をそらさなければ!)」
再びエクスカリバーを構え頭から切りかかるデスティニーインパルス…それをクジャクで防ぐゴーストガンダム…超音速で切り結び、弾き鍔ぜりあう二機の戦いは永遠に続くように見えた時、ゴーストガンダムの光の翼《ファントムライト》がかき消すように消え去った
「8?コレは!?」
『すまない!冷却カートリッジすべて使い切った!』
コックピットに篭もる熱にフラフラし始めるマルスの目には、間隙を見逃さないと言わんばかりに光の翼を広げ両手にエクスカリバーを二刀流に構え迫るインパルス。機体を動かそうとするもオーバーヒートにより動きが鈍い
(コレが最後か………死ぬのか……)
すべてが遅くなり頭にはジャンク屋に拾われた頃の日々、そして劾と出会いサーペートテールに所属してから様々な任務を行い、その中で出会ったたくさんの人たちの顔が浮かんでは消えていく中、ノイズが走る
ー……してやる…復………してや…生きて……や……る……ー
かすかに浮かんだ言葉、そして赤みを帯びた金の瞳を向ける子供をみた瞬間、マルスの瞳が変化し流れるようにエクスカリバーをかわし、潜り込みと同時にクジャクで下から上へ凪ぎ払う…マニュピレータからエクスカリバーが弧を描き海へ落ちる。さらに大きく身体を捻りそのまま切りつけてくるのを寸前でかわしていく中、何ともいえない違和感を箒は感じた
「な、なんだ!いまのは!だが私は負けるわけに……なに」
コックピットにアラートが鳴る…モニターにバッテリー残量警告の表示。このままでは戦闘続行は出来ないどころか帰投もできない。操縦桿を強く握り一瞥し光の翼を広げゴーストガンダムから離れていく
(ホァシン……次に戦場で会うときは私がお前を撃つ…)
心の中で小さく呟き遠くなる機影を見ながら加速し離れていく箒。デスティニーインパルスがレーダー察知圏内から離れたのをぼうっとしながら確認した時、電子音が鳴る
『こちらに接近する機影確認…マルス、どうした?マルス?』
「……うん大丈夫…8、ファントムライトは?」
『ダメだ、あと五分通常冷却が必要だ……マルス?』
「………敵じゃない……」
小さく呟くマルス。モニター最大望遠に写るHi-νガンダム・リヴェレーター、ガンダム・レギルスを見る瞳は赤みを帯びた金の瞳を輝かくも、瞬く間に黒へと戻った事に8は気づかなかった
Mission:疾風なるモノ達、天の軍神は彼の者と対話する《後編》
同時刻、マティアス邸
「……なるほどな。マルスに監視を付けていた理由か」
「まあね。四年前の私の判断ミスと状況判断が甘かったのが原因で運命を狂わせてしまった…彼女は彼の復讐心に目を付け利用し目的を達そうとしている。それはこの世界に取って害しかなさない。何より私は本当の敵は誰か、守るべきモノは何かはわかっている。ぐんじんとして、そしていつか報いを受けることも」
「………」
僅かな沈黙が支配する中、ミナは目を閉じ数秒たたずに静かに開けた
「………わかった。出来うる限り力は貸そう。ただ条件がある…」
「条件?」
「この戦いが終わりを迎えるまで、マルス・レディーレを見極める事……ASTRAYの乗り手はASTRAYと共に成長する…危険だと早計に決めつけるのは良い判断とはいえないし、他者への干渉は避けるべきなのだ。真に彼の少年を心配するのであるならは、討たれるコトを望むな。死を選ぶ事は逃げにしかなら無い。生きて向き合うことも含めてだ」
「………わかった。アナタの条件を呑もう」
「良い話ができて良かったよ。大東貴一…私はコレからやることがある。しばらく此処にとどまると良い……」
静かに立つと今までとは違う笑みを向けそのまま部屋を出たミナ…扉が閉じ暫くして緊張の糸が切れたように椅子に深く座り込んだ
「ふう~緊張した……とりあえずはよしかな……」
この世界で強い影響力を持つ影の軍神こと、ロンド・ミナ・サハクからの協力を取り付ける事が出来た事に満足し天井を見上げた
同時刻、オーストラリア
トリントン総合病院
「ありがとう、ありがとうございます!コレでみんなを」
「い、いや、オレはただ……とにかく早くワクチンを」
リナーシタからはずされたワクチンコンテナの前で医師たちに何度も頭を下げられ慌てるナガスミ。その近くにはGspirits隊の機体もある…輸送中に連合MSに追われていたところを援護しに現れ予定時刻通りに届けられたのも彼等のおかげだった
「礼なら、彼等……アレ?いないな」
感謝攻めから解放され振り返った時にはもう姿はなく、少し手伝いをしてからリナーシタと共にトレミーへと病院関係者(特に看護婦さん)に見送られ帰路へとついた
ーーーーーーーー
「見えた、AEU総合病院……クリスとノーヴェさんもいる……」
『あとは大丈夫だな。俺達はココまでだ……』
「いえ、途中まで送ってくれてありがとうございます。えと…ボクはマルス・レディーレって言います」
『!……そうか、俺は………悪い、帰投命令が出たから………じゃあ気を抜くなよ………』
『……マルスくん、今度はゆっくり話せるといいわね……またね』
短い通信を終え、軽く手を振りながら機体を反転、そのまま離れていくのを見送りAEU総合病院へと向かうマルス…少し疲れを感じながらもまっすぐに飛翔していった
中国上空
「なんでGspirits隊が……」
ウイングゼロのコックピットで一人つぶやく翔真…インフラックスとの交戦中に、現れたGspirits隊の面々、もし現れ援護してくれなかったらワクチンは定刻通りに届ける事が出来なかった
その事実に悩みながら気になったのはインフラックスから感じた気配…どこかで、いやよく知る感覚だった。気になるがわからないが
「……あの機体、間違いなくオレに殺意を持っていた……とにかく、帰るか…マルス、ナガスミもトレミーに向かっている…」
操縦桿を、傾け加速させトレミーがある海域へとウイングゼロを向かわせた
翔真たちが届けたワクチン、Gspirits隊のワクチンに加えミカドが提示し医療機関へ流された対症療法のおかげでS2型インフルエンザは終息を迎えた
Mission:疾風なるモノ達、天の軍神は彼の者と対話する《後編》
了